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自民党の次期総裁選挙で、安全保障政策が大きな関心を集めている。これに対して、米国メディアは、中国に対して一段と強硬姿勢を取るものと予想している。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月6日付)は、「次期首相、対中姿勢はさらに強硬に」と題する記事を掲載した。

 

退任を決めた菅義偉首相の後任として、日本の議員は中国に対する強硬姿勢をさらに強めそうな指導者を選ぶ覚悟を固めた。有力候補に名を連ねているのは共に外相経験者である岸田文雄氏と河野太郎氏だ。2人とも、台湾や日本南部の島嶼部周辺への中国による軍艦や軍用機の派遣に対して、日本の防衛力を強化することを支持している。

 


(1)「中国が香港を弾圧し、バイデン氏が中国政府の経済的影響力に対抗しようとさまざまな手を打ったことで、日本政府にとっては米国との同盟関係への関与が正しいことが証明され、自民党内部ではハト派の声が聞かれなくなった。日本の政府関係者は台湾を支持する発言をするようになり、日本南部の島嶼部が地域紛争に巻き込まれるリスクにこれまで以上に注意を払っている」

 

昨年6月の中国による香港への「国家安全維持法導入」以来、自民党内にハト派の声が聞かれなくなった。中国警戒論が高まったとしている。

 

(2)「日本は来年、日中国交正常化50周年を迎える。習近平国家主席は昨年、国賓として来日する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で延期され、その後、両国関係は悪化した。中国は日本による台湾支援に怒りを示している。2017年から19年まで駐日大使を務めたビル・ハガティ上院議員(共和党、テネシー州)は7月、台湾と日本の議員との会議に出席した。日本からは安倍前首相も出席した。ハガティ氏や米政府関係者によると、日本の政府関係者は台湾への支持を表明することに前向きになっており、台湾を議題に挙げることが多いという。ハガティ氏は「日本の対外的姿勢の変化から、彼らがもっともな理由で台湾を最重視していることがうかがえる」と述べた」

 

来年は、日中国交正常化50周年に当るが、中国は日本の台湾支援に怒りを示している。こんな訳で、50周年を祝う雰囲気ではないであろう。日本は、香港問題から得た教訓で台湾支援姿勢を強めている。

 

こういう日中冷却化の中で、中国の台湾・尖閣諸島への同時侵攻作戦が現実味を増している。日本は中国の侵攻にどのように対応するかだ。

 

『ニューズウィーク 日本語版』(9月14日付)は、「台湾・尖閣への中国侵攻に、米軍と自衛隊はどう備えるべきか」と題する記事を掲載した。

 

米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は3月に上院軍事委員会で、台湾侵攻の脅威は「今後6年以内」に到来する恐れがあると証言した。2週間後、後任のジョン・アキリーノ次期司令官は「この問題は大方の見方よりもずっと近づいている」と警告した。

 

この現状を踏まえ、アメリカの専門家は対中戦争の可能性に備えるよう同盟国に求めている。日米同盟の防衛計画では、日本がどのようにして抑止力を強化するか、必要に応じて長距離ミサイルを保有し、防衛能力を向上させるかを検討の俎上に載せる可能性がある。

 


(3)「中国が台湾に侵攻すれば、日米両国はいや応なく紛争に巻き込まれることになりかねない。習近平(シー・チンピン)国家主席はアメリカのサイバー・宇宙ネットワーク、在日米軍やグアム駐留米軍、自衛隊や日本国内の施設への攻撃を指示することも考えられる。さらに日米の防衛計画担当者は、尖閣諸島への同時侵攻の可能性も考慮する必要があるかもしれない。この問題では日米の優先度に差があり、同盟に亀裂が入る恐れもある

 

下線部の懸念は杞憂である。想定の範囲内であり、日米は十分に調整済みである。

 

(4)「日本の長距離通常ミサイル増強を真剣に検討する必要がある。まず、射程1000キロ以上のトマホーク巡航ミサイル、次いで射程2000キロ以上の中距離弾道ミサイル、最後に同射程の極超音速兵器の導入が考えられる。日本はまた、12式地対艦誘導弾を改良して射程1000キロの長距離巡航ミサイルを開発する現在の計画を継続しようとするだろう」

 

22年度の日本の防衛予算のうち最も目につく部分は、「12式地対艦誘導弾能力向上」のための開発費用として、379億円が予算案に計上されたことだ。12式の射程距離は200キロといわれている。日本は、このミサイルの性能を大幅に改善する研究を昨年から進めてきた。現在の射程は約200kmだが、当面これを900kmまで発する。最終的には、射程1500kmまで延伸される予定だ。

 

射程1500kmまで延伸されると計算上、奄美大島から12式地対艦誘導弾を発射すれば、上海付近の中国艦船を狙えるという。これは、中国にとって迂闊に尖閣侵攻するリスクの高さを認識させるに十分な威力となる。

 

12式地対艦誘導弾は現在、陸上自衛隊の管轄で研究開発されている。完成後に航空自衛隊や海上自衛隊が運用できるように改良する計画だ。そうなると、航空・海上・陸上の3自衛隊が12式地対艦誘導弾を同時に装備して中国軍の不穏な動きを封じることになる

 

米国のCNN放送は、2016年12月8日の「真珠湾攻撃75周年記念特集」で、次のように放送した。『ハンギョレ新聞』(2016年12月9日付)が報じた。

 

「ジョン・クエン米陸軍指揮参謀大学教授は、自衛隊の現在の水準について空軍であれ海軍であれ日本は世界のどの国にも(軍事的に)対抗できる戦力であると。特に、海上自衛隊は米海軍に次ぎ、世界2~3位水準の戦力を保有していると評価される」

 


「トヨタや三菱に代表される世界最高水準の日本の製造業の存在に刮目すべきである。クエン教授は、日本がF35の生産を引き受けることになれば、米国が作った原型より任務遂行に適した機体に改善できるだろうと予想した。日本は韓国とは異なり、導入が決定された42機のF35A機体のうち4機のみ完成品を輸入し、残りの38機は日本国内で組立作業を行う」

 

日本製造業の高い水準が、日本防衛に大きな力を果たすというのである。日中の製造業レベルの違いを認識しているはずの中国が、尖閣諸島侵攻によって、いかなる損害を被るか、机上計算をしているだろう。