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習近平氏は、経済が最悪事態へ突入していることを隠すために必死である。当局が、金融関連情報を投稿するブログやSNS(交流サイト)の取り締まりに乗り出しているからだ。投資家は、中国経済に関して信頼できるデータの入手が一層困難になっている。

 

不動産開発企業に最大手である中国恒大は、銀行に対して9月20日の金利支払いが不可能な旨を通告する事態である。普通の感覚であれば、デフォルト間違いなしだ。ここまで追込まれているだけに、中国当局は「臭いものに蓋」という戦術に出ている。

 

中国で抜本的改革の行方を知っているのは、習近平国家主席を含め10人程度にとどまるという。この秘密主義を守らせるには、「見ざる聞かざる言わざる」の「三猿主義」になるほかない。中国経済は、死に急いでいる。

 


『フィナンシャル・タイムズ』(9月16日付)は、「中国が『金融ブログ規制』、投資家は情報不足に」と題する記事を掲載した。

 

対中投資が賢明な選択だったのかどうか、米ウォール街トップの見解の相違が広がるなかで、当局が金融情報の取り締まりをさらに強化した。ベテラン投資家でさえ相次ぐ政策の全面的な見直しには意表を突かれた格好で、市場は動揺し、中国政府の次の標的はどの部門かという疑念を呼んでいる。

 

(1)「中国国家インターネット情報弁公室(CAC)が8月に始めた「特別是正」キャンペーンの対象となったのは、市場に疑心暗鬼を生じさせたり、中国経済について悲観的な意見を述べたりするブログのほか、誤情報や違法行為を拡散する金融ニュースサービスやSNSのアカウントだ。中国を専門とするエコノミスト、アナリスト、研究者もネット上での不正確な論評や詐欺的行為の横行が金融市場の問題になっている点は認める」

 

8月からインターネット上での経済情報の取締りが始まっている。中国経済危機の進行を反映している。

 


(2)「一方で、過剰に規制すれば中国政府の公式見解とは異なる有益な意見の口封じになりかねないと心配する。匿名を条件に取材に応じたベテランの中国市場アナリストは、中国に関する情報の不足は計算違いや誤った判断を誘発する環境を「確実に」生み出していると懸念し、こう話した。「リスクが大きすぎる。どんな発言にも気を使うようになる。とても心配だ。いま何が起きているのか、本当に知ることができるのか。これまでもデータの内容には問題があったが、今後はさらに社会の実態が見えにくくなるだろう」

 

明らかに詐欺的な情報はチェックしなければならないが、正常な情報まで規制されているのは、危機襲来の証明である。

 

(3)「地方政府は、規制当局の取り調べに素早く呼応し、無謀な株価操縦をしたとされる容疑者を次々に逮捕した。ライブ配信や対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を使って株価を「操作」したとされる事件の被疑者たちだ。上海では当局による一斉逮捕を受けて、証券会社とインターネット企業が1万7000件超の「有害情報」を削除し、約8000件の違法アカウントを閉鎖した。深圳でも当局が株価操縦事件を暴き出し、14人の容疑者を逮捕した」

 

地方政府は、株価操作を目的にしたライブ配信などは取締り対象になろう。問題は、それで済まないことだ。正しい分析までも弾圧されている。

 


(4)「500万人超のフォロワーを持つ広東省の著名金融コメンテーター、黄生(フアン・シェン)氏も逮捕され、ウィーチャットとウェイボのアカウントが凍結されたもようだ。フォロワー400万人のシュ・シャオフェン氏のウェイボのアカウントは7月上旬以降、更新されていない。同じく金融ブロガーで数十万人のフォロワーを持つイ・ウェイ氏の投稿は削除されたもようだ。中国の警察当局が不正取り締まり専用アプリを使い、海外の金融ニュースサイトの利用者を突き止めて取り調べているふしもあるとフィナンシャル・タイムズ(FT)紙は今週報じた」

 

下線部は、海外から中国の正しい中国情報の入ることを禁止している。

 

(5)「中国在住のある金融アナリストは、「基本的に中国政府のデータ解釈に異論を唱える人たちが対象になる。少々客観的または否定的にデータを解釈しようする人なら誰でも今回の取り締まりに危惧を抱くだろう。はっきりしたことはまだ何も言えないが」とこのアナリストは匿名を条件に話した。中国専門のある欧米エコノミストは匿名で取材に応じ、社会の混乱に関する統計など「多く」の時系列データの公表が打ち切られていると指摘した。説明のつかないデータの補正も頻繁に行われ、経済調査には不可欠な家計や企業の「ミクロデータ」が入手できなくなっているという

 

このパラグラフでは、中国当局の取締り意図がはっきりしている。経済データの隠匿が始まっているのだ。中国経済悪化を隠すためにデータを入れ換えている。

 


(6)「中国の抜本的改革の行方を知っているのは「世界で10人」程度ではないかとベテランエコノミストはみている。「恐らく習近平(シー・ジンピン、国家主席)と党中央政治局常務委員会委員、それに数人の規制当局首脳だけだろう」という。しかし今、中国は不確実性に覆われ、投資家は規制強化や税率引き上げ、高額寄付の呼びかけ、経営判断に対する政府の影響拡大など様々な脅威に直面している」

 

中国の真実を知っている者は、10人程度しかいないという。極端な秘密主義で、中国経済は滅びの道を歩んでいる。気の毒なことである。