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韓国は、複雑な思いで9月16日(米国時間)に発表された米英が豪州へ原子力潜水艦技術を移転する計画発表を聞いたはずである。韓国も、原潜開発計画を立てており、米国へ内々技術移転の話を持ちかけていたからだ。

 

米英豪三ヶ国な、「AUKUS」(オーカス)なる名称で軍事面など密接な関係を築くという。また、米国が豪州へ原潜技術の移転を行うのは「特別のケース」としており、韓国が同様な待遇を受ける機会はなさそうである。それだけに、「豪州優遇」が目立つ。その裏には、確固とした米豪関係がある。その点、米韓関係は北朝鮮次第で揺らぎ、さらに中国まで変数が多いのだ。

 

『朝鮮日報』(9月17日付)は、「中国けん制のため 米英、原子力潜水艦の極秘技術を豪に移転」と題する記事を掲載した。

 

米国が英国、オーストラリアと共に3カ国の新たな安保協力体「AUKUS」を立ち上げることを15日(現地時間)に正式に発表した。米国、日本、オーストラリア、インドによる4カ国連合体「クアッド(Quad)」に続きまた新たな対中けん制ネットワークが誕生する運びとなった。

 


(1)「オーストラリア(A)、英国(UK)、米国(US)の頭文字を合わせた名称となったAUKUSは3カ国による初の協力事業として、オーストラリアに「原子力潜水艦艦隊」を立ち上げることにした。米国と英国が全面的に支援を行うという。米国が原子力潜水艦の建造に必要な原子力関連技術を他国に移転するのは、1958年に英国に移転して以来63年ぶりとなる。3カ国首脳はこの日発表した共同声明で「可能な限り早い時期にオーストラリアがこの能力を実戦配備できるようにしたい」との考えを示した。オーストラリアは近くアデレードで原子力潜水艦の建造を開始する予定だ」

 

「AUKUS」という三ヶ国の名称を付けて、米英豪三ヶ国の結束を固めるというのは、「血は水より濃し」を象徴するようなケースであろう。米国が「とっておき」の原潜技術を豪州へ渡すのは、それなりの結束が必要なはずだ。韓国のように、中国との間で「二股外交」を行う国には絶対に移転するはずがない。

 


(2)
「米国がオーストラリアに原子力潜水艦技術の移転という破格の支援を決めたことは、「確実に米国側に立つことの手本を提示した」という意味合いもある韓国政府は昨年9月、青瓦台(韓国大統領府)国家安保室の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)第2次長を米国に派遣し「原子力潜水艦の建造に必要な核燃料の供給を米国から受けたい」との考えを伝えたが拒否されたという

 

下線のように、韓国は昨年9月、米国へ原潜技術の移転を交渉して断られたという。韓国政府はこの事実を隠してきた。現在、韓国が進めている原潜計画では、米国からの技術移転を前提にしているが、米国が拒否した以上、自力開発しか道はなくなった。

 


(3)「これについてバイデン政権のある幹部はこの日、ホワイトハウス担当の記者団に「この(原子力潜水艦)技術は極度に敏感なものだ。率直に言ってこれ(オーストラリアへの技術移転)は多くの側面で米国における政策の例外だ」と強調した上で「このようなことが今後別の状況で行われるとは予想していない。これはたった1回だけ行われることだ」と述べた。米中間で曖昧な態度をとり続ける韓国が米国から原子力潜水艦技術の移転を受ける望みはなくなったと考えられそうだ」

 

下線のように、米国が虎の子技術を移転するのは極めて稀なケースとしている。韓国が、米韓一体の外交姿勢を取らず、「経済は中国、安保は米国」という使い分けしている状況では不可能であろう。

 

『中央日報』(8月29日付)は、「韓国型次期潜水艦は原潜に決定、いまや政治的決断だけが残った」と題する記事を掲載した。

 

韓国型原子力潜水艦が徐々に姿を現している。今年初めに原潜の作戦要求性能(ROC)が確定した。事業の最大の山場である燃料問題でも進展を見せている。今年が過ぎる前に韓国型原潜関連の公式発表が出てきそうだ。



(4)「国産原潜を就航させるには、予算、技術、原子炉、核燃料が必要だ。予算と技術は問題にはならない。海軍が自主国防ネットワークに原潜導入検討を依頼した結果、原潜開発に7年が必要で、費用は1隻当たり1兆3000億~1兆5000億ウォンになると出てきた。韓国は張保皐I、張保皐II、張保皐IIIと潜水艦を相次いで建造し、関連技術を蓄積してきた。不足する技術は国内研究で埋め合わせたり海外から導入すれば良い。カギは原潜の心臓である原子炉と原子炉を稼動する核燃料だ。原潜の原子炉は韓国型小型原子炉であるSMARTを修正して使うものとみられる。この原子炉は旧ソ連の原潜の原子炉を基に設計された

 

韓国は、原潜建艦に興味を持ち続けている。原子炉と核燃料をどのように調達するかでる。

 


(5)「SMART原子炉は設計図にとどまっており、現在商用化を推進している。ソウル大学原子核工学科のソ・ギュンリョル教授は「SMART原子炉を土台にした韓国型原潜原子炉は4年以内に試運転できる」と話した。一部では米国や英国、フランスのようにすでに原潜を自力で作った国から技術とノウハウを学ぶ必要性が出ている。米国との協力は必須だ。特に原潜原子炉の動力源である核燃料がカギだ。韓米は米国産ウランを20%未満だけで濃縮でき、軍事目的に使用できないようにする内容の原子力協定を結んだ。米国の原潜は90%以上の高濃縮ウランを使う」

 

韓国技術で原潜原子炉は4年以内に試運転できるという。このメドが立っているならば、米国からの技術導入を待たなくても実現できるはずだ。

 

(6)「米国の態度は強硬だった。米海軍海上システムコマンドのジェームズ・キャンベル分析官は2019年のある討論会で「米国は韓国が同盟国であっても(原潜)技術を渡さないだろう」と話した。韓国はこれまで米国に旧型原潜を貸与または販売を執拗に要求した。しかし米国は自国の戦略資産である原潜を海外に売った前例がないという理由で拒絶した。ところが米ワシントンの雰囲気は変わっている。北朝鮮が原潜を開発すると明らかにし、中国を牽制するのに必要なため韓国の原潜保有を認めようという世論が米国議会でも出ている」

韓国は、米国からの技術移転であれば、事故もなく安心して稼働できる。だが、米国は拒否している。韓国への信頼感が足りないのだ。韓国は、原子炉の自主開発が可能ならば、独自の道を進むしか方法はない。