テイカカズラ
   


破綻したバブル経済構造

2~3年続く低飛行成長

TPP加盟論で煙幕張る

実現できない数々の条件

 

中国が、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟を正式に申込んだ。取り次ぎ国は、ニュージーランドである。習近平氏は昨年11月、TPP加盟意思を示して以来、半信半疑で受け取られていたが、ついに正式な申込みとなった。

 

TPPは、高度の貿易自由化(99.9%)などを条件にしている。中国が核とする国有企業には厳しい制限を掛けており、現在の中国の経済体制では加盟が困難である。それにも関わらず、中国はなぜ今の時点で正式な参加申入れをしてきたのか。かえって、それが訝られているほどだ。この申込みには、別の狙いが隠されているだろうという憶測である。

 


破綻したバブル経済構造

中国経済の現況は、ズバリ言えば「混乱の極」にある。中国GDPの約25%を占める不動産開発が、行き詰まっている。これまで10年以上も続いてきた不動産バブルが、ついに「自然崩壊」を迎える段階へ遭遇したことだ。

 

過去、景気のテコ入れ策はインフラ投資と不動産開発が定番であった。インフラ投資は、全土にくまなく張り巡らす高速鉄道網の拡張策。もう一つは、土地国有制をテコにして地価を釣上げ、住宅価格を押し上げる不動産開発であった。この不動産開発による土地売却益は、地方政府の重要な財源になった。ここに、政府主導による地価上昇→住宅価格上昇という方程式が出来上がったのである。

 

スパイラル的に上昇する住宅価格の上昇は、家計負債を急増させることになった。これが、個人消費を抑制するという逆効果を生むにいたった。それだけでない。2020年の国勢調査で明らかになったように、出生率低下による「人口減社会」が目前に来たことである。2023年ころから、中国は人口減が現実化するはずだ。これは、中国共産党にとって青天の霹靂であった。

 


急遽、「不動産バブル潰し」が現実の政策課題として登場したのである。胡錦濤政権時代は、不動産バブルが発生するとすぐに金融を引き締めて正常化させた。習近平政権では、そのような配慮がなく、不動産バブルを利用して経済成長率を意図的に引き上げる政策を行った。そのツケが、現在の習近平政権を襲っているのである。パンデミックも重なって、中国経済は青息吐息状態に追込まれている。

 

習政権は、自らが負うべき経済政策の失敗の責めをテック産業とその経営者へ押し付けている。「共同富裕論」は、その典型である。テック産業規制理由は、高額な学習塾による教育費高騰、インターネット・ゲームによる多額の費消、フィンテック金融による消費者搾取など、罪業の数々を並べ立てられて、政府の抑圧対象になった。

 

2~3年続く低飛行成長

最近の中国経済は、惨憺たる状況に陥っている。

 

8月の小売売上高は、前年同月比2.5%増。8.5%増だった7月から大きく鈍化した。1~8月の建設投資は前年同期比3.2%減へ落込んだ。8月の住宅販売額は、前年同月比19.7%減である。7月も同7.2%減と不調であった。2月には、同143.5%増を記録したが、現金を必要とした企業の投げ売りと想像される。

 


住宅販売は、明らかに基調が変わっている。同様に、自動車販売も8月まで4ヶ月連続で前年比マイナスである。耐久消費財販売は、総崩れなのだ。

 

このように、個人消費の不調が明らかである。理由は、すでに指摘したように不動産バブルによる家計債務の増加と、パンデミックのもたらした影響である。「中国経済は向こう数四半期、幅広い下向きトレンドにとどまるだろう」との分析が出はじめている。すでに、米国エコノミストは「今後数四半期、米国GDPが中国を上回る」と予測している。米中のエコノミストが、期せずして一致した見方になった。それだけに、中国経済に不気味さを漂わせているのだ。

 

私はすでに、こうした状況について「メルマガ286号 中国は深刻な『経済危機』、20年代にGDP2%へ低下『もがく習近平』」(8月23日発行)において明らかにした。その根拠のひとつとして、クレジットインパルス指標を通り上げた。

 


クレジットインパルスは、新規貸出の増加率と経済成長率を対比し、拡大か縮小かを見るものである。これによると、2020年10月にピークアウトした。その後一貫して低下し、この4月以降はマイナス圏で推移しているクレジットインパルスは、上昇と下降においてそれぞれ2~3年のサイクルを示す。このことから判断すれば、23年秋ぐらいまでは下降するだろう。製造業PMI(購買担当者景気指数)の好転に繋がるのは、その後(約12ヶ月の遅れ)となる。つまり、中国経済が明るくなるのは、24年秋ごろと見られる。

(つづく)

 

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