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「草木もなびく」勢いで、中国へ工場進出した時代が懐かしくなってきた。今や、中国の人件費高が足かせになって、中国から撤退することが珍しくなくなっている。中国経済の斜陽化を象徴する一面である。

 

中国南部広東省の深圳市が6月末、企業の賃金抑制に乗り出している。条例を17年ぶりに本格的に改正し、残業手当の規定撤廃などを盛り込んだ。中国では、人件費の高騰で生産拠点を東南アジアなどに移転するケースが増えている。今回、深圳市が行った残業手当の規定撤廃などは、企業負担の抑制を狙うもの。深圳市は、中国産業モデル地区であるので、今回の施策は全土に広がる可能性も指摘されている。

 

中国はこうした、労働条件の切り下げによって、外資系企業の中国残留を狙っているが、「脱中国」の動きは止められない流れになっている。日韓を代表する企業である、東芝とサムスンが撤退方針を明らかにした。

 


『大紀元』(9月16日付)は、「東芝とサムスン、中国から相次ぎ撤退 補償金に不満の従業員は抗議活動」と題する記事を掲載した。

 

中国から撤退する外国企業が増えている。日本の大手電機メーカー東芝、韓国最大の財閥企業サムスングループはこのほど、相次ぎ中国工場の閉鎖を決定した。

 

(1)「東芝は中国大連市の工場を9月30日で閉鎖する。1991年に産業用モーターなどの製造拠点として設立され、東芝グループ初の中国工場だった。今後、ベトナムや日本国内での生産に切り替える。同工場は液晶テレビや医療機器なども生産してきたが、東芝の経営再建で事業整理を進めた結果、生産品目が少なくなった」

 

東芝グループが1991年、初の中国工場として産業用モーターなどの製造拠点として設立した工場である。そこからの撤退だ。今後は、ベトナムや日本国内での生産に切り替えるという。生産技術の進歩で、少量生産でもコスト切り下げが可能になっている。

 


(2)「中国メディアによると、同工場の経営は長らく低迷しており、現在の従業員数は約650人、平均月給は約3000元(約5万円)。撤退に伴う従業員への補償など具体案はまだ公表されていない。一部の情報では、東芝は年内に中国24都市にある33工場と研究開発機構を引き上げる予定だという。開発機構と精密部品の製造は日本国内に戻し、電気製品の生産ラインはベトナムに移転する。東芝は2013年にも大連市にあったテレビ製造工場を閉鎖した」

 

東芝は、年内に中国24都市にある33工場と研究開発機構を引き上げる予定という。開発機構と精密部品の製造を、日本国内に戻すというのは、中国での拠点メリットが消えたということ。中国にとっては深刻な事態だ。

 


(3)「中国浙江省寧波市にある韓国系企業、サムスン重工業の造船所もこのほど閉鎖を発表した。同造船所はサムスンの中国での初の造船所であり、1995年12月から稼働。従業員数は4500人を超える。数千人の従業員は工場の閉鎖に反対し、会社側の補償案を受け入れられないとして、98日から連日抗議を続けている」

 

韓国のサムスン重工業の造船所も、このほど閉鎖を決めた。造船では人件費が大きなウエイトを持つが、これも技術革新で中国での立地メリットをカバーできる見通しがついたのであろう。

 

賃金上昇分を生産性向上で吸収できなくなれば、撤退するほかない。詳細は不明だが、生産性向上の見通しがつかいないとなれば、中国における「中所得国のワナ」問題は、現実化するに違いない。中国経済の危機である。

 


(4)「大紀元の取材に応じた工場関係者によると、サムスン側は「(勤続年数+1×月給」という補償案を提示したが、従業員側が要求する「勤続年数×月給×3」の金額と約2倍の開きがある。9月12日時点で労使交渉は続いている。従業員の話では、従業員全体の平均給与は約1万元(約17万円)、新入社員は約3000元(約5万円)。外資系企業のなかでは高い水準とみられる。中国の法律では、会社の都合による労働契約解除時、義務として従業員に支払われる補償金は、「勤務年数(最大12年)×直前平均月給」となっている。従業員側の要求は法律から大きく乖離していることがうかがえる」

 

中国労働者側は、補償金で過大要求を突付けている。普段から、こういうルールに乗らない無理な要求を出しているのであろうか。

 

(5)「サムスングループは中国からの撤退を加速させている。昨年、中国最後の携帯電話生産拠点だった広東省恵州市の工場、天津市にある中国唯一のテレビ製造工場、今年8月には、蘇州の最後のパソコン工場を立て続けにたたんだ。外資が相次ぎ撤退を決めた一因として、労働コスト(人件費)の高騰が挙げられる。外国企業の撤退が続けば、失業者が急激に増え、国民生活や中国経済への打撃は必至だ。中国政府が今年8月に発表した資料によると、外資企業での就業人口は4000万人と、全就業人口の1割を占めている。税収の6分の1に貢献しているという」

 

サムスングループも、中国からの撤退を加速させている。すでに、東芝グループも同様の決定をしている。外資企業での就業人口は4000万人とされ、全就業人口の1割を占めている。外資系企業は、こういう高い雇用ウエイトを持っているのだ。それだけに、中国からの撤退は雇用へ悪影響を及ぼす。