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9月20日の香港株式相場が急落した。ハンセン指数は前週末比で一時4%超下げて2万4000の節目を下回る場面があり、終値は2万4099と昨年10月以来の安値となった。原因は、中国恒大集団の経営の先行き懸念が深まっていることだ。同社は、過剰債務と資金繰り不安に揺れており、投資家がリスク回避姿勢を強めたもの。一葉落ちて天下の秋を知る、である。

 

中国本土投資家は、中秋節の連休に伴い16~22日は証券相互取引を通じた香港株売買が休止となっている。このことも、ハンセン指数の下げ幅を大きくしたと見られるが、恒大集団の経営自体に改善の動きはない。

 


中国恒大は9月23日、8350万ドルの社債利払いが期日を迎える。同29日には4750万ドルの利払いが控える。30日以内に利払いを履行できなければ、デフォルト(債務不履行)になる、切羽詰まったところへ追込まれている。20日正午までに株価は一時19%急落した。2010年5月以来、約11年ぶりの安値を付けたが、これはデフォルトを織込んだ相場と見られている。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、「欧州株全面安、中国・恒大不安が波及 独4カ月ぶり安値」と題する記事を掲載した。

 

9月20日の欧州株式相場は、ほぼ全面安の展開になった。過剰債務で資金繰り不安が強まっている中国の不動産大手、中国恒大集団の経営不安を背景に同日の香港株が急落した流れを引き継いだ。ドイツの主要40銘柄でつくる株価指数DAXは一時3%下げ、取引時間中としては5月19日以来ほぼ4カ月ぶりの安値水準をつけた。

 

(1)「欧州株は現地時間の午後にかけて一段安となり、主要国の株価指数は前週末比で2~3%程度下げて推移している。フランスのCAC40、英FTSE100種総合株価指数はそれぞれ7月半ば以来、約2カ月ぶりの安値水準をつけた。金融や機械、自動車など幅広い銘柄が売られている。同日の香港市場ではハンセン指数が年初来安値を更新し、恒大集団が一時2割安と急落した。中国の金融や不動産市場の先行き不透明感から、運用リスクを回避する売りが膨らんだ。米株価指数先物も大幅安になっている。日経平均先物も3万円代を割り込んで推移している」

 

米国でも恒大問題を嫌気して、一時500ドルもの値下がりに見舞われた。欧州と中国の政治関係も、冷え切っている。新疆ウイグル族の人権弾圧に対してEU(欧州連合)が制裁を科すと、中国もEU要人に報復制裁して一挙に関係は悪化している。7年越しで署名にこぎ着けたEU・中国の包括投資協定のEU側批准審議は無期限棚上げになった。EUにとっては、もはや落日の趣が強い中国経済へ魅力を感じない面も大きい。

 

こういう状況下での中国恒大の経営不始末問題である。EU側は、一段と中国経済への懐疑的な見方を強めることになろう。中国経済の核心部分である不動産開発企業の経営蹉跌は、中国経済の終わりを告げる晩鐘であろう。

 

(2)「恒大集団は23日以降に発行した社債の利払い日が相次ぎ到来するため、資金繰りに行き詰まるとの懸念が高まっている。香港不動産大手の株価も中国政府が統制を強めるとの見方から急落しており、恒大発の不安が世界の株式市場に波及している」

 

中国政府は、恒大集団に対する姿勢を全く見せずにいる。環球時報の「名物」編集長によれば、恒大は潰れても中国経済に影響なしと豪語している。実際に、どういう影響が出るか、最後の場面へ向かっている。

 


『日本経済新聞 電子版』(9月20日付)は、
「香港株が急落 中国恒大問題に深まる懸念」と題する記事を掲載した。

 

(3)「恒大集団は一時2割近く下落。同社への貸付金が金融機関の中で最大と伝わった中国民生銀行も1割超、下げる場面があった。恒大集団の取引先の金融機関や、他の不動産株にも売りが広がっている。広州富力地産など、財務基盤が弱いとされる不動産株も売りが目立った。ほかにも中国ネットサービスの騰訊控股(テンセント)など、ハンセン指数を構成する主力株にも売りが及んだ。恒大集団を巡っては前週、20日に控える融資の利息を支払えない見込みなどと伝わり、資金繰り不安が一気に広がった。同社は23日に米ドル建てと人民元建て社債の利払いを控えるとされる」

 

恒大は、9月23日に8350万ドル、同29日に4750万ドルの利払いが控えている。合計で1億3100万ドルだ。現状では支払い不可能であろう。その際の反動は大きいに違いない。

 


(4)「仮に恒大集団が経営破綻すれば、取引が深い下請け業者の業績や、物件を購入していた消費者の家計資産を圧迫する。
恒大集団向けの融資が焦げ付いた金融機関や、同社債の保有が多いとされる米欧投資家が損失を補塡するために他の資産を投げ売りし、グローバル金融市場に悪影響が及ぶ可能性が高まってくるそんな不安を反映してか、市場参加者のリスク回避はほかの市場にも広がっている。20日は中国本土や台湾、韓国が休場だったが、東南アジアなど中国と関係が深く経済基盤の相対的に弱い国の株価がつれ安を演じた。商品市況の悪化を警戒する声も出ており、外国為替市場では新興国通貨とともに資源産出国オーストラリア(豪)ドルなどに売りが膨らんだ」

 

恒大集団の問題は、グローバル市場への悪影響を広げ、中国経済の信頼を一挙に引下げるであろう。これで、中国経済が米国を追い抜くという、これまで流布されてきた「寝言」は、全て消え去るに違いない。