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中国がTPP加盟を申請したが、前途は多難である。加盟11ヶ国中で、一ヶ国でも反対論が出れば加盟は不可能であるからだ。

 

日本、豪州・メキシコは、いずれも慎重論である。一方、マレーシアとシンガポールは歓迎の立場を明らかにしている。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「メキシコ、中国のTPP加盟に慎重」と題する記事を掲載した。

 

メキシコ経済省は20日、中国による環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請について慎重な姿勢を示した。TPPが「高い基準を順守するすべての国に門戸は開かれている」と指摘した。国有企業への補助などの中国の経済ルールが加盟に課題となることを暗に示唆した形だ。

 


(1)「声明では、「協定の創設国として他の10カ国と共に、中国の加盟申請について迅速にフォローし、関連の活動に加わる」とも言及した。メキシコは2020年7月に発効したUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を通じて、北米で一体となった経済圏を構築している。メキシコの最大の貿易相手は米国で、圧倒的な地位を占めている。米中の摩擦が深まる中では中国のTPP加盟支持を打ち出すことは容易ではない。

 

USMCAは、米国のトランプ政権が、TPPをモデルにしてそれまでのNAFTA(北米自由貿易協定)を改定させたものである。USMCAでは、独裁国との貿易協定を結ぶ場合、脱退しなければならないという「縛り」が入っている。USMCAには、TPP加盟国のカナダも加盟しているので当然、この制約条項に抵触する。よって、メキシコ・カナダは、中国のTPPには反対の意志を示さざるを得ない。

 

(2)「加えてUSMCAでは、非市場経済国との自由貿易協定には、交渉開始の意図を他国に知らせることが定められている。一方で、メキシコにとって中国は、輸入で米国に次ぐ2番目の相手国でもある。新型コロナウイルスへのワクチンの供与を巡って関係が深まってきた事情もある。TPPの交渉官を務めた経験を持つロベルト・サパタ氏は地元紙レフォルマの取材に「メキシコにとって、非常に複雑で敏感な多面的交渉が始まる」と指摘した」

 

米国のトランプ前政権では、中国を通商から排除するという強い意志を示していた。NAFTAをUSMCAへ切り変えさせた目的は、米国がTPPのメリットをカナダとメキシコから得るというものであった。前記二ヶ国は、中国と貿易協定を結ばせないという、かなり米国に有利な条件を付けさせてある。

 

中国は、こういうUSMCAの存在を知っているはず。それにも関わらず、TPP加盟を申請してきたのは、米国との関係を揺さぶるという目的であろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(9月17日付)は、「豪貿易相、中国のTPP加盟に難色『2国間に問題』」と題する記事を掲載した。

 

オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は17日声明を出し、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)加盟申請に関して「最初に加盟交渉を開始するかどうかを決定するが、決定には全加盟国の支持が必要だ」と述べた。

 

(3)「そのうえで、「すでに中国に伝えたが、(豪中の間では)閣僚間で取り組むべき重要な問題がある」と述べ、中国が豪産品に課した高関税などの問題が解決しない限りは、中国の交渉入りを支持しないとの姿勢を示唆した。また、「加盟国は申請国がTPPの高い(自由化の)水準を満たすだけでなく、世界貿易機関(WTO)やすでに参加する既存の貿易協定の規定を順守した実績があると確信したいはずだ」とも述べた」

 

中国は、豪州から痛いところを突かれている。中国は、新型コロナウイルスの発生源に関して独立調査を求めた豪州に反発し、2020年5月以降、豪産大麦やワインに高関税を課したほか、一部の食肉や石炭の輸入も制限している。豪州は大麦とワインの関税を不当として中国をWTOへ提訴しているのだ。中国の身勝手な豪州への経済制裁を棚上げして、「TPP加盟、宜しくネ」とはいかないのだ。ここら当たりが、中国の「戦狼外交」の独り善がりさを示している。

 


下線部は、中国のWTO加盟に当って約束した部分が、未だに不履行である点を責められているのだ。こういう中国が、TPPの規定を守れるかという「皮肉」を浴びせられている。

 

英国は現在、TPPへの加盟申請を終えて審査中である。来年の加盟が認められる方向だ。この英国が、中国加盟に「絶対反対」の意思を示している。その理由は、豪州と同じでWTOの規定すら守らない中国が、TPPの規定を守るはずがないというのである。中国は多分、TPP加盟でもこの手段を使ってくるであろう。「TPP条項を守る」と約束して、守らないというこれまでの常套手段を使う積もりだ。

 

マレーシア政府は、中国のTPPへの加盟申請について「メンバーに迎えることを楽しみにしている」との声明を出し、支持する姿勢を示した。東南アジアの参加国ではシンガポールも歓迎の意向を表明している。東南アジアの参加国ではシンガポールも歓迎の意向を表明している。

 

日本経済新聞の取材にマレーシア貿易産業省が19日、前記のように回答した。同省は16日の中国の加盟正式申請の発表に「非常に元気づけられた」とした上で、加盟に向けた参加国との交渉が早ければ2022年にも始まるとの認識を示した。中国が実際に加盟すれば「両国間の貿易と投資はさらなる高みに到達する」とし、貿易拡大への期待が加盟支持の主な理由だと明らかにした。以上は、『日本経済新聞』(9月21日付)が伝えた。