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中国恒大が、世界の株式市場で「悪玉」扱いされている。デフォルトが目前に来ていると、市場関係者は身構えるからだ。これから、起る問題点を整理しておく。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「よくわかる中国恒大 4つのポイント」と題する記事を掲載した。

 

中国の不動産大手、中国恒大集団の債務問題を世界が注視している。中国発のリスク連鎖を警戒する金融市場の動きは欧米、日本へと波及した。恒大の成り立ちと債務問題、今後の見通しをおさらいする。

 


恒大とは?創業者・許家印氏の政治的背景は?

(1)「中国を代表する不動産開発業者である恒大は1996年、中国南部の広東省広州市で創業した。当初は従業員10人弱の小さな会社だったが、低価格の小型マンションで足場を築き、中国の不動産ブームの波に乗り2000年代に急成長した。2020年12月期の売上高は5072億元(約8兆5000億円)にのぼり、物件販売面積は中国で2位だった。創業者で経営トップである許家印・董事局主席は、1990年代に勤めていた商社で不動産事業の立ち上げに関わり、中所得層向けの住宅物件で大きな成功を収めた。その知見を生かし恒大を設立した後は、物件デザインや資材調達の社内ルールを整備、原価を抑制する戦略で会社を急成長させた」

 

商社的なセンスが、経営規模を急激に拡大させた。

 

(2)「中国調査会社の胡潤研究院がまとめる中国富豪番付では、2017年に許氏の資産額が2900億元(約5兆円)で首位になったこともある。18年には改革開放政策40周年に絡んで中国共産党などから経済成長への貢献が大きい「傑出した」民営企業家100人の1人にも選ばれた。経済界での存在感を増した許氏は中国の政策助言機関、全国政治協商会議の常務委員に名を連ねるようになり、政治にも接近した。習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げる「脱貧困」などに積極的に呼応、地方の産業振興や教育支援へ資金を投じて有力政治家とのコネクションを築いてきた」

 

かつては、模範的な企業家として注目された。

 


(3)「不動産業で大きな成功を収めた許氏は様々な領域へと進出する。その代表格がスポーツで、保有するサッカークラブ「広州FC(旧・広州恒大)」はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を2度制覇、名門となった。またバレーボールなどの振興にも力を入れた。ビジネスではテーマパーク事業、電気自動車(EV)開発などにも手を広げた。一方で借り入れや社債発行は膨らみ、グループの財務は安定性を失った」

 

急激な経営多角化が、体力を消耗させた。経営の焦りが、そうさせたのであろう。

 

経営難に陥った理由は?

(4)潮目の変化は20年夏に訪れた。中国人民銀行(中央銀行)は大手不動産会社に対して負債比率など守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けた。「総資産に対する負債(前受け金を除く)の比率が70%以下」「自己資本に対する負債比率が100%以下」「短期負債を上回る現金を保有していること」の項目だ。不動産会社は守れなかった指針の数に応じて銀行からの借り入れ規模などが制限される。重い債務を抱える恒大は人民銀の示す指針を守るべく財務改善に動き始めた。方策のひとつが値引きによるマンションの販売加速だ。今年7月、同社の物件販売単価は1平方メートルあたり8055元と前年同月比14%下落した。現金の捻出により一部の負債などは圧縮できたが、それでも改善の足取りは鈍い。不動産市場調査を手がける貝殻研究院によると216月末時点で、恒大は「3つのレッドライン」のうち2つを守れないままだ」

 

政府の不動産バブル抑制の動きを察知できなかった。リスク意識が欠如していたのだろう。

 


(5)「恒大と取引する工事会社や資材会社からは、恒大の代金支払いが滞っているとの声が上がるようになった。本来デベロッパーは絶対的存在で、代金支払いなどで問題が生じても下請け側からは文句が言いにくい。恒大の財務不安が力関係を変化させているようにみえる。ある地方銀行は恒大の預金凍結に走った。融資を巡るトラブルがあったとみられる」

 

資金管理が上手くいかなかった。昔でいえば、「バジェタリー・コントロール」ができなかったのだろう。「行け行けドンドン」という計画のなさが招いた経営蹉跌だ。

 

なぜ世界の株式市場は大きく反応したのか?

(6)「限界まで膨張した債務の巨額さと、200億ドル(約2兆2000億円)に上る外債を通じた海外投資家へのインパクト、そして習指導部の政治姿勢を改めて占う試金石になるとみられるためだ」

 

巨額の外債を発行している点が、政府の間接的な責任に帰着する。政府が、外債発行を薦めたからだ。

 


(7)「取引先への未払い分などを含めた恒大の負債総額は、1兆9665億元(約33兆4000億円)と中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当し、処理に失敗すれば中国の金融システムを揺るがしかねない。恒大は9月下旬以降、過去に発行した社債の利払い日が集中しており、債務不履行が起きるか市場が注意を寄せている。資金繰りが一段と悪化すれば、建設中のマンションプロジェクトが頓挫し、既に購入した消費者に引き渡されない恐れもある。中国では財産の大半を住宅につぎ込む人が多く、恒大問題へは市場関係者以外も大きな関心を持っている」

 

連鎖倒産を起させず、恒大を整理することである。既に代金を支払った消費者には、政府が物件を引き渡す保証をすることだ。恒大が、過去に支払った法人税を「基金」にして行えばよい。超法規的なことでも行い、不安心理を鎮める工夫が必要。そうでなければ、取り返しのつかない騒ぎになろう。

 


恒大は倒産してしまうのか?

(8)「資金繰りに窮する恒大、今後自力での経営立て直しが不可能となれば「破産重整」と呼ぶ再建型の倒産手続きがひとつの選択肢になる。債権者の同意の下で債務をカットし、営業を継続しながら再建を目指す法的整理の枠組みだ。直近のケースでは航空事業を中心とする複合企業、海航集団(HNAグループ)が地方政府の管理を受けながら今年2月以降に破産重整のプロセスに入った。債権者や裁判所と協議しながら更生計画を練っている。現在は、会社更生のカギとなる再建スポンサーを探している最中だ」

 

不動産バブルの破綻である。再建スポンサーが、見つかるだろうか。この後に起こる住宅価格の暴落を考えれば、安易な期待をすべきでない。