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中国は先に、TPP(環太平洋経済連携協定)へ正式加盟申請した。国内の国有企業中心の産業体制のままで、「TPP加盟」とは正気の沙汰ではない。私は、一昨日発行した「メルマガ294号」で、中国の舞台裏を想像して、中国国内の経済派をなだめる「ジェスチャー」に過ぎないとの結論を出した。

 

こういう拙論と同様の報道が現れたので紹介する。中国経済が、厳しい局面に立たされていることで、舞台効果を狙った「目眩まし」を放り込んだと見られるのである。悪質な行為である。

 

『日本経済新聞 電子版』(9月22日付)は、「侮れない中国TPP『300日計画』、習主席と李首相も連携」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。

 


中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。一見、唐突にみえる習近平政権の行動だが、その裏には300日にわたる周到な計画と準備があった。日本政府には米国不在となったTPPを苦労してまとめあげた成功体験がある。しかし、中国の戦略的な動きを十分、把握したうえで、先回りできなければ、かつての大きな功績も雲散霧消しかねない。

 

(1)「国家主席の習近平が20年11月20日、オンライン開催だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「TPP11参加を積極的に考える」と公式に表明する直前、正式申請に向けた「300日計画」が始動していたことになる。ここにはTPP加盟に意欲をみせる台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)民主進歩党政権をけん制する思惑もあった。李は、習発言に先立つ20年5月の段階でTPP参加に「中国は前向きで、開放的な態度だ」と話していた。習と李をつなぐキーマンは、習が信頼する副首相の劉鶴(リュウ・ハァ)と、商務省の次官で国際貿易交渉代表の兪建華である。司令塔は国務院(政府)に置かれ、重要事項を判断する際は必ず会議が開かれた」

 


中国は、TPP加盟申請を単なる「儀式」として行ったことが分かる。それに伴う、制度改革もなしに、TPP申請するとは加盟国を冒涜した行為である。受理せず、突き返すべき代物である。その策略計画が、「300日計画」と呼ばれたもので始まっていたという。

 

(2)「300日計画」の最初の標的はニュージーランド(NZ)だった。同国はTPPに発展した原協定の4当事国(ほかはシンガポール、ブルネイ、チリ)の一つで、現在も大きな役割を担っている。域外国が加盟意思を通知する際の寄託国で、中国が正式な加盟を申請した先もNZだ。21年のTPP委員会の議長国である日本ではないのもポイントだった。中国は何かと関係がギクシャクしていたNZとの意思疎通を重視する方向にカジを切っていた。習によるTPP参加検討の表明から間もない21年1月には、NZ側のメリットが大きい2国間の自由貿易協定の改定に署名した。中国との関係が悪化してゆくオーストラリアとは対照的な対応なのが興味深い」

 

中国は、TPPの環の弱そうなニュージーランドを窓口に選んだという。ニュージーランドは、そういう事情を知らず今年1月、中国と自由貿易協定の改定を行い、手なずけられたのである。

 


(3)「中国は、マレーシアが中国加盟に向けた交渉を支持したように、東南アジアの多くの国は交渉入りに反対しないとみている。驚くのは中国側が「最終的には日本も中国の交渉入りに真っ向から反対できない」と読んでいることだ。中国にとってTPP加盟申請は国際政治・経済戦略上、主導権を確保するための重要な手段である。英国に加盟申請で先を越されたとはいえ、時期の設定は中国の命運に関わる。

 

下線部分で、日本が中国のTPP加入を認めるという前提をしている。これは、驚くべき錯覚である。TPP条項を100%確実に突付ければ、中国の加盟は不可能である。中国は、日本を舐めきっている。ピシャリと叩かねばならないだろう。

 

(4)「ここで問われるのは、習政権として、高いハードルを課すTPPに入るために徹底的な国内改革に踏み切る用意があるかどうか、である。「皆、誤解している。(中国の)国内政治情勢を考えればいま、直ちに真心を持ってTPPに入る気などさらさらない。ギリギリの交渉をする用意もない。そもそも交渉入りさえ全加盟国の同意が必要なのだ。仮に交渉入りしても、肝心な部分はズルズルと引き延ばしになる」。

 

下線部分は、中国の傲慢な姿勢を見せつけている。この状態で、TPPへ加盟することなどできるはずがない。中国の恐ろしさは、中国という国家の存在によって好き勝手なことが可能という錯覚に陥っている点だ。この感覚で、戦争を始められたら大変な事態になる。中国へは、絶対に甘い姿勢を見せず警戒心を解いてはならぬという悲しい現実を忘れてはならない。善意は通じない国である。

 


(5)「中国の「本気度」に疑問を呈する識者の声は、一面の真実を言い当てている。ここ数年、中国ではTPPの方向性とは逆の施策が次々と打ち出された。大きな国有企業同士の合併は典型例だ。民間の大企業には独占禁止などを理由に罰金を科したり、分割を迫ったりしているのに、国有企業への補助金問題には手がついていない」

 

中国の産業政策は、ことごとくTPPとは異なる方向である。この姿勢を堅持したまま、TPPへ加盟するとは言語道断の振る舞いである。

 


(6)「習近平が進める「左旋回」の路線、統制強化を支える有力なグループは左派だ。過去、彼らは一貫してTPPに反対してきた。国有企業への補助規制といったTPPの規則は「主権の侵害につながる」という理屈だった。対外強硬策が特徴の「戦狼外交」を支持してきた中国内の学者らもTPPを「新型資本帝国統治」につながると批判してきた経緯がある。政治情勢を考えれば、いま中国がTPPに名乗りを上げるのはある種の自己矛盾だ。一方、別の関係者は「(TPP加盟申請は)中国はあくまで『市場経済国家』としてとどまる、という(国の)内外へのアピールでもある」と指摘する。急激に社会主義へ傾斜する中国に疑問の目が向けられているのを強く意識した防御的な行動でもあるというのだ」

 

私はこれまで、習近平氏が中国国内の経済派へ配慮して、TPP加盟を言い出したに過ぎないと見てきた。このパラグラフの下線では、同様の見方をしている。こういうインチキなTPP申入れごとに、ニュージーランドは利用されたのだ。気の毒な、「メッセンジャー」である。

 

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2021-09-20

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