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土地問題で苦しむ4千年

恒大問題処理に2つの道

これから胸突き八丁突入

パンデミック後遺症襲う

 

中国は、これまで不動産バブルの「不倒記録」を続けてきた。それもついに、恒大集団の債務返済が不可能になって、幕を閉じようとしている。厳密に言えば、すでに終焉を迎えた。7~8月の住宅販売額が、前年比で2桁の減少になっていたからだ。

 

中国共産党は土地を公有制にし、地価決定権を握っている。地方政府は、民間への土地利用権の売却代金を有力財源にしているのだ。不動産バブルが、「長期不倒記録」を続けられた裏には、こうした地方政府の財政事情に大きな影響を受けてきた。中国財政には、有力財源が存在しない宿命を負っている。この点については、後で取り上げたい。

 


不動産バブルという公営賭博の「勧進元」は、地方政府であった。まさに「公営賭博」ゆえに、10年以上も続いた理由である。これが、中国のGDPを無理矢理に押し上げ、米国経済と覇権を争うという錯覚まで抱かせたのである。その意味では、日本経済の方が期間は短かったが、同じ道を歩んできた。最後は、同様に「バブル破裂」で終焉をみることになった。

 

土地問題で苦しむ4千年

中国4000年の歴史において、土地問題が繰り返し害毒を流してきた。私有化による土地集積の失敗を是正すべく公有化する。これが、農地の荒廃を招いて経済を疲弊させる。こういう循環を重ねてきたのである。そこで、辛亥革命(1911年)を成功させた孫文は、土地問題について重要な提案をした。土地私有制を基本とし、値上り分は全て税金で吸い上げるというもの。これは、土地の私有制と公有制を合体したアイデアである。孫文は、土地問題について、ここまで神経を使っていたのである。

 


毛沢東は、この孫文構想を取り入れずに土地公有制にした。鄧小平時代になって、個人に土地利用権を売買するという便法で事実上、私有制を認める形としたが、これも今回のような問題を引き起すことになった。土地公有制によって、土地を「打ち出の小槌」に使って住宅価格を引き上げさせたからだ。

 

現在の中国では、土地公有制が基本にある以上、不動産税も相続税も創設できないという「理屈」によって、富裕層をますます富ます結果になった。富の偏在が起った裏には、「土地公有制」が潜んでいることに気付くことだ。歴史的な土地保有問題点が、今回も浮き彫りになっている。結局は、孫文構想が正しかったのである。

 

習近平氏は、富の偏在が「中国式社会主義」に不似合いと判断している以上、不動産バブルは消滅の運命にある。中国恒大集団が、店仕舞いを迫られていることは疑いない。もはや、現状のままで生き残れないのだ。となると、どのような形で終息させるのか、が問われる。

 


恒大問題処理に2つの道

今後の辿るべき道として、次のようなものが話題に上がっている。

 

1)リーマン・ショック当時(2008年)に指摘されたミンスキー・モーメントか。

2)ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)的な局面か。

 

この二案を提示しているのは、ジョン・オーサーズ氏(ブルームバーグ・コラムニスト。元フィナンシャル・タイムズ記者を29年間勤めたベテラン)である。『ブルームバーグ』(9月21日付)から引用した。

 

それぞれの理由を見ると、次のようなものだ。

 

1)経済学者ハイマン・ミンスキーの名が付けられた、「ミンスキー・モーメント」は長期間続いた投機の結果として信用が失われる現象である。2008年のリーマン・ショックの破綻が最も有名な例とされている。この「ミンスキー・モーメント」になると、信用機構は根本から揺らぐことになる。バブルを引き起した企業を罰するには良いとしても、無関係なところまで巻き込む点で「劇薬」になる。

 

中国政府は、恒大集団に対して最終的な方針を示さず、銀行には金融取引期限の延長を求めているだけである。中国の名目GDPの約2%にも相当する債務総額(約3000億ドル以上=約33兆円以上)を抱える恒大集団には、自力解決は不可能になっている。「大きすぎて潰せない」という声も聞えてくるほど、こうなると「ミンスキー・モーメント」的な対応は不可能である。

 


2)LTCMは、1998年に米国で破綻したヘッジファンドである。長期にわたる過剰投機の結果、突然信用が収縮して破綻した。LTCM破綻後の米連邦準備制度理事会(FRB)は、債権者を集めて救済措置をまとめ上げ、政策金利の引き下げに踏み切るという「温情」溢れる救済策となった。これが、モラル・ハザードを生んだという批判から、2008年のリーマン・ショックでは一切の救済策を講じない荒療治へ走った。これもまた後刻、大きな批判を受けることになった。

左前になっている中国経済が、1)のミンスキー・モーメント型の突き放し策は、波紋が大きすぎて採用できないだろう。となれば、自ずと2)のLTCM型の救済策を採用するであろうという結論になるはずだ。ジョン・オーサーズ氏は、中国恒大が本拠を置く広東省の規制当局が、会計や法律の専門家を派遣した中に、事業再編を専門とする法律事務所キング&ウッド・マレソンズが含まれると指摘する。恒大集団は、事業再編という大手術が行われる見通しである。(つづく)