a0001_000268_m
   

台湾が9月22日、TPP(環太平洋経済連携協定)へ正式な加盟申込みを行った。中国は、例によって猛反発している。理由は、中国大陸と台湾は1つの国に属するという「一つの中国論」である。この結果、中国外務省の趙立堅副報道局長は9月23日、台湾のTPPへの加入申請について「あらゆる公的な協定や組織への加入に断固反対する」と表明した。

 

中国が、金科玉条にする「一つの中国論」には、綻びが始まっている。前述の「あらゆる公的な協定や組織への加入に断固反対する」という中国の姿勢が、台湾をWHO(世界保健機関)からも排除している理由だ。台湾には、2360万人(2020年)が、日々の自由で民主的な生活を営んでいる。中国大陸の人権弾圧政府の習政権と比較して、はるかに高等な政治体制下にあるのだ。

 


人権弾圧の習政権が、
「一つの中国論」という過去の約束事を盾にとって、民主的な台湾政治に干渉することは許されない。こういう見方が現在、EU(欧州連合)に高まっている。台湾再評価による国際政治の流れが変って来つつあることに注目すべきである。東欧のリトアニアは、台湾との外交復活をめぐって中国と対立している。リトアニアは、中国の圧力に怯まずに計画通りに当初方針を進めている。「一つの中国論」は、形骸化しているのだ。

 

『大紀元』(9月22日付)は、「米英豪やEU、台湾めぐる言及増加 『インド太平洋で重要な役割』」と題する記事を掲載した。

 

台湾は米英豪の新枠組み「AUKUS」を歓迎し、今後も米国および欧州連合(EU)との外交関係を深めていくことを望んでいると表明した。この数か月で、3カ国やEUが台湾の安全保障や貿易についての言及が増えている。

 


(1)「米英豪は15日、インド太平洋の安定に向けた新たな安全保障の枠組みを発表。急速に軍事力を拡大する中国を念頭に、米英が豪の原子力潜水艦導入を支援すると表明した。豪は、原子力潜水艦には通常兵器のみを搭載し、核兵器はないとしている。AUKUSの誕生について、台湾外務報道官は、台湾は長らく3カ国とインド太平洋地域の平和と安定に関する価値観を共有していると強調した」

 

米英豪が、「AUKUS」(オーカス)を結成して、豪海軍に原子力潜水艦建艦技術を供与することになった。これは、中国にとって最大の軍事的な打撃になる。豪州海軍は、10年間で8隻の原潜を建艦し南シナ海の深海に潜ませるのだ。中国が、台湾侵攻を始めたらすぐに軍事対応するという布陣である。日米豪印の「クアッド」4ヶ国が、共同作戦に参加するであろう。中国にとっては、不利な条件が生まれてきた。

 

(2)「台湾民進党の王定宇議員は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、AUKUSの動きは南シナ海における中国の軍事拡張を封じ込めや、台湾への武力侵攻といった脅威を想定しているだろうと語った。米国務省で開催された米豪外務・防衛閣僚協議(米豪2プラス2)では、両政府は、インド太平洋地域における台湾の重要な役割を強調し、国際機関への参加を支持すると述べた」

 

台湾防衛で、周辺国が台湾当事国を含めずに議論するのは、台湾が地政学上において重要な意味を持つからだ。つまり、民主主義国家の安保体制に重要な影響を与えるのである。それゆえ、「台湾防衛の勝手連」という存在になっている。

 

(3)「EUが4月に発表したインド太平洋地域戦略文書では、EUがインド太平洋地域のパートナーと協力して貿易関係の強化と多様化を図り、半導体のサプライチェーン強化策として日本と韓国、台湾と協力していくと記している。欧州議会外交委員会は9月1日、EUで初となる台湾との政治関係に関する報告書を圧倒的多数(全70票のうち60票賛成)で採択。投資協定や、台湾にあるEU代表事務所に「台湾」の名前をつけることなどを推奨した。この文書には、中国による台湾への圧力について批判する文言も加えている」

 

下線部は、重要な報告書である。台湾との投資協定や、台湾にあるEU代表事務所に「台湾」の名前をつけることなどを推奨している。これまで、中国に対して「一つの中国論」に縛られて身動きできずにきた。今後は、これに縛られず自由に台湾と交流するとしている。このEU議会外交委員会の報告書は、「中国敗北・台湾勝利」を決定的にしている。時代は、大きく変わろうとしているのだ。

 


(4)「EUはさらに、中国の「著しい軍備拡大」と「軍事力の誇示」、そして南シナ海や東シナ海、台湾海峡などの緊張の高まりは、欧州の安全と繁栄に直接的な影響を及ぼす恐れがあると指摘した。安全保障において、EUは海賊対策と航行の自由を守るために、多国間演習やインド太平洋のパートナーとの共同演習や寄港を増やし、この地域における海軍外交を強化していくとした」

 

このパラグラフは、NATO(北大西洋条約機構)が将来、アジア諸国と軍事連携する可能性を示唆している。中国の横暴は、世界が纏まって止めるしかないのだ。