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中国は、米英豪3ヶ国による「AUKUS戦略」で、米英が豪州に原潜技術を供与すると発表した翌日深夜、TPP(環太平洋経済連携協定)への加盟を申入れた。中国としては、豪州が原潜を建艦するショックの大きさの余りに、TPPへ加盟申請して米国を困らせようという意図である。

 

中国自身、TPP加盟条件を全く満たしていないにもかかわらず、「やけのやんぱち」という行動に出て来た。台湾も中国申請を追いかけるような形でTPPへ加盟申請した。この中台の「加盟競争」でどちらが最後に勝利を握るか。

 


『大紀元』(9月24日付)は、「台湾と中国のTPP加盟申請、それぞれの勝算は」と題する記事を掲載した。筆者は、王赫氏である。

 

台湾は9月22日、TPPへの加入を正式に申請したと発表した。これに先立ち、中国は16日に同協定への加盟を正式に申請したばかりだ。今回、中台双方がTPPへの加盟を申請したことで、加盟に向けた支持の獲得をめぐり、双方の競争が激しくなる可能性がある。

 

(1)「長年にわたり、中国は自由貿易地域戦略を推進し、その名を借りて台湾を締め出してきた。台湾の二国間または多国間自由貿易協定(FTA)への参加を全力で阻止する中国の目的は、台湾当局に「92年コンセンサス(九二共識)」を認めさせることだ。当然ながら、今回の台湾TPP加盟への申請に対しても「一つの中国」原則に基づき、「公的な性格を持つ協定や組織への台湾参加に断固反対する」との姿勢を示している。

 

中国が、台湾の加盟阻止の切り札にするのは「一つの中国論」である。だが、この点はクリアできる。台湾が、「中華民国」の名義で申請しているのでなく、「台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税区」の名義で申請していることだ。WTOも、この「関税区」の資格で加盟した。

 

(2)「中国の加入申請の障害は2つある。1つは、TPPが目下最高水準のFTAであるため、加盟のハードルが非常に高いことだ。TPPが中国のために基準を下げる可能性は低く、中国がその基準に従って是正するとなれば、それは世界貿易機関(WTO)加盟時と同様の巨大なプロジェクトとなる。そのうえ、出来もしない約束をするトリックはすでに看破されているため、同じトリックを使うのはもはや難しい」

 

中国は、「口約束」が得意である。IMF(国際通貨基金)で人民元をSDRに昇格させる際に「人民元の自由変動相場制移行・資本取引自由化の早期実現」を約束したがそのまま。WTO加盟の際も、補助金制度の撤廃を約束したが空約束に終わっている。罰則規定がないので、どうにもならないのだ。TPP加盟では、空約束の厳禁でまず制度改革を実行させることだ。三度も騙されてはならない。

 


(3)「もう1つの障害は、TPPへの加盟には全加盟国の同意が必要となるという点だ。カナダやオーストラリア、日本などの既存の加盟国と中国の関係は悪化しているため、中国が関係を緩和させようとすれば、その「戦狼外交」を引っ込ませなければならない。しかし、「新時代の到来」「強国になった」などと吹聴する中国にとっては、それは容易なことではない」

 

中国の戦狼外交は、先進国を等しく怒らせている。日本・カナダ・豪州は怒り心頭である。意地でも加盟させない、という気持ちにさせた中国の責任は重い。

 

(4)「米経済通信社『ブルームバーグ』は最近、中国のTPP参加に関する今後のシナリオとして、4つの可能性が想定できると分析した。

1)TPP加盟国による中国加入の拒否
2)加入プロセスが開始されても、23年で交渉が行き詰まる
3)中国が基準を下げるよう他国を説得
4)中国が(国内経済の)構造改革を行った後に加入

現状では、2番目のシナリオになる可能性が最も高いと考えられる」

 


1)は、角が立つので先ず2)で交渉開始して制度改正を迫る。中国は例によって、なんだかんだと理屈をつけても、条件を整備して「また、いらっしゃい」で終わらせればいいだろう。それだけのことである。加盟資格のない中国へ気を配る必要はない。

 

(5)「台湾にとって不利な点は、台湾国内の政治紛争である。TPP加入にあたってはいくつかの譲歩(農業や自動車産業の関税引き下げ、日本の東京電力福島第一原発事故に伴う5県産の食品の受け入れなど)が必要となるため、政治的困難を克服しなければならない。もう1つの不利な点は、中国からの干渉である。TPPの11加盟国はいずれも中国と外交関係を樹立している。中国はこの政治的優位性と自国の経済上での強みを利用して台湾の加盟阻止に乗り出し、さらなる圧力をかけるだろう」

 

台湾は、国内の反対派をどう説得するかである。加盟条件を全て満たせば、それで済むことだ。中国の主張する「一つの中国論」は、台湾加盟阻止の理由にはならない。WTO加盟で証明済みである。

 


(6)「台湾加盟における有利・不利の条件を合わせて考えても、筆者は台湾の加盟の可能性は残されていると考えている。しかし、それを実現するには、台湾当局と国民が以下の方向で努力しなければならない。

1)国内が一致団結して共通の認識を高め、中国による分裂、扇動、嫌がらせなどに抵抗すること。

2)TPP加盟国とのコミュニケーションを強化し、共通の価値観に基づいて日本、オーストラリア、英国、米国、欧州などとさらなる協議を進めて国際情勢を追い風にしていくこと。要するに、「天は自ら助くる者を助く」の一言に尽きる」

 

米国が、TPPへ復帰すれば台湾加盟はスムースに行くはず。米国が、インド太平洋戦略の重要性という認識からTPPへ復帰すれば、問題は全て氷解するのだ。そういう大乗的な見地に立つべきである。