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中国外交が、泥臭い理由は歴史的に外国と交流した経験が少ないことだ。秦の始皇帝以来、その外交術は「合従連衡」である。相手の「合従」(同盟)を壊させ、「連衡」(一対一)の関係に持込んで征服する、という荒っぽいものである。だが、この方式は、中国を自然消滅させる危険性を持っている。中国が、巨大化すればするほど、周辺国へ威圧的に振る舞い、それがもたらす反発によって、中国の力を弱めるというものだ。

 

世界の戦略家は、すでに中国の抱える本質的な弱体外交へはまり込んでいると指摘する。中国の「戦狼外交」に対する反発が、その第一歩というのである。習近平さん、調子に乗っていると、いずれ「帝王の座」を滑り落ちるであろう。

 


『大紀元』(9月27日付)は、「仏報告書『中共の最大の敵は中共自身』 世界中で影響力強める行動が裏目に」と題する記事を掲載した。

 

仏国防省傘下のシンクタンクである軍事学校戦略研究所(IRSEM)は、最新報告書「中国の影響力作戦」の中で、中国共産党(以下、中共)はその権威主義モデルを自由世界に押し付けようとしているが、その最大の敵は中共自身であると述べている。

 

(1)「650ページに及ぶこの報告書によると、中国政府は近年、積極的な外交行動により孤立を深めている。これらの行動は、これまで友好関係にあった国々からも反発を招いているという。中国の欧米との関係は2017年頃から大きく悪化している。その代表的な例がスウェーデンである。中共が中国を支配するようになってから、スウェーデンは西側諸国として初めて中共政権と外交関係を結んだ。それによると、もともとスウェーデン人は、中国に対して比較的良いイメージを持っていたが、2017年に桂従友氏が中国の駐スウェーデン大使になってから状況が一変した」

 

スウェーデンは2010年、中国人の劉暁波(りゅう・ぎょう)氏へノーベル平和賞を授賞したことがきっかけで、中国が報復するようになった。このこと自体、中国の偏向を物語っている。旧ソ連ですら行わなかったこと。中国外交の異常さを物語っている。桂従友氏は、駐スウェーデン中国大使に就任以来、スウェーデンをあからさまに侮辱するという異例の振る舞いをした。

 

(2)「桂氏は、地元メディアの中国に対する批判的な報道を非難したり、ストックホルムのホテルに台湾の国慶節の祝賀会を中止させたりするなど、挑発的な行動をとり続けた。スウェーデン外務省は2017以降、少なくとも40回にわたって、桂氏を抗議のために召喚している。国会議員は2度にわたって彼の国外退去を要求した。中国の評判も下がっている。世論調査によると、スウェーデン人の80%が中国に対して否定的な見方をしているが、4年前は半分以下だった」

 

桂氏は、大使としての任務を放棄して、スウェーデンへ喧嘩を売った人物である。戦狼外交を地で行く典型例である。こういう破天荒な人物を大使へ任命している中国政府の責任も問われる。「外交官特権」を利用した、やりたい放題な人物のようである。

 


3)「輸出収益の3分の1近くを対中貿易が占める豪州でも、中共政権に対する国民の感情が変わりつつある。豪州が中共ウイルス(新型コロナウイルス)の発生源について独立した調査を要求したところ、中国政府は同国に報復的な貿易制裁を科した。そのため、学者をはじめとする豪州人は、中国の影響力に対する抵抗感を強めている。2020年6月、豪州は国家安全保障の観点から、外国投資に対する審査を強化する方針を打ち出し、12月9日には外資買収法の改正案が議会を通過した。中国政府が支配・支援している中国企業をターゲットにしていると考えられる」

 

豪州は、敢然として中国へ軍事力で斬り込む姿勢を見せている。米英豪三ヶ国による「AUKUS戦略」で、米英から最新の攻撃型原潜技術を導入して、10年間で8隻の原潜を建艦する。すぐにでも米国から原潜を借用して訓練するという意気込みである。南シナ海の奥深くに潜み、中国海軍の動向を探るのだ。

 


(4)「同様のシナリオは世界各地で展開されている。アフリカは、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に反発し、このインフラ建設プロジェクトが天然資源の枯渇、土地の汚染、労働者の虐待につながると批判している。中共政権は、香港の自由を抑圧して英国を怒らせた。新疆ウイグル自治区での人権侵害は、欧米における中国政府のイメージをさらに悪化させた」

 

中国は、欧米の価値観と全く異なる。権力維持のためには、何を行っても良いという「無頼精神」である。これが、「戦狼外交」と表裏一体になっている。およそ、自己反省ということと無縁であり、最後は破滅してみて初めて目が覚める民族である。

 

実に危険な存在である。「一帯一路」も全て、中国の利益確保が目的である。そもそもの始まりは、国内の余剰な鉄鋼やセメントのはけ口探しであった。自国権益確保が第一なのだ。このことに、進出先が気付いて、遅まきながら自己防衛を始めているところだ。ともかく、善意を装って行う悪意の塊である。

 


(5)「今年2月に開催された中国と中東欧17カ国首脳会議「17+1」では、欧州側の6カ国の首脳が欠席し、高官を派遣するにとどまったことで、「北京と関わりたくない姿勢」を示唆した。これは、中国政府のイメージダウンの表れとみられている。5月にリトアニアが脱退したことで、苦境に立たされているこの枠組みはさらに縮小した。報告書は、近年の中国政府の「逆効果の行動」について、「中国の人気度を低下させ、自国民を含めて党の影響力を間接的に弱める可能性がある」「中国(中国共産党)の最大の敵は自分自身である」と指摘している」

 

中国と中東欧17カ国首脳会議「17+1」は、中国の経済援助がゼロゆえに、脱退国が増える方向だ。リトアニアがすでに脱退し、台湾との外交関係強化に動いている。チェコもその動きである。台湾への親近感を見せる中東欧国が増える気配を見せている。