a1320_000159_m
   


チャイナ後退の影響が大

韓国襲う「灰色のサイ」

3度目の金融危機防止策

抑え込む家計債務の急増

 

韓国は、平静を装っているが大きな時限爆弾を抱えている。中国経済が、不動産企業2位の中国恒大の経営不振によって、不動産バブル破綻の余波を大きく浴びることだ。韓国の輸出入先の1位が中国である。これは、韓国経済を揺さぶるに十分大きな材料である。

 

これだけでない。韓国国内では、文政権の不動産対策が失敗して住宅価格の暴騰を生んでいる。これに伴い、家計債務が急増しているのだ。ここに、過去の「金融危機」の悪夢がよみがえってくる。輸出危機→金利引上げ→家計破綻→ウォン相場急落→経済危機の勃発である。

 


この一連の危機連鎖が、過去に起こっている。しかも二度までも、だ。1997年と2008年である。この2回の経済危機では、日本が韓国経済の救済で陰に陽に海外へ働きかけた。だが、次に金融危機が起るとしても、日本はもはや傍観者である。「お気の毒です。早く正常化するのを祈っています」しか言えないのだ。日韓通貨スワップ協定も自然失効したままである。韓国は、日本へ復活を働きかけてくるが、日本は無言を貫いている。

 

韓国は、やりたい放題の反日をやりながら、困った時だけ「助けてくれ」では、筋が通らないのだ。これが、日本側の本音に違いない。日本は、もはや韓国経済がどのようなことになろうと一切、関わらないと決め込んでいる。日本を心底から怒らせた結果である。

 


日本では、岸田政権が誕生する。文政権支持の韓国紙『ハンギョレ新聞』(9月30日付社説)は、「岸田次期首相は、根本から右派である安倍前首相と異なり、周辺国との関係を比較的重視する党内『リベラル』(自由主義)だと評価されている」と淡い期待を寄せている。韓国の過去の行状が改まらない限り、韓国の期待は実現しないだろう。

 

チャイナ後退の影響が大

中国は、「共同富裕論」に名を借りて、これまでの経済的な矛楯を隠蔽する政策に転換した。具体的には、不動産バブルによって押し上げてきた経済成長路線を大転換させる。それによって、二酸化炭素排出の削減に向けて動き出そうとしている。そう言っても、2030年まで二酸化炭素の排出量は減らずに増え続けるのだ。ただ、GDP単位当たりの二酸化炭素排出量を減らす。これだけでも、中国経済には「死の苦しみ」なのだ。

 


中国の二酸化炭素排出で、筆頭産業は不動産開発関連産業とされている。鉄鋼・セメント・アルミニュームという、エネルギー多消費産業がズラリと並ぶ。これら三つの産業の二酸化炭素排出量を抑制するには、不動産バブルの沈静化しかない。その意味で、不動産バブル鎮火と二酸化炭素排出抑制は、ピタリと重なり合うのだ。

 

不動産開発産業は、鉄鋼・セメント・アルミニュームなどの関連産業を含めれば、中国GDPの約25%を占めるという。このウエイトが下がれば、中国経済に与える影響は大きい。その余波が、対中国輸出で1位を占める韓国にどう響くか。中国GDPが1%ポイント下落すれば、韓国GDPは0.5%ポイントの低下になると試算されている。韓国政府が、中国政府の外交的な無理難題をごもっとも聞いている裏には、こういう事情が控えていた。

 

韓国統計庁が、発表した8月の産業活動動向は、芳しいものでなかった。それによると、全産業生産は前月比0.2%減、消費動向を示す小売売上高は同0.8%減、設備投資は同5.1%減と落込んでいる。3指標が、いずれも減少するのは5月以来3カ月ぶりのことである。このデータを見れば、韓国政府も身震いして当然である。「何かが、襲ってくる」という予感を持つはずだ。

 

韓国襲う「灰色のサイ」

主要経済国に広がるサプライチェーン(供給網)の混乱が、スタグフレーション(景気停滞とインフレの同時進行)への警戒感を強めさせている。今、エネルギー価格が急騰するなかで、各国の中央銀行はインフレ長期化を防ぐために利上げへ動き始めている。経済成長率の減速懸念が広がってきたのだ。これは、輸出依存度の高い(対GDP比32.94%=2020年)韓国経済にとって直撃弾になる。「警戒警報発令」だ。中国経済の不調と合せて、危険な兆候である。

 

韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相は9月30日、政府のマクロ経済金融会議で「見逃しやすい『灰色のサイ』を確実に取り除く必要がある」と述べるに至った。「灰色のサイ」とは、次のような意味に使われている。巨体だが敏捷で鋭い角を持つ灰色のサイは、危険な動物であることを誰も知っている。それを放置していると、経済危機に直面するという意味である。

 


この「灰色のサイ」なる用語が、韓国のマクロ経済金融会議に登場した意味を軽視してはならない。韓国には、すでにそれを彷彿とさせる要因が存在するからだ。国会予算政策処が、9月29日に発表した報告書で、次の要因を指摘している。

 

1)米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小で、韓国が金利引き上げ影響を受けやすい。

2)韓国総合株価指数は、2020年2月~21年8月までに61%上昇した。

3)韓国住宅価格指数は、同期間に12%上昇した。

 

韓国では、家計が借金して不動産投資や株式投資をした結果、資産バブルと金融債務増大のアンバランス状況が深刻化している。この状態で、FRBがテーパリング(量的緩和縮小)に踏み切れば、ウォン相場下落は不可避である。すでに、ウォンは「危機ライン」とされる1ドル=1200ウォンへ接近する1188ウォン(10月1日終値)となった。

(つづく)