ムシトリナデシコ
   

中国は、地方政府の財源不足に対して、企業に「強制寄付金」を求めるという前代未聞のことを始めている。普通は、増税や国債発行によって資金調達するもの。企業への寄付金を強制するとは、よほど資金に窮しているのであろう。国家の体面を汚すこと、これ以上の話はあるまい。それだけではない。外資系企業にも「強制寄付金」を始めるのでないかと懸念され始めている。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月11日付)は、「中国、新しい分配政策の危うさ 『拠出要請』外資にも?」にもと題する記事を掲載した。

 

中国は、成長重視から分配重視の「共同富裕」を掲げ、企業などが多額の資金を拠出する新たな分配政策を導入した。「三次分配」といわれるものだ。ちなみに、「一次分配」は、市場による富の分配である。「二次分配」とは、政府による税制に基づく分配である。

 


(1)「IT(情報技術)大手のアリババグループは93日、共同富裕関連の取り組みに1000億元(約1兆7000億円)を投資すると発表した。中国国内で開発の遅れた地域のデジタル化や、小規模事業者の成長、農業分野の産業発展、社会的な弱者へのサービス強化など10項目にわたる分野を支援する。2025年までにこの取り組みを実現するため、アリババ助力共同富裕工作小組(共同富裕推進業務委員会)を設立するとした」

 

アリババは、政府からアントンの株式公開をめぐって大きな圧力をかけられたので、1000億元もの寄付をすることになった。

 

(2)「同じくIT大手、騰訊控股(テンセント)も8月に500億元を拠出し、共同富裕特別計画を実施すると発表。農村振興や低所得者の収入増、末端医療の支援などが目的だ。テンセントは4月にも持続可能な社会価値の革新プロジェクトに500億元を拠出しているが、こちらは温暖化ガスの排出削減、食料・エネルギー・水の供給の整備などが主目的だ。本業との関連の薄い事業に、合わせて1000億元を投じることになる」

 


テンセントも後難を恐れ、1000億元の寄付を申し出た。寄付は、あくまでも寄付であって永続性がない。今後も続くはずである地方政府の財源不足補填策が、寄付金頼りとは余りにも無責任である。恒久財源を作らなければならない。不動産バブル沈静化で、国有地の

売却額が低下する結果だ。

 

(3)「中国のIT企業が相次いで共同富裕関連の事業に資金を投じているのは、8月中旬に開かれた共産党中央財経委員会で打ち出された「三次分配」という政策に呼応したものだ。富の分配を3つに分類した概念のようだ。一次分配は市場による富の分配を指す。市場による一次分配では富む者がさらに富む傾向があるため、多くの国では政府が税を集め、貧困層に再分配(二次分配)する仕組みがとられる。中国はさらに三次分配として、富める企業、団体、個人が自発的に資金を拠出し、弱者を救済する概念を持ち出した」

 

「三次分配」とは、よく考え付いたものだ。その前にやるべきは、現行税制において間接税が6割と圧倒的に多いことが問題だ。直接税を4割に低めているのは、「金持ち優遇」(不動産税・相続税なし)による不公平税制の結果である。中国は、先進国の直間比率と真逆であり、これが所得格差を広げている大きな理由だ。

 

(4)「李克強(リー・クォーチャン)首相は新型コロナの流行が一段落した20年5月に記者会見の場で「中国には6億人の中低所得者がおり、月収は千元前後だ」と指摘し、格差の存在に目を向けてみせた。李首相の言葉は、貧困脱出を成果として強調してきた習主席とは明らかに意味合いの異なる発言だった。月収千元はおおげさかもしれないが、実際に中国で1人当たりの可処分所得の中央値は年2万7540元(20年)にすぎない。これは人口の半分の7億人が年間47万円以下で暮らしていることを意味する」

 

中国人口の半分7億人は、年間47万円以下で暮らしている。ジニ係数が、主要国で最も高い0.46であるのは、その反映である。日米欧の0.3台と対照的である。

 

(5)「李首相の月収千元発言は中国のネットを駆け巡った。このころから習氏も格差の是正を前面に打ち出すようになった。不動産事業への融資規制を本格化し、IT企業の独占事業に厳しい姿勢で臨み始めた。高額報酬で批判を浴びたサッカー選手の年俸には上限を設け、芸能人の脱税を罰した。習指導部は社会の風向きの変化を嗅ぎ取り、国家資本主義の修正に動いたとみられる。習氏は来年の党大会でのトップ再任を目指すにあたり、格差拡大に批判的な党内左派や長老を意識し、足をすくわれないようにと考えたのかもしれない」

 

麗麗しくも共産主義を名乗りながら、ジニ係数が最も高い部類では漫画である。まさに、政策の貧困である。

 


(6)「そして、登場したのが三次分配だ。企業や富者が道徳規範に基づいて自発的に寄付や慈善活動などをする分配と定義されているが、中国で共産党の呼びかけに抵抗するのは難しい。たとえ直接に声をかけられなくとも、有名な大企業は共同富裕事業に多額の資金を拠出せざるを得ない。もっとも、三次分配は道徳というあいまいな基準で定義されており、企業にすればどれだけ拠出すればよいのかわかりにくい。アリババやテンセントのような巨大企業なら巨額の拠出に耐えられるが、中堅企業に拠出を強制すれば成長の芽を摘んでしまいかねない。かといって拒否すれば独禁法などの法規でいつ摘発されるかもわからない」

 

「三次分配」とは、寄付金を合法化して当然視している結果である。これが、中国共産党の政策の限界である。

 

(7)「いまのところ三次分配に参加させられている企業は中国のIT企業が中心であり、外資企業が巨額の資金を拠出させられたというニュースは聞こえてこない。ただ、これについても中国出身のアナリストは「財源が不足すれば外資にも手は伸びかねない」と懸念する」

 

いずれ、外資系企業へも寄付金集めが来る。その前に、中国を脱出することだ。