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習近平氏は、ここを先途と25国有金融機関と恒大集団など民間企業との癒着関係を徹底的に洗い直す作業に着手した。この結果、正常な融資活動が停滞気味になっている。それでなくとも、コロナ禍・停電・不動産バブル処理・共同富裕論と課題山積の中で、さらに手を広げて「習近平帝国」確立に向けて最後の総仕上げに入っている。

 

これが、凶と出るか吉と出るかは分からない。経済の潤滑油である金融に齟齬を来たせば、一挙に歯車が逆回転しかねないほど、危ないところへ差し掛かっているからだ。経済に疎い習氏と取り巻きの民族派には、事態の深刻さを認識していないようだ。

 


米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月12日付)は、「中国金融機関と民間の癒着、習氏が徹底調査へ」と題する記事を掲載した。

 

習近平国家主席は国有の銀行や金融機関が民間の大手企業と築いてきた関係に狙いを定め、経済における資本主義的な力を抑制する取り組みを強化している。

 

昨年末に民間のテクノロジー大手に対する規制強化に着手した習氏が、今度は金融機関に対する徹底的な調査に乗り出そうとしている。9月に発表された調査計画は、ほとんど詳細が明かされていないが、計画を知る関係者によると、国有の銀行や投資ファンド、金融規制当局が民間企業と近づき過ぎていないかに焦点を当てている。特に注目されるのは、不動産大手の中国恒大集団、配車サービス企業の滴滴出行、フィンテック企業のアント・グループなど、中国政府がこのところ標的にしている企業だ。

 

(1)「中国の反腐敗運動の最高機関が主導するこの調査は、中国経済の中核をなす25の金融機関が主な対象となる。10年近く前に権力を握って以来、習氏が疑念の目を向けてきたセクターに対する最大規模の取り組みとなる。来年後半に指導部の交代時期を控える中、中国の経済システムを西欧型の資本主義から脱却させようとする習氏の包括的な試みの一環でもある。習氏は慣例から外れ、通常の15年で2期までとされる任期を過ぎても、権力の座にとどまると予想されている」

 


下線部は、重要な指摘である。「経済システムを西欧型の資本主義から脱却させる」とは、直接金融(証券市場)でなく、間接金融(金融市場)に絞る意向とも見える。こうなると、中国企業の資金調達の道は大幅に狭められる。金融は、「原始時代」へ戻るようなものだ。習氏は、カンボジアの「ポルポト」のような考えに取り憑かれてきたのか。金融鎖国である

 

(2)「共産党の中央規律検査委員会の汚職摘発担当官は今月に入り、25の国家機関の事務所を次々と家宅捜索し、投融資および規制関連の記録を確認し、民間企業に関連する特定の取引や決定がどのように行われたかについて回答を求めている。関係者によると、不適切な取引を行った疑いのある個人は、党による正式調査を受け、後に起訴される可能性がある。また、不適切な取引にかかわったと判断された企業も処分されることになるという」

 

25の国有金融機関の家宅捜査をはじめたという。大事になってきた。

 

(3)「金融セクターへの追及の背景には、借り入れに頼る建設ラッシュへの経済依存を巡り、中国政府が対策を講じようとしていることがある。そうした建設は中国不動産セクターの混乱を引き起こしている。習氏は経済措置を強化することで、今後数カ月に成長を著しく鈍化させかねない状況を引き起こすリスクを負っている

 

下線のように、融資活動が停滞すれば経済成長率は、一層の減速を免れない。

 


4)「不確実性が高まる中、多くの銀行は既に民間のデベロッパーやその他企業への融資を控えているとアナリストは指摘する。北京大学のマイケル・ペティス教授(財政・金融)は、「不確実性が高まれば、それに対応する唯一の方法は、今やっていることをやめることだ」と述べている。しかし、規制環境を見通せないハイテク企業や、融資の流れを止められた民間デベロッパーなど、民間企業の経済活動の減速は、中国政府にジレンマをもたらす」

 

国有銀行が家宅捜査されていれば、重要書類は持出されているはず。習氏は、自分の知らないところで、謀反の起ることを極度に警戒しているに違いない。疑心暗鬼の塊になっているのだ。

 

(5)「一部の当局者によれば、習氏の目的は、中国経済の生命線である金融部門を党が完全にコントロールすることを確実にし、金融部門が民間の大企業や他の有力者に捕らわれ、国家の影響力が脅かされるのを防ぐことだ。中国国内では、金融部門は王岐山・国家副主席の権力基盤として知られる。王氏は1990年代、国有企業の中国建設銀行を率いていた時に頭角を現し、長年にわたって中国建設銀行をはじめとする国有金融機関の要職に自分に近い人物を据えてきた」

 

下線部は、反革命の防止が目的である。盟友であった王岐山氏にも疑いの目を向け始めたのは、危機的である

 

(6)「王氏は習政権の1期目に反腐敗運動の旗振り役を務めた際、金融部門の調査をほぼ避けて通り、他の経済分野の調査を進めた。だが、中国の金融リスクは増大し続けた。国有銀行がコネのある一部の高成長企業に積極的に融資したことも一因だ。王氏の政治的影響力はここ数カ月で低下している。長年の側近は8月、7100万ドル(約80億円)超の賄賂を受け取ったとして起訴された。関係者によると、王氏は現在調査に直面している金融企業のいくつかとつながりがあるという」

 

最近は、習氏と王氏の関係がスムーズにいっていないという。王氏は、米国に多くの友人がいる。それだけに、習氏は警戒し始めたのだろう。独裁者固有の孤独に苛まされているのだろう。

 

(7)「特に経営難に陥っている不動産デベロッパー、中国恒大への国有銀行の融資も調査対象になるという。中国恒大への主要な貸し手の一つが、現在調査の対象となっている国有の金融複合企業、中国中信集団(CITIC)だ。1970年代後半、中国で最も名の知られた「赤い資本家」の栄毅仁氏が資本主義の実験のために設立した中信の融資事業は、長年にわたり中国で最もウォール街に近い文化を作り上げてきた。彼らは旧来型の金融機関が敬遠してきたリスクを取り、中国恒大のような企業のために投資ファンドを設立することさえあった」

 

中国恒大は、当局が警告し続けていたにもかかわらず、債務をテコにした膨張政策に走ったと指摘されている。この裏に、国有金融機関が絡んでいたという見方をしている。家宅捜査で、何が浮かび上がるか。中国は、新たな段階へ入る。