テイカカズラ
   


半導体は、産業のコメから心臓に喩えられている。その半導体生産で、中国は大きく躓いている。中国が、米国覇権へ挑戦と大言壮語し、米国からきつい「お仕置き」を受けているのだ。普段から、大変お世話になっている相手に向かって絶対、言ってはならない言葉だった。ここが、中国の「田舎侍」の限界である。

 

米国は、半導体の広範な技術とソフトの対中輸出を禁止した。半導体専門家によれば、「半導体はグローバルな分業体制が前提。どの国も独自のサプライチェーンはつくれない」と指摘する。その意味では、「平和産業」である。戦狼外交で他国を脅迫する中国が、半導体生産で協力を仰ぐのは、一段と難しくなっている。自業自得なのだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(10月12日付)は、「中国半導体『遠い』自給70%、2020年10%台の見方も」と題する記事を掲載した。

 

中国政府が掲げる2025年に半導体自給率70%の目標達成が難しい情勢になっている。民間調査会社によると、20年の自給率は10%台半ばにとどまった。米中対立で製造設備の輸入が進まないことなどが原因だ。習近平指導部は政府系ファンドの投資拡大や補助金、名門大学に専門学部を設立するなど政策を総動員するが、実現は容易ではない。

 

(1)「米中対立が先鋭化するなかで、米国から中国の弱点として狙われる半導体産業の育成は習指導部にとって喫緊の課題だ。15年に発表した産業政策「中国製造2025」では半導体を重点領域に選定し、当時で10%に満たない自給率を20年に40%、25年に70%まで高める目標を打ち出した。習国家主席の肝煎りである政策目標を実現するため、中国はこれまでも次々と施策を繰り出してきた」

 


政府は、半導体への進出を奨励すべく多額の補助金も付けた。応募した多くは、補助金目当ての「素人企業」であった。半導体に対する認識は、この程度であったのだ。こういうレベルからの出発である。一筋縄でゆくはずがない。

 

2015年当時の自給率は、10%にも満たなかった。それを20年に40%目標とは、大風呂敷であり過ぎた。現状では16%程度。これには、外資系企業の生産分も含まれている。中国企業だけでは10%見当と見られている。歩留まり率は低いはずである。

 

(2)「その一つが半導体産業に特化した政府系ファンドの投資拡大だ。規模が最も大きい「国家集成電路産業投資基金」(国家大基金)の第1期の投資額は約1400億元(約2兆4500億円)に上った。14年秋に設立され、これが中国製造2025を下支えする役割を担った。米中対立を受け、19年にはさらに投資額約2000億元の第2期を立ち上げた。国家大基金は結果的にNAND型フラッシュメモリーを手掛ける長江存儲科技(長江メモリー・テクノロジーズ)の存在感を高めることに成功した。中芯国際集成電路製造(SMIC)のサプライチェーン(供給網)の整備のため材料や製造装置に多くの資金を投じ、中国を代表する半導体受託生産大手に育てた。20年には半導体企業への優遇措置も導入した」

 

このパラグラフを読めば、「満艦飾」とも言える進出ラッシュである。だが、「金食い虫」に終わって、ほとんど成果は上がらなかった。技術には、技術開発と製造技術がある。半導体では、基礎技術から始めなければならず、その技術開発をどのように製品にするかという製造技術の問題が残されている。中国半導体は、この二つの関門を超えなければならないのだ。簡単に乗り切れるはずがない。

 


(3)「中国メディアによると、半導体分野への投資額は20年に19年実績の4倍以上に達する1400億元に膨らんだ。中国で生産した半導体の販売金額は20年、14年の約3倍の8848億元に伸びた。一方、電気自動車(EV)の普及や自動運転技術の導入など自動車をはじめ多くの産業で半導体の利用が広がり、20年の半導体輸入額は14年比で6割増の3500億ドル(約39兆円)まで増えた」

 

EVなど、半導体需要はうなぎ登りである。中国では、ニセ物半導体まで出回っているという。製造過程での不良品や中古品からの回収半導体が、新品を装っているという。

 

(4)「輸入が急増した結果、米調査会社ICインサイツによると、20年の自給率は16%にとどまった。加えて過半を台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子、SKハイニックスなど海外メーカーの中国拠点が占めるとし、中国系だけでみた自給率はさらに下がるという。中国当局は「30%前後」との見方を示すが、それでも20年目標に届かない低水準だ」

 

20年の自給率は16%と言われている。これには、外資系企業の生産も含まれている、純国産は10%見当とされている。

 

(5)「習指導部は「半導体強国」への旗を降ろしたわけではない。中国政府の後押しを受け、異業種の有力企業も半導体分野に注力している。中国メディアによると、スマートフォン大手の小米(シャオミ)は関連するファンドなどを含め、21年に入って半導体関連企業20社以上に出仕した。EV大手の比亜迪(BYD)は近く、山東省の半導体企業を買収する見通しだ。約50万円の格安EVで知られる上汽通用五菱汽車は自前の半導体開発に乗り出した」。

 

異業種から簡単に半導体へ進出できるはずがない。そういう安易さが、中国の非常識さを示している。