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今回のパンデミック騒ぎで、中国はマスクとワクチンの両面で華々しい外交戦を繰り広げた。終わってみれば、米国ファイザー製のワクチンが効果と生産量の両面で、中国製ワクチンを大きく引離して幕引きとなりそうだ。

 

『ウォールストリートジャーナル』(10月12日付)は、「ファイザー、コロナワクチンの『勝者』に 切り替えも続々」と題する記事を掲載した。

 

世界で数ある新型コロナワクチンの中で、米ファイザー・独 ビオンテック 製(以下ファイザー製)のワクチンが「勝者」となりつつある。

 

(1)「中南米から中東に至る世界の多くの国々が、ファイザー製のワクチンに目を向けている。オーストラリアは他社製からファイザー製に切り替えて接種を進めている。トルコ、英国、チリは、当初は他社製のワクチンを接種した人にも追加接種の際にはファイザー製に切り替えている。

 

ファイザー製ワクチンが、「世界で選ばれたワクチン」になった。他社製からファイザー製へ切り変えているからだ。

 


(2)「アルゼンチンではファイザー製ワクチンへの需要が高まったことで、ファイザーと契約できるようワクチン購入に関する法律を改正したほどだ。ブラジル保健省の元高官で疫学者のワンダーソン・デ・オリベイラ氏は、「誰もが最良のワクチンをほしがっている」と語る。当初は中国製ワクチンを採用していた同省は今年に入り、ファイザー製の供給を増やした。「ファイザーのコロナワクチンは、他社製に比べ優れた効果を示している」という」

 

ブラジルは、中国製ワクチンの治験に協力するなどしたが、最終的にファイザー製に切り変えた。中国製は、詳細なワクチン効果を公表せず、その点だけでも不利であった。よほど、正面切っての比較を恐れたのであろう。

 

(3)「デューク大学グローバル・ヘルス・イノベーション・センターによると、各国が購入したファイザー製ワクチンは合わせて35億回分に上り、供給量で世界2位の英アストラゼネカ製を約10億回分上回っている。ファイザーによると、同社はこれまでに130カ国以上に16億回分以上のワクチンを出荷した。政府関係者や業界アナリストによると、こうした需要の高さの背景にあるのは同ワクチンの高い有効性である。感染力の高い変異株「デルタ株」に対しても高い効果があるほか、アストラゼネカや米 ジョンソン・エンド・ジョンソン (J&J)製ワクチンの接種の妨げとなった血栓を巡る懸念がないことも追い風となっている」

 

ファイザー製ワクチンは、「デルタ株」に対しても高い効果があるほか、血栓を巡る懸念のないことも普及を高める結果になったという。

 


(4)「免疫効果についても、ファイザー製ワクチンは接種から長期間たっても中国製ワクチンほど低下しないことを示す研究結果が出ており、当局もそのように説明している。加えて、ロシア製ワクチン「スプートニクV」のように供給量が限られるという問題もなかった。バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ロニー・ガル氏は、ファイザー製ワクチンへの需要が高いことで、ファイザーは世界のワクチン市場におけるシェアを拡大できるとみている。同社は世界で売り上げトップの肺炎ワクチン「プレベナー」を保有しており、同ワクチンの2020年の売上高は59億ドル(約6680億円)だった」

 

ファイザー製ワクチンの免疫効果は、接種から長期間たっても中国製ワクチンほど低下しないことが立証された。こうなると、ファイザー製は「良いことずくめ」で、他社ワクチンを引離す結果になった。ファイザーの持つハイレベルの製剤技術が、良質なワクチン製造に役立ったのかもしれない。

 

(5)「米バイオテクノロジー会社モデルナも、メッセンジャーRNAをベースにしたワクチンを開発したものの、普及で後れを取っているとアナリストは指摘する。ファイザーが販売力と製造能力で上回っているためだという。オーストラリアは当初、アストラゼネカ製のほか、国内バイオ医薬品大手CSLとクイーンズランド大学が開発したワクチンに期待を寄せていた。だが後者は初期臨床試験でヒト免疫不全ウイルス(HIV)の偽陽性結果が出たことを受け、政府は昨年12月に採用しない方針を決めた。また今年4月には、まれに女性で血栓が生じるリスクが上がることを理由に、高齢者はアストラゼネカ製を接種しないよう勧告した」

 

モデルナは、創業以来の創薬である。しかも、製造技術を他社に依存するというハンディキャップを背負っていた。創薬手法は、一週間でつくり上げたという超スピードであった。これを資金面で支えたのが米国トランプ政権である。この決断をしたトランプ氏も、同時に褒められて良かろう。

 


(5)「ファイザー製ワクチンが品薄だった当初、トルコは中国製ワクチンを頼みにしていた。だが最近では、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製を接種した人に対し、ファイザー製で2回の追加接種を進めている。アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビは最近、中国医薬集団(シノファーム)のワクチンを6カ月以上前に接種した人に対し、追加接種を受けなければ公共の場に入ることを制限する措置を導入した。ファイザー製を接種した人にはこうした制限は適用されない」

 

トルコは、すっかりファイザー製ワクチンのフアンになってしまった。中国製ワクチンを接種した人に対し、ファイザー製で2回の追加接種を進めているほど。中国製ワクチンは、トルコでは「水扱い」である。UAEも、中国製ワクチンだけでは公共の場へ入ることを制限されるという「屈辱」を受けている。