あじさいのたまご
   

イカゲームどんな中身?

希望就職先は公務員など

4分の1は自営業者の怪

文政権は有害無益な存在

20~30代の借金厖大

 

韓国ドラマが、世界の注目を浴びるようになった。それは、それで結構なことだ。今回は、少し様子が異なる。自慢でなく、恥をさらけ出すからだ。9月中旬に公開された「イカゲーム」は、今や世界中に配信されて第1位を獲得している。ゲームの中身は、次のようなものだという。

 

イカゲームどんな中身?

456億ウォン(約42億3700万円)の賞金がかかった謎のサバイバルゲームに参加した人々が、最後の勝者になるために命をかけて戦う物語である。登場人物の設定はこうだ。

 

1)ろくな仕事もなく、たまに手にするお金は競馬ですってしまう人物。

2)ソウル大学経営学科を卒業した秀才で汝矣島(ヨイド)の投資会社に勤め、成功したと思ったのに投資に失敗して莫大な借金を抱えた人物。

3)脱北ブローカーにお金を渡して詐欺にあった人物。

4)組織のボスのお金をギャンブルで使ってしまった人物。

 


こういった「脛に傷を持つ人間」が、金を目当てにサバイバルをかけて戦うもの。劇中では「こんなことをしていたら俺たち駄目になる」と漏らす人間らしい一面を覗かせている。海外メディアでは、次のような評価だ。

 

米『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「不平等とチャンスの喪失という韓国の根深い感情を扱って世界の観客を集めた『最新の韓国文化輸出品』にすぎない」

仏『ル・モンド』紙は、「貧困層と富裕層を対照的に描いた内容で2019年アカデミー作品賞を受けた映画『パラサイト 半地下の家族』などと軌を一にする」

 

前記の二紙による「イカゲーム」に対する見方は共通している。韓国社会の貧困層と富裕層の対照的な存在の指摘である。だが、こういう評価だけで十分だろうか。格差問題といえば、経済的には客観的データとして「ジニ係数」(所得再分配後:2018年)を持ち出さなければならない。日本の0.33に比べて韓国は0.35と若干高い(不平等)状態だ。だが、米国の0.39に比べれば低いのだ。

 

この「ジニ係数」だけを持出せば、米国こそ「イカゲーム」が起って当然である。逆に、「アメリカンドリーム」を生んでいる。「イカゲーム」の裏には、韓国特有の国民性が存在している。

 


希望就職先は公務員など

「イカゲーム」の社会的な背景には、就職したくてもできない厳しい現実がある。日本では、一人で何社もの「内定」を取ったという豪の者がいるほど。売り手市場である。韓国では、逆である。就職したいが競争が激しくて「困難」であるから、就職活動すら止めるという人たちが増えている。

 

韓国経済研究院は、4年制大学の3~4年生や卒業生など2713人を対象にアンケート調査を行った。その結果が10月12日に発表された。その内容は次のようなものだ。『中央日報』(10月13日付)から引用した。


「積極的に求職活動をしている」 9.6%

「儀礼的にしている」     23.2%

「休んでいる」         8.4%

「ほとんどしていない」    33.7%

 

上記のデータでは、求職活動を積極的に行っているのは、9.6%に過ぎない。他は、ほぼ諦めている。大学を卒業して、「いよいよこれから人生がスターとする」と勇はずの年齢で、早くも諦めた状況に追込まれている。

 


今年、積極的に求職活動をしている大学生と卒業生は、入社願書を平均6.2回出したという。書類選考に合格した回数は平均1.6回だった。就職を希望する企業については、公企業(18.3%)と大企業(17.9%)・公務員(17.3%)の割合が同程度である。

 

就職希望先は、公企業・公務員、それに大企業である。全て、「寄らば大樹の蔭」である。ベンチャー企業や中小企業ではない。ここに、韓国社会の特異性を見る思いがする。朝鮮李朝時代からヤンバン(両班)支配の気風が、今なお生き続けていることだ。最初から、「勝ち馬」に乗るという人生の選択をしている。この思惑が外れた場合、韓国社会では「乗った馬」から自分で降りて、自営業を選んで「一国一城の主」の道を進む。

 

韓国の自営業者数が、GDP世界10位前後の国にしては飛び抜けて高い(24.6%=2019年)理由は、産業構造の近代化が遅れているほかに、この「気位の高さ」が影響していると見られる。自営業は、好景気の時にその波に乗って行ける。だが、景気に逆風の吹いたときは、最初にそのつむじ風に吹き飛ばされる、極めて不安定な経営環境にあるのだ。

 

職場で、嫌なことがあっても我慢する。韓国社会では、それが困難ゆえにすぐに退職して自営業の道へ進んでいる裏に、もう一つ「転職市場」が育っていないという事情がある。終身雇用制と年功序列賃金制が、今なお牢固として守られているからだ。大企業労組が、この二原則を絶対に譲らない結果である。転職市場さえ完備していれば、自営業を選ばずとも転職によって働く環境を一新できるのだ。嫌いな上司の顔を見なく済む。韓国の「イカゲーム」の裏には、こういう韓国社会の柔軟性欠如が災いしている。(つづく)