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インドネシア高速鉄道建設は、日本との契約寸前に中国へ横取りされた曰く付きの建設プロジェクトである。結果として、当初契約と異なり工期は遅れる、建設費は4割高となりインドネシア政府が損害を被ることになった。約束しても守らない。インドネシア政府は、中国商法に騙されることになった。

 

『日本経済新聞』(10月14日付)は、「高速鉄道 中国案のツケ、インドネシア 費用膨張で税金投入検討 総工費が日本案の4割高に」と題する記事を掲載した。

 

中国が主導してインドネシアで建設が進む高速鉄道の計画をめぐり、ジョコ大統領は6日、国費の投入を可能にする改正大統領令を公布した。当初の両政府の合意では、インドネシア政府に財政負担を一切伴わない触れ込みだったが、事前の事業調査の甘さが露呈して費用が想定を上回り、方針転換を迫られている。

 

(1)「ジョコ政権は政府融資も選択肢に入れる。インドネシア国鉄社長は9月上旬、国会の証言で「高速鉄道事業が19億ドル(約2100億円)のコスト超過に陥っている」と表明し、政府に財政支援を求めていた。インドネシアと中国両政府は2015年9月に高速鉄道の建設で合意した。首都ジャカルタと西ジャワ州の中心都市バンドン間の140キロメートルを中国の高速鉄道技術で結び、現行の在来線で3時間半の所要時間を45分に短縮する計画だ」

 

インドネシアと中国両政府は、2015年9月に高速鉄道の建設で合意した。中国は、工事欲しさに破格の価格を提示したほか、日本の測量図を使うという杜撰な工事計画であった。それが、工期の長期化と19億ドルもの工費割り増しという最悪の結果を招くことになった。

 

(2)「インドネシア政府は当初、総工費を55億ドルと見積もった。起工式から5年を迎えた今年1月時点では60億7000万ドルに膨らむと見込んだ。その後、国鉄も資本参加する事業主体のインドネシア中国高速鉄道社(KCIC)が改めて費用を精査した結果、少なく見積もっても79億7000万ドルに達するとわかった」

 

当初の総工費は、55億ドル。それが、60億7000万ドルに膨らみ、最終的に79億7000万ドルにまでなるという。こういう工費の膨張は、中国側がいかにインチキであるかを物語っている。一帯一路プロジェクトもこんな杜撰な調子で行っているのだろう。呆れた話だ。

 


(3)「国鉄は国会証言で、土地取得や建設にかかる費用が想定を上回ったほか、計画の再三の遅延により、見込んでいた収入を得られなくなったことを追加費用発生の理由に挙げた。財務や税務などのコンサルタント料もかさんだという。KCICは当初、16年中に建設予定地の土地収用を終える方針だった。だが、当局が保有する土地データが実際と異なる例があり、所有者の把握が難航した。建設に必要な土地面積は予定より3割広いことが分かり、コストをかさ上げした」

 

中国側だけを責める訳にもいかない事情がある。インドネシア側の建設用地買収が遅れ、かつ建設に必要な土地面積は予定より3割広いというおまけも付いた。これらが、建設費を押し上げた。

 

土地収用問題は、最初から難航が予想されていた。中国は、そういう事情も知らずに、日本へ決まりかけた受注を横取りした。

 

(4)「追加の費用負担を巡っても問題が生じた。全体の負担の枠組みは、75%を中国国家開発銀行(CDB)の融資、25%をKCICの資金から充てる取り決めになっている。KCICは資本の60%をインドネシア、40%を中国の企業で構成する共同事業体だ。ただインドネシア側がKCICの資本金を十分に支払っていないことが判明し、中国側は追加費用の捻出に向けたCDBの追加融資や中国企業の負担を拒否しているもようだ

 

下線部は、中国の資金事情の悪化を反映している。他国の一帯一路でも、空手形を切って相手国を怒らせているケースが東欧などで続出している。これが、反中ムードを高める一因になっている。

 


(5)「高速鉄道計画をめぐっては、当初、日本の政府開発援助(ODA)を通じた新幹線方式の提案が有力視された。日本案では総工費を6000億円と見積もり、うち4500億円を償還期間40年、金利0.%の円借款で充てる内容だった。日本企業が受注する条件付きだったとはいえ、1%以上する通常のODA案件の金利より低く抑えた。しかし、ジョコ氏は最終的に中国案の採用を決めた。インドネシア政府に財政負担や債務保証を一切求めず、技術も移転するという破格の条件が決め手となった

 

ジョコ大統領が、中国案に乗ったのは政治的な理由とされる。インドネシア側が建設費を負担しないことが、功績になると踏んだもの。その後の工事遅延で、日本を誘い込む動きを見せたものの、日本側が辞退して関わりを持たぬようにした経緯がある。

 

(6)「高速鉄道の工事の進捗率は現在79%にとどまり、開業は22年末までずれこむ見通しだ。完工は日本案で想定した21年よりも遅れるうえ、総工費も4割以上高い水準に膨らんだ。触れ込みに反してインドネシア政府が国費を投入する方向となり、中国案のメリットは薄らいでいる」

 

日本案で着工していれば、今年は開通していた。総工費も日本案より高く付き、中国に全て騙された形である。この一件で、中国の高速鉄道建設案には大きな瑕疵がついた。