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7~9月期のGDPは、対前期比では0.2%増、年率換算で0.8%台の成長率に止まった。前年同期比では4.9%増である。中国経済を取り巻く不協和音は、一段と大きくなってきたのだ。超強気の習近平氏も、毛沢東のような「創業者」ではない。「雇われ経営者」という身分を忘れることはできない。来年秋の党大会で国家主席三選を実現するには、「一歩後退」もやむを得ない情勢だ。果たして、踏み切るか。

 

習氏は、2050年ごろに共同富裕を実現すると大幅な先送りも示唆している。ただ、不動産バブル崩壊へ向かう異変が起っている現状を止められるものではない。ひとたび広がった信用不安を鎮めるには、小手先で止められるものでない。人々が、先々に客観的な不安心理を持ち始めた時、それを食止める策はないからだ。現状は、まさにこの段階である。革命に喩えれば、大衆が心から怒り起ちあがる時、それを止めることは不可能だろう。経済にも客観的に見て、そういう段階があるのだ。

 


米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月19日付)は、「低成長時代入りする中国経済、改革との綱引きに」と題する記事を掲載した。

 

中国経済は新型コロナウイルス禍からの回復がバックミラーに遠ざかり、長期的な低成長局面に差し掛かっている。当局が長期的な視野で野心的な改革の断行を目指す中、政策を巡る不確実性も高まっている。

 

(1)「中国国家統計局が18日公表した7~9月期(第3四半期)国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増にとどまり、予想に届かなかった。さえない成長率は、中国経済が直面する一連の逆風を浮き彫りにする。具体的には、不動産業界を冷え込ませた規制強化、全国的な電力不足、消費の足かせとなっている根強いコロナ懸念などだ。前年同期との比較によるベース効果がはがれ落ちる中、7~9月の成長率が1~3月や4~6月から失速することは想定されていた。だが、中国経済は足元、今年早い段階では予測できなかった数々の困難に直面しており、10~12月は成長がさらに下押しされかねない」

 

7~9月期のGDPは、予想を下回った。10~12月期もこの傾向は続く。パンデミック下での景気落込みで、中国の末端需要はさらに冷やされるリスクを増幅する。

 

(2)「ここで問題になるのは、経済に対するさまざまなリスク(予想の範囲内と想定外の双方を含む)が成長に急ブレーキをかけ、政策担当者が抱いていた青写真を見直すかどうかという点だ。中国はコロナ流行に揺れた昨年、世界の主要国で唯一、プラス成長を維持。3月には、今年のGDP伸び率目標を6%あるいはそれ以上に設定していた。中国は昨年も2.3%の成長を確保しており、エコノミストの多くは6%の水準は控えめだとみていた」

 

中国は昨年、主要国で唯一「プラス成長」であったが、そのカラクリは住宅投資である。何食わぬ顔で不動産バブルを継続していたのである。そのカラクリが、終末期を迎えたのだ。

 

(3)「中国当局は一方で、目標に余裕を持たせることで長年の経済問題に対処する意向を明確にしていた。具体的には、家計・企業の債務(特にバブルの様相を強めている不動産市場)抑制、気候変動問題に対処する野心的な取り組み、所得格差の元凶とみるテクノロジー業界への締め付けなどが挙げられる」

 

習氏は、今年の成長率目標を「6%以上」と低めに設定してゆとりを持たせている。この「ゆとり」を使って、気候変動などへの取り組みを行うという青写真をたてたとされる。今、そのゆとりが、バブル崩壊で消えかかっているのだ。

 


(4)「だが、コロナ変異株流行による影響、世界的なサプライチェーン(供給網)の目詰まり、石炭価格の高騰といった別の要因がこれほど経済の足を引っ張る事態については、それほど考慮していなかったフシがある。来年には、中国の習近平総書記(国家主席)が3期目続投を決めるとみられる共産党大会の開催を控える。こうした中、目先の経済成長は再び当局の重点事項として浮上する可能性が高い。そのため、今年下期に制御不能なほど成長が鈍り、来年にもその影響が波及する事態を回避するため、当局は意図していたよりも早く、かつ強力に財政・金融政策の緩和を進めざるを得ないとの指摘がエコノミストからは出ている

 

下線のような事態が起っても、リカバリー策には限界がある。中央政府の予算すら土地売却益を充当しているのだ。この土地売却益部分が、ごっそり抜け落ちるだけで、中国政府は大変な事態に陥る。こういう最悪事態の覚悟はあるだろうか。私には、あると思えない。行き当たりばったりであるからだ。

 


(5)「成長見通しを引き下げる動きも出始めている。ING銀行は18日、10~12月の中国GDP見通しを従来の4.5%増から4.3%増に下方修正。中国人民銀行(中央銀行)の介入がなければ、さらなる引き下げもあり得るとしている。ノムラは先月、不動産市場の抑制策やエネルギー不足を理由に、10~12月期の成長率を従来の4.4%から3%に引き下げている」

 

世界のエコノミストは、一斉に経済成長率の見直し(引下げ)に入っている。これは、バブル崩壊という事態への認識がある結果であろう。

 


(6)「ナティクシスのアジア太平洋担当エコノミスト、アリシア・ガルシアヘレロ氏は、10~12月期の成長率が3.2%に減速しても、通年の成長率は7.8%を維持できるとみている。その上で、今年1~3月、4~6月の成長率がそれぞれ18.3%、7.9%と極めて高い水準にあることから、「問題は2022年であり、とりわけ21年との比較が厳しくなる上期だ」と話す」

 

中国当局は、GDPを前年同期比の増加率で発表している。これによれば、来年上半期の成長率は、今年上半期が高く出ているので、大きく低下する恐れが強い。当局が、これを配慮して、これから例のインフラ投資で、GDPを嵩上げする「ドレッシング」の可能性も否定できない。だが、それによる効果の程度は知れている。先々の事態を悪化させるだけだろう。現実を追認するしかない。