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北京を補完する「都市」として注目された雄安新区建設は、その後どうなっているか。習近平氏が、打ち出す一連の計画を、事前評価する尺度の一つとして注目されるのだ。

 

そもそも、この雄安新区はどういう構想であるかを見ておこう。

 

習氏の主導する「千年大計」(1000年にわたる大計画)として保定市内の三地区から新たに「雄安新区」を設置した。国家級新区としては19番目に当る。果樹園などが広がるのどかなエリアだったが、最先端のテクノロジー企業や研究機関を集積する計画である。

 

雄安新区は、130キロ離れた北京市から、非首都機能(教育、医療、行政機関の一部)移転の集中的な受け入れ先とされている。水域と緑地の面積が全体の70%を占めるように義務付けた理想郷を目指す。2050年には、人口1000万人の都市ができあがる計画だ。すでに、北京からの鉄道も開通している。受入れ準備は全て整ったのである。

 


『日本経済新聞 電子版』(10月20日付)は、「
習氏肝煎りの未来都市『雄安』に試練」と題する記事を掲載した。

 

雄安新区は17年4月1日,中国共産党中央委員会と国務院が「千年大計の国家大事」として設立を発表した。北京・天津・河北省エリアの経済発展の起爆剤とし、混雑する北京の機能を一部移転する目的だ。「深圳経済特区」「上海浦東新区」に次ぐ21世紀初の全国規模の大都市開発構想と位置づけられた。

 

(1)「北京西駅から高速鉄道で約1時間。「アジア最大の駅」という雄安駅に到着した。周辺には何もなく、広い駅はひとけのなさだけが目立つ。タクシーで高速道路を30分ほど走ると開発区で最初に建設された地区に到着した。管理委員会やオフィス、ホテルなどがあり、広さはおよそ1キロメートル四方だろうか。思いのほか狭い。街の真ん中まで歩くと、小型車型の無人販売ロボットを発見した」

 

ほとんど乗客がいない雄安駅の状況は、これまでも報じられてきた。今も、それには「変化なし」なのだろう。

 


(2)「鳴り物入りの無人スーパーも発見した。顔認証で入ると聞いていたが扉やゲートは開きっぱなし。店内は棚の空きが目立ち一昔前の農村の売店のようだ。顔認証用レジもあったが、買い物客はバーコードを読み込む方式のレジで決済していた。こうしたシステムはすでに北京市などのスーパーやコンビニエンスストアにもあり、目新しさはない。再び街を歩いていると無人バスがぽつんと走っていた。周囲には車は走っておらず、無人車の実験の意味はあまりなさそうだ。「以前は複数台の無人バスを走らせていたが今は1台だけ。人を乗せるサービスもやめている」。夕方、駐車場でバスを点検していた担当者はこう語った」

 

新住民がいない街に、無人スーパーは似合わない。現状無視の理念先行で失敗しているケースである。

 

(3)「一方、雄安の開発計画は終わったわけではない。開発区ではたくさんの建物が盛んに建設されていた。すでに外観ができあがっているものも多く、12年内には広大な街が出現するとみられる。実は、ここからが雄安にとっての本当の試練となる。雄安は内陸部にあり、決して地の利のある土地ではない。北京からほぼ同じ距離にある天津は港を持ち北京への玄関口としての機能がある。深圳や上海浦東も小さな農村や更地から摩天楼が立ち並ぶ大都市へと発展した。それも香港や上海と隣接する貴重な立地条件が背景にある」

 

雄安の立地条件が良くない。内陸部にあって自然が豊かだけでは住宅地に好適でも、それ以上の発展性を望めないように思える。利に賢い中国人は、「銭」の臭いがしなければ集まってこないのだ。

 

(4)「中国政府は雄安に人を集めるため、北京市にある大学や国有企業の本社など首都機能に直接かかわらない組織の移転を計画する。これも現時点では多くの組織は乗り気でなく、一部機能を移転するにとどまるとの見方もある。さらに当局は開発区での住宅の売買を禁じている。投機マネーの流入を防ぐ効果がある一方、多くの中国の都市の発展を支えてきた強力なけん引役を失う側面も持つ」

 

住宅の売買を禁じているのでは、外部から移り住むことは不可能である。昔から住む人では限界がある。そういう面での配慮ゼロの都市計画も珍無類だ。

 

(5)「7月末、雄安に関する一つのニュースが注目を集めた。河北省が「河北雄安新区条例」として「雄安新区管理委員会は河北省政府の派出機関とする」と発表したのだ。雄安は習氏肝煎りの「国家大計」であるだけに、多くの人が国家直轄市になると想像していた。ネット上では「中国雄安が急に河北雄安になった」「国家が頭金を払い、残りのローンは河北省が払う」などと揶揄する声も出た。雄安の可能性についてはまだ懐疑的な見方も少なくない」

 

雄安新区は、北京や上海のような直轄都市を想像されていたが、「河北省政府の派出機関」という位置づけという。拍子抜けする扱いである。

 


(6)「深圳や上海浦東は人々の欲望やニーズを原動力に成長した。一方、雄安は完全な「計画」下で発展を探る。共同富裕など共産主義色の濃い政策を進める習氏にとっては、雄安も計画経済の実力を占う大きな社会実験となるかもしれない。同事業が竜頭蛇尾に終わるのか、1000年後に目の覚めるような未来都市が出現しているのか――。少なくとも今後10年内にはある程度の答えがみえてくるだろう」

 

深圳や上海浦東は、欲望の渦巻く中国社会が根底にあって発展した。だが、雄安新区はこれと全く趣が異なる。北京から、教育、医療、行政機関の一部が移転してくるのでは、庶民に人気のある「華やかさ」がないのだ。敬遠されそうな施設の移転では、先行きが懸念されそうだ。

 

中国の経済計画は、この種の思いつきが多い。市場経済であれば、綿密な事前調査が行なわれるはず。独裁者の鶴の一声で決まるから、こういう形になるであろう。これまでの中国の発展は、「僥倖」であったという印象を拭えないのである。