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難物になった「共同富裕」実現

バブルをしゃぶった男は誰だ?

住宅投資を景気の調整役に使う

不動産税新設に反対の共産党員

 

習近平氏は、人生最大とも言える大勝負に出ている。国家主席3期目を目指して、不動の地位を固める戦術を練っているからだ。一方、中国経済の「宿痾」と言える不動産バブルを解決して、正常化しなければならない任務も担っている。中国の所得不平等は、米国を上回っており、「中国式社会主義」などと胸を張れる立場にないのだ。

 

こうした数々の矛楯を背にして、習氏は共産党の歴史を塗り替えて、毛沢東に次ぐ地位を確立し未来永劫、その名を中国共産党史に刻むべく「歴史作業」に乗出している。

 


中国共産党は、11月に開く第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)で、結党以来100年の歴史を総括する「歴史決議」を審議すると決めた。これは、毛沢東、鄧小平の時代に続く第3の決議となるもの。これだけでも、その物々しさが分かる。

 

これまで2回の「歴史決議」では、過去の歴史を整理し、今後の方針を指し示す目的を持ってきた。具体的には、権力闘争と混乱に終止符を打ち、時の指導者の核心的地位を確立する役割を果たしてきた。こういう経緯から言えば、習氏が3回目の「歴史決議」の準備を始めた目的は、習近平氏を歴史的指導者として共産党史に明記することにある。これによって、どのような「御利益」が得られるのか。次のような指摘がされている。

 

1)毛沢東、鄧小平に続き「歴史決議を出した指導者」との権威を手に入れる。

2)習氏の記述量や質を毛沢東と同等とし、自身を毛沢東に並ぶ「偉大なカリスマ指導者」へと引き上げる。

3)「毛・習>鄧>江・胡」という序列を歴史的定義とし、江沢民氏一派に引導を渡す。ちなみに、胡は胡錦濤氏である。

 

難物になった「共同富裕」実現

習近平氏は、こうした背水の陣を敷いて「共同富裕論」に着手しようとしているが、成功する保証はどこにもない。毛沢東さえ、「大躍進政策」(1958~61年)と「文化大革命」(1966~76年)で挫折している。鄧小平は、「改革開放政策」により、閉鎖経済に落込んでいた中国をグローバル化した功績が大きい。ただ、彼の「先富論」だけが取り上げられ、同時に主張した「共同富裕論」は、後の指導者によってないがしろにされてきた。

 

習氏は、「共同富裕論」を自分の専売特許のように扱っているが、鄧小平によって解決すべき課題として掲示されていたのである。江沢民、胡錦濤、習近平の治世30年間は、「先富論」だけに専念して、「共同富裕論」を棚上げにしてきた。鄧小平は、自らの「先富論」が死後に非難されることを予知していたかのように、遺言で墓をつくらず散骨を希望した。中国には、後代に先代指導者を非難して墓を暴く悪習がある。鄧小平は、死後の辱めを避けたかったのであろう。現に、習近平氏はそれに近いことを始めようとしている。

 

習氏はこれまでの9年間、不動産バブルを最も悪用した最高指導者である。バブルを利用して、GDPを押し上げてきたのである。2020年では、中央・地方の政府歳入で土地売却収入が54%も占めるまでになっている。こういう歪んだ歳入構造を是正せず、厖大な軍事費支出を行なってきた。換言すれば、土地バブルによって経済大国と軍事大国の地位を手に入れたと言えるのだ。

 

国有地を売却して現金を手に入れてきたのは、最も危険な手法である。麻薬と同じである。財政収入を増やすには、入札に当って土地売却価格を引き上げればそれで済む。私はこれまで、中国の不動産バブルには地方政府が深く絡んでいると指摘し続けてきたが、中央政府も同様の手法を用いていた。こうした国家ぐるみのバブルは、世界史でも初めて見る事実である。



バブルをしゃぶった男は誰だ?
 

歴史上のバブルには、次のような原因があった。

 

オランダはチューリップの球根、英国は南海泡沫会社という詐欺事件、米国は株価高騰、日本は土地と株価の複合バブルである。いずれも、民間企業の加熱した行動に原因があった。中国の場合は、企業と政府による不動産高騰ゲームである。世界史でも類例がない現象である。

 

中国は、不動産企業の投機だけであれば、損害が民間部門だけに止まる。国有地売却で土地高騰の恩恵に浴してきた財政は、地価が横ばいないし下落に転じただけで、歳入に大穴を生じるはずである。国家ぐるみの経済的危険性を内包しているのだ。

 

中国は、7~9月期のGDP成長率が前年同期比4.9%増。前期比では0.2%増、年率換算で0.8%程度に止まった。1~3月期以来、前期比では「0%台」成長率である。明らかにパンデミックによる大きな被害を受けている。

 

7~9月期の業種別GDP(実質ベース)では、不動産業が前年同期比1.%減少になった。新型コロナウイルスが直撃した20年1~3月以来、1年半ぶりのマイナスである。当局の金融規制などで開発が滞り、建築業も1.%の落ち込みになった。

 

20年1~3月は、中国全土がロックダウンに陥り、市民は住宅展示場すら出かけられない時期であった。それ以外では、ずっと住宅が売れ続けていたこと自体に異常性を感じる。それは、中国社会が常軌を逸し投機目的で住宅購買に走った意味で、一種の不気味さを感じるほどだ。(つづく)