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中国経済を揺るがす最大の問題は、不動産開発企業の資金繰りがつくかどうかである。中国国家外為管理局(SAFE)の潘功勝局長は10月20日、不動産セクターに対する金融機関や市場の過剰な引き締めが徐々に是正されているとした。この金融当局の発言通りに不動産企業の資金繰りが、一息入れられるか予断を許さない。

 

当局は、不動産開発企業によるマンションの「青田売り」(契約と同時に前受金を取る制度)が、不動産開発を無軌道にさせたという反省もあり今後、廃止の方向と伝えられている。そうなれば、不動産開発産業はかなり整理が進むと見られている。

 

「青田売り」が禁止されるようになれば、住宅市況にも変化が出てくると期待されている。消費者が買い急がされる状況がなくなるからだ。今回の中国恒大問題は、不動産開発産業に少なからざる影響を与えるであろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(10月20日付)は、「中国、新築マンション6年ぶり値下がり 中古も落ち込み」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の新築マンションが値下がりに転じた。中国国家統計局が20日発表した9月の主要70都市の新築マンション価格は単純平均で前月を0.%下回った。下落は6年5カ月ぶりだ。住宅ローンの審査厳格化など当局の規制強化で市場が冷え込み、値下がりした都市も5割超に広がった。「前月から下落した都市は36地域となった。大都市を中心に住宅価格の高騰が続いていた5月の5都市から一気に広がった。値下がり都市が過半を占めるのは「チャイナ・ショック」と呼ばれ景気が減速していた15年5月以来となる」

 

住民の9割超が持家といわれる中で、なお新築マンションが売れるとは異常である。生産年齢人口比率がピーク(中国は2010年)を迎える直前、各国とも不動産価格の高騰が起こっている。だが、中国はピークを過ぎて11年以上経ちながら住宅価格が値上りするとは、完全に投機現象である。仮需が盛行しているのだ。政府が、この投機熱を利用してGDP押し上げに使っていることは明らかである。

 


(2)「取引価格を比較的自由に決められ、市場の需給を反映しやすい中古物件は、値下がりがさらに広がっている。9月は7割超の52都市で価格が下落した。単純平均した前月比下落率も0.%と、8月から拡大した。マンションバブルの抑制を狙った当局の規制強化が影響している。中国人民銀行(中央銀行)と銀行保険監督管理委員会は1月から住宅ローンなどに総量規制を取り入れており、借り入れに制限がかかりつつある。地方政府が中古物件に設ける標準価格も市場を冷ます。関係者によると、実際の取引価格は相対で決めるため標準価格より高い例が多いが、住宅ローンは標準価格を参考に決まる。実質的に頭金比率が高まり、住宅の購入を諦める人も少なくないという」

 

中古物件の値下がりが先導すれば、新築物件の価格にもブレーキがかかるであろう。政府は歳入財源に、土地売却益を半分以上も充てている現状が改まらない限り、政府は絶えずバブルを起こそうという誘惑に駆られるであろう。

 


(3)「
販売総額でみても、9月は前年同月より2割近く少なかった。3カ月連続の減少だ。不動産シンクタンクの易居不動産研究院の厳躍進氏は、「住宅価格は過熱から過度な冷え込みへ変わるリスクを警戒すべきだ」と指摘する。当局の資金規制で不動産企業が経営難に陥っていることも、マンション価格に影を落とす。資金繰りのため、大幅に値下げしてでも開発物件を早期に売却しようとするためだ」

 

9月は、3ヶ月連続の販売総額の減少になった。資源が、不動産開発へ過剰に配分されていることは、決して褒められたことでない。他産業への資金配分が滞っている証明である。中国は、目先のGDPのみに神経を使わず、将来の中国経済の展望に目を向けるべきである。

 


(4)「例年は住宅展示場がにぎわう10月の国慶節(建国記念日)連休も、不動産市場は盛り上がりを欠いた。不動産会社の資金繰り難の解消にはほど遠く、信用不安が強まっている。中堅不動産会社の債務不履行(デフォルト)が相次いでいる。中堅会社の新力控股(シニック・ホールディングス)が18日に期限を迎えたドル建て社債を償還できなかった。大手の中国恒大集団も、ドル建て債の利払いの猶予期間が終わる23日ごろにデフォルトが確定する可能性が意識されている」

 

10月の国慶節は例年、住宅展示場が超繁忙期を迎える時期だ。今年は、従来と異なり盛り上がりを欠いたという。23日は、中国恒大のドル建て債券のデフォルトになるかどうかが最終決定する日である。中国政府は、デフォルトにさせるのかどうか。これで、中国政府の姿勢がはっきりする。

 

(5)「不動産市場の変調を警戒する当局は、強化一辺倒だった規制の微修正に動き始めた。人民銀行は15日、銀行の不動産向け融資をめぐり、行き過ぎた絞り込みを是正する方針を示した。「10~12月の不動産向け融資は多少持ち直すのではないか」との見方が広がる。中国メディアによると、広東省広州市や同省仏山市など一部地域では、銀行が住宅ローン金利を引き下げている」

 

人民銀行が、不動産開発企業に提示した「財務3原則」を緩和させることはないであろう。ただ、財務内容が良好な企業で資金繰りに苦しむところには、支援の手が伸びて当然だ。そういう意味での、金融緩和期待は出てくるに違いない。