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韓国では、電池産業が盛んである。LG化学やSKイノベーションという電池専業メーカーを擁する。次世代自動車として、電気自動車(EV)が脚光を浴びているだけに、前記電池メーカーも活躍舞台が広がっている。

 

発展のカギは、電池の性能と価格に掛かっている。自動車専業のトヨタは長年、ハイブリッド車(HV)で電池の技術を蓄積してきたから、電池工場を電池企業の技術支援を受けずとも建設可能である。韓国は、このトヨタの実力に畏服している。

 


『朝鮮日報』(10月20日付)は、「トヨタ、3800億円投資 米に初のバッテリー工場建設へ」と題する記事を掲載した。

 

日本のトヨタが、初めて米国で自動車バッテリー工場を新設する。エコカーの自国内生産を促す米バイデン政権の基本方針に応えようというものだ。

 

(1)「トヨタは18日(現地時間)、米国で車のバッテリーを生産するため、2030年までに約3800億円を投資すると発表した。2025年に稼動するこの工場では、ハイブリッド車に使用されるリチウムイオン電池をまず生産し、その後、電気自動車用バッテリー生産も推進する。トヨタは新工場を通じて1750人を新規採用する予定で、新工場の場所や生産能力については後日発表すると明らかにした。トヨタは現在、米国国内のハイブリッド・電気自動車販売比率を現在の約25%から2030年には70%に拡大する計画だ」

 

トヨタは、21年4~6月期の米乗用車販売で、初めて首位(四半期ベース)となった。幾度の危機を乗り越え獲得してきた市場シェアが、EVで一瞬にひっくり返されるとの危機感も同時に広がった。そこで、米国市場首位の座が奪われないように、米国内で電池工場を立ち上げて首位を守る意思と推測されている。手堅い「トヨタ戦略」である。

 

(2)「今回のトヨタの発表でもう一つ注目すべき点は、米国のビッグ3GM・フォード・ステランティス)完成車メーカーがバッテリー企業と合弁の形で工場を建設するのとは違い、トヨタが100%出資して自社工場を建てるというものだ。サムスンSDILGエナジーソリューションのようなバッテリー専門会社の助けがなくても、自らバッテリー製造ができるという自信を見せたのだ」

 

今回、トヨタは初めて実質的な「自前」による電池生産に踏み切る。ところが長年、電池生産で協業してきたパナソニックと組まなかった。なぜか。20年に発足したトヨタとパナソニックの電池新会社が「立ち上げに手間取った」とされている。ライバル自動車企業が、米国に殺到する中で、肝心の電池生産で時間を食われると、生産面で水を開けられる危険性が生じる。そうなると、資材手配でグループ内の豊田通商と組む以外、単独による進出が最善という結論になったであろうと報じられている。

 

トヨタは、電池生産で完全に技術的習得を済ませていることが分かる。今回の件で、次世代電池の全固体電池でも単独生産に挑めることを内外に表明したことになる。トヨタが、満を持してEVに進出できる背景が、これで一層明らかになった。

 


世界の自動車メーカーの間では電池メーカーと組み生産するのが一般的だ。トヨタほど技術を持たないためでもあるが、投資負担を軽減できるという利点がある。GMは韓国LG化学の電池子会社、LGエネルギーソリューションと組み、米2カ所で合弁工場を建設中。フォードは韓国SKと合弁で米国のテネシー州、ケンタッキー州に電池工場を建設する。提携相手は主に韓国や中国の電池メーカーだ。

 

こういう中で、トヨタは自社技術の優秀さに賭けて、世界市場で競争するのだ。戦前・戦後の日本企業が堅持してきた技術開発路線を頑ななまでに守り、「日の丸技術」として高く掲げている。それは、絶対に世界で負けないという誇りでもあろう。日本の証券アナリストは、トヨタのように「電池から一貫して内製できれば、原価低減余地も大きくコストで優位性が増す」指摘したと『日本経済新聞』が報じている。

 

(3)「トヨタは1997年にハイブリッド車(プリウス)を世界で初めて量産した時からバッテリー技術を内在化してきた。1996年にトヨタ60%、パナソニック40%の持分比率で合弁会社(PEVE)を設立してバッテリーを開発、2010年に合弁会社の出資比率をトヨタ80.5%まで増やして技術主導権を確実にした。「夢のバッテリー」と呼ばれる全固体電池の研究レベルも世界最高水準と評価されている。トヨタは昨年9月、自動車用バッテリー増産と研究開発のために、2030年までに総額1兆5000億円を投資すると発表した」

 

全固体電池は、すでに試作品によって走行実験が始まっている。全固体電池の取得特許数と価値では、世界一との折紙がついている。全固体電池も自社技術で一貫生産が行われるのであろう。

 


昭和25年(1950年)、トヨタはドッジラインによる緊縮財政の煽りで倒産の淵に立たされたが、「自分の城は自分で守る」という石田退三の執念で見事に立ち直った。この時の苦難の歴史が、今なお引継がれているのであろう。私は、東洋経済の名古屋支社勤務時に、石田氏の話を何度も聞く機会があった。貴重な体験であった。

 

(4)「このため、現在ハイブリッド車中心の販売戦略を持っているトヨタは、いつでも電気自動車販売を急加速化できる見通しになった。トヨタは来年から純粋な電気自動車「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」を発売し、2030年には電気自動車を年間200万台以上販売する計画だ。自動車業界関係者は、「トヨタの内燃機関車はハイブリッド車にほとんど置き換わり、電気自動車は需要に応じて柔軟に生産量を調節するという戦略だ」と語った」

 

トヨタは、EVの将来性には極めて慎重である。内燃機関からEV化への波に、義経の「八艘飛び」でいつでもスムースに転換できる技術的準備を怠らず、そのとき時で最高の利益を上げる「理想経営」を貫いている。これは、世界でも珍しいことだ。この背景には、前述の「自分の城は自分で守る」精神が生き続けていると見られる。