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8年越しのTPP加盟論議

台湾加盟申請ライバル登場

自動車・農業が日本を意識

微温湯経済から脱出可能か

 

韓国は、TPP(環太平洋経済連携協定)加盟をめぐって甲論乙駁状態である。だが、中国の加盟申請に背中を押されて、申請意向が固まり始めたようである。絶えず、中国の鼻息を気にしなければならないのだ。韓国の主体性はどうなっているのか。TPP加盟の事前折衝で、日本は「反対意向」を示した。

 

韓国は、福島県を含む8県(青森,岩手,宮城,福島,茨城,栃木,群馬,千葉)全ての水産物の輸入禁止措置を行っている。理由は、福島原発事故による放射能汚染問題である。科学的に無害が証明されているにも関わらず、「風評」を持出して禁止を続けている。日本が、こういう非友好国である韓国をTPP加盟国に迎えたくないと言うのは当然だ。前記8県の漁業者に対する冒涜である。

 


米国はこれまで、東北、甲信越、関東地域の14県で生産された合計100種類の農産物について輸入停止措置を講じていた。これが、9月22日から撤廃されて輸出可能となった。こういう変化を考えると、韓国の姿勢は頑なであり「反日姿勢」の一端と読み取れるのだ。日本が、韓国をTPPへ受入れないと非公式に反応しているのは、国民感情から言えば自然であろう。韓国が今後、水産物輸入規制を撤廃すれば話は変って来る。

 

8年越しのTPP加盟論議

韓国政府が最近、「TPPへの加入申請の決定が近づいた」と明らかにした。TPPへの加盟は、2013年に検討し始めてからすでに8年も過ぎている。韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官は10月18日、「もう時間がない。決定は最終段階だ。『加入する、しない、するならいつする』までを含む決定は10月末か11月初めには出さねばならない」と述べた。

 

韓国が、8年越しのTPP加盟問題の検討に終止符を打とうとする大きな理由は、中国がTPP加盟を申請したことだ。これを追うようにして、台湾もTPP加盟を申請してきた。これも韓国の背中を押していると見られる。先ず、中国との関連を見ておきたい。

 


中国が、TPPへ加盟申請したことで、中国への義理立てがなくなった。中国を差し置いて、韓国だけTPPへ加盟申請すればまた、嫌がらせを受けるという被害者意識が先だっていたものだ。そういう懸念がなくなった。ここまで、中国の顔色を気にしなければならないとは、主権国家として恥ずかしいことである。

 

日本や豪州は、中国の加盟に対しては否定的に反応した。だが、台湾へは明確に「歓迎」意思を示している。これが、韓国にとって新たな「脅威」になってきたのだ。

 

これまで台湾は、中国に妨げられ主要国とのFTA(自由貿易協定)を結べなかった。だがTPP加盟に成功すれば、世界貿易の舞台へ本格的に登場できる基盤が与えられる。台湾を代表する産業は、いうまでもなく半導体である。EU(欧州連合)も、半導体事業強化の目的で台湾へ接近する姿勢をはっきりと見せてきたのだ。

 


中国の主張する「一つの中国論」は、すでに色あせてきた。中国の人権弾圧への非難が高まり、中国経済に陰りが強まってくると共に、「民主主義台湾」への評価ががらりと変わってきた。EUの台湾をめぐる評価は、次のように高まっているのだ。

 

EUは9月、インド太平洋戦略を公表し、台湾と主に経済面で関係深化に踏み出す姿勢を打ち出した。さらに踏み込んだのが欧州議会である。EUと台湾の政治的な関係強化を勧告する文書を賛成多数で採択した。文書に拘束力はないが、台湾をインド太平洋地域で重要なパートナーと位置づけ、関係を強めるべきだと主張したのだ。

 

EUは、これまで米トランプ政権時代に米中の通商対立を利用し、対中輸出を増やすという利益を享受してきた。そのEUが、人権意識の「本家」であることを自覚して、中国へ強い姿勢を見せている。昨年12月末に7年越しで妥結・署名した対中の包括的投資協定が、

今年に入ってEU議会の反対で批准審議を棚上げしてしまった。署名後2年間に批准しなければ、白紙化される規定である。包括的投資協定は多分、水泡に帰すだろう。

 

この間隙を縫って、台湾の人権と半導体技術がEUから高い評価を受けることになってきた。「落ち目の中国経済」から、「フレッシュで半導体技術を持つ台湾」へと視点が移りつつあるのだ。

韓国が、この台湾の存在を気にするようになっている。台湾は、韓国と半導体を中心に主力産業分野が重なる。実際に台湾は、中国よりもTPP加入の可能性が高い。TPPを主導する日本が、台湾と半導体サプライチェーン同盟を強化しているからだ。中国はTPPの高い加入基準をクリアするのは絶望的である。当の中国も、TPP加盟を「10年計画」で臨んでいるほどである。

 

これまで台湾は、中国の牽制により通商面で出遅れていた。韓国企業がその分、恩恵を享受してきたとも言えるのだ。その蔭の「実力国」台湾が、TPPに加入すれば他の国ともFTAを結ぶ可能性は広がるであろう。その場合、韓国企業には大きなライバルになる、という「台湾脅威論」が韓国で語られるようになっている。(つづく)

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