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歴代首相の中で地味な存在であった福田康夫氏が、韓国紙『中央日報』のインタビューに答えた。日本人がなぜ、韓国への気持ちが従来と変わったのかを諄々と説いている。岸田首相は、就任に当り海外要人と順次、電話会談を重ねた。韓国大統領は八番目であった理由について、「話したい順番が八番目だったのだろう」と禅問答である。これこそ、日韓関係が低位になった証拠だ。

 

『中央日報』(11月22日付)は、「福田康夫氏『日中韓、いがみ合いをやめて疎通チャンネルを整えるべき』」と題する記事を掲載した。

 

(1)「(質問)岸田文雄首相は就任後の電話会談として韓国を8番目、第2グループに分類した。関心の無さを示しているのか。

(答え)順番そのものはそれほど重大だとは思わない。だがいろいろな情勢を総合して考えると、8回目という意味はあると思う。そのためこのような状態を一刻も早く打開しなければならない。気持ちよく韓国と話を交わすことができる状態でないと岸田首相も感じているから、結果的このように(順番が)後回しになったのだと思う。これは日本にも責任があるかもしれないが、そう思われている韓国にも責任があると考えてもらいたい」



日本が、韓国と気持ち良く話す環境にないことが、日韓の電話会談を8番目にさせたと指摘している。考えて見れば、対馬の山に登れば釜山が見える距離にある。それが、法的に解決して問題でも蒸し返して「謝罪しろ、賠償しろ」と迫ってくる。そういう相手に、いの一番で電話したいと思うはずがない。できれば、電話したくない相手だ。個人も国家の関係も同じであろう。

 

日本人と韓国人の価値観が、大きくずれていることも日韓問題を複雑にさせている理由だ。米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が今年、世界17カ国の成人を対象に行ったアンケート調査では、「あなたが人生で最も価値があると思うものは何か」と質問に対して次の結果が出た。韓国の1位は、「物質的な幸せ」であった。日本の1位は、「家族」である。これは、他の先進国共通である。韓国人による金銭への執着の強さが、日本と悶着を起す背景であろう。

 


(2)「(質問)岸田首相は一貫して「ボールは韓国にある」と言う。その反面、韓国はひとまず会ってから話そうと言う。
(答え)2015年に岸田首相が当時外相だったとき、一回決着(慰安婦合意)をしたというつもりになり(日本が韓国にボールを)一旦返したと思っている。だから今『ボールは韓国にある』という表現になった。では、その次に韓国がボールをまともに投げてくれるのか、まともなボールを投げてくれるのか、もしくはボールだが何だか分からないようなものを投げてくるのか、そのどれなのかということだ。事実、ここ数年間、韓国は日本にボールのようなものをたくさん投げてきたと思う。例えば今回、竹島に韓国〔金昌竜(キム・チャンリョン)〕警察庁長が上陸したのもその一つだ。私はこれがまともなボールではないと思う。いびつなボールだ。細かいところではあるが、こういうことが日本の国民の心にみんな響いている。だから電話会談を最初に(韓国と)したいと思わせるようなサインが(韓国から)欲しい」

 

韓国人は金銭を重視する。日本人はそれを超えた家族を大切にする。こういう心のヒダの違いが、問題を複雑にさせている。日本人の価値観は、G7と同じであることが一層、欧米へ親近感を持たせる理由であろう。いったん交わした約束を守ることで,相互信頼感が生まれるのだ。

 


(3)「(質問)日本側には韓国と何を合意しても「どうせまた白紙に戻される」といった一種の不信感があるように思う。
(答え)正直に言って、日本人は韓国のいろいろなことを見ていて『どういうふうに対応したらいいか分からない』と思っている。日本の国民はもちろん政府も、おそらくその答えを持ち合わせていないと思う。このような混迷を打開するために、まずは(韓国が日本にまともな)ボールらしいものを投げないということが大事だ。これを通じて環境整備をしていただきたい」

日本は、韓国への対応で戸惑っている。日本が誠意を持って対応しても、韓国は後から謝罪が足りないと言って、追加謝罪を求める。そういう国家は、韓国以外に存在しないのだ。

 

(4)「(質問)アジアを相対的に重視していると評価されている林芳正氏(60)が新しい外相に就任したことに対して韓国では期待がある(林外相は2008年福田氏によって防衛相として初入閣した縁がある)。
(答え)結局は人間同士の話し合いだ。『この人とは話をしてもいい』という気持ちを起こさせるようなものは必要だと思う。怖い顔ではソフトになかなか話しにくい(笑)。韓国の気持ちを受け入れてくれるかもしれないという期待を持って(日韓間で)話ができるのは良いことだ。新しい(岸田・林)体制でどのような変化があるのかという期待を、私もしている」

韓国が、誠意を込めた対案を用意するのならば、日本もそれなりの対応をするだろう。先ず、日本側が「会って見たい」という環境を整備することだ。



(5)「(質問)習主席は、「台湾問題をめぐって火遊びをすれば自分を焼くことになる」という強い表現を使ったが、台湾海峡で武力衝突の可能性があると思うか。
(答え)その可能性はない。衝突があれば台湾だけの問題では済まず、大きな戦争になる可能性がある。最後には極端な武器を取り出してくる可能性がある。そうすれば米中ともに経済的にも大きな損害を被ることになる。自由経済の仕組みを壊してまでそのような決定を(両国首脳が)するだろうか。そうは考えられないし、双方とも考えているはずがない。韓国や日本も同じだ。(米中武力衝突時には)アジアが壊滅してしまう状況になる。だから台湾の危険をあまり大騒ぎしないようにすることが必要だ。日韓関係も同じだ。お互いに刺激し合うような馬鹿なことはやめてほしい」

このパラグラフは、極めて重要である。福田氏は、日本で数少ない中国へのパイプを持っている人物である。中国も、福田氏に本音を語っているかも知れない。中国の台湾侵攻は、下線部のように自らに破滅をもたらすことを認識している。この事実が、台湾侵攻を思い止まらせる要因になるのかも知れない。私も、こういう認識である。