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日本では、コロナが下火になってホットしていたのも束の間、また新たな変種株「オミクロン」が出てきた。感染力が強まっていると報じられている。

 

オランダでは11月28日、アフリカ南部を訪れていた13人が「オミクロン」に感染していたことが分かった。ドイツと英国でも感染が報告されており、オミクロン株が欧州で既にかなり広がっていることが示唆される事態だ。こうなると、世界経済はこれからどうなるのか気懸りである。

 

これまで猛威を振ってきた「デルタ変異株」よりも感染力が強いとなれば、身構えるのは当然であろう。ただ、冷静に考えることも必要である。『ブルームバーグ』(11月29日付)は、「新たなコロナ変異株『オミクロン』、現時点で分かっていること」と題する記事を次のように掲載した。

 


WHOは11月28日、「オミクロン株の感染による症状が他の変異株と異なることを示唆する情報は現時点でない」と説明。「従来の感染急増よりも速いペースで確認されており、増殖に強みを持っている可能性はある」とした。

 

南アの入院率の上昇は、オミクロン株感染の結果ではなく、コロナに感染する人の数が全体的に増えていることが理由の可能性があると指摘した。ECDC(欧州疾病予防管理センター)は、感染力の強いデルタ変異株が再び勢いづいている欧州では、オミクロン株の出現と拡散が「極めて高い」リスクとなり得ると分析した。

 

米モデルナのポール・バートン最高医療責任者(CMO)は11月28日、オミクロン株が既存のワクチンをかいくぐる可能性があると指摘した上で、その場合は改良したワクチンを来年の早い時期に提供できるとの見通しを示した。コロナワクチンはこれまでの変異株に対し、重症化と死亡のリスクを減らす効果を示してきた。メルクやファイザーが開発した経口薬などその他の治療方法がオミクロン株に効果があるかどうかは今後評価することになる。

 

『ブルームバーグ』(11月29日付)は、「オミクロン、世界経済回復への影響はどの程度か 最悪はロックダウン」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」は、世界経済がより力強い足取りで2022年入りするという楽観に水を差した。需要の弱さよりもインフレを政策の焦点としようとする当局の計画にも狂いが生じる可能性がある。

 

(1)「渡航制限が導入されれば消費者信頼感も企業景況感も悪影響を受け、多くの国・地域でホリデーシーズンを目前に活動が抑制される可能性が高い。市場は直ちに反応し、26日には米・英・オーストラリアの今後1年の利上げ幅予想が少なくとも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小した」

 

オミクロンの感染が拡大すれば、金利引き上げ幅は米英豪では0.01%ほど縮小すると観測している。大した影響でないという見方だ。

 

(2)「次に何が起こるかはこの新変異株のワクチンへの耐性や感染力の強さに左右される。デルタ変異株は最近数カ月にわたり猛威を振るったが、経済をリセッション(景気後退)に押し戻すことはなかった」

 

デルタ変異株では、世界経済をリセッションへ追込むことはなかった。ただ、中国経済は別である。不動産バブル崩壊と、コロナワクチンで欧米製のような優秀品のないことが、決定的なハンディキャップとなる。

 

(3)「最悪のシナリオは、ロックダウン(都市封鎖)の再来だろう。これはサプライチェーンの混乱を悪化させるとともに、回復しつつある需要を軟化させ、スタグフレーション懸念を再浮上させる」

 

オミクロンの感染力が、デルタ株よりも強い場合でも、米英型ワクチンでは対応可能であることが分かっている。新ワクチンは、来年の早い時点で発売される見通しである。西側諸国でのロックダウン・リスクは低いと見られる。

 


(4)「一方、オミクロンが当初懸念されたほどの脅威でないことが分かれば、それほど厳しい結果にはならない。それでも、新変異株の出現は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が依然として世界経済への脅威であり、今後数年にわたりそうあり続ける可能性を再認識させる」

 

今回の発展途上国での変種出現は、良い教訓を与えている。22年は、途上国へのワクチン供与に全力を挙げることだ。

 

(5)「政策当局にとっての困難は、昨年の景気刺激策によって選択肢が狭まっていることだ。昨年の景気後退後に金融政策を引き締めた中央銀行はほんの一握りであり、先進国・地域の主要な政策金利はゼロ付近にとどまっている。各国政府の債務負担は既に急増している。「経済の不確実性がさらに高まったことは確実で、22年の展開を予測する際エコノミストには大いなる謙虚さが必要だ。ここにきて、必要な謙虚さの度合いはさらに大きくなっている」とスバラマン氏は述べた」

 

下線部では、かなり慎重な見方である。ただ、新たなワクチンや経口薬の登場を考慮に入れれば、余りの悲観論は不要に思われる。ただし、中国経済は別である。先進国にはない、特有の脆弱構造であることを見落としてはならない。

 


(6)「ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は、「まだスタグフレーションになってはいないが、国境を超える移動の制限と関連のサプライチェーン混乱がさらに1年続けばそうなるかもしれない」と話した。20年の景気後退期ほどの影響はないとみるエコノミストもいる。野村ホールディングスのグローバルマーケットリサーチ責任者、 ロブ・スバラマン氏は、「企業や家計は制限やロックダウンに適応してきたため、今回の打撃はそれほど深刻ではないかもしれない」と述べた」

 

私は、オミクロンの出現を過剰警戒する必要はないとみる。その意味で、下線部の指摘に妥当性を感じる。人間、同じ過ちを繰返さず、少しずつ「経験値」を重ねて行くからだ。