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「蓼食う虫も好き好き」という。人それぞれだ。「反日」で燃え上がった時以外、本音ベースで言えば、「日本が大好き」という人たちも結構いるという。「寿司」が大好物で人気を高めている。米紙は最近、「寿司を世界に広めたのは韓国人」と報じるほどだ。

 

『ニューズウィーク 日本語版』(11月29日付)は、「反日と日本好きの二極化が進む韓国」と題する記事を掲載した。筆者は、佐々木和義氏である。

 

韓国の若者の間で人気となっている観光地がある。今年9月、ソウルから車で1時間半の距離にある京畿道東豆川(トンドチョン)にオープンした日本テーマパーク「にじもりスタジオ」だ。

 

(1)「11月1日、韓国政府がウィズコロナを宣言し、規制を段階的に緩和する方針を発表すると、日本料理店を訪れる人たちが増え始めた。また、韓国航空各社は日本上空を飛行する「無着陸観光飛行」を運行し、訪日観光の再開を待つ人たちが空から日本を楽しんでいる。コロナ禍が続く韓国で若者を中心に日本ブームが広がるなか、日本でも韓国旅行の再開を心待ちにする人向けのイベントが実施された」

 

韓国は、11月から「ウィズコロナ」になったので、疑似日本体験を楽しんでいるという。だが、11月29日にコロナ感染者激増で、「ウィズコロナ」は中止された。

 

(2)「『にじもりスタジオ』はドラマの撮影場として作られた。2003年に放映されたドラマ『大長今(日本名;宮廷女官チャングムの誓い)』が人気を得ると歴史ドラマが相次いで作られた。日本で撮影が行われたドラマもあるが、出演者やスタッフの移動費など制作会社の負担が大きかった。そこで、演出家が主導して日本の江戸時代を再現した撮影場が在韓米軍訓練場の跡地に作られた。最近、大幅な補修工事を行なって、新たに開業したのが日本テーマパーク「にじもりスタジオ」だ」

 

日本テーマパーク「にじもりスタジオ」が、広告宣伝しないものの静かな人気を得ているという。日本の雰囲気を味わえるのが人気の理由である。

 


(3)「スタジオ内には日本料理店や旅館があり、着物や浴衣のレンタルも利用できる。
運営会社は反日感情を懸念して広告宣伝などを行わず、また、写真を見る限り日本の街並みとは異なる和韓折衷のテーマパークだが、日本を体験できるという評判がSNSで広まった。韓国政府がウィズコロナに伴って観光制限を緩和したことも相まって、多くの若者で賑わっている」

 

2019年7月以降の「反日不買運動」では、ソウルの日本式居酒屋やラーメン屋が大きな痛手を受けた。その反日不買も消えたのだろう。

 

(4)「日本政府の入国規制緩和(注:11月30日から入国禁止)と韓国政府のウィズコロナ宣言(注:11月29日に中止決定)で、観光往来の再開を待ちきれない人たちが空の旅を楽しんでいる。アシアナ航空は往来再開の目処が経っていない8月と9月に、金浦空港を出発し、日本の上空を飛行して済州島に到着する国内線を運行し、続いて仁川や釜山の空港を出発して対馬などの上空を飛行した後、出発地に戻る無着陸観光便を運行した」

 

下線を引いた部分は、初めて聞く話である。日本への「無着陸観光便」が人気を得ているという。

 


(5)「格安航空会社LCCのエアソウルは、鳥取県と香川県の上空を飛行して出発地に戻る便を運行し、利用者には訪日観光再開後に利用できる香川県と鳥取県の無料宿泊券や特産品などが贈呈された。平均搭乗率が95%に達したという。ティーウエイ航空も10月から金浦、仁川、大邱を出発して佐賀県などを上空から見たあと出発地に戻る「無着陸観光飛行」を開始した。10月30日には利用者に佐賀県が用意した記念品がプレゼントされ、2022年まで使用可能な割引クーポンや佐賀県の特産品を抽選でプレゼントするSNSのイベントも実施した」

 

「無着陸観光便」の平均搭乗率が95%というから驚く。香川県と鳥取県の無料宿泊券や特産品などが土産に付いた。これは、破格のサービスである。無料宿泊券の有効期限は23年3月まで。今回の新たなコロナ変種の出現で、22年度中に訪日できなければ、期限延長となろう。

 

(6)「『無着陸観光飛行』の利用者は上空からでも日本を見たいという人たちばかりではない。日本の上空を旋回する無着陸観光飛行は国際線として運行されることからパスポートが必要だが、空港や市内の免税店を利用できる。無着陸観光飛行利用者1人あたりの免税額の上限は600ドル、購入限度額は5000ドルで、グアム上空などに向かう無着陸観光がはじまった昨年12月から今年10月までの間に約2万6000人が利用し、1万1291人が免税上限の超過分に相当する税金を納めたという」

 

「無着陸観光飛行」でも、出国する以上はパスポートが必要になる。同時に、「免税品」購入のチャンスがある。この目当てに搭乗する人もいるはず。なかなかの商魂である。

 


(7)「日本にも韓国旅行の再開を待ち切れない人たちがいる。韓国観光公社が11月14日、東京・品川区の会議場で、アシアナ航空の機内食を体験するイベントを実施した。機内食を食べるだけという約1時間のイベントだったが、100人の募集に対して2000人近い応募があったという。参加者たちが搭乗券を使って入場し、機内と同じように並べられた座席に着くと、客室乗務員がカートを押しながらビビンバやコチュジャン、韓国のりなどの機内食を提供した」

 

日本にも、「韓国好き」がいても不思議はない。アシアナ航空の機内食を体験するイベントでは、定員100人に10倍の申込みがあった。ビビンバやコチュジャン、韓国のりなどの機内食を購入したという。民放によると、東京の新大久保にある韓国スパーが人気だ。韓国商品がずらりと陳列され、「100円韓国ラーメン」が売れ筋とか。千客万来という。

 

8)「ニュースを見た韓国人は、「自分は日本旅行の禁断症状が出ている」「韓国人と日本人は互いの文化が大好きなのに、政界が紛乱をあおっている」「互いの文化を理解し合えるのは良いことだ」「文政権の5年間の反日扇動で得たものは何だったのか」などと投稿した。いまだノージャパンを叫ぶ人たちがいる一方で、若者たちは日本料理店や日本テーマパークで日本擬似体験を楽しんでおり、反日と日本好きの二極化が進んでいる」

 

韓国の若者は、文政権離れを起している。反日の一方で、日本好き(保守派志向)がいるはずだ。韓国では4割が保守派である。この層は、日本に潜在的な親しみを持っている。ただ、それを口には出せないだけなのだ。