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日本もついに、「オミクロン株感染者」が出た。11月30日、ナミビアから成田空港に到着30代男性が、新たな変異株「オミクロン株」に感染していたことが分かった。国内で確認されたのは初めてである。水際作戦で、食止められるかどうかである。

 

「オミクロン株」の感染源とされる南アでは、どういう状況なのか。遠隔地だけに日本へ情報は入りくいが、米国の情報収集力によって得られた「オミクロン株」の実態によれば、大騒ぎするほどのことではなさそうである。むろん、詳細な「オミクロン株」の遺伝子分析が終わっていない段階で、軽率な結論は慎まなければならない。だが、状況証拠を見ればそういうイメージが湧いてくる。

 


南アの保健相は11月26日、オミクロン株に対するワクチンの感染予防効果が低下したとしても、重症化や死亡を防ぐ効果はあるとみていると述べた。科学者や医師によると、南アでは現在、入院患者4人につき3人程度がワクチンを接種しておらず、その他は1回しか接種していないという。これでは、急激な感染拡大に見舞われたのも自然という感じを受ける。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)は、「南アのオミクロン株感染者、入院急増も重症化は増えず」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が確認された南アフリカで、感染の中心地となっているハウテン州の入院患者がここ2週間で急増している。ただ、重症化した患者は比較的少ないという。南ア国立感染症研究所(NICD)が明らかにした。

 


(1)「ハウテン州は首都プレトリアや経済の中心地であるヨハネスブルグを含む。NICDによると、感染拡大が始まったプレトリア周辺では2歳未満の子どもの入院急増も目立つ。ただ、予防的な入院のケースも多いもようだという。NICDの公衆衛生専門家、ワシラ・ジャサット氏は、ここ2週間の全体の入院患者のうち、コロナ感染症と診断された人の割合はこれまでに南アを襲った感染の波の場合と同程度だと述べた」

 

南アの公衆衛生専門家によれば、「オミクロン株」でコロナ感染症と診断された人の割合は

これまでのコロナ感染者の割合と変わらないという。予防的意味での入院が増えているので、これが理由で感染者急増と見なされている背景かも知れない。

 

(2)「世界保健機関(WHO)は先週、南アなどで見つかったオミクロンを「懸念される変異株(VOC)」に指定。NICDのデータは、オミクロンの人体への影響や他のコロナ変異株との違いについての初期の手掛かりを与える形となった。ただ、医師や専門家は、報告された患者数がまだ少ないことや、感染が初期段階であることなどから、他の変異株と比較したオミクロンの深刻さなどについて明確な結論を導き出すことは難しいとしている」

 

「オミクロン株」は、まだ感染初期のために深刻さなどについて明確な結論を出せないという。現状では、予防的意味で入院した者が増えていることから、外部に誇大報道されている面もあろう。

 

(3)「NICDのデータによると、ハウテン州では11月27日までの2週間で、1日当たりのコロナ感染による入院者数が平均49人に急増。その前の2週間では、1日当たり平均は18人だった。1日当たりの死者数に変化は見られない。南アでは11月11日に初めてオミクロン感染が確認された。コロナ感染者はそれ以降急増し、1日当たり300人程度だったのが28日には3220人に膨らんだ」

 

NICDのデータでは、感染者が急増していることになっている。実際は、予防的な意味での入院者がいるというから、「正味」の感染者数把握は困難である。

 

(4)「ハウテン州を中心としたオミクロン流行は、プレトリア周辺の大学生の年齢層で初めて確認された。一般的に若年層は、高齢者層と比べてコロナ感染で重症化する可能性がはるかに低いため、南アでのデータからオミクロン感染に関する結論を出すことは困難だという。多くの国と同様に、南アでは若年層のコロナワクチン接種率が高齢者層に比べて極めて低い。南アの人口6000万人のうち、ワクチン接種を完了した割合は24%強にとどまる。NICDのジャサット氏によると、ハウテン州で入院したコロナ患者の約4分の1がワクチンを接種していた

 

下線部の記事については、補足が必要である。コロナ患者の4分の3はワクチン未接種者、残り4分の1は、接種が1回だけで2回済ませていないという。この事実は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月30日付)の別の記事で指摘している。となれば、ワクチン接種を2回済ませ、かつ3回目を受ける先進国では「オミクロン」に感染する確率が下がるであろう。