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韓国の高齢者は、気の毒な存在である。年金受給者は5割強であり、苦しい生活を送っている。その上、政府が11月から「ウィズコロナ」策に踏み切った影響で、感染が拡大している。その影響は、高齢者にしわ寄せされたのだ。

 

韓国政府は11月29日、段階的日常回復(ウィズコロナ)2次改編を留保し、4週間現在の状態を継続し、特別防疫対策を推進すると発表した。専門家は、この対策に防疫強化方案がほとんど入っていないとして強い懸念を示している。一見、ウィズコロナを中断するようなポーズを取りながら、現状は全く変わらないというのだ。

 

防疫パス(接種完了・陰性確認制)有効期間を6カ月に設定し、すべての感染者に対して在宅治療を原則としながら、18歳以上の一般成人を対象に追加接種(ブースターショット)を実施するという内容が盛り込まれた。経口用治療薬(飲み薬)の年内導入も推進するというのだ。呆れたことに、「すべての感染者に対して在宅治療を原則とする」というとんでもないルールを作った。これが、「K防疫モデル」と自慢した国のやることか、という批判を呼んでいる。

つまり、防疫専門家が主張してきた、「私的な集まりと営業時間の制限、防疫パスの拡大適用など」は、今回の対策に含まれなかった。梨大木洞病院呼吸器内科のチョン・ウンミ教授は「自営業者のために防疫を放棄した」と酷評したほど。大統領選挙で自営業者の支持を得たいので、「ウィズコロナ」の抜本的な見直しをしなかったのである。

 

『聯合ニュース』(11月30日付)は、高齢者の感染拡大懸念、「時間差を置いて重症者が増加―韓国政府」と題する記事を掲載した。


(1)「韓国政府の中央事故収拾本部の孫映レ(ソン・ヨンレ)社会戦略班長は30日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大と関連し、重症化リスクの高い高齢者層の感染増加に懸念を示した。「感染者の総数よりも高齢の感染者の規模と絶対数が非常に重要だ」と述べ、高齢の感染者の割合が下がらず、逆に少しずつ高まることで、1週間程度の時間差を置いて重篤・重症患者の増加につながっていると説明した」

 

感染者総数に関心が集まっているが、高齢者の感染割合の上昇に注目すべきである。確実に重症者の数が増えるという深刻な事態を迎えている。

 

(2)「孫氏は、重篤・重症患者の85%以上が60歳以上だが、ワクチンの接種を完了している場合は未接種者に比べ重症化する割合が3分の1ほどに低下するといった効果が依然表れていると伝えた。高齢者層を中心に重篤・重症患者が連日過去最多を更新し、病床の状況も限界に達している。首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)で入院を1日以上待っている患者は、同日時点で887人に達する」

 

重症者患者の増加で、病床は限界点に達している。この結果、首都圏で1日以上の入院待ちが、887人にもなっているのだ。この状態で、「ウィズコロナ」の抜本的な見直しをしないとは、異常な事態というべきだろう。

 


(3)「孫氏は、病床の空きを待つ人のうち3分の2は「生活治療センター」、3分の1は感染症専門病院への入院待機者だとし、「優先順位に従い、入院しての治療が必要な患者から入院できるようにしている。重症者に病床が割り当てられないケースが出ないよう、モニタリングと緊急移送を強化している」と説明した。政府は首都圏の上級総合病院と病床の追加確保に向けた議論を続けている。権徳チョル(クォン・ドクチョル)保健福祉部長官は同日、首都圏の上級総合病院の院長らと会合し、病床不足への対応策を話し合った。今月19日には金富謙(キム・ブギョム)首相も同様の会合を開いている」

 

入院待機者の3分の1は、感染症専門病院という。これは、重症者という意味でないのか。政府は、事態の重大さを隠蔽して大統領選挙で不利にならぬように姑息な手段を取っているという印象を拭えないのだ。

 


(4)「臨時の病床設置にも取り組んでいる。孫氏は「1~2カ所の病院を対象に、コンテナを利用した臨時施設で診療エリアを設ける方法を試してみる計画だ」と伝え、これは既存の病院の建物と動線を分けられるため感染管理に有利な上、医療従事者の業務の負担も下げられると説明した」


コンテナを利用して、臨時施設で診療エリアを設けるという。野戦病院並みの緊張状態に置かれている。ここまで、医療陣をてんてこ舞いさせながら「ウィズコロナ」を手直ししないのは、どう見ても選挙対策と見るほかない。

今回、政府の出した対策は、苦し紛れのものという批判が絶えない。

 

「ソウル大学医大医療管理学科のキム・ユン教授は、『現在、重篤患者が大幅に増えて入院できず、待機する患者が増えると同時に死亡者も増えているが、とんでもない対策を出した』としながら、『在宅治療は生活治療センターの代替策だが、何かしら(対策を)出さなくてはならないから、対策だと言って出して体面を整えようとした』と批判した」(『中央日報』11月30日付)。