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野党第一党、立憲民主党の新代表に泉健太氏が当選した。代表選の投票状況を見ると、興味深い結果が浮かび出てきた。これまでの党内主流のリベラル派が後退して、保守派が指導権を握ったことである。具体的には、安全保障政策の確立である。旧日本社会党時代から堅持してきた「消極的防衛論」が、「積極的防衛論」を議論できる基盤ができたということだろう。

 

米国を見ても分かるが、二大政党において政権交代が頻繁行なわれる背景は、安全保障政策において「水と油」の関係でないことである。有権者は、その点で安心していられる。こういう側面を無視して、「政権の受け皿になれる野党」と言っても無意味である。泉氏が、立民代表に選ばれたことは、自民党も褌の締め直しを求められる。

 


『日本経済新聞』(12月1日付)は、「
泉氏『野党共闘修正探る』立民代表選、保守票を集約 共産との合意『現在はない』」と題する記事を掲載した。

 

立憲民主党の代表選は中道から保守系の議員が支持する泉健太氏が勝利した。決選投票でリベラル系のグループを基盤とする逢坂誠二氏との一騎打ちを制した。来夏の参院選に向けて党内をまとめながら共産党との共闘路線の修正を探る。

 

(1)「泉氏は1回目の投票で国会議員と公認候補予定者の計286ポイントのうち96ポイントを得た。他の3候補は50~70ポイント台だった。党員・協力党員およそ10万人の票でも3割強を取り首位だった。地方議員票のみ143ポイントのうち48ポイントを取った逢坂氏と僅差の次点だった。決選投票で泉氏が得た国会議員のポイントは1回目での小川淳也氏の分を上乗せした数字に近い。両氏は民放番組で共産党との共闘で失ったものがあるかと聞かれて「ある」と回答した共通点がある。中道から保守の票を集約したもようだ。逢坂氏のポイントは同じリベラル系の西村智奈美氏が1回目で得たポイントを足した水準だった。保守系とリベラル系がそれぞれ泉氏と逢坂氏に分かれて投票した可能性が高い。決選投票のポイントは6割を泉氏、4割を逢坂氏がとった」

 


立民が、決戦投票で保守系とリベラル系の二つに分かれ、勢力分野が明らかになった。泉氏の当選は、保守系の支持を得た結果である。保守系と言っても、「共産党と連携しない」という程度の話である。共産党の安保政策は、日本の支配的な見解から大きく離れており、この政党との連携は、「選挙対策」という目先利益を狙ったものに映る。

 

(2)「立民は旧社会党系から保守系まで幅広い立場の議員が集まる「寄り合い所帯」で、原発や安保など政策面の食い違いもある。挙党体制を打ち出したのは、まとまりを欠きやすい状況への警戒ともいえる。参院選に向けて党内調整が必要なのは共産党を含む野党共闘のあり方だ。先の衆院選は候補者を一本化して小選挙区で議席を増やした一方、比例代表でそれ以上の議席を減らした。泉氏は記者会見で共闘路線について「単に継続ということではなく、まず(衆院選の)総括をしなければならない。その中で今後のことは考えたい」と慎重な言い回しで修正をにじませた」。

 

政策の基本綱領が違う政党が、「当選者を増やす」目的で連携するのは、「野合」という非難を浴びても弁解できないであろう。今回、維新が議席を増やしたのは安保政策で自民党と大差なく、自民批判の「受け皿」になれた結果である。「おこぼれ頂戴」でなく、有権者が安心して一票を託せる立民に脱皮する努力が必要だ。それには、目先の「選挙対策」という小賢しいことを止めるべきだろう。小沢一郎的な発想は時代遅れになった。

 


(3)「政権交代した場合に「限定的な閣外からの協力」を共産党から得ると9月に合意したことに関しては「衆院選に向けて交わしたものと理解している。現時点で何かが存在しているのではない」と指摘。現在は効力がないとの認識を表明した」

 

立民と共産党との選挙合意は、文字通り、選挙目的である。その目的が、逆効果になった以上、白紙は当然のことだ。

 

(4)「自公政権との対峙の仕方は変える意欲をみせる。代表選で「政策立案型政党を目指す」と訴えた。「批判ばかりの野党」というイメージの脱却を意識し、公開の場で官僚らを問いただす「野党合同ヒアリング」をいったんやめるとも提唱した。各党は泉氏が党内をまとめて方向性を示せるかを見極める。国民民主党の玉木雄一郎代表は「共産党との関係がべったりであれば連携は難しい。(新執行部の)判断を見定めたい」と話す。共産党の志位和夫委員長は立民との合意について「わが党は誠実に順守したいし、立民にもそういう立場で対応してもらいたい」と共闘継続を呼びかけた。自民党の茂木敏充幹事長は「共産党との関係を明確にしてほしい」と泉氏に求めた」

 

立民は、政治ショーを止めて地道な政策立案で自民党と競争することだ。例えば賃上げについて、労働分配率のルール化の提唱をすべきである。付加価値の65%を賃上げファンドにする、といった具体的な提案をすれば、国民の見る目が変わるはずだ。ただ、ストライキで賃上げを勝ち取るという「腕力」に訴える前に、「頭脳」を働かせるべきである。