ムシトリナデシコ
   


来年3月の大統領選を前に、最大野党「国民の力」は、選挙対策本部の人選をめぐって揉めてきた。これを反映して、「国民の力」代表候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、最新世論調査で与党「国民の力」代表候補の李在明(イ・ジェミョン)氏と、36%同率で並ばれる結果になった。それまでは、10ポイントの差で引離していたのである。

 

韓国では、選挙運動でも人選をめぐって対立することはままあった。今回の最大野党「国民の力」では、ユン氏が元検察総長であったことから、検察出身者が大挙して応援する事態となった。これを見た与党の李候補は「検察共和国になるかも」と批判して、国民の検察嫌いを煽り、支持率挽回を図った。

 

この動きに「国民の力」は、危機感を強め選挙対策本部の陣容を立て直すことで意見調整がなった。新たな選挙対策本部の責任者には、大統領選挙「当選請負人」と言われる金鐘仁(キム・ジョンイン)氏が就任することになった。

 

金氏は、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の公約づくりの責任者であった。だが、朴氏は大統領就任後に公約の経済民主化に取り組まないと非難。反対党の「共に民主党」の政策づくりや非常対策委員長に就任した。文在寅(ムン・ジェイン)氏の大統領当選では、大きな力になったのだ。この「共に民主党」もその後、横暴な議会運営をしたことに失望して離党。

 

金氏は再び、「国民の力」の非常対策委員長へ就任した。今年4月の二大市長選(ソウル・釜山)では、「国民の力」が圧勝するなど、金氏は行く先々で「勝利をもたらす請負人」になっている。選挙の公約づくりで、有権者を引きつける斬新さを持っているからだ。それだけに、人一倍責任感も強く党運営が軌道を外れると、身を退く清廉さを持っている。

 


この金氏が、大統領選で「国民の力」のユン候補を支えて総指揮を執ることになった。どのような公約を打ち出すか注目の的だ。「国民の力」の党代表に30代で国会議員経験のない
李俊錫イ・ジュンソク)を当選させたのも金氏と言われている。時代を読む力では、群を抜くものがあるようだ。

 

『ハンギョレ新聞』(12月4日付)は、「韓国ギャラップの世論調査で与党イ候補と野党ユン候補が36%で同率」と題する記事を掲載した。

 

共に民主党のイ・ジェミョン大統領選候補と国民の力のユン・ソクヨル大統領選候補の支持率が同率となった世論調査の結果が出た。最近の国民の力の内輪もめが支持率の変化に影響を及ぼしたもようだ。

 

(1)「韓国ギャラップのチャン・ドクヒョン研究委員は本紙の取材に「大統領選挙候補選出などのコンベンション効果でユン候補に期待が集まる状況だったが、キム・ジョンイン委員長の迎え入れ問題とイ・ジュンソク代表の非公開の行動などの軋轢が露呈し、支持率が維持されなかった」とし、「イ・ジェミョン候補の支持率が上がったこともこれに対する反射効果とみられる」と分析した」

 


『ハンギョレ新聞』は政権支持メディアである。世論調査の支持率で、与党候補の李氏と「国民の力」候補ユン氏が同率で並んだことに、「安堵の色」を見せていないのだ。それは、「国民の力」のゴタゴタの影響という「敵失」に基づくものであることを認識している結果だ。

 

「国民の力」は、前述のように揉めごとが収まった。「当選請負人」の金氏が、選挙運動の総指揮を取ることになった。次回の世論調査には、これがどのように反映するか。『ハンギョレ新聞』でなくても、最大の関心を持つテーマである。

 

(2)「次期大統領選挙の結果については「政権交代のために野党候補が当選した方が良い」が53%で、「政権継承のため与党候補が当選した方が良い」が36%だった。2週間前の調査に比べ、「政権交代」世論が4ポイント減り、「政権継承」世論は3ポイント増えた。議題と戦略グループ「ザ・モア」のユン・テゴン分析室長は、「政権交代の世論が高まっているが、それが野党のユン・ソクヨル候補に集中していないのは、最近の状況に対する警告だ」とし、「与野党候補の支持率の膠着状態は、ユン候補がどうするかによって、今後動く可能性が高い」と述べた」

 


政権交代論 53%

政権継続論 36%

この交代論と継続論は、3~4ポイントの動きにしか過ぎなかった。「国民の力」がゴタゴタしていても、有権者の政権交代論が53%もあることは、いかに文政権が嫌われているかを示している。日本の民主党政権がミソをつけたように、「共に民主党」は政権担当能力がないと見放されているのであろう。

 

韓国の世論調査では、「35%対55%」が基本というプロの見方がある。この差に開くと、固有の支持層が離れて(35%)、相手陣営(55%)の支持に回ったと判断され、35%陣営に敗北と55%陣営の勝利が決定的になるというもの。この背景には世論が、進歩派:保守派:中立が40:40:20という割合で分かれているという前提がある。35%になるのは、固有の支持層が離れたという意味なのだ。

 

政権交代論は、今年に入って強くなっている。この「35%対55%」ルールの近傍に収まっているのだ。次期大統領選では、与党敗北の公算が強いというのが世論調査の示唆である。