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韓国文政権は、本当に民主主義国の政権であるのか、極めて疑わしい部分がある。価値外交において、中朝へ肩入れしているからだ。文政権の言分によれば、それが「均衡ある外交」であると言う。文政権の本質は民族主義である。決してリベラル派ではない。強い保守性を持った政権である。韓国では、保守派がリベラル派と言える。

 

『中央日報』(1月18日付)は、「米国、EU・インドなどと連携で中国への圧力加速」と題するコラムを掲載した。筆者は、チェ・ビョンイル韓国高等教育財団事務総長である。

 

米中貿易戦争は技術戦争と軍事戦争に続いて結局は体制戦争につながる。米中覇権競争の複合構図だ。米中貿易合意後の過去2年間、中国共産党の経済統制権はさらに強まった。サイバー空間を掌握する中国ビッグテック企業の自立権は極度に弱まった。体制の安定性という至上目標の下、異見は認められない。デジタル時代にふさわしくない中国規制システムの落後性を指摘したアリババの馬雲(ジャック・マー)氏が象徴的だ。

 


(1)「米国は、交渉を通じて中国との貿易問題を解消できるだろうか。強気のトランプ大統領に対しても「数字は可能だが、システムは交渉の対象でない」と断固として一線を画した中国だ。第1段階合意という表現はそれで同床異夢だった。2020年11月、目の前に近づいた選挙を意識して自身の支持階層に「私だけが中国を屈服させることができた」と主張したかったトランプ大統領。米国の高まる高関税障壁を避けたい習近平主席。この2つの間の利害計算が絶妙に合致したのが第1段階合意だった」

 

日米貿易交渉は、第1段階合意で終わっており、第2段階へ進む可能性は米中ともにない。米国における交渉主役が、トランプからバイデンへ代わったからだ。


(2)「バイデン大統領には中国と第2段階交渉に臨む考えがない。また、植物化した世界貿易機関(WTO)多国間体制を復元して中国の構造的・形態的問題を扱う考えもない。そうするにはバイデン大統領に与えられた時間があまりにも短い。トランプ前大統領は始終一貫して米国のパワーに依存しながら米国単独で中国に圧力を加えることに熱中した。だが、バイデン大統領は価値同盟の旗を掲げて反中国連合戦線を構成しようとする。反中国連合が中国を交渉の場に引き込むための戦略かもしれない。中国は、こうした方式の協議に応じる名分を探せないだろう」

 

バイデンは、同盟国の価値外交に着目して、反中連合を結成して中国へ圧力を掛ける方針である。これに対して、中国は対抗手段を持たない。

 


(3)「バイデン大統領は、執権初年度に半導体・バッテリーなど核心素材の中国依存的グローバルサプライチェーンの再編に着手した。執権2年目には米国中心のサプライチェーンに参加する連合国家を物色し、連携を本格化する構想だ。欧州連合(EU)と連携する貿易技術委員会(TTC)、インド太平洋経済協議体が具体化する見通しだ。米国議会から交渉権限を受けなければならず、交渉妥結後に議会表決手続きを踏まなければならない従来の交渉方式では、デジタル覇権競争とコロナパンデミック(大流行)が同時に進行する状況で中国を十分に牽制できないというのがバイデン大統領の判断だ」

 

バイデンは、EUとインド太平洋戦略(クアッド=日米豪印)の国々を結びつけた、グローバルサプライチェーンの再編に着手する。これは、交渉妥結後に米議会の表決手続きを踏む形式を取らず、実質で勝負する体制をつくるだろう。韓国は、ここで「蚊帳の外」に置かれている。米韓同盟に安住していると取り残される危険性があるのだ。

 


(4)「米国は、EUおよびインド太平洋同盟国と半導体・バッテリーなど戦略品目サプライチェーンを構築する時、中国を排除する中国包囲戦略だけでは足りない。米国の自国力量強化はバイデン大統領がさらに注力している分野だ。「BBB(Build Back Better)」と命名された米国のインフラ・人的資産に対する投資拡大構想がそれだ。「米国をさらに強く建設する」と解釈されるBBBは、米国の革新力強化と中産層の雇用創出を同時に狙ったバイデン大統領の会心のカードだ」

 

バイデンは、米国内のインフラ・人的投資に積極的である。「BBB」と名付けられる国内復興策を立てている。ただこの法案は、上院での民主党議員一名の反対で揺らいでいる。成立すれば、「米国再興」になるはずだ。

 

(5)「冷戦終息後30年間続いた「国境のないグローバル化」が揺らいでいる。基礎技術開発-核心素材-組立の全過程にわたりコスト最小化の原理が支配するグローバルサプライチェーンに亀裂が生じている。いわゆる覇権競争時代だ。経済運営で効率性が至高至善の時代から安定性がさらに重要な時代に移っている。経済学の教科書を新しく書き直すほどの状況だ。効率性だけが経済運営の究極的な基準だった脱冷戦時代の観念と経験では、米中新冷戦時代に生存と繁栄を模索することはできない。効率性から安全性に経済運営のパラダイムが変化し、国家の政策力量と想像力が試されることになった」

 

経済学の教科書が効率性第一から、安定供給重視へと大きく変わろうとしている。これは、米中対立によるデカップリングやパンデミックによる影響が、世界経済全体の仕組みを変えるほどの衝撃を与えたからだ。韓国文政権には、こういう経済環境激変について十分な認識があるとは思えない。二股などと季節外れの発言をおこなっているからだ。

 


(6)「コロナパンデミックで最も重要な点に浮上したのは、主権国家が統制可能領域内に生産基盤を確保することだ。体制が異なる国が技術-安保の結びつきが強い品目のグローバルサプライチェーンを共有した時代に終焉を告げている。その分裂の断層線上に韓国が立っている。外生的な衝撃は避けられないが、どれほど早く回復できるかは国家の実力にかかっている。明確な混沌の時代に協力と共存を叫ぶのは、衝撃は来ないと信じるように愚かだ」

 

中国による世界覇権への挑戦が、各国に対して否応なく選択を迫っている。中国の人権蹂躙の政策を受入れられない民主主義国は、中国から離れる以外に選択肢がないのだ。中国へ接近すれば、中国の価値観を受入れたと見なされ勝ちである。韓国は、「人権尊重」という一点において政策を選ぶべきである。第二次世界大戦中に起こった、「ファシズム」との戦いと似た構図がこれから始まる。この時代背景において、韓国の二股外交は国を滅ぼす要因となろう。