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韓国では、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権になった途端に日韓航空路の再開に向けて動きが始まった。感情的にもつれている日韓両国だが、ともかく人の往来を活発にすれば気持ちも和むであろうという狙いからだ。

 

韓国国土交通部が、金浦(キンポ)-羽田路線の早期運航再開のために、外交部・防疫当局など関係機関と協議を進めているという。日本の防疫状況も考慮する必要があり、国土交通省など日本側の関係機関とも緊密に協議していると説明した。航空業界では、運航許可などの手続きを考慮すると、早ければ6月に金浦-羽田路線の運航を再開できると期待している。『中央日報』(5月13日付)が報じた。

 


過去、韓国の訪日旅行客は中国に次いで2位であった。反日運動が展開されていた中でも、「日本旅行」は一定の人気を得ていた。この「日本人気」が、日韓空路の増便によって再び盛り上がるか。

 

韓国では、ロシアのウクライナ侵攻によって、安全保障問題が浮上している。文政権下では、中朝ロと関係を深めれば安心と言った幼稚な意識であった。それが、保守の尹政権に代わったことで、現実的な認識になっている。そのキーワードは、「日韓協力」としている。

 

『中央日報』(5月13日付)は、「激しくなる米中対決、日本というカードを活用しよう」と題するコラムを掲載した。申孟浩(シン・メンホ)元駐カナダ大使である。

 

尹錫悦政権の外交課題に関する世論調査で、「日本との関係改善」が最下位の6位に挙げられた。「韓米日安保協力」を3位と比較的重視しながら中国に対する強い警戒心も表わした。論理的に見れば、中国を牽制して韓日米安保協力を図ろうとするなら日本との関係改善が必要だ。それでも世論は、日本に対し中国・北朝鮮の次に強い不信感を見せ関係改善を軽視している。言ってみれば安全保障上は日本が必要だが拒否感のため関係改善は避けて、韓米日協力は米国に委託しようという計算とみられる。

 

(1)「米中戦略競争の状況で、韓国に加えられる選択の圧力は大きくなり、決定が招く不利益は計り難い。覇権国の間で勢力シフトが起きかねない未曾有の状況で、韓国は米中の二者択一を超え日本と組んでこそ有利だ。こうした観点で見れば次期政権の最優先対外課題は韓日関係改善だ」

 

韓国は、保守政権になってようやく外交常識がよみがえってきそうである。文政権の対日外交は酷かった。日韓問題を内政に利用して、支持率を高めるテコにしていた。

 

(2)「同じ世論調査で1位になった「韓米同盟強化」は特に困難はないように見える。2位である「北朝鮮非核化」はいくらがんばっても具体的成果がない公算が大きい。これに対し、韓日関係は韓国の意志によって期待以上の大きな進展を見られる分野だ。両国関係を放置したり国内政治的に利用するには、とても多くの利益がかかわっているのが韓日関係だ」

 

韓国内部では、文政権の反日運動が染み渡っている。「日本は悪」というイメージを刷り込んだのである。北朝鮮並の反日であった。

 


(3)「浮上する中国に対応し韓国の戦略空間を作るためには、北東アジアで力の均衡が必要だが、いつまでも米国を信じているだけではいられない。米国は、政権と関係なく「米国優先主義」が深まっている。自国の利益に合致しなければ同盟も損切りするし、最悪の場合、孤立した韓国は中国の影響圏に繰り込まれる懸念もある」

 

米国は、同盟国をランク付している。米国の利益にもなる同盟国を大事にする。その意味で日本は、アングロサクソン(英豪加)並の信頼を得ている。日本の国益にも大きく貢献する筈だ。韓国が、自国の利益だけを強調してはだめなのだ。「サービス・アンド・サクリファイス」の精神が求められる。日本と喧嘩をしている状況では、孤立するだけだ。韓国の我が強すぎる結果である。

 


(4)「韓日が緊密に協力する場合、両国ともに中国の求心力に耐える戦略的自律性を確保する余地ができる。中国の圧力に共同対応でき、負担を共有して分散できるはずだ。米国が北東アジアに残るよう求心役をすることにより米国とさらに対等な関係を構築する基盤になるだろう。韓米日安保協力と韓日中機能協力を調和できる軸になるわけだ。これは米中戦略競争に巻き込まれるより接点を見いだしていく歩みだ」

 

日韓が、昔のように手を取り合える関係に戻れれば、韓国の安全保障の懸念はその分減るであろう。韓国を攻めようという相手国には、韓国の背後に日本もいるとなれば、簡単に手出しできない筈だ。そういう点で、文政権は幼稚な存在であった。

 


(5)「韓日経済は、相互競争的だが補完的な側面も多い。米中の技術脱同調化状況で韓日が技術協力を通じて米中双方の圧力を耐えたり両市場をいずれも活用したりする余地ができるだろう。韓日で重複する産業に対して、供給網をともに確保するためのパートナーになり得る。国際舞台でも両国がともに推進するアジェンダは相当な影響力を発揮するだろう」

 

日韓の経済関係は、技術面から言えば日本が「主」で韓国は「従」である。韓国の対日貿易収支が万年赤字である理由はそこにある。

 

(6)「それならば、だれが韓日関係改善の役割をするのか。両国の指導者の責任かもしれないが、票が命である政治家は世論に反する政策を展開するのが難しい。旧日本軍慰安婦と徴用問題、日本の輸出規制でこじれるだけこじれた状況ではさらにそうだ。韓日関係改善のカギは、両国国民にある。その中でも先に手を差し出して大きな役割をできるのは被害者側だ。韓国の政治・経済・文化的成就は途轍もない。過去史問題でももう自尊感を持って堂々と対応すれば良いだろう」

 

韓国は、日韓外交に歴史問題を絡めてきた。これが、最大の失策である。日本には日本の言分がある。そういう微妙な問題を、韓国は先頭に押し立ててきた。外交戦術では最低最悪なやり方である。文氏は、それが分らなかったのだ。

 


(7)「2005年、日本の教科書歪曲に対し強硬対応方針を明らかにした当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の国民向け談話は依然として響く。「不信と憎しみの感情が芽生えれば、再び途方もない不幸を避けることができないでしょう。ある程度の感情表現は当然ですが、節度を失ってはいけません。慎重に判断し、話し、行動しなければなりません」。両国関係改善は障害は多いが、韓国が日本に対し長い呼吸で「慎重に判断し、話し、行動」することから始めるならば米中競争の渦中で韓国ははより良い国に発展できると信じる

下線部は、日本に対して感情的な振る舞いをしたならば、一発でアウトになることを示唆している。日本は過去、韓国のためにどれだけ経済的に支援してきたか。それにも関わらず、「謝罪せよ、賠償せよ」と言い募れば、「それならば結構です、もう来ないでください」という返事にならざるを得ない。そのことを肝に銘じるべきだ。