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『日本経済新聞 電子版』(5月14日付)は、「ロシア軍、第2の都市ハリコフから撤退 地元市長」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナ北東部ハリコフのテレコフ市長は14日、ロシア軍が市街地から対ロ国境方面に撤退していると英BBCに語った。ハリコフではウクライナ軍の攻勢が続いており、米シンクタンクの「戦争研究所(ISW)」は13日に「ウクライナはハリコフの戦いに勝利したように見える」と分析していた。

 

(1)「ハリコフは、ウクライナ第2の都市で、ロシア国境から約50キロメートルの位置にある。2月24日のウクライナ侵攻開始当初から攻撃されており、テレコフ市長は「ロシア軍はハリコフを絶え間なく砲撃していたが、国境方面に追い返すことができた」と話した。ISWは「首都キーウ(キエフ)を占領しようとしたロシア軍にしたように、ハリコフ周辺からもロシア軍を追い出した」と指摘している。ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、ビデオメッセージで「ハリコフ地方の段階的な解放は、我々が誰一人も敵に委ねないことを証明している」と強調していた」

 

ウクライナ軍は、西側諸国からの武器支援でロシア軍を押し返している。米軍から提供された榴弾砲が威力を発揮しているという。

 


ロシア軍が、ハリコフから撤退したのはドネツ川の渡河作戦に失敗した結果と見られる。『読売新聞 電子版』(5月14日付)は、次のように報じている。

 

(2)「米英の国防当局は13日、ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク州)の制圧を目指すロシア軍が渡河作戦中にウクライナ軍の攻撃を受け、重大な損失を被ったことを明らかにした。露軍が渡河を試みたのはルハンスク州西部のドネツ川。ウクライナ軍はSNSで、露軍部隊の渡河を9回阻止し、計70台以上の戦車や装甲車などを破壊したと説明した。米国防総省高官は、露軍は渡河作戦の失敗で兵力をウクライナに送り込めず、「苦戦の要因にもなっている」と指摘。ドンバス地方制圧を目指す露軍の作戦に、当初の計画より少なくとも2週間の遅れが生じているとの分析を示した。英国防省は、「戦果を示さなければならない露軍司令官の重圧を物語っている」とした」

 

ロシア軍が、圧倒的な武器・兵員を擁しながら、劣勢のウクライナ軍に苦戦している理由は、ウクライナ軍の機動的な戦い方にあるという。

 


米『CNN』(5月10日付)は、「
米陸軍の退役少将に聞く、ウクライナが勝利するために必要なこと」と題する記事を掲載した。

 

米特殊作戦軍を欧州で率いた経歴を持つ陸軍の退役少将のマイク・レパス氏は、過去6年間、米政府から請け負う形でウクライナ軍への助言を行ってきた。先月はポーランドとウクライナ西部を訪れ、ウクライナでの戦争の道筋に関するより深い知見を得た。

 

(3)「なぜロシアは、あまりうまく機能しない戦闘モデルに固執するのか?彼らは、戦い方において融通が利かないからだ。言ってみれば、彼らがウクライナでの戦争の開始当初試みたのは奇襲だった。迅速な攻撃で首都キーウ(キエフ)を奪取しようとしたがうまくいかず、コテンパンにやられた。そこで火力のすべてを東部と南部に振り向け、大規模な砲撃を実施した。標的を狙うか、または接近経路に沿う形で砲弾を撃ち込んだ。目の前のものをほぼ全て破壊してから、彼らは整然と進軍していく。つまりこれは機動戦ではなく、火力による消耗戦にほかならない。火力を基調にした軍隊は、我々西側諸国のそれと正反対だ。我々の軍隊は機動力に基礎を置いている」

 

このパラグラフで指摘されている点は、すべて納得である。ウクライナ市街地が砲撃によって、これでもか、これでもかと言うほど破壊され尽くされている。これは、ロシア流の戦い方によるもので火力を基調にした軍隊である。一方、西側諸国の戦い方はそれと正反対である。西側軍隊は、機動力に基礎を置いている,と強調する。先に指摘したように、ロシア軍がドネツ川の渡河作戦に9回も失敗し、計70台以上の戦車や装甲車などを破壊された。これは、西側軍隊の訓練を受けたウクライナ軍の典型的な機動力による反抗作戦の結果であろう。

 

(4)ウクライナで、新たにロシア軍の指揮を執るアレクサンドル・ドゥボルニコフ司令官は徹底して火力を基軸とする消耗戦の申し子だ。機動戦を戦うタイプではない。生涯でやってきたあらゆることをするだろう。行く手にあるすべてを爆破・破壊して、兵士を送り込むだろう」

 

ロシア軍で新たに任命された総合司令官ドゥボルニコフ氏は、徹底して火力を基軸とする消耗戦の申し子で、機動戦を戦うタイプではないという。となれば、ロシア軍は火力を消耗し尽くせば、自ずと戦闘力が落ちる運命のようである。早く、平和が訪れて欲しいと願うばかりだ。