勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

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    日本政府が、決めた福島原発のトリチウムに関する海洋放出について、韓国政府の作業部会は昨年10月に「問題ない」との結論を出していた。また、日本政府が突然、決定したとして非難している点について、「100回も説明した」と反論している。

     

    常識的に考えても、このような重大な決定について、外交的な説明をしないことは考えられない。現に、米国政府は日本の手続きを了解して賛成しているからだ。

     


    『中央日報』(4月15日付)は、「『日本の原発水、影響大きくない』 韓国政府TF、昨年報告書出していた」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府が13日午前、閣議で福島原発汚染水の海洋放出を決定したことと関連し、韓国政府は昨年「科学的に問題ない」という趣旨の報告書を出していたことが確認された。

    (1)「14日、野党「国民の力」の安炳吉(アン・ビョンギル)議員によると、海洋水産部をはじめ政府部署合同タスクフォース(TF、作業部会)は昨年10月、「福島原発汚染水関連現況」という題名の対策報告書を作成した。当時の状況を「日本が福島原子力発電所内に保管中の汚染水処分方案の決定を完了し、発表時期の決定だけが残っている」と評価した報告書で、韓国政府は日本が放出する汚染水が国民と環境に及ぼす影響を分析した」

     

    韓国の政府合同の作業部会が7回も研究して、福島トリチウムの海洋放出は科学的に問題ないと結論をだしていた。また、米国政府も科学的根拠から問題ないと同様の結論である。国際原子力機関も承認済みである。

     


    (2)「報告書によると、原子力安全委員会は専門家懇談会を7回開き、「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題がない」との判断を下した。また、国際標準と認められる原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の手法を使い、日本海岸近隣地域の放射線影響を評価した結果、放射線数値が「妥当だ」とも評価した」

     

    韓国の原子力安全委員会は、専門家懇談会を7回開いており、その結論が「問題ない」「妥当である」となっていた。

     

    (3)「韓国沿岸海域を対象にした放射能濃度調査では、2019年基準0.892~1.88ミリベクレル毎キログラムが検出されたが、これは福島事故以前の平均値(2006~2010年0.864~4.04ミリベクレル毎キログラム)と類似していると分析した。三重水素(トリチウム)露出の可能性に対しては、「生体で濃縮・蓄積されにくく、水産物摂取などによる有意味な被ばくの可能性は非常に低い」とし、汚染水の韓国海域拡散の可能性に対しては「海洋放出から数年後、国内海域に到達しても海流により移動して拡散・希釈されて有意味な影響はないだろう」とした」

     

    下線部は、極めて重要である。トリチウムの海洋放出によって魚介類に摂取されたとしても、人間が被爆する可能性は非常に低いとしている。そのほか、韓国領海へ海洋放出されたトリチウムは海流により移動して影響力なないとまで結論づけている。

     


    (4)「論争が広がると総理室はこの日午後、「一部の専門家の意見が政府の立場にはなりえない」という資料を出した。該当報告書と政府の立場は違うという主張だ。あわせて「韓国政府は日本の汚染水海洋放出決定を断固として反対し、国民の安全に危害を及ぼすいかなる措置も容認できない」と改めて強調した。国民の力のキム・イェリョン報道官は、「日本の原発水に対して政府TFは問題ないという趣旨の報告書を出す一方で青瓦台(チョンワデ、大統領府)は提訴すると言うのなら、国民は一体誰の言葉を信じたらよいのか」とし「汚染水の放出を前もって防ぐことができなかった責任は避けられない」と話した」

     

    韓国政府は、福島原発のトリチウム問題を政治化して、反日世論を焚きつけ文政権の支持率アップにつなげようとしている。だが、このことにより文政権が失う対外的信用力は回復不可能なほどの打撃を受けるだろう。科学的な問題は、冷静に科学的な見地から議論すべきである。

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    韓国が十八番の「反日カード」を切ろうとしている。福島原発トリチウムの海洋放出をめぐって、「念願」の中韓連合を組む勢いである。「事大主義」韓国の実態を示している。

     

    文大統領は14日午前、青瓦台(大統領府)の内部会議で日本の海洋放出決定を巡り、国際海洋法裁判所に対し、暫定措置の要請や提訴する案を積極的に検討するよう指示したという。青瓦台の高官によると、暫定措置は国際海洋法裁判所が最終判断を下すまで日本が海洋に放出しないようにする一種の仮処分申請を意味する。同高官は「国際海洋法裁判所は紛争当事者の利益を補塡(ほてん)するため、または海洋環境に対する重大な損傷を防ぐため、暫定措置を命令できる」と説明。「きょうから法務秘書官室が具体的な検討を始める」と述べた。以上は、『聯合ニュース』(4月14日付)が伝えた。

     


    米国と国際原子力機関(IAEA)が、海洋放出を肯定する姿勢を見せていることに関しては、「他国の立場について言及することは適切ではない」とした上で、「韓国政府はさまざまな対応手段を検討している。国際海洋法裁判所への提訴もその一つ」と述べた。IAEAが、TVに出演して、日本の措置はなんら違法でないと強調している。国際機関が、このような判断を下しているにも関わらず、騒ぎを大きくする狙いは、文政権の支持率低下対策である。反日カードを切れば、再び支持率が高まると計算しているのだ。

     

    韓国外交部と中国外務省はこの日、第1回韓中海洋協力対話をテレビ会議方式で開催し、両国間の海洋協力全般について協議した。この席で両国は、日本が汚染水を海洋放出する方針を固めたことについて、直接的な影響を受ける周辺国との十分な協議がなかったと指摘し、強い遺憾の意と深刻な懸念を共有した。

     


    十分な協議がない状態での海洋放出に反対する立場を改めて確認。今後、日本側の対応が不十分だった場合、外交的、司法的な解決を含め、多様な対応策をそれぞれ検討することを決めた。ただ、外交部当局者によると、国際海洋法裁判所への提訴など具体的な協力について議論する場ではなかったという。以上は、『聯合ニュース』(4月14日付)が報じた。

     

    韓国は、「念願」の中国と共同歩調を取ることを決めた。これで、韓国の底意が透けて見える感じである。「事大主義」そのものである。

     

    自民党の佐藤正久外交部会長は14日、東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の海洋放出をめぐり、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が国際海洋法裁判所への提訴検討を指示したことを非難した。自身のツイッターに「虚勢そのもの。国際海洋法裁判所に提訴すれば赤っ恥! 韓国原発のトリチウム放出量が日本よりも大きいことが明るみになり、笑いものになるだけ」と書き込んだ。以上は、『産経新聞 電子版』(4月14日付)が伝えた。

     


    韓国は、なぜこれだけ騒ぎ立てるのか。

     

    『中央日報』(2020年10月20日付)は、「本、福島汚染水放流にどうしてこれほど過敏に反応するか  韓国月城原発にも言及」と題する記事を掲載した。

     

    東京電力福島第一原発の汚染水を海に放流することに対して、韓国はもちろん日本国内でも懸念が尽きないが、日本政府は眉一つ動かさないでいる。科学的根拠からみた時、このような懸念は杞憂にすぎないとして、かえって国内外の世論戦に積極的に乗り出している。

    (1)「今年5月、日本政府が作成した資料「ALPS処理水について(福島第一原子力発電所の廃炉対策)」には、該当汚染水を放流せざるを得ない状況と、放流妥当性をまとめた日本政府の対応論理がそのまま記されている。資料は汚染水を「処理水」と表現するなど放流物質が環境と人体に無害である点を強調するのに大部分を割愛した」

     

    (2)「放流前に多核種除去設備(ALPS)を使うため、セシウム・コバルト・ストロンチウム・アンチモン・三重水素(トリチウム)など核分裂生成物および活性化物質をほぼ浄化することができるという説明だ。資料にはセシウムの場合、放射能濃度を数億分の1に低減することができるという内容も付け加えられた」

    (3)「問題は、トリチウムと呼ばれる三重水素だ。トリチウムは現技術では処理水から分離が不可能なためだ。特にトリチウムは発がん性物質として知られており、福島汚染水放流をめぐる論争で最大の争点に浮上した。トリチウムをめぐっても「放流されても特に問題ない」という日本側の主張は続く。トリチウムが雨水、海水、水道水はもちろん、体内からも吸収・排泄されるほど幅広く存在しているだけに誇張された恐怖だという論理だ」



    (4)「あわせて日本政府は、資料に韓国の月城(ウォルソン)原子力発電所について言及し、ここからも年間140兆ベクレル(放射能の測定単位)のトリチウムが排出されていると記述した。福島第一原発に貯蔵されている全体トリチウム量が860兆ベクレル、日本に降る雨に含まれる年間トリチウム量が220兆ベクレルである点と照らしてみた時、少なくない量のトリチウムが韓国からも排出されているのに、なぜ日本の汚染水だけに過敏に反応するのかということだ」

     

    韓国は、月城原発のトリチウム排出量がいかに大きいかという問題を抱えながら日本批判に没頭しようとしている。矛楯も甚だしいのだ。

     

    (5)「日本政府は、「世界の原子力施設ではトリチウムが放出されているが、これら施設周辺でトリチウムが原因と思われる影響は見つかっていない」とし、「仮にタンクの全量(福島第一原発に貯蔵されている860兆ベクレル)を一年で処分した場合でも、日本で生活する人が1年間に自然界から受ける放射線(自然放射線)の1/1000以下と、十分に小さいもの」との結論を下している


    韓国では、科学の話を政治問題化して騒ぎ立てるのである。ソウルの自然放射線は、東京よりも高いことを知っているだろうか。下線部はIAEAも承知のはず。なぜ、韓国だけは理解できないのか。風水(占い)の国らしい騒ぎである。

     


    (6)「放流の正当性のために日本政府はIAEAの解釈を引用した。IAEAが昨年2月、日本の報告書に対して「海洋放出は世界中の原子力発電所や核燃料再処理施設で『日常的に実施されている』と記述した」というのだ。日本政府は争点をQ&A形式で整理した部分では、汚染水放出に関する透明な情報公開努力を強調した。在京外交団のための説明会を100回以上開いたほか、IAEA調査団の訪問も4回受け入れたと強調した」

    (7)「また、「国際社会は日本のALPS処理水にどのような見解を持っているか」という質問には「昨年9月に開かれたIAEA定期総会で韓国政府代表団が日本の東京電力福島第一原発対策に対して批判的な発言をしたが、韓国以外の国々からはそのような発言はなかった」という回答を付けた。これをめぐり日本が、韓国が大げさな反応を見せている」という枠で国際世論戦に乗り出したのではないかという話が出ている

    韓国は、「反日」を生きがいにしている国である。どう説明しても無駄だろう。理解しようという気持ちがないからだ。

     

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    薄氷に乗る与党180議席

    二大市長選が示唆する転落

    経済基盤大穴が敗北の序曲

    政党選択は脱イデオロギー

     

    4月7日のソウル・釜山の市長選において、与党「共に民主党」候補者は、野党「国民の力」候補者に惨敗した。今回の両市長選は、来年3月の大統領選の前哨戦とも位置づけられてきた。それだけに、韓国与党は危機感を強めている。

     

    選挙後に、与党民主党1年生議員56人が集まって反省会を開いた。民主党は、所属議員174人のうち46.6%の81人が1年生議員だ。これら議員が、与党敗因の理由について反省の弁を述べたのである。この席では、国民の意思を聞かず与党の多数決論理で、国会運営をしたことへ痛烈な批判が飛び出た。文大統領への批判でもある。文氏は、早くもレームダックの前兆を示している。

     

    与党指導部は、今回の二大市長選敗北の責任を負って全員が辞任した。まだ、新指導部は選出されていない。一方、文政権では内閣改造と大統領府の更迭人事が行なわれる予定である。ただ、伝えられているところでは「親文派」、つまり、文大統領に忠誠を誓う側近から選ばれるのでないかと報じられている。早くも、文大統領の限界説が囁かれている。

     


    文大統領の政治師匠であった盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、政権の新鮮味を打ち出すために、あえて野党の朴槿惠(パク・クネ)氏を閣僚に登用する案まで検討したという。挙国一致の内閣にするという狙いであった。この案は立ち消えになった。文大統領にはとてもここまでの柔軟性を期待できまい、とされている。

     

    となれば、文氏は旧態依然の人事によってレームダック化へ進むほかないと見られている。だが、ここで降って湧いたように福島原発の処理水であるトリチウム(日本基準の40倍に希釈)放出問題が起こった。韓国政府は、絶好の「反日カード」を手にした訳で、傾いた政権を支えるべく活用の方針である。

     

    ただ、韓国メディアが報じているように、日本は外交団に対して100回も説明会を行なって周知徹底を図ってきた。韓国政府が言うように「突然」「抜き打ち」の発表ではない。IAEA(国際原子力機関)の承認を得た発表である。IAEAでは、日本の措置が違法でなく他国も行なっているものと発表した。また、米国務省も「適切な手続きを踏んでいる」との声明を出している。こうなると、韓国がこの問題を反日カードに使うとしても、孤立のお恐れが強いだろう。

     

    結局、福島原発トリチウム問題は、傾き掛けた文政権を支えるほどの強力「反日カード」に使えないことが明らかになろう。文大統領はこれから一年、厳しい政権運営から逃れることは不可能だ。

     


    薄氷に乗る与党180議席

    韓国与党は、系列を含めれば180議席(60%)を占めている。絶対多数に達している形だが、昨年総選挙では保守野党が約40%の得票率に達していたのだ。実態は、「野党惨敗」ではなかった。小選挙区制のカラクリで、与党が絶対多数を得た形になっただけである。これは、与党が政権運営の姿勢を誤れば、簡単に政治の主導権を失うリスクを抱えていたことを意味していた。文政権・与党は、この不安定な支持基盤に乗っていることを忘れて暴走した。そのツケが、今回の二大市長選に現れたに過ぎない。

     

    前記の与党一年生議員は、次のような反省の弁を述べた。極めて痛烈な自己批判である。

     

    1)いつの間にか民主党は「既得権政党」になっていた。

    2)私たちはあらゆることをできるという過信、ひとまず始めて計画を作っていけば良いという安逸さに浸っていた。

    3)自分たちの過去に行なった民主化運動の実績を掲げ、すべての批判を遮断して私たちだけが正義だと固執する傲慢さが民主党の姿をこのようにした。

     

    前記の一年生議員とは別に、20~30代の議員5人は次のような声明文を発表した。これも痛烈な文政権・与党批判である。

     


    4)与党幹部は、惨敗の原因を野党のせい、メディアのせい、国民のせい、青年のせいにする声に私たちは同意できない。

    5)党内批判がタブー視されていたチョ・グク元法務部長官をめぐるスキャンダルを、「検察改革」の代名詞としたことが国民の共感を失った。

     

    以上5項目の政権・与党批判は、韓国メディアがこれまで行なってきた批判と同一視点である。与党一年生議員が初めて、二大市長選敗北で目が覚めたということであろう。私も、文政権の非民主的な政権運営を批判し続けてきた。以下、私のコメントを付したい。

     

    1)民主党が既得権政党になったのは、支持基盤の労働組合と市民運動の利益を優先してきたことだ。労組の要求は100%受入れてきた。最低賃金の大幅引き上げがそれである。3年間で30%強の最賃引き上げが、個人業主・中小零細企業など低生産性部門の業種を直撃した。韓国では、最賃引き上げに応じない雇用主には罰則を科される。これを避けるべく、多くの雇用主が泣き泣き従業員を解雇した。最低賃金の大幅引き上げが、失業者を増やすという逆立ちした結果を生んだ。

     

    市民運動には、原発廃止による太陽光発電推進で報いた。無事故・黒字の原発を無理矢理に操業停止に追い込んだ。しかも、経営データを改ざんするという犯罪行為を行なったのである。韓国の市民運動は、NPOの非営利・非政治という原則を逸脱して、営利・政治を前面に出して文政権の別働隊に成り下がっている。文政権は、市民運動へ補助金すら与えているのである。こうして、労組と市民運動が文政権を支える二大勢力になっている。

    (つづく)

     

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    中国は、台湾海峡で前後の見境もなく空軍による軍事威嚇を続けている。これが、米国へ危機感を持たせ不退転の決意をさせた。米国は、「一つの中国論」に風穴を開け、堂々と米台間の政府高官交流を始める意思を示す準備を始めているのだ。中国は、とんだやぶ蛇になってきた。米国と台湾接近の口実を与えているからだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月14日付)は、「アーミテージ氏ら米要人が訪台、蔡総統と会談へ」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領は13日、アーミテージ元国務副長官ら米要人3人を非公式代表団として台湾に派遣した。滞在中は蔡英文(ツァイ・インウェン)総統ら台湾高官と15日に会談する見通し。トランプ前政権から続く米台接近に中国は強く反発している。

     

    (1)「訪台したのはアーミテージ氏とスタインバーグ元国務副長官、ドッド元上院議員。今回の派遣は米国による台湾支援を定めた台湾関係法の制定から42周年にあわせたもので、米政府高官は「長らく続く超党派の伝統」と説明した。アーミテージ氏は共和党のブッシュ政権、スタインバーグ氏は民主党のオバマ政権でそれぞれ国務副長官を務め、東アジア情勢に精通する。ドッド氏は先の大統領選でバイデン氏陣営に参画した同氏の盟友の一人だ。米政府高官は、「米国の台湾と民主主義への関与を示す重要なシグナル」である今回の派遣を通じ、インド太平洋地域の繁栄について台湾を交えて同盟国や友好国とともに促進する狙いがあると強調した」

     


    アーミテージ氏ら米国要人の4氏が訪台したのは4月14日、米上院で審議を開始した「2021年の戦略的競争法」と関係がある。この法案については、後で取り上げるが、米台の交流促進が一つの目玉である。バイデン政権は、この法案が成立する前提で、今回の要人4氏を台湾へ送って準備を始めていると見られる。

     

    米国は、インド太平洋戦略のキーとして台湾防衛に当る決意を内外に示す狙いだ。16日には、日米首脳会談がワシントンで開催される。日米が、揃って台湾防衛の必要性を世界に示すことになろう。

     

    (2)「米国は3月末、パラオのウィップス大統領の台湾訪問に駐パラオ米国大使を同行させたばかり。2020年9月には当時のクラック米国務次官が李登輝・元総統の告別式に合わせて台湾を訪問した。台湾の総統府は14日、同日から台湾を訪問するアーミテージ元国務副長官ら代表団について「心から歓迎し、バイデン大統領と米政府の台湾への支援に、心から感謝する」との声明を発表した」

     

    台湾防衛は、日米の安全保障にとって重要な役割を果たす。台湾が中国の手に渡れば、沖縄の地位が危うくなる。米国にとっては、中国海軍が太平洋から米国本土を攻撃する機会を与えることになる。その意味では、日米は共通の利害関係を持つことになる。

     


    (3)「バイデン政権の矢継ぎ早の動きの背景には、台湾への威嚇を繰り返す中国に対する危機感がある。米国家情報長官室は米上院情報特別委員会に提出した米国の脅威に関する年次報告書で「中国が台湾を国際的に孤立させ、軍事活動の増強を続けることで中台摩擦は広がる」との見通しを示した」

     

    習近平氏の歴史的レガシーつくりには、台湾侵攻がかかっている。また、習氏が長期政権を構える条件でも台湾侵攻は不可欠である。つまり、中国は習氏が健在でいる限り、必ず台湾を侵攻するはずだ。米国が、早手回しに防衛体制を取るのは「先手必勝」を目指している。

     

    『ロイター』(4月9日付)は、「米上院外交委が中国対抗法案、人権促進や安保で他国支援」と題する記事を掲載した。

     

    米上院外交委員会の指導者らは4月8日、中国が世界的に影響力を拡大していることに対抗するため、人権保護促進や安全保障支援などを柱とした超党派による法案を公表した。14日に審議を行う。「2021年の戦略的競争法」と題した法案は、中国に対抗するための一連の外交的、戦略的対策の権限を付与。議会の両党における中国に対する強硬姿勢を反映している。

     


    (4)「中国との経済的な競争だけでなく、ウイグル族などイスラム系少数民族に対する扱いや香港での反政府デモの抑圧、南シナ海での挑発的行為を含む、人道的、民主的価値観を推進する。法案では「インド太平洋地域における米国の政治的目的を達成するために必要な軍事的投資を優先する」重要性を主張。米議会が連邦予算を中国と対抗するための戦略的責務に「沿ったもの」にする必要があると訴えた。2022~26年の会計年度に、同地域に軍事援助として計6億5500万ドル、インド太平洋海上安全保障構想と関連プログラムに計4億5000万ドルを拠出するよう推奨している」

     

    インド太平洋地域の自由と民主主義を守るべく、軍事的投資を優先するとしている。この中には、日本の軍事施設への支援も含まれている。

     

    (5)「また、台湾が「インド太平洋地域における米国の戦略に必須」であり、協力関係を強化する必要があると指摘。米当局が規制なく台湾当局と交流できるようにすべきだとした」

     

    ここでは、台湾防衛が米国の戦略に必須としている。「米当局が規制なく台湾当局と交流できるようにすべきだ」としている。今回、米要人4氏が訪台しているのは、この準備作業である。

     

    (6)「中国は、台湾を自国の領土と見なしている。米国は同盟国に対して、中国の「攻撃的で積極的な態度」を抑制するように促すべきだと主張。米政府の各行政組織と機関に、中国との戦略的競争に関する政策を担当する高官を設けることを提唱し、「全ての連邦行政組織と機関は、中国との戦略的競争が米国の外交政策の優先事項であることを反映する構造にしなければならない」とした。その他、中国の軍事設備を置く国に対する支援を制限するとし、中国の広域経済圏構想「一帯一路」が、中国の安全保障を推進し軍事アクセスを拡大するためのものであると指摘した」

     

    下線のように、米国の行政組織は全て中国との戦略的競争に打勝つように再編しなければならないとしている。米国の決意のほどが窺えるのだ。米中冷戦の開始を告げている。

     

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    パンデミックがもたらした世界的デジタル化によって、半導体需給は一挙に急迫化している。米国もその影響を受けていることから、12日(現地時間)ホワイトハウスで世界主要半導体メーカー19社を集め「半導体増産会議」を行なった。これに対して、中国メディアが一斉に反発している。

     

    『朝鮮日報』(4月14日付)は、「中国、『米国、半導体を武器に政治工作』」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米大統領が出席し、ホワイトハウスが12日開いた半導体対策会議について、中国は「中国の成長を阻もうとするもう一つの政治工作だ」として、激しく反発した。

     

    (1)「中国紙の環球時報とその英語版グローバルタイムズは同日、「米国が世界の半導体関連企業19社を呼び集めた会議を通じ、中国企業を排除し、米議会も中国を狙った制裁計画を推し進めている」とし、「米国は半導体を中国の技術発展を抑える武器と見なしている」と批判した。グローバルタイムズは「米国が半導体分野で同盟国に中国と対立するよう圧迫するのも、結局は米国に(中国と競争する)自信がないからだ」とし、「中国企業に対する制裁に効果がなかったことから、米国企業ではない台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子などに無理に中国とのデカップリング(分離)を要求したものだ」と主張した」

     


    半導体が、「21世紀の石油」とされる戦略物資である以上、米国が囲い込みを始めたのはやむを得ない措置である。中国が、露骨な海洋進出によって世界地図を塗り替えようと狙っている以上、米国の自衛措置である。

     

    戦前の日本が、米国覇権に対抗して太平洋戦争を準備したことで、米国は対日経済制裁で石油と鉄くずの禁輸措置を取った。米国の半導体増産計画は、これと同じ主旨だ。

     

    (2)「グローバルタイムズはまた、「バイデン政権は多国間主義に復帰すると言いながら、実際には(トランプ政権時代の)一方主義、孤立主義の政策を続けている」とし、「中国を孤立させることは結局米国自体を孤立させることだ」と述べた。米国の半導体覇権確保の動きが結果的に世界の半導体サプライチェーンを崩壊させ、世界経済に逆効果を生むと主張した格好だ」

     

    世界経済の理想図は、グローバル化である。だが、中国は正統な理由もなく他国へ経済制裁を行なっている。豪州では、石炭・牛肉・ワイン・小麦などを輸入禁止にした。韓国ヘは、「限韓令」と称して、文化・芸能の交流禁止である。自らが、こうした不当措置を行いながら、他国を非難する資格はない。

     


    『朝鮮日報』(4月14日付)は、「バイデン大統領『米国の競争力、あなたがたの投資次第』…サムスンに事実上の投資圧力」と題する記事を掲載した。

     

    米ホワイトハウスが12日、非公開で開いた半導体対策会議は1時間半にわたり続いた。会議の最後に登場したバイデン米大統領は約10分間発言し、「アメリカ」を19回、「投資(インベスト)」を18回も口にし、世界的企業に米国へと投資を促した。会議の目的が米国への投資を迫ることだという本音を隠さなかった格好だ。

     

    (3)「世界的な半導体供給不足は米国の主力産業である自動車の工場をストップさせ、スマートフォン、生活家電などIT産業へと被害が拡大している。海外メディアや半導体メーカーは今回の会議について、サプライチェーン再編を通じた半導体自立、中国のテクノロジー崛起(くっき)けん制、米国内での雇用創出などさまざまな目的があったとみている」

     

    米国が、国内での半導体自給化を目指しているのは明らかである。安全保障という視点から見れば、当然の措置であろう。もはや、米中は冷戦状態に入っている。

     


    (4)「バイデン大統領は同日、「(半導体)インフラを修正するのではなく、新たに構築すべきだ」と述べた。輸入に依存してきた半導体を米国内で生産する方式に改めるという意味だ。米国は半導体設計分野で世界最強だが、生産は台湾、韓国に大部分を任せている。ボストン・コンサルティング・グループによると、世界の半導体市場で米国内での生産割合は1990年の37%から昨年には12%にまで低下した。半導体ファウンドリー(受託生産)企業のうち、米国企業はシェア7%のグローバルファウンドリーズが唯一だ」

     

    1980年代後半から、日米は半導体をめぐる厳しい対立状態に入った。これが、急速な円高への伏線にされ日本は「敗北」した。米国は、戦略物資となれば同盟国でも容赦しない「冷酷」な面がある。米国が、その素顔を再び覗かせてきたと見るべきだろう。

     


    (5)「こうした状況で台湾積体電路製造(TSMC)やサムスン電子など東アジアの企業が半導体をタイムリーに供給できなければ、米国のテクノロジー産業全体がストップしかねない。日本経済新聞は「仮に中国が台湾を自国の影響下に置けば、世界の半導体サプライチェーンが根底から揺らぐ」とし、「そうしたリスクを解消すべきというのがバイデン政権の考えだ」と指摘した。ホワイトハウスのサキ報道官は会議に先立ち開かれた定例会見で、「大統領は半導体を安全保障の問題ととらえているのか」との質問に対し、「そうだ」と答えた」

     

    このパラグラフにはっきりと、米国の意図が安全保障であると明確にされている。「準戦時」という認識である。米国の「怖さ」は、ここにあるのだ。

     

    (6)「今回の会議を契機として、サムスン電子の対米半導体投資が近く決定される可能性が高まった。崔時栄ファウンドリー事業部長(社長)が会議に出席したサムスン電子は、現在稼働しているテキサス州オースティンのファウンドリーのそばに20兆ウォン(約1兆9400億円)規模の生産ライン増設を検討している。半導体業界関係者は、「米大統領が直接投資を要求しただけに、サムスン電子がそれに応える形で、近く決定される可能性が高い」と指摘した」

     

    韓国政府は、対中関係ではのらりくらりとしているが、企業になれば死活問題である。米国の要請に応えて、サムスンは半導体工場を増設する。これは、かねてからの計画であった。

     

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