勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、民族統一悲願で外交政策を推進している。「すべての道は平壌(ピョンヤン)に通じる」という一念だ。この直線ルートでは、多くの障害が出てくる。これまでの二股外交は、中国の機嫌取りをすれば、よしなに斡旋してくれるだろうと期待してきた。当の北朝鮮には腫れ物に触るような姿勢である。

     

    こういう感情的な接近法でなく、理性的な接近法を模索すべきであるとの提案が出て来た。韓国外交が、米国バイデン政権の主張する同盟国協調という一環に立って民主主義と人権重視の立場から進められるべきという趣旨である。感情的な接近法から、遠回りに見えるが理性的な接近法によって、民族統一の念願は叶うだろうというものだ。

     


    『中央日報』(1月28日付)は、「韓国、バイデン氏の民主主義同盟から抜ければ失敗招く」と題するコラムを掲載した。筆者は、朴チョル熙(パク・チョルヒ)/ソウル大国際大学院教授・国際学研究所長である。

     

    バイデン政権の国際秩序運営はトランプ時代とは大きく異なる見通しだ。まず米中関係に対してトランプ氏は最大の圧力を駆使しながら中国との「決別」を主張したが、バイデン氏の参謀は中国との「競争的共存」を主張する。中国と共存しながら取引と交流を続けるが、未来の秩序での競争優位の確保に主眼点を置く。米国の同盟ネットワークを強化し、「先端技術同盟」を結成し、中国との格差を広げ、多国間主義的規範の強調を通じて米国の責任経営を強調する。バイデン氏が「力の模範」でなく「模範の力」を語った理由だ。

    (1)「北朝鮮問題に対し、トランプ氏はトップダウン方式で首脳間の合意を通じて突破口を開く方法を選択した。劇的な反転を通じた取引の日常化を通じて北朝鮮の核問題を解決しようとした。しかしトニー・ブリンケン国務長官は「北朝鮮に対する接近法を全般的に見直す」と公言し、ホワイトハウスのサキ報道官は「新しい戦略」に言及した。ウェンディ・シャーマン氏、カート・キャンベル氏、ソン・キム氏らバイデン政権の参謀は北朝鮮の形態と交渉方式に精通している人たちだ。北朝鮮の非核化に実質的な進展がない限り、圧力と制裁は維持するはずだ。非核化という最終的な目標を念頭に置いて、核の凍結から始まって完全な非核化にいたる過程のロードマップと交渉戦略を用意するとみられる

     

    バイデン政権は、北朝鮮の非核化にいたる過程を組織化して解決する行程表を用意するはず。韓国はその構想の下で行動することが重要である。抜け駆けは禁物である。

     


    (2)「バイデン政権の新国際秩序運営基調は韓国にとって機会だ。規範と原則に基盤にした「予測可能」な国際秩序運営が予想される。韓米間の防衛費分担金引き上げ問題も解決するはずで、韓米連合訓練や戦略的資産展開も韓国が望めば復元も可能とみられる。トランプ氏は「費用分担」を望んだが、バイデン氏は「役割分担」を強調すると考えられる。また、政策決定過程も経路依存的で体系的な方式を通じて進められるだろう。

    バイデン政権は、韓国に「役割分担」を求めると分析している。これは、インド太平洋戦略への参加であろう。

    (3)「国際秩序運営原理の復元による挑戦も少なくない。まず、バイデン政権が尊重する民主主義と人権という基準から外れる行動と主張をする場合、圧力を加えてくる可能性が高い。例えば対北朝鮮ビラ禁止法を強行したり、国連北朝鮮人権決議案に不参加または反対したりすれば、悪手になると予想される。また、中国の強圧的な態度に対する沈黙やあいまいな立場表明は、韓国の中国傾斜イメージを強める可能性が高い。安全保障や先端技術の面で中国側に寄るのは悪手中の悪手だ。民主主義グローバルネットワーク参加に対する躊躇や不参加、隊列離脱は、韓国の同盟国としての価値を疑わせる」

     

    中国が、韓国へ強圧的な態度を取ってもやり過ごさないことだ。沈黙や曖昧な態度が、米国の韓国への疑惑を呼ぶ。二股外交を志向していると勘ぐられる。その点、日本を見倣うべきであろう。是々非々の姿勢で対応しているからだ。



    韓国が国際社会の責任ある構成員として役割を果たし、韓半島(朝鮮半島)の平和を築くためには、バイデン政権との連携が必須である。文大統領による独自路線は、何らの成果を生まないからだ。文政権に残された時間は1年余である。もはや、「何かを成し遂げる」には時間が足りないだけに、ここは思い切って「スタート地点」だけを明確にすることで満足するほかあるまい。韓国外交の再出発である。

     

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    韓国の文大統領は、日米主導の「インド太平洋戦略」に参加する意思を公表したが、米国国務長官は、日韓外相との個別会談で「日米韓」を三角同盟として一体化した発言をしたことが分かった。韓国の二股外交は事実上、消えたと言えよう。

     

    『朝鮮日報』(1月27日付)は、「康京和・ブリンケン電話会談の報道資料、韓国は『韓米』米国は『韓米日』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国外交部(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官とバイデン政権の初代国務長官となるブリンケン氏が27日、電話で会談した。両長官は、韓米関係や韓半島問題、地域と世界的な事案について意見を交わした。しかし、互いが強調する点は異なった。韓国が今回の電話会談について「韓米協議」とする一方で、米国は「米・日・韓の協力」という表現を用いた。バイデン政権が中国をけん制するために韓米日の三角同盟を強化するとの見通しが出る中で、このような表現が登場したわけだ。

     


    (1)「韓国外交部は同日の報道資料で、康京和長官とブリンケン長官の電話会談について「両長官は北朝鮮核問題がバイデン政権でも早急に取り組むべき課題との認識で一致し、問題解決のために韓米両国が緊密に協議していくことにした」と発表した。また「両長官は気候変動、新型コロナウイルスなど世界的な問題の解決に向けた協力を強化し、韓米同盟の範囲を一層拡大していくとの認識で一致した」と伝えた。韓国外交部によると、康長官は「韓米関係と韓半島問題に理解が深いブリンケン長官の就任を歓迎する」と述べるとともに「これまでと同様に韓米間の緊密な意思疎通と協力を続けていくことを望む」と表明した。ブリンケン長官は「本人の任期中、韓米同盟を今後もいっそう強固に発展させていくことを望む」と述べた」

     

    韓国は、ブリンケン米国務長官との電話会談で米韓同盟に強く引き寄せられたことを実感したであろう。

     

    (2)「米国務省の報道資料は多少異なる。国務省は報道資料で「両長官は韓米同盟の継続する力と重要性を確認した」として「韓米同盟は自由で開放的なインド太平洋地域と、全世界の平和と安全保障、繁栄の中心軸(リンチピン)」と表現した。国務省はさらに「ブリンケン長官は米・韓・日の3か国協力を継続する重要性と北朝鮮の非核化の継続的な必要性、同盟強化に対するバイデン大統領の約束を強調した」とつづった。韓米同盟の次に「韓米日の3か国協力」を強調したわけだ。韓国外交部の報道資料にはこの表現は登場しない」

     

    米国務省の発表文によれば、「韓米同盟は自由で開放的なインド太平洋地域と、全世界の平和と安全保障、繁栄の中心軸(リンチピン)」としている。さらに、「米・韓・日の3か国協力を継続する重要性」を強調している。米国が、ここまで韓国について踏込んだ表現をしてきたのは、米国の同盟団結方針を示している。

     


    (3)「
    ブリンケン長官は、康長官との電話会談の前に、日本の茂木敏充外相と電話で会談した。米国務省はこの電話会談について「米日同盟は自由で開かれたインド太平洋地域と、全世界の平和と安全保障、繁栄の礎(コーナーストーン)」と述べた。また、米国務省はブリンケン長官が日本との電話会談でも「継続的な米・日・韓の協力の重要性を強調した」と伝えた」

     

    米ブリンケン長官が日本との電話会談でも「継続的な米・日・韓の協力の重要性を強調した」ことが挙げられている。米国は、日米韓の三角同盟を既成事実として捉えている。

     

    (4)「茂木外相とブリンケン長官の電話会談について説明した日本の外務省の報道資料にも「韓米日同盟」という表現は登場しない。日本の外務省は「両長官は中国、北朝鮮、韓国など地域情勢と『自由で開かれたインド太平洋』の重要性について意見交換を行った」と伝えた。さらに「地域や国際社会が直面している課題について、日米と日米豪印など同志国間で緊密に連携していくことで合意した」と説明した。米国・日本・オーストラリア・インドの4か国は、中国をけん制するための「クアッド」を構成している」

     

    日本外務省による日米外相会談記録でも、「日米韓同盟」という表現は登場しない。日本も韓国については微妙な溝があることを示唆している。現状では、やむを得ないことだろう。いつになったら、日韓ともに「日米韓の三角同盟」という言葉が定着することか。時間がかかるだろう。

     

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    文氏が外交戦で最後の大博打

    日米朝3本の矢は的に当るか

    執拗な反日が嫌韓広めている

    根深い北朝鮮の韓国不信の念

     

    諺に、「将を射んと欲すればまず馬を射よ」がある。目的の物を攻撃したり手に入れようとするなら、まずその周辺のものや拠り所になっているものを攻めるべきという意味だ。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、この諺どおりに動き出した。

     

    文大統領の任期は来年5月までである。大統領選挙は来年3月だ。文氏が大統領として采配を振るえるのは、正味12ヶ月程度である。文大統領のレガシーとして残すべき「南北交流」を促進するにはどうするか。

     

    文氏が考え付いた命題は、先の諺どおりに日本と米国を味方につけることである。それには、これまでの外交姿勢を根本から変える必要がある。結論を先に言えば、日本との関係を修復する。米国との関係では、トランプ政権時代から要請されていた「インド太平洋戦略」の「クワッド」(日米豪印)に加わって、米同盟国の旗幟を鮮明にする以外に道はないという結論になった。この180度もの外交転換によって、レガシーを確立しようという大構想である。果たして、実現可能であろうか。結論は、最後に明らかにしたい。

     

    文氏が外交戦で最後の大博打

    文大統領は1月21日、大統領府でつぎのように訓示した。

     

    1)米朝は、ハノイ会談決裂後の長い膠着状態を一日も早く終わらせたい。これによって、米朝対話と南北対話の新たな突破口を開き、平和の時計が再び動きだすよう最善を尽くしてくれることを願う。

    2)文政権は、最後の1年という覚悟で臨んでほしい。韓国は、朝鮮半島の主役として、南北関係の進展と平和プロセスの推進力を確保するために、より主導的な姿勢で各部処が協力してほしい。

    3)朝鮮半島平和プロセスは選択でなく、絶対に進まねばならぬ道である。意志があるところに道がある。

    4)米国バイデン新政権とともに、朝鮮半島平和プロセスの進展に向けて緊密な協力を続ける。北朝鮮とも対話と協力の道に戻るため最善を尽くす。政府は確固たる韓米同盟をもとに、変化する国際秩序と安保環境に対し、より能動的かつ主導的に対応していくことで、韓米同盟をより包括的かつ互恵的な責任同盟へと発展させる。

    5)日本については、「未来志向的な関係へと発展させる」との基調の下、今年の東京五輪を「韓日関係改善と北東アジアの平和の進展の機会」としなければならない。

     


    以上の5項目の中に、文大統領の希望と思惑がセットになっている。私のコメントを簡単につけたい。

     

    1)~3)は、すべて北朝鮮との交流再開である。南北交流を、朝鮮半島の平和プロセスとして重視していることが分かる。平和プロセスとは、朝鮮半島の非核化と平和体制への移行を目指すものだ。文大統領が、新年最初の会議でこの平和プロセスを取り挙げたのは、ここに最大の外交努力を払うことを示した。

     

    4)米国バイデン新政権とともに、朝鮮半島平和プロセスを推進する。そのためには、「韓米同盟をもとに、変化する国際秩序と安保環境に対し、より能動的かつ主導的に対応していく」としている。ここが、極めて重要なポイントである。米国の「インド太平洋戦略」に能動的・主導的に参加するのだ。これまでの曖昧戦術を捨てて、米韓同盟の精神に沿って参加すると決めたのである。ベトナム戦争に参戦して以来の決断である。

     

    韓国が、朝鮮半島の平和プロセス推進のために「インド太平洋戦略」へ参加するとは、次のような意味だ。すでに、「クワッド」(日米豪印)を形成する4ヶ国に「+α」として加わるのは、他の「α」候補国であるベトナムやニュージーランドにも刺激を与えるだろう。

     

    5)日本については、「未来志向的な関係へと発展させる」。今年の東京五輪は、「韓日関係改善と北東アジアの平和の進展の機会」とする、というのだ。一見、漠然とした言い方だが、こういう意味である。韓国は、東京五輪で日本・米国・北朝鮮・韓国の4ヶ国首脳会談を開催して、北東アジアの平和に寄与するという壮大な構想である。

     

    この構想実現には、いくつかの難関がある。米国バイデン政権は、トップダウン式外交でなく、ボトムアップ方式の外交方針である。これから7月の東京五輪までに、ボトムアップ方式外交の努力が実るかどうかだ。もう一つの難関は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)氏が訪日するかである。これについては、後で取り上げたい。(つづく)

     

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    中国はASEAN(東南アジア諸国連合)へ積極的なワクチン外交を展開している。感染者が多いミャンマー(約13万人)とフィリピン(約49万人)に、中国国営製薬会社シノファームのワクチンをそれぞれ30万回分と50万回分、無償で支援している。その一方では、「中国領海」における外国船舶に対して武器使用を認める「海警法」を成立させ、フィリピン大統領府から強い抗議を受けている。ワクチン外交が台無しである。

     

    『大紀元』(1月27日付)は、「フィリピン大統領府、中国の海警法が『国際法違反』と批判」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府はこのほど、中国海警局に「中国領海」における外国船舶に対して武器使用を認める「海警法」を成立させた。フィリピン大統領府は、武力行使は国際法の下で禁止されているとし、いかなる国も南シナ海の状況を悪化させないよう警告した。

     

    (1)「中国の国会にあたる全国人民代表大会の常務委員会で22日、中国が管轄する海域に違法に入った外国の船舶が停船命令や立ち入り検査に従わない場合、海警局に武器の使用を認める「海警法」が成立した。フィリピンのハリー・ロケ大統領報道官は25日、大統領官邸で記者会見し、一般的な国際法の下では「武力の行使は通常、禁止されている」と指摘した」

     

    北京当局が管理しているスカボロー礁周辺海域、クアテロン礁、ファイアリー・クロス礁、ガベン礁、ヒューズ礁、ジョンソン南礁、ミスチーフ礁、スビ礁など南沙諸島の島礁はいずれも、フィリピンが主張するEEZの範囲に含まれている。それだけに、フィリピンは「海警法」の悪影響を受ける立場だ。

     

    (2)「また、「南シナ海問題に関わる国々が、同海域の状況を悪化させる動きをしないことを望んでいる」と警告した。ロケ氏はさらに、同国のロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、「南シナ海での行動規範ができるだけ早く策定されることを望んでいる」と述べ、「南シナ海のすべての主権国がこの行動規範を遵守するよう」呼びかけた。中国と東南アジア(ASEAN)各国は、南シナ海での紛争を回避するため「行動規範」の策定交渉を進めている」

     

    中国は、南シナ海の9割が中国領海であると主張している。国際司法機関から、この主張は違法として却下されたが、中国は腕力で占領し続けている。さらに武装した警備船が出現するとなれば、周辺国にとって甚大な影響が出てくる。

     

    (3)「フィリピンのキコ・パンギリナン上院議員はこのほど、中国共産党の「海警法」は同国の経済水域を侵害する外国法であると強調したうえで、インドネシアやベトナムも中国共産党の威嚇に怯んでいない、と述べた。南シナ海は年間5兆ドル相当の海運貿易の輸送路となっているほか、石油や天然ガス資源も豊富だ。中国は南シナ海のほぼ全域にわたって主権を主張している。フィリピンも自国200カイリの排他的経済水域(EEZ)の範囲で、南シナ海の部分的な主権を主張している」

     

    南シナ海では、フィリピンのほかにインドネシアやベトナムも中国の被害を受けている。フィリピンのドゥテルテ大統領は昨年9月、南シナ海での中国との紛争は平和的に解決されるべきであり、国際法の順守が必要と述べた。それだけに、今回の海警法は平和的解決に逆行するものである。中国は、こうやって周辺国から信頼を失ってゆくのだろう。

     


    (4)「日本の茂木外務大臣は先日、中国で成立した「海警法」に対して懸念を表明し、注視していくとともに、バイデン新政権との連携強化を検討すると述べた。また日本の外務省高官も、「南シナ海の現状は今、旧オバマ政権よりも深刻であることを米国に理解してもらうためにコミュニケーションを取る」と述べた」

     

    南シナ海問題が、ここまで悪化したのはオババ政権時に、中国へ厳しい警告を出さず見過ごしたことが大きな理由だ。バイデン政権は、その後始末をしなければならない立場でもある。

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    文政権の外交は米国へ顔を向け始めているが、韓国大企業のハイテク投資も米国重視を鮮明にし始めた。米中対立の長期化を見据えた方向転換である。米国の技術基盤と市場の厚みは、中国のとうてい及ぶところでないことを立証した。中国にとって、韓国大企業が背を向け始めていることは、痛手であろう。

     

    米IBMはこのほど、中国基礎研究所を閉鎖したことがわかった。IBMは声明で「中国での研究開発戦略を調整している」としている。IBM中国基礎研究所は1995年、北京市の国家級ハイテク技術産業開発区である中関村で設立された。中国本土で初めて、多国籍企業が設立した研究機関となったが、米中対立という外交問題から撤退を決めたものだ。

     

    こうして、米中対立の長期化は中国へ大きな影響を与える事態を迎えている。中国が、西側から技術面で閉出されることは、経済的に痛手である。

     

    『中央日報』(1月27日付)は、「『中国信じられない、東進せよ』…韓国大企業で熱い『バイ・アメリカ』」と題する記事を掲載した。

     

    最近、韓国企業の海外投資が太平洋東側の米国に集まっている。特に年末から20大企業を中心に米国内直接投資が目に見えて増えている。投資規模も熱い。兆単位の投資にも迷いがない。SKグループの場合、インテルの半導体事業部(NAND型フラッシュ)と水素エネルギー企業プラグパワーの株式取得などを合わせて12兆ウォン以上を投じた。ブルームバーグは21日、「サムスン電子が100億ドル以上を投資し米テキサス州に半導体工場の設立を検討している」と報道した。

     

    (1)「韓国企業の米国に向けた投資は、統計が証明する。企画財政部が集計する海外直接投資のうち対米直接投資の割合は2018年から上昇している。海外直接投資で米国が占める割合は2018年に21.9%を記録した後、2019年に23.8%、2020年には7-9月期に25.5%と毎年上昇している。だが海外直接投資で中国が占める割合は2018年と2019年に9.3%を記録したが昨年7-9月期には7.7%に下落した。最近の6年を見ると2015年9.8%にピークに達した後、中国のシェアは下落傾向だ」

     

    韓国企業の対米投資の比率は、2020年7~9月期に25.5%に達した。毎年上昇している。中国の比率は2015年9.8%をピークにし、その後のシェアは下落傾向を強めている。韓国企業は、中国を主要舞台にしているイメージだが、現実は全く異なって米国がメインになっている。韓国外交が、中国へ顔を向ける経済的な要因は減っているのだ。

     


    (2)「米中投資が交錯した契機は米中貿易対立と中国の高高度防衛ミサイル(THAAD)報復のためというのが専門家らの指摘だ。全経連のイ・ソウォン国際協力チーム長は「米中貿易対立状況の中で韓国企業が米国市場を選択したもの。中国の低い人件費を見て進出した韓国企業にとって中国市場の魅力が落ちた側面もある」と話した。チェ・ウォンピョ氏は「2016年の中国のTHAAD報復の傷が韓国企業に大きく残ったもの。こうした流れはしばらく続くものとみられる」との見方を示した」

    韓国企業が米国重視へ戦略転換した契機は、2016年のTHAAD問題で中国による韓国への経済制裁である。「中国は信じられない」というムードを高めたのだ。

     

    (3)「米国投資に参入した韓国企業が注意すべき点も少なくない。バイデン大統領がスローガンに掲げた「make it in America」は、韓国企業が考慮すべき代表的な変数に選ばれる。全経連によると、米国内製造、米国産原材料購入と調達、外国進出企業の米国回帰がこのスローガンの3大政策だ

     

    バイデン政権は、米国内製造業の振興策を掲げている。目的は、雇用促進である。

    1)米国内製造

    2)米国産原材料購入と調達

    3)外国進出企業の米国回帰

    この3点から見れば、外資系企業も米国内で投資することは歓迎するはず。トランプ前政権と同じ政策と見るべきだろう。



    (4)「バイデン政権が、トランプ政権に続き対中強硬政策を継続する可能性が高く、韓国企業が二者択一の岐路に立たされるという見通しも出ている。バイデン大統領が、台湾系2世出身のキャサリン・タイ氏を米通商代表部(USTR)代表に指名したのも対中強硬政策が続く可能性を高める要素だ。対外経済政策研究院のユン・ヨジュン米州チーム長は、「半導体などICTと先端産業を中心に米国の対中強硬基調は続く見通し。韓国企業は中国から抜け出して市場を多角化したり、サプライチェーンを多様化するなど両国の対立に備えなければならない」と話した」

    バイデン政権は、労働者保護が鮮明であるから、国内雇用増加に寄与する海外投資を大歓迎のはずだ。ただ、米国内の原材料購入と調達というハードルを越えなければならない。加工組立型の製造業は歓迎されないのだ。一貫生産体制が前提である。

     

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