勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

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    お人好しのパキスタンが、ようやく中国へ反旗を翻し、中国資本による鉄道プロジェクトを債務懸念のために20億ドル(約2300億円)削減すると報じられた。パキスタン新政権は、中国による過剰債務の罠で苦しんできたが、これまで中国との交渉は上手く進んでいなかった。

     

    パキスタン政府高官によると、パキスタン政府は現在「一帯一路」に基づく投資計画の見直しや、10年以上前に締結された中国との貿易協定の再交渉を検討しているという。「中国企業が利益を得るため、不公平な内容になっている」ことが理由だ(『フィナンシャル・タイムズ』9月9日付)

     

    これに痺れを切らしたパキスタン政府が冒頭のように、20億ドルという具体的な数字を上げて削減目標を打ち出した点が注目される。

     

    『レコードチャイナ』(10月3日付)は、「パキスタン、中国資本の鉄道プロジェクトを債務懸念で20億ドル削減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米『ボイス・オブ・アメリカ』中国語版サイト(10月2日)は、パキスタンが同国最大の中国資本による鉄道プロジェクトを債務懸念のために20億ドル(約2300億円)削減すると報じた。記事によると、同プロジェクトは、カラチからペシャワールまでの老朽化した鉄道ネットワークを改修するもので、当初82億ドル(約9300億円)とされたが、コスト上の論争が遅れにつながっているという。シェイフ・ラシード鉄道相は1日、ラホールで記者会見し、『パキスタンは融資による大きな負担に耐えられない貧しい国だ』と述べた」

    パキスタン鉄道相の発言の中に、パキスタンが中国の食いものにされている悲哀が示されている。貧しい国に膨大な建設プロジェクトを押しつけ、中国だけが利益を上げる。20世紀前半までの旧植民地経営スタイルを踏襲している感じだ。マレーシアのマハティール首相が、「中国の新植民地主義に反対」と批判した心情はこれであろう。


    (2)「記事は、『ポピュリストのイムラン・カーン首相率いる新政権は、中国政府が投資する数十億ドルの鉄道プロジェクトに慎重であるようだ』とし、『タイやラオス、スリランカ、モルディブは中国の融資条件に不満を表明している。マレーシアのマハティール新首相は今年8月、200億ドル(約2兆2700億円)の鉄道プロジェクトをキャンセルした』などと報じている」


    各国は、中国の唱えた「一帯一路」に飛びついたが、結局は中国の利益確保が目的であったことが判明して、続々とプロジェクトの見直し、凍結などが進んでいる。日本が新たに「一帯一路」計画に加わり、新プロジェクトの推進は「日中共同」の国際受注方式に切り替わる。「一帯一路」は、大きな転換点に立たされた。


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    トランプ米大統領は北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定を結ぶことでカナダ、メキシコと合意した。これを「歴史的」勝利だと宣言、貿易相手国に関税賦課をちらつかせる戦略が奏功したと自賛している。確かに、米国という世界最高の市場に参入できれば、その経済的メリットは大きい。トランプ氏は、これを逆手にとって米国に有利な「ディール」を行なっている。要するに、米国の「市場利用料」を払えというものだ。

     

    『ブルームバーグ』(10月2日付)は、「トランプ氏、歴史的勝利を宣言ー新NAFTAは関税の赤ちゃん」と題する記事を掲載した。

     

    (5)「トランプ氏は10月1日、ホワイトハウスのローズガーデンで記者団に対し、『関税がなければ、合意を話しあうこともなかった。関税の話をしたからこそ、生まれた赤ちゃんだ』と話した。今回の合意について、『これまで成立した貿易協定で、群を抜いて重要なもの』と誇示。議会で『容易に』承認されると自信を示した」

     

    TPPの時には、米国内の反対論も強かった。新NAFTA(USMCA)では、米国側のデメリットを一掃しているので、トランプ氏が胸を張る理由がある。実は、トランプ氏は関税引き上げの話をちらつかせながら相手国の妥協を誘い出す「ノーハウ」を身につけている。中国は、米国がこの高度のノーハウを利用して、中国との交渉に臨んでいることを知るべきだ。

     

    中国は、米国がUSMCAによって対中経済冷戦に向けて準備していることを、どこまで認識しているだろうか。習近平氏は、「自力更生」などという毛沢東張りの精神論を唱えているが、極めて危険であろう。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月2日付)は、「トランプに屈せず、毛沢東に倣う習近平指示の危うさ」と題する記事を掲載した。筆者は、中沢克二編集委員である。

     

    (6)「米大統領、トランプが第3弾の対中制関税発動に踏み切った直後、中国国家主席の習近平は古い重工業地域と広大な農地が広がる東北3省を行脚した。遼寧省に入った習近平は撫順市で、毛沢東が文革期にたたえた若き殉職兵士、雷鋒の記念館を訪れ、花をささげている。中国は『雷鋒精神に学べ』という政治運動を過去、何度も繰り返している。その時期には特徴がある。必ず中国が国際的に追い込まれた際なのだ」

     

    習氏は、遼寧省で雷鋒の記念館を訪れ、花をささげている。中国は、これまで「雷鋒精神に学べ」というときは、必ず国際的に追い込まれている時だ。現在の米中貿易戦争は、まさにこの局面である。ここで、単なる精神論で危機を乗り越えられるのか。

     

    (7)「例えば8964日、民主化を訴える学生運動を武力鎮圧した天安門事件の後である。西側諸国の経済制裁を受け、共産党政権は苦境に陥った。その時、模範兵士とされた雷鋒の精神に学ぶことで苦しさに耐えよ、というサインを国民に送った。同じように今、習政権は苦しい。今回、習近平はトランプに屈しないサインを中国東北部から国内に発した。毛沢東像のある数少ない国有企業で自力更生の旗を振り、毛沢東がたたえた兵士、雷鋒の記念館にあえて足を運んだ。習近平の行脚には毛沢東の影がついて回る。政治的には毛沢東を利用せざるを得ない苦境にあるのだ」

     

    8964日、民主化を訴える学生運動を武力鎮圧したのが天安門事件である。西側諸国の経済制裁を受け、共産党政権は苦境に陥っていた。その時も、雷鋒の精神に学べということで耐乏生活に耐えた。今回の習氏の行脚も「苦し紛れ」である。この間に、米国は中国を追い込むべくUSMCAという「装置」を使い、手はずを整え始めている。片や精神論。片や貿易協定による封鎖戦術に出ているのだ。

     

    (8)「そこには危うさも潜む。今年は78年に鄧小平が打ち出した『改革・開放』から40年の節目に当たる。その核心は、毛沢東が進めた硬直した計画経済から脱し、個人崇拝も厳しく排除した点だ。『改革・開放』によって中国は高度成長を達成し、世界第2位の経済大国へのし上がった。毛沢東方式に頼る限り中国経済に未来はないのは自明である。自力更生を訴えた習近平発言を耳にした多くの中国庶民が心配している。どうしてもその言葉に胸騒ぎがし、身構えてしまうのだ。毛沢東が自力更生を声高に叫んだ後、3千万人もの犠牲者を出したとされる悲惨な政治運動、大躍進(5861年)、そして文化大革命という大混乱があった」

     

    中国が、精神論で対抗する愚を悟るべきである。WTO原則に沿った産業構造の再編成である。その努力を怠って、中国経済の発展はあり得ない。この現実をしかと把握する勇気を持つことであろう。その意味で、習氏の力量が問われている。感情的な反発でなく、理性的な処置が必要になっている。

     

     


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    中国メディア『東方網』(10月1日付)は、日本の本庶佑氏が今年のノーベル生理学・医学賞を獲得したことについて「日本はすでに30人近いノーベル受賞者を生んでいる、日本は一体どんなことをしてきたのか」とする記事を掲載した。

     

    (1)「ここ数年日本ではノーベル賞受賞者が数多く出現しており、その都度ニュースになるものの、もはや超ビッグニュースとは言えない状況になっているとし、米国籍の受賞者を含むと日本はすでに30人近いノーベル受賞者を輩出しており「日本の基礎研究力の強さには敬服せざるを得ない」と伝えている」

    (2)「なかでも生理学分野について、日本は絶対的な世界トップの地位に立っているとし、「その原因を細かく分析すると、政府が科学技術の発展を非常に重視しており、1990年代より日本国内で基礎研究の重要性が深く認識されてきたことが挙げられる」と説明した」

     

    (3)「また、政府が技術振興を重視する一方で研究者に対して比較的高い自由度を与えているとも指摘。「日本では大学の教員は一定期間内に研究の成果を出さなくても職を失うことはないほか、研究過程においても政府や社会による考査や評価といった干渉を受けることが少なく、長期的に研究に専念することができるのだ」としている」

     

    中国の研究者は、一定期間内に論文を出さないと失職するようだ。これが、成果の乏しい特許申請を激増させている背景にもなっている。本庶佑教授が、「世界的な科学雑誌に掲載された論文でも10年後には消えている」と指摘している。論文の量産でなく、息の長い基礎研究が、最後に優れた成果を生む。これこそ、本庶教授の言いたい点のようである。

     

    (4)「記事は、「日本人が井戸から水が湧き出る勢いでノーベル賞を受賞しているのは、まさにこのような日本国内の体制があったからだと言える。日本の専門家は、知識の長期的な積み重ねと基礎研究の積み重ね、そして、大々的な人材育成が今日の成就を生んだのであり、決して一朝一夕に成し得るものではないと指摘している。日本の研究人材や管理機関の長期的な努力を、われわれはたくさん学ぶべきだ。決して口先だけのスローガンで終わってはいけない」と伝えた」

    日本のノーベル賞受賞が、芋づる式につながって出てくる背景には、ティームで研究する。その成果が、次代に継承されてゆく面に現れていることもあろう。中国では、過去の発明でも「一代限り」が多く、時代を超えて伝承しないようだ。だから、1000年、2000年という時間軸で見ると、同じような発明品がポツ、ポツと顔を出すものの連続性が感じられない。

     

    中国の三大発明品として、火薬・紙(印刷)・磁石(羅針盤)が上げられている。これも、中国人が発明したと言うよりも、アラブ世界との交流過程で生まれたのでないか。私はそういう感じがする。もし、中国社会に発明への才があれば、ニセ物づくりに精力を使い果たす愚を犯さないと思う。中国は論理学の祖である墨子派が、後世に滅ぼされたことによって、帰納法や演繹法が普及せず、近代科学の流れから取り残された。これが、中国人学者の自然科学のノーベル賞受賞を遠ざけている理由のように思える。

     

     

     

     


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    米中貿易戦争の影響で、今冬の大気汚染規制は計画よりも緩くなりそうである。大都市のスモッグは、人命に関わるほどの悪化状態だ。それでも、風の吹き方次第ではスモッグが噓のように晴れるという。そういう僥倖に出会えるチャンスは少ないが、少しづつ改善に向かっている。

     

    今冬は、米中貿易戦争の影響で大気汚染規制を緩めないと、景気が落ち込み新たな問題が発生する懸念が生じている。あちら立てればこちら立たず、である。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(10月2日付)は、「対米貿易摩擦、中国の大気汚染問題にも波及」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府はこの冬、大気汚染の改善を目的とする鉄鋼生産と石炭使用の大幅な制限を継続しない方針だ。米国との貿易戦争のさなか、政策当局は国内景気の押し上げを図る。国有企業が多数を占める産業が制約を受けることはまれだが、2017年には、北部の多くの都市での暖房用石炭の使用に伴う冬場の大気汚染悪化に対処する狙いで規制が導入された」

     

    石炭は豊富でも品質が劣る。中国は、こういう難点を抱えている。そこで、石炭使用を減らす規制が行なわれている。昨冬は一部で、石炭から天然ガスに転換させたが、天然ガスが不足する一方、石炭の運搬が豪雪でストップして、寒い冬を経験した家庭も多かった。きれいな空気を吸うためには、大変な努力を必要とする社会だ。

     

    (2)「規制当局は今冬、石炭使用と鉄鋼生産の大幅な制限に代えて、より緩やかな目標を打ち出そうとしている。緩和の指針案は8月に示された。大気汚染測定の基準である微小粒子状物質「PM2.5」の濃度の削減目標は、提案されていた5%でなく3%となっている。製造業購買担当者景気指数(PMI)や家計負債、固定資産投資など、このところ一連の指標が中国経済の減速を示している。これを受けて政府は国内総生産(GDP)を押し上げるために環境政策を弱めていると、アナリストらは言う」

     

    工場の石炭使用を減らすことが、大気汚染規制では本命である。中小企業中心に強制的に廃業させる問題も起こっている。工場を閉鎖したが、賠償金は一銭も貰えないという泣き寝入りも多いという。都市周辺部の弱小企業を整理した後は、大企業の操業度を落とさせて、石炭使用料を減らす苦肉の策だ。これも、厳しくやり過ぎると生産活動が低下。GDPに響くのだ。そこで、減産を緩めて大気汚染の改善度合いを落とそうという計画である。人命よりも経済成長優先、になる。

     

    抜本的には熱源の大転換に待つほかない。

     

    『レコードチャイナ』(10月2日付)は、「アイスランドの地熱技術を北京で活用へ、数百万の中国人に新鮮な空気」と題する記事を掲載した。

     

    中国紙『環球時報』(9月29日付)によると、米CNNは9月27日、アイスランドの地熱技術が中国・北京市で活用されることになり、数百万の中国人に新鮮な空気が提供されると伝えた。

     

    (3)「記事によると、アイスランドでは発電全体の25%を占めるほど地熱発電の活用が進んでいる。中国北部一帯にも豊富な地熱資源が存在しており、環境への負荷が少ないクリーンなエネルギー資源として注目されているという。アイスランドのアークティック・グリーン・エナジー(AGE)は、中国の石油最大手、中国石油化工集団と合弁会社を設立した。毎年冬になると暖房器具の使用によって大気汚染が深刻化する北京市で、地熱エネルギーの活用を促進し、石炭への依存を軽減する試みが行われるという。プロジェクトが成功すれば、アジアの他の国々にも移転できることから、期待はいっそう高まっているという」

    地熱発電であれば、クリーンエネルギーである。こういう熱源の転換がなければ、きれいな空気は吸えない。いつ完成するのか、記事には書いてなかった。


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    米国は、着々と中国排除の貿易協定づくりに動いている。今回、改定された「NAFTA改定」(新名称はUSMCA)は、協定国が「非市場経済国」と自由貿易協定を結んだ場合、USMCAを終了する、という厳しい項目が加わった。「非市場経済国」とは、中国を指している。

     

    WTO(世界貿易機関)では、「市場経済国」と「非市場経済国」の二つの分類がある。WTO加盟国が、特定国を「非市場経済国」と認定すれば、ダンピング調査がしやすくすぐに結論が出せるメリットがある。日米欧の3極は、中国を「非市場経済国」扱いしている。USMCAでは、中国と自由貿易協定を結ぶ国が現れれば、その国は自動的にUSMCAからの脱退扱いになる。厳しい制約条項である。

     

    米国が、ここまで徹底的に中国排除に動いている理由は、中国の世界覇権狙いを粉砕することにある。自由と民主主義の擁護者を以て任じる米国の世界覇権に対して、独裁主義で人権弾圧の中国が挑戦することは許しがたい感情を持っている。第二次世界大戦が、自由と民主主義を防衛する戦いであったと同様に、中国による米国覇権挑戦を断固阻止する意思を鮮明にしている。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月2日付)は、「米の新貿易協定、中国けん制のひな型に」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国は貿易協定の改定でカナダおよびメキシコと合意したが、本当に重要なのはこれからだ。今度はこれをひな型にした協定をアジア・太平洋地域の貿易相手国と結び、中国に対抗するために規則に基づく貿易圏を新たに構築する夢を復活させるべきである。それは、日本、シンガポール、ベトナム、チリなど12カ国にまたがる環太平洋経済連携協定(TPP)の目標だった。だがドナルド・トランプ政権が発足直後に米国をTPP交渉から離脱させたため、残る11カ国は米国の求めていた幾つかの譲歩がない協定に署名した」

     

    NAFTA新協定のUSMCAは、TPPに代る貿易協定のひな形になるとしている。つまり、USMCAの形をTPPにシフト可能としているのだ。当初のTPPが米議会で批准されるかどうか疑問視されていたころと比べ、USMCA方式にすれば米議会で承認されるだろう。そう示唆をしている。

     

    日本にとっては、まず「TPP11」(米国を除く)の発効を急ぐ立場だが、USMCAという形での新協定もあり得るとしている。この場合、日本は中国との貿易協定締結は御法度になる。

     

    (2)「『米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)』は、米国がわずかな調整、そしておそらく新しい名称を要求することで、元の場所(注:TPP)に戻れることを示唆している。930日に合意に至ったUSMCAは、労働者と企業の両方に配慮する形で北米自由貿易協定(NAFTA)を変える。労働者は、一段と厳しい自動車の現地調達規則と高賃金労働者による生産割合を確保する。製薬会社は、TPPで勝ち取るはずだったものよりも優れた知的財産の保護を得る。米国の銀行や金融機関は、現地のサーバーでデータを保持しなければならない状況を免れる。これはTPPでも求めていたができなかったことだ」

     

    USMCAでは、時給16ドル以上の労働者による自動車の生産割合を少なくとも5分の2とする必要がある。これは、低賃金国での自動車生産が、米国内生産より有利になることを防ぐ狙いである。これが、TPPに適用されるとなれば、低賃金国での生産メリットが消える。TPP加盟国ではハードルが高いのだ。製薬企業の知財権の保証期間が、TPPよりも長く設定されている。データ保持問題もTPPよりも緩やかになるなど、USMCAは米国にとってメリットが大きい。こうなると、TPP11の中では、USMCAの条件について行けない国も出てくるだろう。

     

    (3)「TPP参加国は同様の協定に合意し得るか。彼らはメキシコと同様、広大な米市場へのアクセスを得るためにはそうした譲歩をする価値があると計算するかもしれない。また、中国の地域的な影響力に対抗する力が欲しいかもしれない。国際通貨基金(IMF)によると、TPPは米国が参加した場合には世界の国内総生産(GDP)の約36%を占めるとみられる。これに対し、米国抜きの現状ではわずか13%だ。ベトナムのような途上国の説得は無理だとしても、日本といった主要貿易相手国との合意は今や現実味を帯びている。いずれにせよ、中国を寄せ付けないことは米国の大きな目標であり続けるだろう。

     

    メキシコは、USMCAの高い壁を乗り越える決断をして、今回の合意にこぎ着けた。TPP11の国でも、米国の広大な市場にアクセスできるメリットを考えれば、メキシコ同様の決断をする可能性があろう。TPPは米国が参加すれば世界GDPの36%を占める。最終的には、この広大な市場を利用するメリットとそのコストを比較することに落ち着くはずだ。

     

    USMCAでは、「非市場経済国」との自由貿易協定締結を不可能にさせる取り決めになっている。TPPがUSMCAに移行するとすれば、中国との自由貿易協定締結は不可能である。中国を排除するので、まさに「経済冷戦」そのものが始るのだ。

     


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