勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

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    人民元相場は、4月から7月までの対ドルで8%安となり、4カ月間の下落率で過去最大を記録している。米国トランプ大統領は、これまでの「2000億ドル10%関税引き上げ案」を、急遽25%関税案にするよう検討を命じた。中国がこれに対抗するには、さらなる人民元安に誘導する必要がある。

     

    この人民元安相場が、中国にとって副作用はないのか。資本移動に厳重な規制を掛けているが、「蛇の道は蛇」である。必ずこの裏をかく動きが始まる。さらには、中国の抱えるドル建て債務が7750億ドルある。人民元安は、これら債務の返済時に負担が増えるという新たな問題が発生するのだ。

     

    『ロイター』(8月3日付)は、「人民元安、米関税対策で万能薬にあらず」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は8月1日、年2000億ドルの中国製品への追加関税について、税率を当初予定の10%から25%に引き上げると発表した。国際通貨基金(IMF)元首席エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は、当初予定されていた10%の関税であれば、人民元が6~7%程度下落すれば計算上は相殺できると指摘していた。元相場は5月初めから対ドルで7%超下落している。しかし25%となると、12%程度の元安が必要になる。つまり1ドル=6.8元の現行水準から7.2元程度への下落だ」

     

    米国の10%関税引き上げは、人民元がすでに4~7月でほぼ8%下落したから相殺可能である。だが、25%の関税引き上げに対応するには1ドル=7.2元程度が必要と指摘している。実は、7元割れの人民元安は最近ない。ドル・人民元相場の年間平均値では、リーマンショック(2008年)以前に遡る。人民元がここまで下げることは、中国経済が08年以前の状態に戻ることの間接的表現になろう。そこまで決意しなければ、簡単に下落させられないだろう。

     

    (2)「しかし現実は複雑だ。最新の経済協力開発機構(OECD)の統計によると、中国の総輸出の約3分の1は、海外で付加価値が生まれている。アジアのサプライ・チェーンにおいては、多くの中間財が何度も国境を越えるため、為替レートと輸出の関係が込み入っている。例えば2012年から13年にかけて日本円は対ドルで37%下落したが、日本の対米輸出は13年にむしろ減少した。中国の当局者は、通貨切り下げによる副作用にも神経をとがらすだろう」

     

    中国製造業は、サプライ・チェーンの拡大によって、人民元安がそのまま、輸出競争力を回復できない現実もある。即効性を求める人民元安政策は、むしろ逆効果を生みかねない。

     

    (3)「ノムラのアナリストの推計によると、中国のドル建て債務残高は7750億ドルに上り、元安によって返済コストは膨らむ。また、元が急激に下がり過ぎれば資本流出を招き、当局は2015年のように外貨準備を費やして鎮静化に努める必要が出るだろう。諸外国は、中国が人民元を貿易戦争の武器に使っているとみるため、通商交渉は複雑になり、中国の株式・債券に対する投資も妨げられかねない。人民元安が新たな関税の影響を和らげるのは間違いないが、決して万能薬にはならない」

     

    中国のドル建て債務残高は7750億ドルに上り、元安によって返済コストが膨らむ副作用が出てくる。同時に、資本流出を招く。現在の外貨準備高3兆1120億ドル(6月末)を取り崩す事態になろう。「虎の子」同様に大切にしてきた外貨準備高の減少は、中国にとって致命的な欠陥をもたらすに違いない。3兆ドル台割れは、中国に必要な外貨準備高2兆8000億ドル接近という悪夢につながる。


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    あの強面のドゥテルテ・フィリピン大統領は、初訪中(2016年)で、中国の習近平国家主席と会談した。共同声明も発表されたが、盛りだくさんなフィリピンの開発事業に中国は協力を約した。その後、これらプロジェクトは動き出さずに終わっている。最近、ドゥテルテ氏は、理由を明らかにしなかったが、次期大統領選に立候補しないと語っている。この決断が本当とすれば、中国に空手形を掴まされた責任を取ろうとしているのだ。

     

    フィリピンは、南シナ海における中国の不法行動を常設仲裁裁判所に訴え勝訴判決を得た国である。そのフィリピンのドゥテルテ大統領が、中国に対して媚びる姿勢を見せたことは、極めて不可解であった。この外交上の甘さが、中国に手玉に取られた理由であろう。対中国外交では、厳しく対応することが鉄則である。少しでも脇の甘さを見せると、「空手形」を掴まされるのだ。日本も、東シナ海での共同石油開発協定を反古にされている。中国は、「嘘つき」常連国家である。

     

    『大紀元』(8月2日付)は、「比、中国に利用された、約束の投資が実行されず」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中比共同声明には、中国のフィリピンにおける鉄道、港湾、採鉱、エネルギーのインフラ整備や、中国農作物の輸入再開、貿易や投資の拡大などが盛り込まれた。フィリピン側によると、支援規模は総額240億ドル(25000億円)に上る。しかし、2年経っても投資プロジェクトはほとんど実行されていない」

     

    フィリピンは、完全に中国に一杯食わされた。ドゥテルテ氏は外交経験ゼロであり、百戦錬磨の中国外交の前には歯が立たなかった。最初から、フィリピンが自らの手口を全部相手に見せて始めた外交交渉など聞いたことがない。中国は、外交交渉で得た結論に従わない国である。昨年11月、米大統領が訪中の際に行なった共同発表もその時だけ。何ら実行しなかった。米国は、実行しないことが事前に分かっていたので、今回の「通商法301条」という伝家の宝刀を抜いた。約束を守らない国には、守らせる方法がある。その実例は今、米国が中国に向けて投げつけた刃にある。

     

    (2)「2016年10月、中国電力グループはフィリピンのエネルギー会社と共同で水力発電所の建設に合意した。総工費10億ドルの同計画は中国側が再三にわたり延期した。最後に2017年2月まで延期と発表されたが、2月になっても着工の気配がないため、フィリピン側は契約を中止した。ラテライトニッケル鉱石の探査、採掘を手掛けるGlobal Ferronickel社も中国側と7億ドルに上る工場建設計画を確定した。しかし、その後進展はなかった。726日付のブルームバーグの記事によると、フィリピン国家経済開発庁長官アーネスト・M・ペルニアは2年経ったが、中国政府とフィリピンとの間で、灌漑整備計画のローン貸付(7300万ドル)と2基の橋梁建設計画、合計7500万ドル規模の協議だけを結んだ。当初の投資総額240億ドルから大きくかけ離れている」

     

    前記の灌漑整備計画と、2基の橋梁建設計画で合計7500万ドルが、ようやく日の目を見るという。当初計画の240億ドルにくらべて0.3%に過ぎない。フィリピンが、南シナ海問題で強硬策に出ない。中国は、このことを知ったから約束を守らなかった。中国のような国を相手にするには、トランプ氏のような人物でなければ歯が立たないことを示している。

     

    3)「ドゥテルテ大統領は2016年の訪中時、投資を呼び込むために対中融和政策に転換した。軍事面でも経済面でも欧米と距離を置いた。しかし、中国依存の政策は実質的な収益をもたらされていない。また、ドゥテルテ氏は、中比両国が領有権を主張する南シナ海問題で政治的な譲歩姿勢を見せた。大統領は2017年11月12日、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議関連のビジネスフォーラムで演説した際、南シナ海問題について『触れないほうがいい』と発言し、問題を事実上、棚上げした」

     

    ドゥテルテ氏の完敗である。もともと南シナ海問題で、法的に違反しているのは中国である。その相手に妥協するとは、不思議な外交感覚である。ドゥテルテ氏が、大統領1期で終わり立候補しないとなれば、次期大統領が新規まき直しで、中国とやり合わなければならない。7月、フィリピンで1200人の成人を対象に行われた世論調査で、中国への信頼度は2016年4月以降、最低水準を記録したという。国民は怒って当然である。

     


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    ラオス政府が、次第に事故の補償問題に触れてきた。表題のように、「人災」であると決めてかかっている。普通の水害という自然災害でない。こういう位置づけだ。このような姿勢に転じてきた背景には、ラオスにとって発電事業が、有力な「輸出産業」である点も無視できない。今後とも電力開発を行なう以上、「一罰百戒」で事故再発を防ぐ意味もあるのか。

     

    ラオスの電源開発計画はつぎのようだ。

     

    「1990年代前半から次々とダム建設に着手。エネルギー鉱業省などによると現在、国内には53基の水力発電所があり、発電能力は計約7千メガワット。8割は輸出していて、最大の購入国タイには4200メガワット分あまりを輸出。同省によると、将来的には9千メガワット分に増やすと確約しているという。中国やベトナムにも輸出しており、2021年までに全体の発電能力を現在の2倍近い約1万3千メガワットに増強する計画も進行しているという」(『朝日新聞』8月2日付)

     

    以上のような事情を考えると、ラオス政府の特別補償請求という意味合いが理解できる。ただ、原因究明はしっかりやらないと事故は再び起こる。

     

    『中央日報』(8月2日付)は、「ラオス政府、ダム決壊は欠陥工事による人災、特別補償を 韓国建設企業に向けて?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日刊『ビエンチャンタイムズ』(8月2日付)報道によると、ラオスのソーンサイ・シーパンドン副首相は、最近開かれた補助ダム事故処理のための特別委員会会議で『洪水はダムに生じた亀裂のために起きた』と主張した。そして被害者への補償も一般的な自然災害の場合とは異なるべきだと強調した。この会議に出席した主務省庁の高官も同じ立場を明らかにした。エネルギー鉱山省のダオボン・ポンケオ局長は新聞のインタビューで『我々には災難の被害者に対する補償規定があるが、この規定は今回の事故に適用されない』とし、『今回の事故は自然災害ではないため』と主張した」

     

    決壊したのは、補助ダムである。現場写真を見ると、土を固めて堤防をつくっている。「アースフィルダム」と呼ばれているらしいが、私は今までコンクリートダムを想定していた。「土のダム」となれば、SK建設が主張するように大量の降雨があったという事情も考慮する必要があるように思える。ここは、土木工学の立場から「土のダム」と降雨量との関係を取り上げるべきテーマでなかろうか。

     

    (2)「こうした立場は、エネルギー鉱山相の主張とも一致する。カムマニ・インティラスエネルギー鉱山相は7月26日、現地メディアのインタビューで『規格に満たない工事と予想以上の豪雨が原因であるようだ。補助ダムに亀裂が入り、この隙間から水が漏れてダムを決壊させるほど大きい穴が生じたとみる』と欠陥工事疑惑を提起した。しかし施工を担当したSK建設はダムの事故が発生する前の10日間に1000ミリ以上の雨が降っただけに豪雨による『天災地変』とみている。村と農耕地の浸水による物的被害規模は算定するのが難しい状況だ」

     

    ラオス政府とSK建設が直接、話合っていてもラチがあかないであろう。ダムに関する国際的な研究機関のようなものはないのか。第三者機関による判定が最も必要に思われる。



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    中国の「台湾憎さ」は、尋常なものでない。もはや病的といっても良いくらいの振る舞いを続けている。腕力にかけても台湾に中国の威光を認めさせる荒々しさをみせている。戦前の台湾は、日本の植民地であった。日本が、日清戦争で得たものだが、清国は台湾について何らの関心も持っていなかった。「化外(けがい)の地」という認識だった。要するに、どうにも手が付けられない島だから、日本が欲しければ呉れてやる。こういう認識であった。

     

    台湾は、中国政府の掲げる「一つの中国論」を笠に着て、外交戦略で「中国を取るか、台湾を捨てるか」という二者択一を迫っている。台湾と外交関係を持つ国を減らして孤立させる戦術だ。現在、台湾が外交関係を維持している国は18ヶ国に減った。うち、6ヶ国が南太平洋に散在する。ツバル,ソロモン諸島,マーシャル諸島共和国,パラオ共和国,キリバス共和国,ナウル共和国である。

     

    中国が、台湾を外交的に孤立させる目的は、台湾への軍事攻撃を前提にしているからだ。中国と外交関係があれば、中国の台湾攻撃を容認するだろうという期待である。だが、中国は大きな誤算をしている。今回、米国が「国防権限法」の改正をした目的が何であるかを知らないのだ。この中には、「インドや台湾との防衛条約を強化する条項も盛り込まれている。これに加え、南シナ海の島々の軍事拠点化を中止するまで、中国の環太平洋合同演習(リムパック)参加を禁じるとしている」(『ウォール・ストリート・ジャーナル』8月2日付)。中国の台湾孤立政策は無駄である。米国が、台湾防衛を前面に出しているのだ。中国が、身勝手な政策を行なっても反感を買うだけであろう。

     

    『ロイター』(7月31日付)は、「中国、小切手外交で攻勢、南太平洋諸国を借金漬けに」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「南太平洋に浮かぶ島国トンガは、中国からの融資が当初6500万ドル(約72億円)程度だった。現在は1億1500万ドルを超える。1年間の国内総生産(GDP)のほぼ3分の1に相当する。利子が膨らんだほか、トンガ全土の道路開発のために新たな融資を受けたためだ。元金返済計画が9月にスタートするが、トンガの年間元利払い費は約2倍に膨れ上がることになり、同国政府は対応に追われている。トンガの不安定な立場は、南太平洋の小国を直撃している広範な『負債疲れ』を示している。同地域が財政難に陥り、中国からの外交圧力にますます影響を受けやすくなるという恐怖も駆り立てている」

     

    トンガは、不幸にも台湾との外交関係を打ち切って、中国へ鞍替えして招いた悲劇である。現在の債務総額は、GDPのほぼ3分の1と言われる。この9月から返済がはじまるという。後のパラグラフに出てくるが、トンガは2013に債務免除を申入れて撥ね付けられた。最初は、猫なで声で接近しても、あとはがらりと態度を変える。それが、中国式の外交術である。日本も「ニーハオ」などと言う甘い声に騙されていると大変なことになろう。

     

    (2)「同地域の小国への融資は、台湾承認を巡る中台の影響力争いで、中国に『てこ』をもたらすことになる。台湾は同地域で強力な外交関係を築いており、同地域は世界有数の中台勢力争いの現場となっている。ロイターは南太平洋の島国11カ国の財務書類を分析。その結果、この10年で中国の融資プログラムによる債務残高がほぼゼロから13億ドル超に膨れ上がっていることが明らかとなった。オーストラリアが南太平洋地域に対して大規模な援助プログラムを提供しており、いまなお最大の支援国ではあるものの、2国間融資においては、いまや中国が最大の貸し手であることを財務書類は示している」

     

    中国は、台湾を追い詰めるために「札束外交」によって、「台湾断交」を行なわせた。トンガは、中国の「札束」の魅力に負けて台湾と断交して、今日の「借金地獄」へ落込んだ。自業自得の面もあるが、産業と言えば農魚業と観光しかない国にとって、過大債務の返済は大変な事態である。中国は、こういうことが分かりながら貸付け、工事を受注した。罪は深い。

     

     


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    8月2日16時、人民元相場は6.818元である。中国当局は、あっさりと「6.8元割れ」を容認した形だ。米国のトランプ大統領は、最近の人民元安が米国の関税引き上げを相殺していると判断、激怒しているという。先の、2000億ドルの中国からの輸入品に対して、当初の10%引上げを急遽25%にさせた理由となっている。

     

    『ロイター』(8月1日付)は、「中国当局、人民元の下落放置、市場で一段安観測強まる」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国当局が人民元を急速な下落をいつになく放置している。こうした姿勢は景気刺激策の一環で、年内を通じて元は一段と値下がりするのではないかとの観測が、市場で広がりつつある。4月から7月までの人民元の対ドル相場は8%安となり、4カ月間の下落率で過去最大を記録した。米金利上昇懸念や、中国の債券利回り低下に加え、米中貿易摩擦の激化が背景だ。ただ以前に人民元が大きく売られた2015年8月から16年終盤までと異なり、中国人民銀行(中央銀行)はほとんど通貨安抑制に動いていない」

     

    4月から7月までの人民元の対ドル相場は8%安になっている。米国はこれに神経を使っている。貿易摩擦を通貨切り下げで乗り切ろうという中国の判断は、苦肉の策とは言え危険に映るのだ。8月6日になって、中国の上期の経常収支が赤字という事態が発表になれば、人民元は一挙に売られる地合いになる。すでに、人民元安に向けて「助走」をつけ始めた段階で、「売り材料」がドンと出た場合、市場は一気に売りに傾く懸念はないのだろうか。あるいは、中国が経常収支赤字を見込んで、少しずつ「ガス抜き」を始めているのか。

     

    (2)「ING(香港)の広域中華圏エコノミスト、アイリス・パン氏は『貿易摩擦の存在とそのエスカレーションは、中国の純輸出が落ち込むことを意味し、だからこそ人民元はドルに対して下落すると心の底から思う』と話す。同氏によると、相場は足元の1ドル=6.82元前後から年末までに7元まで、さらに2.5%元安が進むと予想される。15~16年に中国当局は、通貨を支えて多額の資金が海外に出ていくのを阻止するために1兆ドル前後もの外貨準備を投じた教訓から、その後厳格な資本規制を導入したため、同じような危機は生じないとみられる」

     

    中国は、米中貿易摩擦によって輸出減になる以上、人民元相場が下落するのは当然という見方である。年末には7元へ下落しさらに2.5%安の7.2元近くの相場を見込んでいるという。このような秩序だった下落であれば問題ないとして、相場がそれほどおとなしく人間の思惑通りに管理されるだろうか。相場の恐ろしさは「暴走」である。

     

    中国経済の将来について、疑問が出てくる可能性を全く考えない良いだろうか。今年上期の経常収支赤字が現実のものとして認識された時、中国経済観は根本から揺さぶられることはないのか。問題提起をしておきたい。

     


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