中国経済に新たな異変が起こっている。中国上海と欧米を結ぶ国際コンテナ航路の運賃が急落していることだ。上海コンテナ運賃指数は10月14日時点で、2022年初めの水準から7割も下落した。例年なら10月は、コンテナ業界の繁忙期であることを考えると、尋常ではない落ち込みだ。中国の輸出が、急激な落込みを見せている前兆である。
中国は、部品・中間財などを輸入して加工し、輸出する加工貿易で経済成長を遂げてきた。ところが、前述のように10月の国際コンテナ運賃指数が急落していることは、輸出貨物需要が急減していることの現れである。韓国の対中輸出は、全体の25%にも達している。韓国経済に大きく響く事態になった。
中国経済は、構造的な脆弱性を抱えている。労働力不足(生産年齢人口減)が顕著になる一方、生産性を押上げる先端半導体が、米国の輸出規制で輸入できなくなれば、一段の生産性低下に直面する。「中国の時代」は、脆くも崩れるという認識が、いやが上にも高まらざるをえなくさせている。
『ハンギョレ新聞』(10月25日付)は、「対中国貿易黒字、1年で25兆ウォン蒸発 中国の低成長で韓国も『黄信号』」と題する記事を掲載した。
BRICs(中国を含む新興経済4カ国)」という言葉を作ったジム・オニール元英国財務次官は2012年、「中国は11.5週ごとにギリシャ規模の経済を創出する国」と高速成長する中国経済をこのように描写した。このような評価は10年で180度変わった。これからは中国が世界経済の成長ではなく、低迷を牽引するだろうとの懸念は強い。中国に対する依存度の高い韓国経済にも黄信号が灯っているということだ。
(1)「世界最大の資産運用会社「ブラックロック」の投資研究所は、中国共産党全国代表大会の期間中の10月17日に発行した報告書で、「中国経済はコロナパンデミック以前の10年間で年平均7.7%の急速な成長を示した。しかし、今はかなりゆっくりとした成長の段階へとさしかかる深刻な課題に直面している」と指摘した。中国経済の潜在成長率(物価刺激なしに成長しうる経済の基礎体力)が、10年後には3%にまで下がる恐れがあるというのだ」
10年後に潜在成長率が、3%まで低下するという予測が現れた。これは、まだ楽観的部類で20年代は、平均して2.5%の潜在成長率に低下するとする予測もある。米ロックフェラー・インターナショナルの会長であるルチル・シャルマ氏だ。中国経済への見方は、ゼロコロナや「共同富裕論」など習氏の成長抑制策で、一挙に悲観論へ傾いている。
(2)「同研究所が、中国経済の長期低成長を予想する理由は大きく分けて3つある。まず、中国の輸出が低迷していること。報告書は、今年と来年の中国の実質輸出増加率が年平均で6ポイント低下し、成長率を1.1ポイント下げると予想した。コロナ禍中に急増した海外商品需要に支えられて2020~2021年には1年に10%ずつ増えた輸出が、減少に転じるという」
下線部では、中国経済を支えた輸出の伸び率が低迷して、来年のGDP成長率を1.1ポイントも引下げるとしている。先述のように10月の海上運賃が年初に比べ7割も急落する事態と符節を合わせているのだ。
(3)「輸出を代替するために内需を拡大させるのも容易ではない。地方政府の大規模負債、不動産バブル、所得不平等の悪化などが政府の政策の足を引っ張っているからだ。習近平政権3期目にも、成長というよりは安定重視の基調が続くだろうとの予想も、このような分析を支持する。中国の生産人口の減少、米国の先端技術分野での牽制による生産性向上の鈍化は、今後の中国の成長潜在力を下げる根本的な原因だと指摘されている」
下線のような要因によって、中国の生産性鈍化は必至とみている。中国が、米国へ「喧嘩を売った」(米国の覇権打倒)ことによるブーメランをあびるのだ。
(4)「国際通貨基金(IMF)は最近発表した「世界経済見通し」で、中国の景気低迷はグローバル経済を脅かす3大要因のひとつだと指摘した。ゼロコロナ政策、不動産景気の急落などにより、世界2位の経済大国である中国の景気が停滞すれば、各国にウクライナ戦争に匹敵する否定的な影響を及ぼすだろうとの見解だ。IMFは、昨年8.1%を記録した中国の実質成長率が今年は3.2%にとどまると予想している」
IMFは、今年の成長率予測を3.2%と下方修正した。オーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」も今年3月に発表した報告書で、「中国は人口減少、資本集約的成長の限界、生産性向上の鈍化などにより、年間成長率が2030年までに年平均3%、2040年までに2%へと鈍化するだろう」との展望を示している。2035年の一人当り名目GDPを2020年比で倍増する計画には、5%弱の成長率が必要である。2030年までに年平均3%、2040年までに2%という最新予測では、倍増計画の実現は不可能である。
(5)「韓国にとって、中国の低成長は決して他人事ではない。中国の輸出と成長が低迷すれば、中国の現地生産基地に中間財(最終製品の生産に投入する材料)を輸出する韓国の交易に及ぼす影響も小さくないからだ。10月20日までの今年の韓国の対中貿易黒字(輸出額-輸入額)は27億ドルで、昨年同期に比べて86%(172億ドル)減少した。昨年の中国に対する貿易黒字の規模は243億ドルで、韓国の貿易黒字総額(293億ドル)の83%に達した」
韓国の対中貿易黒字は昨年、貿易黒字総額の83%にも達している。その「ドル箱」が、異変を起しているのは、韓国にとって重大事態だ。来年の韓国貿易赤字は、不可避となろう。