勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

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    中国の王毅外相が、11月末に日韓両国を訪問した。米国に新政権登場前に、先手を打って「中国の存在をお忘れなく」というメッセージを伝えに来たのであろう。とりわけ、韓国には、米韓同盟へのくさびを打ち込むという目的が明白であった。

     

    王毅氏は、日韓に対して日中韓3ヶ国のFTA(自由貿易協定)の締結交渉促進を持ち出してきた。この3ヶ国でFTAを結びたいという狙いは、米中デカップリング(分断)による中国の打撃を3ヶ国のFTAでカバーしようというものだ。米中デカップリングは、中国の海洋進出を防ぐ安全保障上の目的である。中国と経済圏を異にして、中国の野望を阻止するものである。

     

    中国は、TPP(環太平洋経済連携協定)へ参加したいとも言い出している。手当たりしだい、日韓へ経済的に接近しようという狙いは、米中デカップリングの大波を少しでも鎮めようという苦肉の策であるに違いない。

     


    韓国紙『東亜日報』(12月1日付)は、「王毅が切り出した『韓中日FTA』、まだ外交・経済リスクが大きい」と題する記事を掲載した。

     

    最近、韓国と日本を歴訪した中国の王毅外交部長が、「韓中日間の自由貿易協定(FTA)」の推進を主張した。王部長は、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官との会談で「韓中日間FTAを積極的に推進しよう」とし、日本外相との会談でもこれを強調した。中国の『環球時報』は、「韓中日FTAは、北東アジア地域の協力制度の不足を補うために有効だ」として、雰囲気の盛り上げに乗り出した。韓中日FTAは、期待される効果とともに、経済的、外交的リスクも大きいだけに、慎重にアプローチしなければならない。

     

    (1)「韓中日FTAは、2013年から交渉が始まったが、重要な分野を巡る意見の食い違いと外交対立で交渉がなかなか進まなかった。世界経済の24%を占める三国が、商品やサービスの障壁を取り除けば、経済成長を促進する効果が生じる可能性があるが、その分リスクが大きい。世界的な製造業大国である3国は、半導体、自動車、鉄鋼などの主要輸出産業で重なる部分が多い。韓中FTAが2015年に発効したが、それ以上の開放は韓国産業に打撃を与える恐れがある。韓国と日本も、自国産業保護のために互いに開放を嫌う分野が多い。韓中日FTAは、これまで何度も議論されたが、それ以上進展しなかったのもこのためだ」

     

    日中韓FTAでは、韓国にとっては致命的な打撃を受ける。日本からの工業製品が関税撤廃となればドッと入ってくるからだ。韓国の命綱の一つである自動車産業が、日本製に圧倒されれば、韓国経済が左前になるほどの影響を受ける。韓国経済は、日本経済のコピーであることを考えれば、その間の事情は明らかであろう。

     


    (2)「政治外交的な面での含意も欠かせない。米国の政権交代を控えて、中国が地域協力と経済通商問題を切り出したのは、北東アジア地域での米国の影響力を牽制しようとする狙いが隠れている。これまで韓中日FTA交渉は、韓日が過去の歴史問題で対立し、中国が韓国の高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を口実に中止するなど、政治外交的な影響を大きく受けた」

     

    日中韓3ヶ国の外交関係も微妙である。日中は、尖閣諸島問題で対立関係。日韓は、歴史問題の蒸返し。中韓は、THAAD(超高高度ミサイル網)問題による中国から韓国へ経済制裁継続。三者三葉の対立要因を抱えている。「核心問題」ゆえに、解決は難しいのである。中国が、海洋進出政策を続ける限り、日中韓3ヶ国FTAは永久の検討課題に止まるであろう。

     

    (3)「米国は、ジョー・バイデン次期大統領が「民主主義首脳会議」の開催を推進しながら、中国への牽制に乗り出した。バイデン次期大統領は、大統領選挙の過程で「世界民主国家が集まって民主主義体制を強化し、(民主主義に)逆行する国に対抗しよう」と主張したが、最近本格化の動きを見せている。米中の両方から引き寄せる力が大きくなり、韓国の「戦略的あいまいさ」は再び試験台に上がっている。米中の覇権競争で板挟みになるのか、戦略的活用で国益を高めるのかは政府のやり方次第と言える」

     

    米国は、米中対立の中で日韓の同盟国との関係密接化を狙っている。日中韓FTAなど、とんでもない話であろう。米国が、むしろTPPへ参加して中国との遮断を急ぐ局面である。安全保障問題の視点が絡むと、経済と外交は別でなく政経は一体化する。韓国は、米中対立の中で曖昧戦略など不可能になる。韓国が、「戦略的活用で国益を高めるのかは政府のやり方次第」など、安易な夢は捨てるべきである。

     

     

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    中国の王毅外相は、11月25~27日の3泊4日で日韓両国を訪問した。日本訪問は、中国側の要請という。王毅氏の日韓訪問には、明らかに濃淡の差があった。日本は儀礼上、韓国は戦略上という違いである。

     

    王毅外相は、意味深長な発言を残している。日本へは「一衣帯水」、韓国には「守望相助」という挨拶をしたのだ。「一衣帯水」は、狭い川や海を隔てて近接していると言う関係である。「守望相助」は、共通の敵や困難に備えて交互に見張りを務める関係である。つまり、日本とは「薄い関係」であり、韓国とは「濃い関係」を意味している。王毅氏は、日中と中韓の関係性について微妙な言い回しであった。

     

    『ハンギョレ新聞』(11月30日付)は、「韓国は『守望相助』、日本は『一衣帯水』、王毅中国外相の発言の真意とは」と題する記事を掲載した。

     

    来年1月のバイデン政権発足を控えて行われた中国の王毅・外交担当国務委員兼外交部長の「34日の韓日歴訪」が27日に終わった。特に今回の歴訪は米国の主要同盟国である韓国と日本に対する中国の“戦略的観点の相違”をそのまま表したという点で注目される。

     


    (1)「25~27日の3日間の訪韓で最も目を引いたのは、ムン・ジョンイン大統領統一外交安保特別補佐官らとの27日の朝食会だった。この日の朝食会の内容を伝える中国外交部の資料には、意味深長な表現がいくつか登場する。王毅部長は同朝食会で、韓中関係について「両国首脳が重要な共通認識に基づいて両国の根本的利益の方向に合うように両国関係に対する青写真を導き出すとともに、発展戦略をうまく結びつけて実務的な協力で両国関係を安定的に推進することを望んでいる」と述べた」

     

    王毅外相は、韓国に対して中韓関係のより密接な関係性樹立を要望している。これは、バイデン米政権が発足後の米韓同盟密接化を前に、大きなくさびを打ち込もうという狙いである。中国の対日関係については、次のパラグラフで取り上げるが、日米同盟の強固さから中へ入り込むことについて絶望視している。それに比べて、韓国は中国が入り込める余地があると甘く見ているのであろう。

     

    (2)「『アメリカ・ファースト』を掲げ同盟を軽視したドナルド・トランプ政権と違い、バイデン政権は放置されてきた韓米日「三角同盟」を再整備し、中国への圧力を強めていくものと見られる。このような敏感な時期に、王部長は韓国に両国間の「共通認識」と共通ビジョンである「青写真」を提案し、米国にあまり傾くことなく、中国と「国際社会の公平と正義を守ろう」と呼び掛けたわけだ。また、26日に行なったカン・ギョンファ外交部長官との会談前の冒頭発言でも、両国間の「守望相助の精神」を強調し、韓国とともに「地域の平和と安定を守っていきたい」という意向を示した。韓国の発表にはない「中韓外交・安全2+2対話(外交安保当局連席会議)の始動」に言及し、韓中関係の“戦略性”を強調した」

     

    中韓の間には、「外交・安全2+2対話」(外交安保当局連席会議)が存在することが明らかになった。米韓同盟がありながら、韓国が米国の仮想敵国である中国と、こういう「2+2」対話機会を持っていたことは、米国への裏切り行為である。韓国は、こういう行為を平気でするのだ。危ない相手である。

     

    (3)「これに比べ、24~25日王部長の日本訪問は冷ややかな雰囲気の中で終わった。王部長は日本では協力が必要な隣人という「一衣帯水」を持ち出した。王部長は茂木敏充外相との会談で中日関係を「長期的協力パートナー」とし、「適切な戦略的コミュニケーション」が必要であると強調するにとどまった。冷ややかな雰囲気を悪化させたのは、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる厳しい攻防だった」

     

    日中関係は、尖閣諸島問題で対立関係にある。日本に、冷ややかな雰囲気があるのは当然である。日本人の「中国嫌い」は、世界一という世論調査結果が出ている。世論の80%台が「好ましい国」と見ていないのだ。

     

    (4)「24日の記者会見で、茂木外相が、尖閣諸島をめぐる中国の動きに対する懸念を示したことに対し、王部長は「日本の漁船が釣魚島周辺の敏感な水域に入る事態が発生している」と反論した。中国の習近平国家主席の訪問についても、韓国では王部長が「条件が整い次第、訪韓したい」という習主席の口頭メッセージを伝えたが、日本では関連した言及はなかったと朝日新聞などが報じた」

     

    自民党の中には、習氏を国賓で迎える行事は、2022年以降へ延期という主張も聞かれるようになってきた。現時点で、習氏の日本訪問は見通し難という状況だ。韓国と違って、習氏の訪日が菅政権の外交的プラスにならないからである。むしろ、「反中ムード」を醸し出すリスクの方が大きくなっている。


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    FRB(米連邦準備制度理事会)は、2023年まで実質ゼロ金利政策を続けると発表

    して以来、ドル安がはっきりしてきた。これを受けて、円高が進んでいる。すでに1ドル=103円も珍しくない状況になっている。さらに、来年は静かに1ドル=100円突破になりそうだという。

     

    日本では、「円高不況論」が根強い。だが、日米企業物価に基づく購買力平価を見れば、1ドル=93円見当である。つまり、実勢相場が93円を突破する円高になれば、企業の輸出採算は悪化する。現状では、そこまでの円高を予想していない。心配ご無用、というところだ。

     

    『ロイター』(11月26日付)は、「来年のドル・円、静かに100円割れかー佐々木融氏」と題する記事を掲載した。

     

    J.P.モルガンは今週、来年末までの為替相場予想を公表した。その中でドル/円相場に関しては100円を割り込み、98円まで下落するとの予想を示した。米国の追加経済対策は来年1~3月期の終わり頃まで合意が得られないとみているため、米国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナスとなる見通しだ。

     


    (1)「想定される経済環境の中でも、米FRBが利上げを必要と感じるところまでインフレ率が上昇しなければ、利上げ期待も高まらないだろう。その結果、「経常赤字国の米国が名目政策金利をゼロ、実質金利はマイナス」という状況は続くので、米ドルが少なくとも対円で下落するトレンドは、来年も続くと予想される。しかし、1兆ドル程度と予想される追加経済対策は46月期以降の成長を高めることになり、また、来年後半はワクチンが広く配布され、経済活動も次第に回復の度合いを強めていくことになるだろう」

     

    FRBが、2023年まで実質ゼロ金利を継続すると発表していることから、ドル安基調が続く見通しが強くなった。米国経済は、来年後半にはワクチン投与が行われるので様相は変ってくる。

     

    (2)「このように想定される経済環境の中でも、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを必要と感じるところまでインフレ率が上昇しなければ、利上げ期待も高まらないだろう。その結果、「経常赤字国の米国が名目政策金利をゼロ、実質金利はマイナス」という状況は続くので、米ドルが少なくとも対円で下落するトレンドは、来年も続くと予想される。国際金融危機(GFC、リーマンショック)からの回復過程では、FRBは約7年間政策金利をゼロ%に据え置いた。その最初の約2年半程度(2009年3月2011年7月)の間に、米ドルは名目実効レートベースで約18%程度下落した。今年は4月以降、まだ10%程度しか下落していない。しかも、GFC後の回復過程に比べ、現状の米10年金利は現在3分の1程度の水準しかない」

     

    ドルに関する見方はそれぞれ異なる。例えばゴールドマン・サックスのアナリストは、今後12カ月にドルが6%下落すると予想している。一方、INGのアナリストは最大で10%の下げを見込んでいる。シティは、ドルが2021年にさらに20%下落すると予測するなど多様である。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月27日付)が報じた。

     


    (3)「一方で、円は現状の割安度合いを維持できないだろう。円は実質実効レートベースでは、依然として過去30年間の平均に比べ20%程度割安となっている。今年の年初までは積極的な対外直接投資と対外証券投資により、円の割安度合いは維持されてきた。だが、新型コロナウィルス感染が世界的に拡大している中で、日本企業の対外直接投資は、過去最大を記録した昨年のペースに比べて、既に半分以下に落ち込んでいる」

     

    日本企業の対外直接投資は、今年に入って昨年の半分以下のペースに落ちている。これは、パンデミックによる世界経済の混乱が原因である。こうして、日本企業のドル需要は低下しているので、ドル安基調に拍車をかける。

     

    (4)「各国の金利差が無くなり、先行き不透明感から対外投資が以前に比べれば手控えられる状況の下で、来年の円相場は、これまでのようにリスクセンチメントによる影響より、ファンダメンタルズから受ける影響の方が大きくなるだろう。日本は、依然として高水準の経常黒字、これまでの旺盛な対外投資によって維持されてきた割安な円水準、実質金利の上昇などの観点からすると、2021年に円が上昇する可能性は比較的高いと考えられる」

     

    日本が、これまで取ってきた特異な金融政策は、欧米の追随によって突飛なものではなくなってきた。円が、上昇する局面にあることを認めるほかない。21年は、そういう年となろう。

     


    (5)「世界的な株価上昇が続く中で、ドル/円相場と日経平均株価の相関は今後も崩れたままの状態となるだろう。J.P.モルガンは、来年もドル/円相場の下落トレンドと日経平均株価の上昇トレンドは並立すると予想している」

     

    ここでの指摘は、極めて重要である。円高になっても日経平均株価は上昇するというのである。私が、この「謎解き」をしたい。

     

    日本の輸出に直接関わるのは「企業物価・購買力平価」であること。円の実勢相場が、これを上回っている限り輸出業者は損にならない。円高になっても、日経平均株価が上がるのは、日本の「企業物価・購買力平価」が低位維持である結果だ。

     


    そこで、「企業物価・購買力平価」を見ると、日本は2013年5月以来、円の実勢相場を一貫して下回っていることがわかる。つまり、円の実勢相場の変動にも関わらず、日本の企業物価の購買力平価は、ドル=円相場を下回っているのだ。日本の製造業が、米国よりも高い生産性を上げているので、企業物価が安定していることを意味する。

     

    企業物価・購買力平価(国際通貨研究所調べ)は、11月19日現在で94円58銭である。円相場との差は、11月19日現在で9円25銭となる。円相場で輸出成約しても、9円余の「差益」が出ている計算である。今後、円が100円を突破しても、企業物価・購買力平価94円台へ急迫しない限り、「静かな円高」と言えそうだ。

     

     

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    中国では、「11月11日」(W11」)を独身の日と称して、インターネット通販が大きな評判を呼んでいる。その裏で、顧客からのキャンセルが自由であることが思わざる負担を招いている。出品業者にとっては、キャンセルに伴う返金業務負担がかかるのだ。売上高の大きさだけを話題にされるが、キャンセルによる返金業務で業者は泣かされている。

     

    『レコードチャイナ』(11月30日付)は、「中国最大級の小売キャンペーン「W11」、その裏で注文キャンセルの嵐?」と題する記事を掲載した。

     

    今年も大きく盛り上がった中国EC(インターネット通販)最大級のキャンペーン「W11」。毎年11月11日アリババ系列の淘宝網(Taobao)や天猫(Tmall)、そのライバルの京東(JD.com)や拼多多(Pinduoduo)など、EC全体が激安キャンペーンを展開する超巨大商戦。2020年も昨年を上回るオーダー金額となったW11でしたが、実はその陰ではメーカーにとっては容易ならざる事件が起こっていました。

     


    (1)「天猫(Tmall)が公式微博(ウェイボー)アカウントで公表した 今年のW11における最終オーダー金額は4982億元(約7.9兆円。京東(JDcom)も公式ウェイボーで、オーダー金額が2715億元(約4.3兆円)記録したことを発表しています。W11に関しては、日本でも大きく報道され、例年の巨大な売上額がさらに増えたと思われています。それは間違いないのですが、実はその陰で商品を販売するメーカーにとっては別の喜べない事態が発生しています)

     

    今年のW11の販売額は、「天猫」が約7.9兆円、「京東」は約4.3兆円と発表されている。だが、キャンセル金額を差し引いていないので、純売上がいくらであったかは不明である。

     

    (2)「それは、「キャンセル」「返金」対応です。その対応に追われている様子が、中国メディア『中国商報』(11月16日付)で「W11セール商品発送前に返金、このような割引悪用をどう思いますか」として報じられています。中国の小売業界、特にECでは「7日間の無条件返品」が消費者の権利として認められています。そのため、消費者が手に取って中身を確認しても満足いかない場合、購入を後悔した場合は返品が可能。しかし、今年起こっているのは、メーカーが商品を発送してからの「返品・返金」ではなく、W11が過ぎた瞬間に起こる、まさに発送準備をしているさなかでの「キャンセル・返金」だったと記事は伝えているのです」

     

    インターネット通販では、「7日間の無条件返品」が認められている。W11では、消費者がこの特典を生かして、意図的に11月11日の翌日、「返品・返金」を申入れてくると言うのだ。出品業者にとっては、「いざ、発送」という段階でキャンセルが発生するもの。「意図的」という理由は、あとのパラグラフで説明したい。

     


    (3)「理由はいくつか考えられますが、記事ではセールを盛り上げる数々の割引システムだと指摘しています。詳しく説明すると、W11シーズンにはプラットフォーム側が「〇〇元購入ごとに〇元値引き」というサービスを多く展開します。その種類は極めて豊富で、かつ複数サービスの同時利用が可能。さらには「紅包」と呼ばれるラッキークーポンも併用されるため、その計算は非常に難解になっています。しかも、その複雑さは年々レベルアップしており、2019年にはその計算方法を勉強する「天猫大学」なるものが開設されたこともあるほど」

     

    消費者が、セールスの割引システムを悪用する目的で、ポイントだけ稼ぎそれを達成した後、「返品・返金」ラッシュを生んでいる。

     

    (4)「記事によると、一部の消費者は割引の条件を満たすまで様々な商品を買い、決済額を確定させてから、11日を過ぎた時点で不要なものだけキャンセルする、という割引システムを悪用した買い物を行っていたとのこと。このキャンセル対応の多発によってメーカーは面倒な返金の手間を強いられ、配送作業も止める必要が生じ、それに大わらわということなのです。莫大な売上額ばかりが注目されますが、こうした返金額を差し引いてW11の純売上はどのくらいだったのか、というのはまさにブラックボックス。複雑化するキャンペーンが今回の大混乱にも関わらず、今後も続くのかもまた、闇の中です」

     

    個々の商品にポイントをつけて、総額にさらなるポイントを加えるから、こういう「まやかし売上」を発生させるのだろう。総額ポイントを中止することが、混乱を防ぐ方法だ。「アマゾン方式」に戻せば問題は解決される。

     

     

     

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    中国の愛国主義教育は、Z世代(1995年以降生まれ)で大きな効果を上げている。習近平氏の「中華民族の偉大な復興」スローガンが、若者に「中国製造」=国産品という誇りを持たせているからだという。戦前の日本が、「大日本帝国」の美名で少年たちは続々と兵役に応募していった、あの時代と雰囲気が似通っている。危険なシグナルである。

     

    『朝鮮日報』(11月30日付)は、「『メード・イン・チャイナ』という自負心」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ナムヒ北京特派員である。

     

    最近中国の10~20代の消費者が熱狂する製品がある。特定ブランドの製品ではない。どんな商品であれ、「中国製造(メード・イン・チャイナ)」というフレーズが付いた商品だ。

     

    (1)「この「中国製造」は単に中国で作ったという原産地表示としての「メード・イン・チャイナ」ではない。説明書には小さな文字ではなく、前面と目立つ場所に商品のアイデンティティーを示すように大きく「中国製造」と書いてある。過去に外国では「メード・イン・チャイナ」は無視と嘲笑の対象だった。現在の中国で「中国製造」とは、世界最強の大国となった祖国に対して中国人が抱く自負心の象徴だ」

     

    自国に誇りを持つのは当然のこと。行き過ぎた場合の弊害として、「戦争」という二字を招く危険性が高くなる。「メード・イン・チャイナ」という意味の「中国製造」に誇りを持つのは良いとしても、危険な予兆を感じるのだ。

     

    (2)「中国茶飲料のブランドのうち、茶にチーズを混ぜたチーズティー飲料を販売する「喜茶(HEYTEA)」がある。最近中国のZ世代(主に1995年以降生まれ)の間で流行するファッションを見たいならば、喜茶の店舗に行けと言われるほど若い世代に人気がある。喜茶は携帯電話ケース、かばん、靴下、カップ、バッジなどのブランド周辺商品も販売している。消費者は商品の中央に書いてある「中国製造」という文字が気に入って購入するのだという。愛国主義マーケティングが成功したのだ

     

    「中国製造」が、ロゴとして使われることで商品が飛ぶように売れるとは、愛国主義マーケッティングの成功例であろう。ただ、「中国製造」が商標登録されている場合、他社は類似行為を禁じられるので、中国社会全体に拡散されることはないだろう。

     


    (3)「『中国製造』は中国政府が米国を意識して打ち出した概念だ。中国政府は2015年に「中国製造2025」という産業政策を開始した。25年まで10年間に新エネルギー車(NEV)、ロボットなど10の先端技術製造分野で中国が世界首位を目指すとする計画だ。中国政府は補助金投入、外国企業の買収などを通じ、「中国製造2025」計画を大々的に推進した。トランプ米大統領が中国製品に関税をかけ、貿易戦争を起こしたのも「中国製造2025」政策に脅威を感じたからだという分析がある」

     

    習近平氏は当初、「中国製造2025」を宣伝して、「中国再興」と結びつけていた。だが、米中対立が激化するとともに、「中国製造2025」を取り下げてしまい目立たなくさせている。皮肉にも、ブランドとして「中国製造」が生き残った感じである。

     

    (4)「現在、外国企業は中国の消費者の愛国ムードに合わせなければ生き残れず、プライドを少しでも逆なですれば、すぐに撤退させられる。米電気自動車(EV)大手のテスラは昨年、中国・上海工場で生産したモデルを発表し、「中国製のモデル3がやってくる」と宣伝して好評を集めた。これに対し、イタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナは2年前、中国系の女性モデルがはしでピザを食べる場面の広告を流し、中国を侮辱しているとの批判を受け、事実上中国事業を畳まなければならなかった」

     

    愛国教育が20年間続けば、国民を戦争に駆り立てられる。習政権になって8年を経ている。習氏が2022年以降も続投になれば、中国は確実に「戦争モード」になろう。習氏は、こういう若者の「好戦気運」を利用して、戦争を仕掛けるのでないか。その危険性が高まる。

     


    (5)「韓国のアイドルグループ、防弾少年団(BTS)による6・25戦争(朝鮮戦争)に関する韓米友好発言も最近、「侮辱罪」に引っ掛かり、中国の一部ネットユーザーや民族主義系メディアから集中攻撃を受けた。中国でBTSを広告モデルに起用したサムスン電子、現代自動車など韓国企業は明確な情報把握を行う前の段階で、インターネット上で批判世論が強いという理由だけでBTSとの関係を絶った」

     

    愛国主義マーケティングの拡散は、独善主義を生む危険性を孕んでいる。中国は、国家として危ない橋を渡り始めている。すべて、習近平氏ら少数の民族主義者の意図通りに取り運ばれているようだ。

     

    (6)「愛国主義と優越主義は中国の10~20代で最も強く表れる。中国が米国と二大大国と呼ばれるほど大国に浮上するのを直接見守り、学校で「中華民族の偉大な復興」という愛国思想を絶え間なく注入された影響が大きい。彼らが消費層の中心となった中国市場で外国企業の将来の不確実性は相当大きい。外国企業が堂々と声を上げて活動できるだろうか」

     

    愛国主義がマーケティングに止まっている段階から、愛国民族主義へと転化する段階へと進めば、確実に「戦争謳歌」ムードに一変するであろう。この問題は、簡単に考えるべきではない。

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