勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

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    文大統領は、5月21日に行われた米韓首脳会談で従来、見せていた言葉と全く違う「米国寄り」で内外を驚かせた。文氏が、これまでの「親中国」から、「親米国」へと変わったのでないかという憶測も流れている。事実は、文氏しか知らないのだが、これからの時間によって、それを証明されるだろう。

     

    韓国にはこれまで、味方になる国がなかったと指摘されている。それは、韓国の民族性がもたらした身勝手さで、外国から嫌われたもの。言行不一致が、親友をつくらないという市井の原理が、韓国という国家にも当てはまるだけの話だ。文大統領は今回、バイデン大統領と真の友人になれるだろうか。

     


    『中央日報』(6月1日付)は、「文大統領の変身、豹変か 革面か」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイェ・ヨンジュン論説委員である。

     

    (1)「あまり知られていないが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の語録の中には、中国の習近平国家主席を「民主的」指導者と称賛した発言がある。2017年12月、問題の「高い山、小さい国」発言の前、日韓中首脳会談で「習主席が民主的リーダーシップを提示した」と述べた。つい10日前の韓米首脳会談の共同声明を見ると、文大統領が当時そのような発言を本当にした人なのだろうかと感じる」

     

    文大統領は、習氏と初めて会談したとき、中国を大国、韓国は小国と発言して物議を醸した。「臣・文在寅」というイメージであった。その文氏が、米韓首脳会談において「米国寄り」へ鞍替えしてしまったのだ。

     

    (2)「米韓共同声明は、中国が嫌がる言葉で埋まっている。「韓米は規範に基づく国際秩序を阻害、不安定化または脅かすあらゆる行為に反対する」とした。誰を指しているのかは明白な表現だ。予想を越える文在寅大統領の変身にさまざまな声が出ている。世間では、シンガポール・板門店(パンムンジョム)宣言を声明に入れることに執着した結果、米国が望む表現を大幅に受け入れるバーター(交換)をしたという分析がもっともらしく出ている。大規模な外交交渉に関与した元老外交官の中にもそのように見る人が少なくない。実際、外交交渉の属性はお互い望むものを交換するというものだ」

     

    米韓共同声明の発表を見て、多くの人が驚いたはず。すっかり「親中」から脱して「親米」になったからだ。文氏の本心か、北朝鮮問題で米国の妥協を引き出すための「取引」であったのか。ベテラン外交官は、取引説に立っているという。

     

    (3)「そのようなバーターを受け入れた背景には、過去4年間の外交経験の蓄積を通じて現実的な方向に変わった文在寅政権の現実認識があったのだろう。世の中は自分を中心に回らないという悟りが陰にも陽にも影響を及ぼしたということだ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も任期末に向けて同じ傾向を見せた。おそらく韓米の共同声明はこうした複数の要因が複合的に作用した結果とみられる。とにかく、大韓民国が立つべき座標をさらに明確に表明したのが今回の会談の最大の成果だ」

     

    バーターであったとすれば、それも外交交渉で行なわれる「妥協の産物」と見てよいだろう。ただし、妥協でもそれを誠実に履行する義務がある。後日になって、あれこれ言い訳をして取り繕っては外交儀礼を欠くのだ。

     

    (4)「ところが会談が終わるやいなや、韓国政府当局者がその貴重な成果を自ら低く評価しているようだ。青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と外交部が前に出す成果は、「韓半島平和プロセスの再稼働」に集中している。冷静になる必要がある。バイデン大統領が候補時代からシンガポール会談を批判してきたが、それは形態についてだ」

     

    韓国は案の上、言い訳を始めたのである。南北問題の「成果」を誇張している。

     


    (5)「北朝鮮の核放棄と米国の体制保障、米朝関係正常化を盛り込んだシンガポール宣言自体に反対する理由はない。板門店宣言も同じだ。非核化のカギは目標に向かっていかなる経路をたどるかの方法論にある。この部分で今回の会談は進展した結果を出すことができなかった。米国は北朝鮮制裁の忠実な履行を再確認し、言葉だけでなく誠意ある行動を交渉の前提に掲げた。要するに、米国は北朝鮮の核問題に関する限り従来の立場と特に変わっていないということだ。にもかかわらずこれを韓国政府が成し遂げた成果のように包装するのは我田引水だ」

     

    韓国大統領府によれば、米国の北朝鮮政策はなにも変わっていないが、大きな成果が上がったように宣伝している。中国問題については、事前に中国と共同声明の内容について打合せをしていた事実が知られている。外交部長官が、「中国と密接に連絡を取り合っている」と、喋ってしまって、この噂を裏付けることになった。

     

    (6)「もう一度繰り返すが、今回の会談の本当の成果は、板門店宣言を共同声明に含めたところにあるのではない。鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官はなおさらだ。台湾海峡の安定を取り上げたのは、韓半島の平和安定と同じく原則的な表現だと述べたのである。誰がこの言葉に同意するだろうか。共同声明のインクも乾かないうちに出てきたこうした言葉は自分たちの信頼を落とすだけだ」

     

    中国外交部は、対中問題について原則論を強調して、具体論は何もなかったように否定している。米国の心証を悪くしているだろう。

     

    (7)「韓国で豹変という言葉は否定的なニュアンスで使われるが、原典を見るとそうではない。『周易』の革卦に「大人虎変 君子豹変 小人革面」とある。虎が毛色を変えるように大人は世の中を革新し、豹柄が秋に鮮明になるように君子は不断に新しくなるべきだ。小人は、顔だけを変えて本心は変えないという意味だ。これまでの状況を振り返ると、韓米首脳の共同声明は虎変の結果物ではないはずだ。なら、文大統領の変身は、豹変または革面のうちの一つだ。真実は何か、私はそれが知りたい」

    韓国が米国と交わした約束は、本来の意味である君子の「豹変」(革新)か、それとも小人の「革面」(本心を変えない)か、そのどちらかと見られている。「君子豹変」は、君子だからこそ根本的な革新が可能とされている。文氏が「小人革面」であれば、米韓同盟に隙間風どころか、崩壊への第一歩となろう。韓国の運命は、瀬戸際にある。

     

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    20年前まで、日本の半導体が世界を睥睨していた。それが、急速な円高と日米半導体協定に手足を縛られている間に、韓国サムスンの台頭を許すことになった。以後、日本の半導体は政府の支援もなく衰微の過程を歩んできたが、再び「戦略産業復活」という国家戦略の後押しを経て復興を目指す。

     

    長らくタブーとされてきた国家の支援によって半導体再興を図る狙いは、安全保障上の視点である。グローバル経済においては、適者生存にまかされてきたが、米中対立の激化という「新冷戦構造」下では、悠長なことを言っていられなくなっている。米国政府もすでに、半導体を戦略産業の筆頭にあげて保護育成する体制へと180度の転換である。日本も、政府が腰を上げる大義名分ができたのである。

     

    現在の日本半導体における「ミッシングピースは、ロジック半導体」とされている。半導体市場は2030年には現状の倍の100兆円に拡大するとも予測される巨大市場が見込まれる。世界規模で急速にデジタル化やグリーン化が進む中、日本がその波をとらえるには、技術の進展を支える半導体産業と両輪で取り組まなければならない。こういう危機感が、日本政府を捉えている。

     


    『ブルームバーグ』(5月31日付)は、「TSMCが日本で先端半導体の実装技術開発、旭化成やイビデンと連携」と題する記事を掲載した。

     

    経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は5月31日、先端半導体製造技術の開発助成事業で、世界最大の半導体受託生産企業である台湾積体電路製造(TSMC)を実施者に選定したと発表した。TSMCは、茨城県つくば市に設ける拠点で日本の企業や研究機関、大学などとも連携する。

     

    (1)「発表資料によると、選定されたのはTSMCジャパン3DIC研究開発センターで、中央演算処理装置(CPU)やメモリーなどを一つの基盤の上に立体的に積む「3Dパッケージング技術」を開発する。日本勢では材料メーカーの旭化成やイビデン、JSR、装置メーカーのキーエンスやディスコなどのほか、産業技術総合研究所や東京大学も参画する」

     

    経済産業省は、世界半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が新たに設ける日本拠点への支援で、総事業費約370億円の半分を拠出する。イビデンなど日本企業20社超が参画し、最先端の半導体製造技術の開発をめざす。官民一体でTSMCと連携し、国際競争力の維持・向上を図るというもの。茨城県つくば市の産業技術総合研究所で夏以降、試験ラインの整備を始める。2022年にも本格的な研究開発に着手する見込みだ。

     

    (2)「国内関連企業にとっては、半導体の微細化で世界最先端の技術を持つTSMCと連携することで、先端半導体を国内で製造する技術の確立を目指す狙いがある。半導体はコロナ禍による巣ごもり需要の高まりや在宅勤務の長期化などで世界的に需要が拡大し続け、車載向けでは半導体不足で自動車メーカーが生産調整を余儀なくされるなど深刻な問題となっている。このほか、経産省とNEDОは先端半導体製造のエッジコンピューティング向け実装技術の開発でソニーやセミコンダクタソリューションズ、実装共通基盤技術の開発で昭和電工マテリアルズ、住友ベークライトも実施者に選定した」

     

    世界の半導体各社は回路線幅の細さを競っている。線が細ければ狭い面積に回路を詰め込め、スマホなどのデバイスの小型化・低消費電力化に寄与するため、ロジック半導体やメモリーでこの傾向が顕著となる。微細化の競争には莫大な投資が必要で、日本勢の多くが競争から離脱した。

     


    例えば、一部でロジックを扱うルネサスの線幅は40ナノ(ナノは10億分の1)メートルにとどまる。より細い線幅が必要な製品は、TSMCに生産を委託している。海外勢の主戦場は、1桁ナノの線幅での量産化技術に移っており、日本勢があらためて追い上げるのは容易でない。こういう事情を解決するには、今回の日本政府のテコ入れが欠かせなかった。

     

    『ロイター』(5月14日付)は、「日の丸半導体、TSMC巻き込み描く復活 見劣る支援が壁」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「サプライチェーンの国内整備を進める米国は、2兆ドル規模のインフラ投資計画のうち、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け500億ドル(約5.5兆円)を割り当てる。EUも復興基金92兆円を用意。半導体を含むデジタル投資に2~3年で1350億ユーロ(約18兆円)以上を投資する。翻って日本は、ポスト5G(第5世代移動通信システム)基金が2000億円、サプライチェーン補助金も昨年度が約3000億円、今年度が約2000億円。業界からは「文字通り、ケタが違う」(半導体メーカー関係者)と、嘆息が漏れる。英調査会社オムディアの南川明シニアディレクターは「それなりの予算がつかなければ企業も動きにくい」と指摘する」。

     


    欧米が、多額の資金を投入して半導体産業の振興に全力を挙げている。自民党では、半導体支援体制を組んでいる。安倍前首相や麻生副総理も半導体「応援団」に名前を連ねている。これで、欧米に遅れを取ることもあるまい。久しぶりの高度成長時代に幅を効かした「産業政策」の登場である。歴史は繰返すと言うが、まさにそういう時代環境である。

     

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    中国は、これまでオーストラリアとニュージーランド(NZ)の間に溝をつくる戦略を駆使してきたが、どうやら不発に終わる気配だ。5月31日、豪・NZ首脳会談が開かれて、香港問題で強い憂慮の念を共有していると発表した。

     

    中国は、豪・NZ離間の策略を次のように行なってきた。

     

    4月5日、中国官営「Global Times(グローバルタイムズ)」は、「オーストラリアが米国の考えに従わせようとニュージーランドを圧迫している」というタイトルの寄稿文を掲載した。『中央日報』(4月7日付)が報じた。

     

    この寄稿文で、中国聊城大学のYu Lei首席研究員は、「豪メディアが最近新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)発生源調査に懸念を表明する共同声明からニュージーランドが外れたことをめぐって批判を加えている」とし「これはニュージーランドの対中路線を批判する唯一の記事でもない」と書いた。あわせて「これはオーストラリアが自分たちを米国に続く南太平洋の覇権勢力と感じ、ニュージーランドも自分たちが進む方向に従うべきだと信じているということ」と強調した。



    世界14カ国は3月30日、世界保健機関(WHO)の新型コロナ発生源調査の結果をめぐって懸念を声明した。NZが、ここに合流しなかったという理由で不当な圧力を受けているという趣旨であった。この声明には、米国の主導で結成された機密情報共有同盟体「ファイブ・アイズ」に属した米国・英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド」のうちニュージーランドだけが合流しなかった。

    以上のような事情から、NZが中国寄りに「鞍替え」したのでないかとみられていた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月1日付)は、「豪・NZ、対中強硬で足並み 首脳会談 香港問題『深い懸念』」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアのモリソン首相とニュージーランド(NZ)のアーダーン首相は5月31日、NZ南部クイーンズタウンで会談した。会談後の共同声明は香港や新疆ウイグル自治区の問題で「深い懸念」や「重大な懸念」を示した。対中国で強硬姿勢を取る豪州にNZが足並みをそろえた。

     

    (1)「共同声明は、「香港の人々の権利や自由への制限が進んでいることや、2047年まで認められている香港の高度な自治の弱体化について深い懸念を表明する」とした。ウイグル族の人権の状況についても「重大な懸念」を示した。豪州とNZはいずれも米国と機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」に参加する。米国や豪州などほとんどの参加国が中国への強硬姿勢を深めるなか、NZの対中姿勢は融和的だと指摘されてきた。

     

    NZは一時、中国寄りが明らかであった。中国から相当の圧力を受けていたことを覗わせている。中国が、TPP(環太平洋経済連携協定)に関心を持った際も、NZを窓口に利用するなど、目立った行為をしていた。

     

    (2)「例えば、対中国を念頭にファイブ・アイズの機能強化を求める声があるが、NZのマフタ外相は4月、慎重な姿勢を示した。1月には改定した中国との自由貿易協定(FTA)に署名した。報道によるとNZのオコナー貿易・輸出振興相が豪州は「NZを見習って、中国に敬意を示すべきだ」と発言した。ウイグル族を巡っても、NZの少数政党が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定する決議を議会に提出しようとしたが、「深刻な人権侵害」と書き換えられた。地元メディアによると与党・労働党が「ジェノサイド」の文言を削除するよう求めた」

     

    中国は、豪州に経済制裁を科しながらNZからは優先的に輸入するという、あからさまな差別政策を行なっていた。これを見れば誰でも、NZが中国によって「洗脳」されていると見るはずだ。中国のやり方は露骨で幼稚である。

     


    (3)「会談後の記者会見で、「NZの中国に対する最近の姿勢が、豪州や欧米諸国の警戒を招いている」と問われ、アーダーン氏は「(人権や通商など)重要な問題に対して我々が強い姿勢を取っていないとの指摘には合意しかねる」「NZと豪州は通商や人権問題で完全に同じ立場を取っている」などと反論した。ファイブ・アイズについても「我々は献身的な参加国であり続ける」との姿勢を示した」

     

    ファイブ・アイズに日本参加論が出ると、NZが「現在のメンバーを増やす必要はない。増やせばNZは脱退する」とまで発言した。これは、中国の入れ知恵によることは明らか。中国は、日本がファイブ・アイズに参加されると困るのだ。

     

    (4)「モリソン氏も「我々の分断を試みる動きがあるかもしれないが、成功はしないだろう」と強調した。また「米中の戦略的競争は激化しているが、それは必ずしも衝突の可能性が高まることにはつながらない」と指摘、「我々が求めるのは各国が主権を保ち、(自由な)貿易が行えるような自由で開かれたインド太平洋だ」と述べた」

     

    下線の部分は、明らかに中国を指している。中国が豪・NZの離間を策して暗躍しているのだ。

     


    (5)「地域の安全保障に詳しいビクトリア大学のロバート・エイソン教授は、両首脳が各国の懸念を受けて「特に中国に関して、できる限りの結束を示そうとした」とみる。一方で「中国では、NZが豪州の(対中強硬的な)方向に動いたとの声が出るだろう」述べ、中国が反発する可能性もあると指摘した」

     

    中国は、「孤軍奮闘」してあちこちで外交爆弾を仕掛けて歩いている。気の毒になるほどだ。中国が、反発してももはや影響力は薄れている。それだけ、中国包囲網が広がっているということである。

     

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    韓国には、朝鮮時代から親身になってくれる国がない。今回の米韓首脳会談でも、米国がどこまで誠実に応援してくれるか分からない。そういう疑念が、韓国国内にあるという。これは、他国が韓国を利用しているだけなのか。あるいは、韓国自身が抱える問題ゆえに起こっていることなのか。この際、突き詰めて考えるべきことだ。

     

    日韓関係に表われているように、日本から見た韓国は極めて「狡猾」な民族である。相手の立場を見て態度を変えるからである。そこには、真の「友情」が成り立つ余地がないのだ。約束を守らず、発言をコロコロ変える。どう見ても、その場限りの付き合いになるのである。こういう民族とどこまでも道を共にしようという感情が湧かないのだ。その裏には、儒教という身勝手な論理が韓国を毒しているのである。

     


    『中央日報』(5月31日付)は、「また米国に捨てられ中国に無視されるのだろうか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の李夏慶(イ・ハギョン)主筆・副社長である。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領はバイデン米大統領との首脳会談を終えた後、「本当に丁重にもてなされた」と話した。両国は韓米同盟の領域を軍事・安全保障から経済・技術に拡張した。世界最強国が韓国を歓待したのは良いことだ。半導体、電気自動車、バッテリー分野で44兆ウォンを米国に投資することにした企業のパワーのおかげだ。だが米国の国益につながらなければ皇帝のような待遇は冷遇に変わるだろう。歴史の傷が実証している。

    (1)「韓国が米国と最初に修交したのは139年前である1882年の朝米修好通商条約を締結してからだ。朝鮮は「米国が列強の侵略を阻止し保護するだろう」と信じて「連米」路線を決めた。高宗(コジョン)は米国を「寛大な人たちの国」と表現した。しかし米国は、1905年に日本が乙巳保護条約で大韓帝国を保護国にした際に、米国のフィリピン支配を日本が黙認する条件で了承した。条約は紙切れになった。桂・タフト協定の結果だった」

     


    米国が朝鮮を見放したのは、李朝がロシアと親密になったことである。当時の米英は、ロシアの南下政策を強く警戒していた。朝鮮は、そのロシアに接近したのだ。米英は、朝鮮を日本の保護国に組入れることが、外交リスクを削減できると判断したのだ。李朝が、朝米修好通商条約を締結しながらロシアへ接近したことが災いの元をつくったのである。李朝は外交当事者としての能力を失い、国内は清国派・日本派・ロシア派と三派に分かれて抗争を続けていた。


    (2)「1949年には韓国の哀訴にもかかわらず、7万人の米陸軍24軍団を全員撤退させた。北朝鮮は1年後に侵略戦争を起こした。日本、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドとは違い、韓国は米国の防衛同盟対象国から除外した。北朝鮮と中共の侵略に命をかけて戦って韓国を守っておきながら再び捨てることにしたのだ。力のない鶏肋の韓国に対する強大国の二律背反的決定だった。何の対策もなく離れようとする米国を相手に相互防衛条約を勝ち取り韓米同盟を成功させた人物が李承晩(イ・スンマン)初代大統領だ。米国は李承晩を退かせて従順な張勉(チャン・ミョン)を第2代大統領に就任させようとした」

     

    米国が、韓国を捨てる形になったのは李承晩大統領の独断専行に嫌気がさしたのだ。こういう民族を守っても米国の国益にならないと判断したのであろう。その点で、日本の戦後政策は、占領軍と協力しながら円滑に進んだ。韓国は、米国と大いに揉めたのである。こういう実態を冷静に判断すべきだ。

     


    (3)「米国は自分が善良なリーダーであり世の中に向け光を照らす「神の都」というキリスト教的世界観の国だ(『永遠の同盟という逆説』、キム・ジュンヒョン)。だが利用価値がない時は容赦なく捨て、今後もそうするだろう。ニューヨーク・タイムズ記者のボブ・ウッドワードは「トランプが在韓米軍を引き揚げろと言った」と記録した。「在韓米軍撤収」は米国で消えなかった火種だ」

    韓国は、米韓同盟を忠実に履行しているだろうか。中国と二股外交を行なうという裏切り行為をしているのだ。米国から見た韓国は、信頼できる同盟国と言えないであろう。今回の米韓共同声明でも、事前に中国側と連絡を取り合うという、信じがたい行動をしている。李朝が、ロシア側へ接近したと同じ行動なのだ。この事実を知った米国は、裏切られたという感覚に陥っているであろう。韓国は、裏切り行為を平然と行なう国である。これでは、韓国の味方になろうという国は現れまい。

     

    (4)「中国は、北朝鮮の核に備える韓国の自衛的措置であるTHAAD配備に対し無差別経済報復をした国だ。国賓訪問した文大統領に「ひとり飯」の屈辱を与えた。米国が要請したTHAAD配備のために起きたことなのに米国は沈黙した。韓米同盟重視路線をさらに明確にする際に中国の激しい報復を米国が止めるだろうという信頼を与えられずにいる。これでも同盟国なのか」

     

    韓国は、相手から良い意味で畏怖されている国でない。軽んじられているのだ。それは、約束ごとを絶対に守るという実直さがない結果である。日韓関係を見れば、その不実さが良く現れている。日本から見た韓国は、信頼できる国でない。条約を一方的に破棄するご都合主義こそ、韓国を自滅させる要因となる。

     


    (5)「韓国は経済大国で、世界が認めるグローバルサプライチェーンの核心の国だ。一歩も譲歩できない価値とアイデンティティ、戦略を作らなければならない。われわれはいったいだれで、どこへ向かっているのか。虎になるにはまず全貌が頭の中に鮮明に存在しなければならない。主体性なく振り回されれば野性が失われた猫だけ残る。恥辱の歴史を呼び戻す。われわれがどうするかにかかっている。どんな強大国もわれわれを最後まで守ることはできない」

    韓国は、まず米韓同盟を忠実に履行すべきである。それを通じて、国益を実現することだ。文政権は、国益と同盟は異なると発言したことがある。米韓同盟は、一方的に押し付けられたものでなく、韓国が頼んで米国と結んだという事情にある。そうであれば、米韓共通の利益を最大限にする外交軌道を歩むべきである。国益は、同盟の履行によって実現する。そういう視点になれば、米国が韓国を「捨てる」はずがない。

     

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    習政権は、やることなすことが全てタイミングを逸している。人口減という「人口絶壁」が見える段階で、一家族3人目までの出生を認めると発表した。

     

    昨年秋の段階で、水面下において通常の処分なしに、3人目を持つことを容認している地方当局のあることが分かっていた。今回の「3人目出生」は、中央政府が追認した形である。中国指導部は、機会あるごとに人口動態の行方を懸念していると述べてきた。2016年には、一人っ子政策を廃止し2人目を認めた。だが、出生率の押し上げにはほとんど効果がなかった。今回の「3人目」は2人目よりもさらにインパクトは弱いであろう。

     


    『ロイター』(5月31日付)は、「中国、夫婦1組に子ども3人まで容認 出生数減少受け政策転換」と題する記事を掲載した。

     

    中国は5月31日、夫婦が3人目の子どもを持つことを認めると発表した。国営新華社通信が伝えた。これまで子どもは2人までとしてきたが、国勢調査で出生数の大幅減少が明らかになったことを受けて政策を転換した。習近平国家主席がトップを務める共産党政治局の会議で決定された。

     

    (1)「中国は2016年に「1人っ子政策」を廃止し、夫婦が子どもを2人まで持つことを容認したが、出生数の持続的な増加にはつながらなかった。新華社は「産児政策を一段と最適化するため、(中国は)夫婦1組につき3人まで子どもをもうけることを容認する」と報道。政策変更に伴い「支援策も実施される」とし「我が国の人口構造の改善や、高齢化に積極的に対応するという国家戦略推進の助けになる」と伝えた。支援策については具体的には触れなかった」

     

    2人目が認められた2016年、出生数は前年の1655万人から1786万人に7.9%増えたが、その後は一貫して減少傾向が続く。国家統計局によると、2019年には1465万人、2020年は1200万人まで減っている。5月末になって「3人目」出生を認めても、今年の出生数には寄与しない。来年以降となろう。人口減は、来年か再来年に迫っている。

     


    (2)「中国のソーシャルメディアの反応は冷ややかだ。子ども3人どころか、1人を育てる余裕すらないという声が多く、あるユーザーは「500万元(約78万5650ドル)くれるなら、子どもを3人持ってもよい」と微博に投稿した。共産党政治局はまた、定年を段階的に延長する方針を示したが、詳細は明らかにしなかった」

     

    子育て費用の高さも、出産意欲を弱める大きな要因になっている。公立幼稚園や保育園は構造的に不足している。大都市では就学前から塾通いが始まる。1人の子どもが高校を卒業するまでにかかるコストは北京や上海など大都市で250万元(約4250万円)前後に及ぶとの試算もある。

     

    あるユーザーが、「500万元(約8500万円)くれるなら、子どもを3人持ってもよい」と微博に投稿している。高い教育費が、家計を圧迫していることは間違いない。共産主義を標榜している国家が、教育費の負担も軽減できず、野放図な軍事費へ支出する逆立ちを行なっている。

     


    定年延長は、口先だけである。この強権政府が、なぜか定年延長ができずウロウロしている。若者は、就職難がさらに激化すると反対する。高齢者も早く定年を迎えて楽をしたいという理由で反対する。こういう反対論を前にして定年延長論は、数年前から立ち往生だ。定年を延長しなければ、年金財政の赤字が早まるという危機感に急かされているが、国民の反対で議論は進まない。気弱な政権でもある。

     

    政府の定年延長論は、平均寿命の延びた分だけ定年をのばすというもの。14次5カ年計画(2021~25年)中に、平均寿命が1年は延びるであろうと推測している。この延長分を定年延長に当てて勤務して貰い、年金支払いを遅らせたいという目的である。

     

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