文大統領は、5月21日に行われた米韓首脳会談で従来、見せていた言葉と全く違う「米国寄り」で内外を驚かせた。文氏が、これまでの「親中国」から、「親米国」へと変わったのでないかという憶測も流れている。事実は、文氏しか知らないのだが、これからの時間によって、それを証明されるだろう。
韓国にはこれまで、味方になる国がなかったと指摘されている。それは、韓国の民族性がもたらした身勝手さで、外国から嫌われたもの。言行不一致が、親友をつくらないという市井の原理が、韓国という国家にも当てはまるだけの話だ。文大統領は今回、バイデン大統領と真の友人になれるだろうか。
『中央日報』(6月1日付)は、「文大統領の変身、豹変か 革面か」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイェ・ヨンジュン論説委員である。
(1)「あまり知られていないが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の語録の中には、中国の習近平国家主席を「民主的」指導者と称賛した発言がある。2017年12月、問題の「高い山、小さい国」発言の前、日韓中首脳会談で「習主席が民主的リーダーシップを提示した」と述べた。つい10日前の韓米首脳会談の共同声明を見ると、文大統領が当時そのような発言を本当にした人なのだろうかと感じる」
文大統領は、習氏と初めて会談したとき、中国を大国、韓国は小国と発言して物議を醸した。「臣・文在寅」というイメージであった。その文氏が、米韓首脳会談において「米国寄り」へ鞍替えしてしまったのだ。
(2)「米韓共同声明は、中国が嫌がる言葉で埋まっている。「韓米は規範に基づく国際秩序を阻害、不安定化または脅かすあらゆる行為に反対する」とした。誰を指しているのかは明白な表現だ。予想を越える文在寅大統領の変身にさまざまな声が出ている。世間では、シンガポール・板門店(パンムンジョム)宣言を声明に入れることに執着した結果、米国が望む表現を大幅に受け入れるバーター(交換)をしたという分析がもっともらしく出ている。大規模な外交交渉に関与した元老外交官の中にもそのように見る人が少なくない。実際、外交交渉の属性はお互い望むものを交換するというものだ」
米韓共同声明の発表を見て、多くの人が驚いたはず。すっかり「親中」から脱して「親米」になったからだ。文氏の本心か、北朝鮮問題で米国の妥協を引き出すための「取引」であったのか。ベテラン外交官は、取引説に立っているという。
(3)「そのようなバーターを受け入れた背景には、過去4年間の外交経験の蓄積を通じて現実的な方向に変わった文在寅政権の現実認識があったのだろう。世の中は自分を中心に回らないという悟りが陰にも陽にも影響を及ぼしたということだ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も任期末に向けて同じ傾向を見せた。おそらく韓米の共同声明はこうした複数の要因が複合的に作用した結果とみられる。とにかく、大韓民国が立つべき座標をさらに明確に表明したのが今回の会談の最大の成果だ」
バーターであったとすれば、それも外交交渉で行なわれる「妥協の産物」と見てよいだろう。ただし、妥協でもそれを誠実に履行する義務がある。後日になって、あれこれ言い訳をして取り繕っては外交儀礼を欠くのだ。
(4)「ところが会談が終わるやいなや、韓国政府当局者がその貴重な成果を自ら低く評価しているようだ。青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)と外交部が前に出す成果は、「韓半島平和プロセスの再稼働」に集中している。冷静になる必要がある。バイデン大統領が候補時代からシンガポール会談を批判してきたが、それは形態についてだ」
韓国は案の上、言い訳を始めたのである。南北問題の「成果」を誇張している。
(5)「北朝鮮の核放棄と米国の体制保障、米朝関係正常化を盛り込んだシンガポール宣言自体に反対する理由はない。板門店宣言も同じだ。非核化のカギは目標に向かっていかなる経路をたどるかの方法論にある。この部分で今回の会談は進展した結果を出すことができなかった。米国は北朝鮮制裁の忠実な履行を再確認し、言葉だけでなく誠意ある行動を交渉の前提に掲げた。要するに、米国は北朝鮮の核問題に関する限り従来の立場と特に変わっていないということだ。にもかかわらずこれを韓国政府が成し遂げた成果のように包装するのは我田引水だ」
韓国大統領府によれば、米国の北朝鮮政策はなにも変わっていないが、大きな成果が上がったように宣伝している。中国問題については、事前に中国と共同声明の内容について打合せをしていた事実が知られている。外交部長官が、「中国と密接に連絡を取り合っている」と、喋ってしまって、この噂を裏付けることになった。
(6)「もう一度繰り返すが、今回の会談の本当の成果は、板門店宣言を共同声明に含めたところにあるのではない。鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官はなおさらだ。台湾海峡の安定を取り上げたのは、韓半島の平和安定と同じく原則的な表現だと述べたのである。誰がこの言葉に同意するだろうか。共同声明のインクも乾かないうちに出てきたこうした言葉は自分たちの信頼を落とすだけだ」
中国外交部は、対中問題について原則論を強調して、具体論は何もなかったように否定している。米国の心証を悪くしているだろう。
(7)「韓国で豹変という言葉は否定的なニュアンスで使われるが、原典を見るとそうではない。『周易』の革卦に「大人虎変 君子豹変 小人革面」とある。虎が毛色を変えるように大人は世の中を革新し、豹柄が秋に鮮明になるように君子は不断に新しくなるべきだ。小人は、顔だけを変えて本心は変えないという意味だ。これまでの状況を振り返ると、韓米首脳の共同声明は虎変の結果物ではないはずだ。なら、文大統領の変身は、豹変または革面のうちの一つだ。真実は何か、私はそれが知りたい」
韓国が米国と交わした約束は、本来の意味である君子の「豹変」(革新)か、それとも小人の「革面」(本心を変えない)か、そのどちらかと見られている。「君子豹変」は、君子だからこそ根本的な革新が可能とされている。文氏が「小人革面」であれば、米韓同盟に隙間風どころか、崩壊への第一歩となろう。韓国の運命は、瀬戸際にある。
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