勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

    ムシトリナデシコ
       


    来年3月の大統領選を前に、最大野党「国民の力」は、選挙対策本部の人選をめぐって揉めてきた。これを反映して、「国民の力」代表候補の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、最新世論調査で与党「国民の力」代表候補の李在明(イ・ジェミョン)氏と、36%同率で並ばれる結果になった。それまでは、10ポイントの差で引離していたのである。

     

    韓国では、選挙運動でも人選をめぐって対立することはままあった。今回の最大野党「国民の力」では、ユン氏が元検察総長であったことから、検察出身者が大挙して応援する事態となった。これを見た与党の李候補は「検察共和国になるかも」と批判して、国民の検察嫌いを煽り、支持率挽回を図った。

     

    この動きに「国民の力」は、危機感を強め選挙対策本部の陣容を立て直すことで意見調整がなった。新たな選挙対策本部の責任者には、大統領選挙「当選請負人」と言われる金鐘仁(キム・ジョンイン)氏が就任することになった。

     

    金氏は、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の公約づくりの責任者であった。だが、朴氏は大統領就任後に公約の経済民主化に取り組まないと非難。反対党の「共に民主党」の政策づくりや非常対策委員長に就任した。文在寅(ムン・ジェイン)氏の大統領当選では、大きな力になったのだ。この「共に民主党」もその後、横暴な議会運営をしたことに失望して離党。

     

    金氏は再び、「国民の力」の非常対策委員長へ就任した。今年4月の二大市長選(ソウル・釜山)では、「国民の力」が圧勝するなど、金氏は行く先々で「勝利をもたらす請負人」になっている。選挙の公約づくりで、有権者を引きつける斬新さを持っているからだ。それだけに、人一倍責任感も強く党運営が軌道を外れると、身を退く清廉さを持っている。

     


    この金氏が、大統領選で「国民の力」のユン候補を支えて総指揮を執ることになった。どのような公約を打ち出すか注目の的だ。「国民の力」の党代表に30代で国会議員経験のない
    李俊錫イ・ジュンソク)を当選させたのも金氏と言われている。時代を読む力では、群を抜くものがあるようだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月4日付)は、「韓国ギャラップの世論調査で与党イ候補と野党ユン候補が36%で同率」と題する記事を掲載した。

     

    共に民主党のイ・ジェミョン大統領選候補と国民の力のユン・ソクヨル大統領選候補の支持率が同率となった世論調査の結果が出た。最近の国民の力の内輪もめが支持率の変化に影響を及ぼしたもようだ。

     

    (1)「韓国ギャラップのチャン・ドクヒョン研究委員は本紙の取材に「大統領選挙候補選出などのコンベンション効果でユン候補に期待が集まる状況だったが、キム・ジョンイン委員長の迎え入れ問題とイ・ジュンソク代表の非公開の行動などの軋轢が露呈し、支持率が維持されなかった」とし、「イ・ジェミョン候補の支持率が上がったこともこれに対する反射効果とみられる」と分析した」

     


    『ハンギョレ新聞』は政権支持メディアである。世論調査の支持率で、与党候補の李氏と「国民の力」候補ユン氏が同率で並んだことに、「安堵の色」を見せていないのだ。それは、「国民の力」のゴタゴタの影響という「敵失」に基づくものであることを認識している結果だ。

     

    「国民の力」は、前述のように揉めごとが収まった。「当選請負人」の金氏が、選挙運動の総指揮を取ることになった。次回の世論調査には、これがどのように反映するか。『ハンギョレ新聞』でなくても、最大の関心を持つテーマである。

     

    (2)「次期大統領選挙の結果については「政権交代のために野党候補が当選した方が良い」が53%で、「政権継承のため与党候補が当選した方が良い」が36%だった。2週間前の調査に比べ、「政権交代」世論が4ポイント減り、「政権継承」世論は3ポイント増えた。議題と戦略グループ「ザ・モア」のユン・テゴン分析室長は、「政権交代の世論が高まっているが、それが野党のユン・ソクヨル候補に集中していないのは、最近の状況に対する警告だ」とし、「与野党候補の支持率の膠着状態は、ユン候補がどうするかによって、今後動く可能性が高い」と述べた」

     


    政権交代論 53%

    政権継続論 36%

    この交代論と継続論は、3~4ポイントの動きにしか過ぎなかった。「国民の力」がゴタゴタしていても、有権者の政権交代論が53%もあることは、いかに文政権が嫌われているかを示している。日本の民主党政権がミソをつけたように、「共に民主党」は政権担当能力がないと見放されているのであろう。

     

    韓国の世論調査では、「35%対55%」が基本というプロの見方がある。この差に開くと、固有の支持層が離れて(35%)、相手陣営(55%)の支持に回ったと判断され、35%陣営に敗北と55%陣営の勝利が決定的になるというもの。この背景には世論が、進歩派:保守派:中立が40:40:20という割合で分かれているという前提がある。35%になるのは、固有の支持層が離れたという意味なのだ。

     

    政権交代論は、今年に入って強くなっている。この「35%対55%」ルールの近傍に収まっているのだ。次期大統領選では、与党敗北の公算が強いというのが世論調査の示唆である。

     

    テイカカズラ
       

    韓国は、11月から日本と張り合って「ウィズコロナ」へ踏み切ったが大混乱に陥っている。政府は、11月29日に特別防疫対策を発表し、「すべての感染者は自宅に留まり、必要な場合にのみ入院治療を受けるようにする」というお粗末な事態だ。

     

    自宅療養を原則とし、住居環境が感染患者に不適であることや、小児・障害者・70歳以上などケアが必要な場合にのみ入院治療するというもの。これが、最近まで「K防疫モデル」と自慢していた韓国の実情である。12月3日の新規感染者は5000人近かった。重症者数は3日連続で700人を超え、またもや過去最多となっている。こういう医療崩壊は、すでに11月初旬に予知されていたのである。

     


    英国オックスフォード大学が発表した、新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)厳格度指数によれば、韓国の防疫強度が主要20カ国・地域(G20)で最下位水準という研究結果が発表されていた。
    厳格度指数は、各国の新型コロナ対応水準を分析したもの。集会人員や大衆利用施設営業など9つの分野の防疫措置を評価している。点数が高いほど防疫度が高いということを意味する。

    韓国は、100点満点中39.35点だ(11月8日集計)。低評価の理由は、11月1日から首都圏10人、非首都圏12人まで私的な集まりを許容している。レストランやカフェは24時間営業することができる。遊興施設は夜12時まで運営する代わりに防疫パス(接種証明・陰性確認制)を適用中という規制緩和を行なった。こういう「ウィズコロナ」が、すべて裏目に出たのである。

     

    『朝鮮日報』(12月3日付)は、「未曾有の『複合ショック』、韓国のウィズコロナはグロッキー状態」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「一日新規感染者が連日5000人を上回り、重症者も過去最多の733人(12月2日午前0時時点)まで達するや、医療現場から相次いで悲鳴が上がっている。中央事故収拾本部によると、1日午後5時時点のソウル市内の病床使用率は90.1%、仁川市は88.6%、京畿道は85.5%だった。首都圏に近い忠清道の病床も既に満床だ。最も重症の患者が入院している「ビッグ5」病院(5大病院)でも、残っているのは9床(使用率94.6%)だけだ。病床待機患者は915人、このうち四日間以上待っている患者は377人(41.2%)に達する」

     

    ソウル市内の5大病院は、重症患者用のベッドがあと9床(使用率94.6%)しかないのだ。病床待機患者は、915人もいる。まさに、医療崩壊が起こっている。

     


    (2)「それにもかかわらず、当局が12月中旬までに追加確保することにしている1300床のうち、重症者用は50床、準重症者用は190床だけだ。ソウル市も同日、「新型コロナ緊急対策」を発表し、重症者用病床を52床用意するという。それでも、年内に確保できる重症者用病床は約100床にしかならない。しかも今は「二重の危機」に見舞われている。現在の感染者のほとんどはデルタ変異株の感染者だが、これより感染力が強いオミクロン変異株の感染者が国内で既に6人確認されている。デルタ株とオミクロン株の「複合ショック」が迫っている状況なのだ」

     

    当局が12月中旬までに追加確保する重症者用は50床だけしかない。一方には900人を超す待機患者がいるのだ。

     

    (3)「防疫当局は来週から4週間、私的な集まりの制限人数を首都圏6人、非首都圏8人に減らし、飲食店などにも防疫パスを拡大適用する案を協議したという医療現場のあちこちからも「『ウィズコロナ(段階的な日常生活の回復)』措置はしばらく中断してほしい」という悲鳴と訴えが相次いでいる。大韓重症者医学会も「新型コロナの重症者用病床を増やすには、新型コロナでない患者の病床の縮小が避けられない状況だ」と明らかにした。医療現場は今、袋小路に入ってしまっているということだ」

     

    医療崩壊を防ぐには、「ウィズコロナ」を中断するしかない。文政権は、大統領選の思惑で中断できないのだ。医療より政治思惑の先行である。

     


    (4)「政府は最近、首都圏の病院に対して「保有病床の1~1.5%を新型コロナ患者用病床にせよ」という行政命令を繰り返し出している。しかし、新型コロナの重症者用病床はすぐに設置できるわけではない。首都圏のある大型病院の関係者は「新型コロナ患者を治療するための陰圧室を作るには設備工事が必要で、新型コロナ患者が移動する時にほかの患者と遭遇しないように移動の動線まで考慮して新たな空間を確保しなければならないため、通常は数週間かかる」「さらに、新型コロナ患者のケアをするための医療従事者を追加しなければならないが、今いるほかの重症者をケアしている医療従事者を、新型コロナ患者だけ見ろと言うこともできず、懸念している」と話した」

     

    政府の無策と政治的な思惑が絡んで、韓国の医療は危機的状況に追い込まれている。病床を増やせば、医療スタッフを増加させなければならない。そのスタッフが枯渇している。専門医が足りない事態に追い込まれている。

     

    (5)病床不足よりも急を要するのは医療従事者不足だ。政府はこのほど、首都圏の医療従事者不足を穴埋めするために公衆保健医師(農村などの公衆保健業務に携わる医師)たちを急きょ駆り出した。首都圏でない地域の公衆保健医師47人を首都圏の病床に投入したのだ。ところが、新型コロナ治療に必要な内科専門医は1人もいなかった上、皮膚科医・眼科医など重症者の治療の助けとはなりにくい分野の専門医が多数含まれていたという」

     

    首都圏で医師不足に直面し、地方の医師47人を公募したが、必要な専門医は一人もいなかったという。皮膚科や眼科の医師までかき集められている。これで、急増する重症患者へ満足な治療ができるとは思えない。これが、文政権の実態である。

    a1320_000159_m
       

    中国は、不動産バブルが支えてきた経済である。本欄では、この点を一貫して指摘してきた。バブルで土地が値上りしない限り、中国経済は円滑に回らない仕組みになっている。

     

    かつては、アヘンが中国社会を蝕んだが、現在は不動産バブルがその役割をしている。バブルが、中国経済を正常化不能なまでに冒しているのだ。現に、地方政府は住宅価格の値下がりを禁じる布令を出し始めている。地価値下がりが、土地売却収入減となり、地方政府に欠陥財政をもたらすリスクが高まってきたのだ。いずれ、財政機能は相当に制約されるであろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(12月3日付)は、「中国、大都市も不動産値下げ制限 地方財政悪化に危機感」と題する記事を掲載した。

     

    中国で住宅価格の下落が広がり、大都市でも不動産市場の救済に乗り出す動きが出てきた。新築物件の値下げ幅を制限したり、不動産融資の規制を緩めたりする。マンションなどの価格が下がると、地方政府に入る用地の売却収入が減りかねないためだ。人口流出などで景気回復が遅れ気味の中小都市だけでなく、大都市も警戒感を強めている。

     

    (1)「四川省の省都、成都市は11月23日、「不動産会社と(投機を除く)住宅購入者の相応の資金需要は(満たされるよう)保障する」。不動産金融の規制緩和を発表した。開発資金の融資や住宅ローンの上限を緩め、速やかに融資を実行する。重点企業には融資期間の延長や金利負担の軽減も認める。中央政府が直轄する天津市は11月、不動産会社を集めた会議で、値下げ幅を制限するよう指示した。同市政府の関係者によると、新築物件を当局に事前に届け出た価格より15%超値引きすることを禁じる。大規模なセールを行う際も担当部局への報告を義務付けた

     


    地方政府は、住宅価格の値下がりに敏感である。土地売却収入が将来、減少する兆候であるからだ。住宅の大規模セールを行なう際には事前報告=チェックする意向を見せている。財政状態が悪化しているだけに、何とかそれを食止めたいはずである。

     

    (2)「中国メディアによると、江蘇省の省都、南京市も値引き販売をした開発業者に市場をかき乱す行為をやめるよう命じた。今年夏以降、すでに20以上の都市が値下げ制限に踏み切った。値下げ制限はこれまで、大都市に比べて経済成長の速度が鈍く、マンションの在庫が高止まりしやすい中小都市が軸だった。政府の住宅ローン規制などをうけ、住宅価格が下落する都市はこの夏、一気に増えた。中国国家統計局がまとめた主要70都市の新築マンション価格をみると、5月に前月より下がったのは5地域だけだったが、10月には52地域と10倍以上になった。2015年2月以来の多さだ」

     

    主要70都市で、新築マンション価格が値下がりしたのは、10月で52地域と4分の3にもなっている。こうなると、地方政府の土地売却収入減がそれだけ拡大する。中国は今後、急速な高齢社会へ向かうだけに、財源はいくらでも必要な時期を迎える。それだけに、土地売却収入減は打撃になる。

     


    (3)「都市の規模別でみると、中小都市で先行して価格が下がり始め、大都市にも波及しつつある傾向がわかる。成都市、天津市、南京市は省都レベルの2級都市のなかでも規模が大きい「新1級都市」と呼ばれる。新1級都市の平均価格は10月、前月比0.%の下落に転じた。北京市、上海市、広東省広州市、同省深圳市の1級都市は9月に上昇が止まった。このうち広州市と深圳市はすでに値下がりしている」

     

    下線のように、広州市と深圳市がすでに値下がりしていることは、輸出(広州市)とIT企業(深圳市)の不振を先取りした現象である。注目すべきだ。

     

    (4)「マンションの値下がりは、住宅ローンの審査厳格化で購入需要が落ち込んだことだけが理由ではない。政府の規制強化で不動産会社の資金繰りが悪化したことも影を落とす。開発する会社のほか、各社から代金でなく、不動産の現物を受け取った施工業者が現金化を急ぎ、値引き販売に拍車をかけた」

     

    施工業者は、大量のマンションを現金代わりに渡されている。そこで業者は、大幅値引き(約30%)で、現金決済を条件にしている。これが、値崩れの原因の一つだ。

     


    (5)「政府は不動産バブルが金融リスクを高めていると警戒してきた。新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んで経済の正常化を進めつつ、不動産規制を強めた。だが、中国恒大集団など不動産大手の経営が揺らぐと、金融監督当局の中国人民銀行(中央銀行)などは方針を微修正した。不動産融資の過度な絞り込みの是正を銀行に求めた」

     

    中国は、不動産金融が綱わたりである。締めすぎて不動産開発企業を苦境に追いやるのでないかと気を配っている。これが、不動産バブルの温床になっている。アヘン患者が苦しまないように、適当にアヘンを配ると同じことをやっているのだ。

     

     

    a0005_000022_m
       

    民主主義社会では、人権尊重は基本である。だが、中国は「人権思想」そのものが存在しない。最高支配者の思いのままに罪を着せられ、社会から葬られるのだ。この中国が、世界覇権を狙っている。背筋の凍る話だ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月30日付)は、「安泰でない中国エリート、名声しのぐ共産党支配」と題する記事を掲載した。

     

    中国では富や名声、影響力があっても汚名を着せられたり行方不明になったり、もっと悪い事態に陥ったりする危険が常につきまとう。この問題は、米誌フォーブスが11年に掲載した寄稿「友人には中国の億万長者になってほしくない」も指摘している。

     


    (1)「同寄稿は、中国共産党が発行する英字紙『チャイナ・デイリー』の記事にあるデータを引用し、それまでの8年間で72人の中国の億万長者が早死にしたと記している。引用元の記事はその内訳も明らかにしており、「72人の億万長者のうち15人は殺害され、17人は自殺、7人が事故死、14人は法に従い死刑が執行され、19人が病死した」とある。以来約10年、超富裕層を取り巻く状況が改善したと思う人は、中国の実業家で今は国外で暮らすデズモンド・シャム(沈棟)氏が9月に出版した「Red Roulette(赤いルーレット)」を読むとよい」

     

    中国共産党が発行する英字紙『チャイナ・デイリー』は、2011年までの8年間に、72人の中国の億万長者が早死にしたと伝えているという。この72人の人たちの内、19人を除けば非業の死である。ゾッとする事件だ。中国社会の暗黒ぶりを示している。

     


    (2)「シャム氏と元妻でかつてのビジネスパートナーだったホイットニー・ドゥアン(段偉紅)氏は貧困から身を立て、不動産開発で富を築いた。2人は絶頂期には北京で英高級車ロールス・ロイスを乗り回し、プライベートジェットで世界を飛び回った。ドゥアン氏は中国政界の大物との人脈を利用して事業を成功させていったが、17年に拘束され、行方がわからなくなった。突然の失踪が珍しくないことはこの本を読めば明らかだ。シャム氏とドゥアン氏は北京にある空港の拡張工事を手がけていた。だが北京の空港運営会社の総経理でこのプロジェクトの重要人物の一人だった李培英氏が何の説明もないまま姿を消し、両氏のプロジェクトは暗礁に乗り上げた。李氏は後に収賄罪で起訴され死刑が執行された」

     

    このパラグラフに書かれている事柄は、民主社会では絶対に起こり得ない話である。それが、日常的に行なわれている無法社会である。

     


    (3)「元妻のドゥアン氏は、政界との重要なコネクションとして、習近平(シー・ジンピン)国家主席の後継候補ともいわれた孫政才・重慶市党委員会書記(当時)と関係を築いていた。しかし、孫氏は党籍を剝奪され、18年に収賄罪で無期懲役の判決を言い渡された。シャム氏は、孫氏は「実は政治的な目的で葬られた」と主張する。ドゥアン氏がその後逮捕されたのは、孫氏とのつながりを問題視された可能性がある。あるいは、温家宝前首相の夫人との親密な関係があだになったかもしれない。温氏が今春、新聞としてはあまり規模の大きくないマカオ紙に寄稿した母を悼む文章は、暗に習氏を批判したものとして中国内のインターネット上で閲覧制限を受けた」

     

    中国は純粋な市場社会ではない、コネを付けた者が勝ちとなる社会である。このコネは、賄賂で結ばれているので、公安が狙いを付けた人物は必ず拘束できる社会である。民主社会からみれば、想像もできない暗黒社会と言って間違いない。

     


    (4)「
    国際的な名声があっても、権力を自在に振るう現体制の下では、それが自分を守ることにはならない。中国のインターネット通販最大手、アリババ集団の創業者で中国で最も著名な実業家の馬雲(ジャック・マー)氏は20年10月、大胆にも中国の金融規制を批判して以降、公の場にほとんど姿を現していない。中国人として初めて国際刑事警察機構(ICPO)の総裁を務めた孟宏偉氏も18年、中国に一時帰国した際に拘束され、昨年収賄罪で懲役13年6月の判決を言い渡された。そもそも体制の恩恵を受けて富や権力を手にした億万長者や共産党幹部が、同体制により引きずり下ろされても同情する向きは少ないかもしれない」

     

    アリババのジャック・マー氏は、政府批判をしたばかりに「追放」の身になった。秋口に欧州へ現れたことが報じられた程度である。ビジネスの第一線から姿を消してしまった。

     


    (5)「中国の国家権力が、反体制派の弁護士やジャーナリスト、学者らを弾圧する際はもっと苛烈だ。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)の最近の報告書によると、当局は反体制活動家の家族にまでも、しばしば追及の手を伸ばしているという。中国の現体制では、政治と一切かかわらないようにしても安全を確保できるわけではない。ビジネスの世界は不透明でコネが不可欠なため、誰もがシャム氏の言うところの「グレーゾーン」に踏み込まざるを得ない。そして、そのことが贈収賄の容疑を招くリスクとなる。あらゆる組織は中国共産党の支配下にある。当局に拘束されれば有能な弁護士や気骨あるジャーナリストがどう頑張っても救い出すことはできない。中国の裁判の有罪率は99.%だ」

     

    中国の有罪率は99.%だという。公安の描くとおりの刑に処せられている。これで、「中国式社会主義」と嘯(うそぶ)いているから恐れ入るのだ。

     


    (6)「この体制の頂点に君臨する習主席は、毛沢東だけでなくレーニンやスターリンの思想も信奉する姿勢を示してきた。スターリンの下で秘密警察トップを務め大粛清を陣頭指揮したベリヤは、警察国家であらゆる個人に及ぶ危険性についてこう語った。『誰でもいいから連れてくれば、私がその人物の罪を必ず探し出す』」

     

    習氏は、権力を恣(ほしいまま)に使っている。この上、「歴史決議」によって、「終身国家主席」が約束されたようなものだ。習氏は、思いのままに国を操れてさぞやご満悦であろう。このことが、後になってどれだけ高いものに付くか。想像もできないのであろう。

    あじさいのたまご
       


    中国は、「共同富裕」の看板を高く掲げて貧困者へ夢を与えよとしている。その一環として3年ぶりに最低賃金引上げに踏み切る。最低賃金引き上げの恩恵に浴するのは、主として農民工とされる。この農民工の待遇改善が、共同富裕実現になるかと言えば、それは雀の涙にしか過ぎない。真の共同富裕実現には、所得再分配による格差縮小がカギを握るからだ。それには、税制改革で直接税の比重を上げることである。習近平氏は、この肝心の部分を逃げている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月2日付)は、「中国、最低賃金引き上げラッシュ 『共同富裕』を意識」と題する記事を掲載した。

     

    中国で最低賃金を引き上げる動きが相次いでいる。経済規模が最大の広東省をはじめ、2021年に入り20の省・直轄市・自治区が実施した。習近平指導部が掲げる「共同富裕(共に豊かになる)」のもと労働者の不満を抑える狙いだが、人件費の上昇は工場の国外移転を加速させる可能性もある。

     


    (1)「広東省では12月1日、地域別に月額1410~2200元(約25000~39000円)としていた最低賃金を1620~2360元に引き上げた。ハイテク産業が集積する深圳市では2200元から2360元へ7.%、自動車産業が盛んな省都の広州市では2100元から2300元へ9.%上げた。同省での最低賃金の見直しは18年7月以来になる」

     

    広東省は、18年7月以来の最低賃金引き上げを行なう。引上げ幅は7.3~9.5%である。消費景気を刺激する目的であろう。3年4ヶ月ぶりに一桁の最賃引き上げであるが、景況悪化の中だけにスムースに実現できるか見通し難である。

     

    (2)「広東省には自動車の合弁工場を運営するトヨタ自動車やホンダ、日産自動車をはじめ、多くの日系企業が進出している。大手の事務所や工場ではもともと最低賃金を上回る額を支給しており、「直接的な影響は全くない」(日系車大手幹部)。ただ、清掃や食堂などの外注企業が従業員を低賃金で雇用している場合があり、今後は外注企業から値上げを要求されるなど間接的にコスト増加につながる可能性がある」

     

    製造現場では、すでに最賃以上の賃金を支払っているので問題ないというが、サービス業での引き上げが、間接費引上げとしてはね返る可能性はある。

     


    (3)「中国の人件費はすでにタイやマレーシア、ベトナムといった東南アジアの多くの国を上回っている。日本貿易振興機構(ジェトロ)がアジアとオセアニアに進出した日系企業から聞き取っている調査では、20年の「製造業・作業員」の基本給(月額)の平均は中国が531ドル(約6万円)で、タイ(447ドル)やベトナム(250ドル)を上回った。韓国サムスン電子が19年に中国でのスマホ生産から撤退しベトナムに移すなど、中国から東南アジアに拠点を移した製造業は多い。今後も人件費の上昇が続けば、移転への圧力がさらに高まる恐れがある」

     

    中国の人件費は、すでにベトナムの2倍以上になっている。ここから、「脱中国」の動きに拍車をかけることは間違いない。

     

    (4)「中国の最低賃金は31ある省・直轄市・自治区がそれぞれの地域の実情にあわせて個別に見直す仕組みだ。中央政府は地方政府に最低賃金を2~3年に1度見直すように求めている。21年は北京市や上海市などの直轄市のほか、沿岸部の江蘇省や浙江省、東北部の遼寧省や黒竜江省、内陸部の内モンゴル自治区や陝西省などが引き上げを実施した。21年に引き上げが相次いだのは、20年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて経済が落ち込んでいたため、多くの地域で見送っていた反動もある」

     

    中国の最低賃金は2~3年に1度、各地方政府が実情に合わせて引き上げるシステムである。20年は、コロナ感染で引き上げを見送ったので、21年に持込まれた。

     

    (5)「習指導部が掲げる共同富裕に呼応する面も強い。8月に習氏が開いた党中央財経委員会の会議では、共同富裕の実現のため富の配分を強化するという方針を確認した。21年に最低賃金を引き上げた20地域のうち、半数は9月以降に実施した。最低賃金の引き上げで最も恩恵を受けるのが、「農民工」と呼ばれる農村から都市への出稼ぎ労働者だ。工場で働く場合は残業代が多く出るため、一般に最低賃金の2倍程度が実際の賃金の目安とされるが、所得環境は厳しい」

     

    最低賃金の引上げはむろん、所得向上を実現するから消費を刺激する。だが、間接税が全体の3分の2も占める現状は、個人への負担を大きくさせている。主要国では、間接税は3分の1、直接税が3分の2である。中国では、目に余る「大衆課税」を行なっている。この現状を改めるには、固定資産税や相続税を新設することである。だが、共産党幹部の反対で実現できずにいる。矛楯した税制を続けているのだ。

     

    (6)「習氏は22年秋の党大会で異例の3期目続投に向けた足場を固めているが、3億人近くにのぼる農民工に待遇改善をアピールし、さらに盤石にしたいという思惑もありそうだ。地方政府にとっても、労働力人口の減少で続き働き手が不足するなか、最低賃金の引き上げによって他地域から農民工を呼び込む狙いがある」

     

    習氏は、最賃引き上げで「善政」を施しているイメージをつくりたいのであろう。大衆が、これに騙され続けるとは思えない。いつかは、爆発するにちがいない。


    このページのトップヘ