勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

    a0960_005041_m
       

    文在寅大統領が、脱原発推進を宣言してから今年の6月で3年経った。4月の総選挙で与党が圧勝し「エネルギー転換政策も強い推進力を得た」(韓国メディア)という見方まで出ていた。だが、月城原発1号機の停止では、文政権が仕掛けた経済性計算で、黒字経営を赤字経営にすり替えるという国家的犯罪があったのだ。韓国監査院(会計検査院)の手で、その不正が暴かれたが、韓国検察が告発を受けて捜査に着手している。すでに、3人の逮捕請求が出ている。

     

    今回、秋法務部長官が躍起になってユン検察庁長官を「解任」に持込みたい画策しているのは、前記の月城原発1号機の停止に関わる経営数字改竄容疑の究明にある。文政権の看板政策である「原発廃止」が、噓の数字で塗り固められていたとは仰天である。

     


    韓国水力原子力は18年6月の取締役会で、延長運転中の月城原発1号機を政府の政策に従って突然、早期に閉鎖することを決定した。この「突然、早期閉鎖決定」が事件性を覗わせている。この舞台に関与していた一人の教授の執念が、経営データねつ造発覚の糸口になったという。この間の事情を伝えるコラムを取り上げた。

     

    『中央日報』(11月12日付)は、「『ニ等国民』は沈黙しない」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ジョンジェ中央日報コラムニストである。

     

    国家が犯罪を、それも組織的に犯す現場を目撃した市民はどうすべきか。ここに、趙成鎮(チョ・ソンジ)教授〔慶星(キョンソン)大学エネルギー学科)の「模範解答」を紹介する。

    趙教授は月城(ウォルソン)1号機の早期閉鎖に対する監査院の監査と検察の捜査を引き出した隠れた功労者だ。趙教授が目の前で行われている「おかしな非常識かつ正常でない決定」に目をつぶっていたら、監査院の監査も検察の捜査もなかったかもしれない。

     

    趙教授は2016年9月から2018年7月までの約2年間、韓国水力原子力(以下、韓水原)の社外理事を務めた。趙教授は原発賛成論者だ。新古里(シンゴリ)5、6号機の工事中断と月城1号機の早期閉鎖を決定したときに、唯一反対票を投じた。趙教授の反対票がメディアの注目を呼び、そのため月城1号機の経済性評価がねつ造されたという事実が明らかになり、完全犯罪に終わるところだった国家権力の組織犯罪の揚げ足取りになった。



    (1)「趙教授は先月、監査院の監査結果が発表された時、「内心がっかりした」と述べた。関係者の処罰の程度が弱すぎたためだ。しかし、200ページの監査報告書を読んで涙が出るほど感激したという。報告書は、どのように、誰が、なぜ月城1号機を閉鎖に至らせたのか1つ1つ記録されていた。偽造と切り貼りで綴られた月城1号機閉鎖の黒幕の中には不審な匂いが充満していた」

     

    (2)「報告書の完成は趙教授の功が大きかった。趙教授は絶えず韓水原と政府に働きかけた。問いかけ、確認した。ねつ造の証拠を探し、聞いて回った。一般からの情報提供を受けた。各種セミナーに出席し、国会に出て証言もした。与党議員には「国政監査が所信を明かす場なのか」と皮肉を言われたりもした。そうして収集した資料と録取記録を監査院に提出した。それが手がかりになった。決して覆すことができなかった真実はそうして明らかになった」

     

    詳細を究めた監査院の報告書には、趙教授が丹念に聴き取り調査した資料提供がいかされていた。これが、決め手になって政府のデータ偽造が明らかになったのである。



    (3)「趙教授は監査報告書を見て、初めて知ることができた。なぜ2年前のあの日(2018年6月15日)、月城1号機の閉鎖を決定した韓水原理事会が開かれたあの日、議長だった自身が通知もなく解任され、他の人に電撃交代したのか、なぜ議事録が偽造されたのか、なぜ会計法人の経済性評価が1カ月で1000億ウォン(約945億円)の黒字から数百億ウォンの赤字に転じたのか、産業部と青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)が何をしたのか。過去2年間余り、趙教授が幾度となく問いかけたが、答えを聞くことができなかった疑問だ」

    下線部は、文政権が最も隠したかった点である。過去2年間、趙教授が政府に問い合わせても沈黙していた理由が、データ改ざんであったからだ。

     

    (4)「国家の組織犯罪に対する断罪はこれからが始まりだ。監査院は政治的外圧や前・現職官僚の組織的抵抗に押され、折衝と妥協を選んだ。代わりに、検察が断罪の剣を受け継いだ。大統領選挙の公約だからという理由で、大統領の言葉だからという理由で、法と規定を無視して国家の百年の計を崩した犯罪がうやむやになってはならない。そんな国は国ではない。しかし、政府・与党は、一斉に検察の捜査に反発している。秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官は、「非政治家の総長が政府を揺るがそうと不公正かつ過剰な捜査をしている」と述べた。李洛淵(イ・ナギョン)共に民主党代表は「これは政治捜査であり、検察権の乱用」とし「検察はすぐに無謀な暴走を止めろ」と述べた」

     

    政府と与党が手柄としてきた「脱原発政策」は、データ改ざんによる国家犯罪であったのだ。韓国政府は脱原発政策のせいで生じた損失を電気料金の一部を積み立てた基金で補填することを決めている。脱原発の損失補填に活用することにした電力産業基盤基金は、全国民が毎月支払う電気料金から3.7%を差し引いて積み立てた資金だ。脱原発政策に伴う費用を国民に負担させる形となる。まさに、「一将功成りて万骨枯る」である。国家犯罪である。

    a0960_006624_m
       

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、今回のユン検察総長「追放問題」で、国民の信頼を大きく失った。就任後初めて、支持率が37.4%へ落込んだのである。文大統領は、法務部長官と検察総長の対立に関して一切、発言せずに沈黙していたが、国民から不信を買う結果となった。

     

    文氏の大統領任期は、あと18ヶ月足らずとなった。文政権として国民に「レガシー」を残すべき貴重な時期に、マイナス・レガシーという皮肉な巡り合わせになった。これもすべて、長期にわたる進歩派政権継続願望が強すぎた結果であろう。検察に、文政権の犯罪を捜査させない、という民主主義国家であり得ない「暴挙」を行っているからだ。

     

    『中央日報』(12月3日付)は、「文大統領・民主党支持率、現政府に入って最低『国民の力』誤差範囲内でリード」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅大統領と共に民主党の支持率が現政権に入って最低に落ちたという世論調査の結果が3日、発表された。


    文大統領の支持率は40%割れとなり、民主党が誤差範囲内で最大野党「国民の力」に逆転された。秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に対する職務排除および懲戒請求を決めた政局の混乱で、野党による文大統領批判の影響と分析される。

    (1)「世論調査専門会社リアルメーターがTBSの依頼で先月30日から2日まで全国有権者1508人を対象に調査した結果、
    文大統領の国政遂行に対する肯定評価は37.4%、否定評価は57.3%となった。肯定評価は調査より6.4%ポイント下落し、否定評価は5.1%ポイント上昇した。肯定・不正の格差は19.9%ポイントに広がった」

     

    リアルメーターは、ユン氏に対する職務停止について、革新系団体も過剰な措置だと批判。チュ氏とユン氏の対立を巡っては、革新陣営内で意見が分かれ、支持率が下落したと分析。チュ氏とユン氏の対立が依然として、続いていることへの嫌気も反映されたという。

     


    文政権を支持している市民団体では連帯参与が、チュ法務部長官によるユン検察総長への業務停止命令が、「検察の政治的中立性」を侵害するものとして反対。また、韓国の弁護士会が反対に回った。これまで、「検察改革」を進めてきた文政権の狙いが、どこにあるかを暴露することになった。文政権の唱える「検察改革」は、検察が政権の疑惑を捜査しないという、身勝手な狙いであったのだ。

     

    韓国では、歴代政権が収賄事件に巻き込まれてきた。文政権の解釈では、検察の権力が強すぎる結果という、極めて国民を愚弄した内容である。犯罪事実があれば、検察が捜査して糺す。これが、検察の義務であろう。問題は、疑惑を引き起す側である。文政権の解釈では、捜査する検察が悪いという位置づけなのだ。こういう倒錯した文政権の主張が、現在の法務部長官と検察総長の間で繰り広げられている原因である。

     


    文政権の醜い動きを見せつけられる国民が、政権を見限るのは当然であろう。文氏の演説では、さも国民の味方になるような話をするが、現実は検察権力をねじ伏せて、文政権を捜査させないという腹黒い政権である。支持率が下がって当然であろう。


    (2)「文大統領の国政遂行に対する肯定評価は「与党の票田」とされる湖南(ホナム)地域で13.9%ポイント下落し、核心支持層である「女性」「40代」「進歩層」で落ち幅が著しく大きかった。リアルメーター側は、「尹錫悦総長の職務排除が表面では陣営間激しい葛藤を見せたが、調査結果、進歩層で陣営内離脱と衝撃がより大きいことが分かった」と分析した

    これまで、「女性」「40代」「進歩層」が
    文政権の核心支持層である。この岩盤支持層から、離脱が目立ち始めたのだ。岩盤にひび割れが起こり、崩れ始めたと言える。

     

    政党支持率では、次のような結果だ。与野党が、逆転する結果となった。

    最大野党「国民の力」31.2%(3.3%ポイント↑)

    与党「共に民主党」 28.9%(5.2%ポイント↓)

     

    来年市長補欠選挙が予定されているソウルでは

    国民の力  32.4%

    共に民主党 28.4%

     

    釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶南(キョンナム)では

    国民の力  38.5%

    共に民主党 22.2%

     

    文政権では、韓国全土の支持率が40%に下落すると、政策転換して国民の支持をつなぎ止める対策を打ってきた。例えば、前法務部長官の「チョ・グク」事件では、ついに更迭に踏み切っている。今回の支持率は、40%を大きく割り込んで37.4%である。局面展開でチュ法務部長官を更迭し、同時にユン検察総長解任という「両成敗」に出ても、すでに時遅しである。ユン総長は、行政裁判所へ訴えるはず。もはや、文在寅の逃げ隠れする場所はなくなった。

    a0960_008564_m
       

    文政権は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長解任に向けて強硬策を取ることが分かった。4日に懲戒委員会を開催する方針を明らかにしたからだ。一方、検察は月城原発のデータ改ざんを伴う違法な操業停止が、国家へ大きな経済的損失を伴うので、あくまでも解明する方針を貫いている。政権は、この事件が公になると致命傷になるので阻止する構えである。政権を巡る一大スキャンダルに発展しそうである。

     

    ユン検察総長は1日、職務に復帰した後、翌2日に月城原子力発電所1号機の経済性評価ねつ造疑惑を捜査している大田地検に対し、産業通商資源部の関係者3人の逮捕状請求を承認した。これに反発する与党は、懲戒委員会で解任できなければ、国会で弾劾すると息巻いている。

     


    『ハンギョレ新聞』(12月3日付)は、「韓国大統領府、検察総長の懲戒委員会を強行 総長、原発捜査の拘束令状請求を承認」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2日、空席になっている法務部次官に、判事出身のイ・ヨング弁護士を内定した。空席を埋める通常の人事ではなく、ユン・ソクヨル検察総長に対する懲戒手続きの進行に重点が置かれたワンポイント人事だ。前任者のコ・ヨンギ次官はユン総長に対する懲戒に反対し、1日に辞任した」

     

    文大統領は、空席になった法務次官をすぐに指名し、ユン検察総長の解任を進めるべく懲戒委員会を開かせる準備を進めている。この時点で、文氏の責任は明白になった。

     

    (2)「これに対抗し、ユン総長は、職務復帰のわずか2日目のこの日の午後、大田(テジョン)地検が捜査中の「月城(ウォルソン)原発1号機経済性操作」疑惑事件の被疑者である産業通商資源部の公務員らの事前拘束令状請求を承認した。復帰したとたんに与党側にとって敏感な捜査を指揮したことで、ユン総長と与党側の対立はさらに激しくなるものとみられる」

     

    ユン総長は、政権の思惑と離れて国民的課題の月城原発1号機の経済データねつ造事件の解明に取り組む。月城原発1号機の経済性評価ねつ造疑惑を捜査している大田地検は同日、産業通商資源部の局長、課長、書記官ら3人について、公用電子記録等損傷、監査院法違反などの疑いで逮捕状を請求したことを明らかにした。

     


    法曹界からは「原発の資料を大量に削除した問題の公務員が逮捕されれば、白雲揆(ペク・ウンギュ)元産業通商資源部長官をはじめ、青瓦台など上部に捜査が及ぶことになる」との分析が聞かれるという。『朝鮮日報』(12月3日付)が報じた。大統領府では尻に火がついてきた形だけに、是が非でもユン総長を解任して月城原発捜査を中止させたいのだろう。

     

    (3)「懲戒委員会を開いても、イ次期次官は懲戒委員長を引き受けないとみられる。懲戒委員の一人として表決にだけ参加させ、会議進行など結論を導き出す過程には介入することができないようにするということだ。大統領府高官は、「次官が委員長を引き受ければ、『判事出身のチュ・ミエ法務部長官の側近が懲戒を主導する』という非難に巻き込まれかねない。懲戒委員長に別の人を選任するようにという指示事項が法務部からすでに下されている」だと伝えた」

     

    懲戒委員会で、次期法務部次官は懲戒委員長を引き受けないという。政権側は、こういう形式論で、懲戒委員会→解任という手続きの正統性を維持できると考えている。だが、先に下された行政裁判所の判断は、任期2年で再任のない検察総長について、検察の独立性を守る意味からも解任について否定的見解を述べている。この判断について、政権側は全く注意を払っていないのだ。仮に、解任してもその後の提訴で、政権側の敗北が予想される。無駄なことに力を浪費していると言うほかない。

     


    (4)「大統領府のこのような立場は、懲戒委員会の結論がどのように出ても、その余波が文大統領に及ぶ状況は避けるという意図だと解釈される。ユン総長の懲戒に否定的な世論が優勢な状況で、解任などの重い懲戒が下された場合、場合によっては、政治的・道徳的な非難がチュ・ミエ長官を越え文大統領に及ぶことがありうるからだ。懲戒請求が否決される場合も同じだ。責任論が広がり、レームダック(任期末期の権力喪失)が加速化される状況を防ごうとするならば、政治的責任はあくまで懲戒を主導したチュ長官が負わなければならない」

     

    文大統領は卑怯である。懲戒委員会の結論がどう出ようと、責任はチュ法務部長官が引き受けるべきとしている。こうなると、大統領は何のために存在するのかという根源的な問題に突き当たる。文大統領には無関係という立場を取っているからだ。

     

    (5)「これは、“チュ・ミエ長官とユン・ソクヨル総長の対立”の局面で大統領府と文大統領が徹底的に沈黙を守ってきたことと同じ脈絡だ。大統領の沈黙は、「懲戒には一切介入しなかったので、結論がどう出ても私の責任ではない」という政治的不在証明の観点で計算された行動だったといえる」

     

    下線部は、驚くべき文氏の「保身の術」である。これまで沈黙を保ってきた理由が、自分に責任はないという言い逃れの根拠にしようとしてきたのだ。絶句するほかない。これが、韓国の大統領なのだ。

    118
       

    文大統領が、剣が峰に立たされている。政権の犯罪捜査を中止させる目的で、ユン検察総長を業務停止に追込もうとした策略が行政裁判所で止められたからだ。「検察の中立性を犯す」とまで断じられて、文政権は形無しの状況に追い込まれた。

     

    英エコノミスト誌は辛辣な政権批判記事を掲載した。

     

    英国の時事週刊誌『エコノミスト』が、秋美愛(チュ・ミエ)法相と尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の対立している韓国の状況に言及しつつ「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の検察改革が正反対の効果を生んでいる」と評した。ユン総長の職務停止が検察全体をユン総長の側に立たせ、文大統領は前任者のように捜査対象になりかねない、とも分析した。

     

    同誌は11月28日付の「複雑な検察問題」という記事で、「文大統領の任期末が迫るにつれ、権力弱体化の対象だった検察は文大統領に対する調べを強化するだろう」と記した。同誌は朴景信(パク・ギョンシム)高麗大学教授(法学専門大学院)とパク・ミョンリム延世大学教授(政治学)の発言を引用しつつ、「尹総長の職務停止は検察組織を総長の味方にしてしまい、これは改革の意図を挫折させるだけでなく、絶え間ない起訴を通して政府をまひさせる潜在性を有する」とも記した。『朝鮮日報』(12月2日付)が伝えた。

     

    『朝鮮日報』(12月2日付)は、「尹検察総長追放試みて文大統領の責任論拡大…与党『ここで後退すればレームダック懸念』」と題する記事を掲載した。

     

    秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官が尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長に対して下した職務排除命令について、ソウル行政裁が1日、尹総長が不当だと訴えた執行停止の申し立てを認めたことから、与党による「尹錫悦追放」戦略に狂いが生じた。これまで尹総長の問題は秋長官が前面に立ち、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は沈黙していた。

     

    (1)「尹総長の懲戒が強引だったことが明らかになり、文大統領が直接関与せざるを得ない状況へと変化している。さらに、裁判所の決定で文大統領も身動きが制限された状態だ。与党幹部は「ここで後退すれば、レームダック(任期末の権力空白)につながりかねない。引き返すことができないところまで来た。秋長官の意向通りに2日に次官人事を行い、4日に懲戒委員会を開き、尹総長の解任手続きに入る可能性が高い」と語った」

     

    与党は、強行突破でユン検察総長を解任に持込むと強気だが、その場合の反動を考えれば、文在寅氏は「大悪党」というレッテルを貼られる。行政裁判所が、手続きについても問題を指摘しているからだ。それを無視した解任とは、法秩序の崩壊になる。

     

    (2)「与党のそうした構想は裁判所と法務部監察委員会が尹総長の懲戒手続きに問題があると判断したことで現実性を欠く状況となった。むしろ与党が望んでいた尹総長の辞任ではなく、文大統領と秋長官の責任論ばかりが拡大した。それでも与党では「尹総長の懲戒をなかったことにはできない」というムードが強い。与党幹部は「尹総長の懲戒を進め、大統領が受け入れる方法以外に他の道はない」と述べた。法務部が尹総長の職務復帰にもかかわらず、2日に予定していた懲戒委員会を4日に延期し、後任の法務部次官人事を行うこともそうしたムードを反映したものとみられる。与党は懲戒委を開けば、尹総長の解任が決まるとみている」

     

    与党は、国会で絶対多数を占めているので超強気だが、法律論はそれと無関係である。この辺りが、彼らの限界である。白を黒と言いくるめられないのだ。こういう与党のピンボケ感覚を見ると、韓国社会の民度の低さが改めて浮き彫りになる。

     

    (3)「法務部が4日、尹総長の懲戒を決めれば、文大統領はそれを受け入れるかどうか決定しなければならない。文大統領が法務部の総長解任決定を受け入れれば、尹総長は総長職を務めることができなくなる。しかし、文大統領が原発や蔚山市長選疑惑など政権に対する捜査を阻止するため、尹総長を解任したという批判は避けられず、大きな負担となる」

     

    仮にユン検察総長を解任に追い込んでも、ユン氏は行政裁判所へ訴える心づもりだ。今回の行政裁判所の判断から見ても、「解任不当」という判断が下されるのは火を見るより明らかである。こういう見え透いた結論にも関わらず、文大統領は弁護士出身にあるまじき行動を取るのだろうか。

     

    (4)「裁判所と法務部監察委が法的手続きに問題があると指摘したことを無視することも法律専門家出身の文大統領には受け入れ難いことだ。政界関係者は、「尹総長懲戒を受け入れれば、尹総長追放の総企画者が大統領であることを自認することになる」と指摘した。尹総長の中途解任は文大統領が公言してきた検察権の独立、検察総長の任期保障という約束とも全く反する。文大統領は自著「運命」で、「検察の政治的中立のために整えられた重要な制度が検察総長の任期制であり、任期を守ること自体がとても重要だ」と指摘している」

     

    文氏は、絶体絶命の窮地に立たされている。下線部分のように文氏は過去、検察総長の任期を守ることが検察の政治的中立の証としている。この「命題」を自ら破るのか。文氏の人間性が問われる局面となってきた。

    a1320_000159_m
       


    中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会、CBIRC)の郭樹清主席は11月30日、不動産市場が金融産業と密接につながっていることを踏まえると、不動産市場が金融リスクにおいて最大の「灰色のサイ」だと指摘した。灰色のサイは、顕著であるにもかかわらず看過されているリスクを指す。『ロイター』(11月30日付)が伝えた。

     

    習近平政権登場以来、慢性化した不動産バブルで変調が起こっている。大都市部では、空き家が増加する一方、地方ではマンション在庫が高まってきたのだ。不動産市場が金融リスクにおいて最大の「灰色のサイ」と指摘されるまでになっている背景がこれだ。

     

    前記のロイター記事で、「郭氏は、不動産市場に関連する銀行の融資が現在全体の39%を占めると述べた。多くの債券や株式、信託投資が不動産市場にエクスポージャー(注:市場の価格変動リスクに晒されている資産の度合い)があることは言うまでもないと指摘した」。銀行融資残高の39%が不動産市場向けという事実は、債券や株式にとって潜在的なリスクを自覚させている意味で、危険ゾーンに入っていることは疑いない。


     

    『日本経済新聞 電子版』(12月2日付)は、「中国マンション在庫、4年ぶり高水準 地方で販売不振」と題する記事を掲載した。

     

    中国のマンション市場で在庫が増加している。合計面積は5億平方メートルを超え、約4年ぶりの高水準だ。新型コロナウイルスの打撃がなお残る地方で販売が伸び悩んでいるためだ。地元政府が在庫圧縮のため値下げを奨励する例も出てきた。不動産バブルが生じる大都市部と二極化しており、中国政府は双方に目配りした難しい対応を迫られる。

     

    (1)「不動産シンクタンクの易居研究院によると、10月末時点で買い手がいない物件(建築中も含む)の面積は5億223平方メートル。前年同月より8%増え、2016年末以来の高水準にある。「販売の落ち込みが大きい地区では、不動産会社の値引き販売などを積極的に支持・奨励する」。黒竜江省ハルビン市は不動産の在庫を圧縮するため、今年末までの限定措置としてこんな通知を出した。開発業者への土地販売収入が貴重な税収になる地方政府が、税収減につながりかねない値下げ販売を容認するのは異例だ」

     

    10月末の在庫は、前年比で8%増である。2016年以来の高水準である。ハルビン市では、在庫圧縮目的で業者に値引き販売を認めるという異例の事態になっている。

     


    (2)「地方での販売不振が在庫増の一因だ。発売から成約までの期間をみると、ハルビン市は23カ月、包頭市が28カ月、漳州市が25カ月と、全国100都市平均(9カ月)を大幅に上回る。19月の実質国内総生産(GDP)は、中国全体でプラス成長だったが、黒竜江省や内モンゴル自治区はなおマイナス成長だ。出生数の減少や都市部への人の移動で「約6割の都市は人口流出状態にある」(中泰証券の李迅雷氏)との見方もある。易居研究院の厳躍進氏は「新型コロナが落ち着いても、地方の不動産購買力は高まっていない」と指摘する」

     

    地方での販売不振が、在庫増の一因となっている。新型コロナが落ち着いても、地方の不動産購買力は高まっていないのだ。家計負債の増加が、消費行動を抑制している。

     

    (3)「新築マンションの建設の増加も、在庫を押し上げる要因だ。5~10月の半年間に発売された物件の面積は前年同期より1割近く増えた。新型コロナからの景気回復の原動力として、マンション投資が膨らんだためだ。中国人民銀行(中央銀行)などが不動産会社に適用する資金調達規制も、短期的に供給を増やす要因になっている。規制は例えば、資産に対する負債の比率が70%を超えたりした場合、金融機関などによる融資を実質制限する。21年からの全面施行を前に、不動産会社は取得済みの土地に新規物件を建て、少しでも在庫を処理して負債を圧縮しようと動いている」

     

    中国人民銀行は、21年から不動産会社に対する融資基準として資産負債比率70%を限度とする規制を掛ける。この規制を前に、不動産会社が駆け込みでマンション供給を増やしたことがマンション在庫を増やす結果になった。5~10月の半年間で、マンション供給高は前年比1割増となった。これも在庫増に繋がっている。

     


    (4)「在庫増の影響は、すでに地方都市を中心に販売価格に表れ始めている。中国国家統計局がまとめた主要70都市の不動産価格によると、10月に前月より下落した都市は19と、9月より11増えた。新型コロナ禍で販売が極度に落ち込んだ3月の22以来の水準に高まった。地方とは正反対に大都市では不動産バブルの懸念が強い。10月の成約面積は広東省深圳市が9割増、上海市が8割増、広東省広州市が7割増と、それぞれ前年同月を上回った。当局が購入制限などに踏み出すほど販売は好調だが問題はその先にある。空き家の増加だ」

     

    地方では、在庫増に見舞われたが、大都市の10月の成約面積は急増している。広東省深圳市が9割増、上海市が8割増、広東省広州市が7割増である。これらは実需でなく、投機対象であった。空き家が増えているからだ。

     

    (5)「中国には空き家を調べる公式統計がないが、西南財経大学は20%を超えているとはじく。人口減少で同じく空き家が増える日本の14%を大きく上回る。富裕層がマンションの値上がり期待だけで購入した結果、誰も住んでいない物件が全体の2割を占めるとさえいわれるいびつな構図が生まれた」

     

    西南財経大学は、空き家が20%を超えていると予測する。日本の空き家率14%を大きく上回る。この投機=空き家20%超が、今後のマンション需要を減らす要因になるだろう。

     


    (6)「地方を中心に在庫が積み上がり、都市部でも空き家問題が深刻になっている。すでに開発業者は、新たな土地購入を抑制している。国際経済研究所の伊藤信悟氏は「今後、不動産開発のペースは鈍る」とみる。経済正常化の一つの原動力となったマンション開発がペースダウンすれば、中国政府が想定する21年の「V字回復」に影響が出る可能性もある」

     

    中国GDPの約3割は、不動産開発に依存している。この最大の需要項目に変調を来たせば、来年のGDP予測に狂いが生じるはず。融資残高の39%は不動産関連とされるだけに、「灰色のサイ」という指摘は間違っていないようだ。正念場を迎える。

    このページのトップヘ