中国の7~9月期のGDPが、18日に発表された。最近の停電騒ぎや不動産バブル問題などが重なり、前年同期比4.9%増、前期比では0.2%増に急減速した。日本企業の事前予測では、約8割が「緩やかな減速」と甘いものだった。それだけにショックを受けているはずだ。
『日本経済新聞 電子版』(10月18日付)は、「中国GDP4.9%増に減速 7~9月実質 素材高やコロナで」と題する記事を掲載した。
(1)「中国国家統計局が18日発表した2021年7~9月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.9%増えた。4~6月(7.9%増)から減速した。素材高による収益悪化で企業の投資が伸びず、新型コロナウイルスの感染再拡大をうけた移動制限が消費を抑え込んだ。中国景気の停滞感が強まっている。季節要因をならした前期比での伸び率をみると、0.2%だった。4~6月の1.2%から落ち込んだ」
前年同期比では、4.9%増。前期比では0.2%増で年率0.8%増。これが7~9月期の中国経済の姿である。この事実をしっかりと見詰めることだ。
10月ロイター企業調査によると、8割近くの日本企業が中国経済は緩やかな減速か、一時的な減速にとどまると見込んでいる。中国経済の減速について企業に聞いたところ、「当局のコントロール下で緩やかな減速にとどまる」が66%、「減速は一時的、当局の景気刺激策等で再加速」が13%となり、現段階で多くの日本企業は、中国経済が深刻な状況に陥るとは見ていない。10%は「来春にかけて底打ち」すると見ており、「中国発の金融危機に発展する」と回答した企業は11%にとどまった。『ロイター』(10月14日付)が報じたもの。楽観的であることが分かる。
(2)「景気の減速感は、GDPと同時に発表した他の統計からも見て取れる。企業部門では、工業生産が1~9月に前年同期比11.8%増えた。19年同時期と比べた年平均の伸びは6.4%で、1~6月(7.0%)より鈍った。新エネルギー車や工業ロボットは堅調だったが、9月に本格化した電力制限が素材や部品の生産の足を引っ張った」
工業生産は、1~9月で前年同期比11.8%増だが、1~6月の7.0%増よりも大幅に鈍っている。電力制限が素材や部品の生産の足を引っ張ったものだ。
(3)「家計部門も伸び悩んだ。百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は1~9月、前年同期比16.4%増えた。19年同時期と比べた年平均増加率は3.9%となり、1~6月(4.4%)から減速した。夏場に再び広がった新型コロナの感染が、旅行や外食など接触型消費を抑え込んだ。雇用や所得の回復がもたついていることも、GDPの4割弱を占める個人消費の足かせだ。1~9月の都市部の新規雇用は1045万人だった。前年同期を16%上回ったが、新型コロナ前の19年1~9月(1097万人)には届いていない。1人当たり可処分所得の伸びは過去2年間の年平均で7.1%と、1~6月(7.4%)から鈍った」
注目の小売売上高の1~9月は、19年同時期と比べた年平均増加率は3.9%となり、1~6月(4.4%)から減速した。何か分かりにくい発表の仕方で当局が、減速を覚られないように煙幕を張っている感じは否めない。要するに、悪化しているのだ。
(4)「内需の不振とは対照的に、外需は堅調さを保った。7~9月の輸出入(ドル建て)は四半期ベースでともに最高となった。輸入原材料が値上がりし、輸出品への価格転嫁もみられ、単価の上昇で貿易額が膨らんだ。輸出から輸入を引いた貿易黒字は前年同期より15%ほど増えた。2四半期ぶりの増加だ」
輸出は、世界的物価高の波に乗って順調だった。ここは明快な発表をしている。
(5)「10月以降も素材高が企業収益を圧迫し、設備投資や雇用が増えにくいとの見方は少なくない。政府による不動産などの規制強化も需要を冷ます要因だ。共産党政権は地方政府にインフラ債の発行を加速させ、公共事業で景気を下支えする考えだ」
地方政府にインフラ投資を増やさせるという、いつもの政策を発動しようとしているが意味はない。過去と同じ非効率投資の繰り返しである。従来であれば、住宅投資をテコ入れさせるが、これも不可能になった。四面楚歌とは、こういう状況を指すのであろう。次の記事は、中国の現状をよく伝えている。
『ロイター』(10月15日付)は、「中国大型連休で見えた消費者の不安、景気減速助長も」と題するコラムを掲載した。
中国の「ゴールデンウィーク(黄金週間)」は、輝きを失ってしまった。国慶節(建国記念日)に伴う大型連休期間は通常、飛行機のチケットから不動産物件まであらゆる需要が活発化する。ところが、今年の国内旅行関連収入は、前年比で約5%減少し、消費者の先行きに対する自信が揺らいでいる様子をそれとなく示唆している。だからといって中央政府が心動かされて政策支援を打ち出す気配も見えない。
(6)「オンライン旅行会社の同程芸龍(トンチョン・イーロン)が事前に試算した連休中の国内旅行件数は、6億5000万件だった。しかし、政府が公表した実際の数字はそれより20%低かった。連休中の旅行関連収入は600億ドルと、パンデミック発生前だった2019年当時の約6割程度にとどまっている。中国の厳しいコロナ対策が消費者心理に影響したのかもしれないが、当局が「感染者ゼロ」を目指す姿勢を緩める兆しはない」。
連休中の国内旅行件数は、予想を大きく下回り20%減であった。2019年当時の約6割程度にとどまっている。
(7)「さらに自ら招いた側面が、より強い経済的な痛みも存在する。これまでの大型連休は出稼ぎ労働者が地元に帰省し、不動産を物色する時期として定着していた。不動産セクターは、中国の国内総生産(GDP)成長率の約25%を占める大きな存在だ。その不動産販売も今年の連休中は15都市の平均で約33%減った、と民間不動産調査会社の中国指数研究院が見積もっている。当局による借り入れ規制が原因で、不動産大手の中国恒大集団の経営危機をもたらした。そうした期待外れの数字は、銀行が融資枠を使い果たし、企業が借金返済を迫られるようになるとともに、景気が一段と減速しかねないとの不安を裏付けている」
今年の連休中、15都市の不動産販売は平均で約33%減った。下線部のように、10月以降の中国経済に明るい兆しはない。