勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    韓国は命拾いした。11月23日にGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)を破棄していれば、28日に発射した北朝鮮ミサイルのトータルの正確な情報を把握できなかった。GSOMIAを破棄していたら、今頃は韓国で責任論が飛び交っていたであろう。

     

    『産経新聞』(11月28日付)は、「北ミサイル発射、GSOMIA継続、事後分析に有効」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮が28日に発射した弾道ミサイルは、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄が回避された後、初めてのケースとなった。北朝鮮がミサイル技術の高度化を進める中、発射の情報分析の重要性は増している。そのため、今回の発射についても日韓の防衛当局は情報交換を行う見通しで、協定継続の意義が改めて確認された。

    (1)「発射から着弾までの初動では、日韓が情報交換して対応することは原則的になく、それぞれがレーダーなどで追尾する。とはいえ、「今後(の分析)では相手からもたらされる情報は互いに有益だ」(自衛隊幹部)という」

     

    日韓双方のレーダー情報を後から交換することで、完全な情報が得られるという。情報は、多いほど役立つのが常識だ。

     

    (2)「北朝鮮は平成29年11月を最後に休止していた弾道ミサイル発射を今年5月に再開。以降、今回で13回目を数える。その間、着弾前に再上昇する複雑な軌道を描くロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」類似型など新たな技術開発を進めている。ただ、GSOMIAに基づく情報交換で、日本は韓国が持つ発射地点に関する精密な情報を収集できるとされる。また、核・ミサイル開発や拉致問題に関しては、韓国が得意とする脱北者などのヒューミント(人的情報収集)が役に立つ」

     

    韓国は、北ミサイルの発射地点の正確な情報。日本は着弾地点の正確な情報が得られると言うことか。そうであれば、日韓が協力する意味は大きい。

     

    (3)「何より、協定は北朝鮮の核・ミサイル開発に対峙(たいじ)する日米韓の相互信頼関係の土台だ。防衛省制服組トップの山崎幸二統合幕僚長は、28日の記者会見で協定について「日本の防衛のため非常に意義がある。継続的に安定した運用を心掛けたい」と意義を強調した」

     

    GSOMIA破棄を巡って3ヶ月間、日韓は感情的なやり取りをしてきた。28日の北のミサイル発射で、ようやく両国がそれぞれの相互依存を再認識したということだろう。

     

    ところで、GSOMIAが元の鞘に収まった背景には、北朝鮮が来年1月に重大発表があるのでないか。それに備えて韓国がGSOMIA破棄の「一時中断」措置を取ったという説が流れている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月28日付)は、「GSOMIA延長の背後に金正恩氏の『雄大な作戦』」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙編集委員の峯岸博氏である。

     

    北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は年末年始にどう動くのか――。非核化をめぐる米朝交渉の停滞を受け、日米韓の政府関係者や専門家の間で話題になっている言葉がある。北朝鮮メディアが使った「雄大な作戦」がそれだ。米国の仲介によって日韓が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の継続で合意したのも無縁ではない。

     

    (4)「朝鮮中央通信は1016日、金正恩氏が革命の聖地とされる白頭山に白馬に乗って登ったと報じる中で、次のように伝えた。「同行した幹部は、白頭山の霊峰で金正恩委員長の偉大な思索の瞬間を目撃し、再び世界が驚き、朝鮮革命が一歩前進する雄大な作戦が繰り広げられるという確信を胸に抱いた」。同18日の党機関紙、労働新聞(電子版)も「雄大な作戦」に触れ、白頭山登頂は「敵対勢力と最後の決着を付けるという鉄の宣言である」と強調した。「世界が驚く雄大な作戦」とは一体何を意味するのか。中朝境界沿いにあり、聖地とされる白頭山や白馬という"演出"が、米朝交渉が不調のまま年越しした場合、来年11日、施政方針にあたる「新年の辞」で金正恩氏が重大決定を下すとの臆測を呼んでいる。実際、これまでも白頭山のある地域を訪れた後に北朝鮮から重大ニュースが伝わることが多かった

     

    朝鮮中央通信が1016日、金正恩氏が白頭山登頂して、重大な決意を固めたと報じた以上、韓国は何が起こってもいいような準備しなければならない。その場合、GSOMIAが失効していたとなれば非難囂囂(ひなんごうごう)である。この「白頭山登頂」が、GSOMIAを継続させたと解説する向きがいると言うのだ。


     

    (5)「韓国の閣僚経験者は、「南(韓国)への挑発はあり得る」と語る。北朝鮮が海上の南北境界線である北方限界線(NLL)付近などで意図的に南北衝突を引き起こす可能性があるとの解説だ。韓国の危機感を高めつつ、トランプ大統領との決定的対立の回避を狙ったシナリオだ。それを予告するかのように、1125日の朝鮮中央通信は、韓国に近い前線の昌麟島(チャンリャンド)の部隊を視察した金正恩氏が、自ら目標を指示して海岸に設置している火砲を試射させたと伝えた」

     

    文大統領は、北との合意を信じて警戒心を解いてきた。現実は、全く違う方向に動いている。韓国が、GSOMIAに調印した背景は、北朝鮮の軍拡にある。現在のような状況こそGSOMIAが必要な時期である。文大統領は、危ないところで笑い者にされるところだった。

     

    テイカカズラ
       

    韓国の合計特殊出生率が7~9月期に入って、さらに急激な減少を見せている。ソウルでは、なんと0.69である。人類が経験したことのない「絶滅的」な低水準記録である。理由は何か。若者の生活苦である。高い失業率で5人に1人は失業である。就職も出来ない人間が、結婚や出産など考えるゆとりがない。その日その日をどうやって生きて行くかで精一杯である。住宅も高騰している。結婚して新居も構えられないのだ。

     

    こういう生存条件すら保証できない政府が文在寅政権である。包容社会とか平和経済とか、立派な話をなさるが、この出生率急速低下に対してどういう感想か。まさに「文さん、大変だ」という緊急事態である。

     

    『朝鮮日報』(11月28日付)は、「ソウルの合計特殊出生率0.69 絶滅への道に入った水準」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ソウルの合計特殊出生率が今年79月期に0.7を初めて切り0.69を記録した。合計特殊出生率とは、1人の女性が妊娠可能とされる15歳から49歳までの間に産む子どもの数を意味する。全国的に見ても、79月期の新生児数と合計特殊出生率は1981年に関連統計の集計を開始して以来、最も低かった」

     

    戦前の日本では、「生めよ増やせよ」と出産を大奨励した。人口増加が国家の繁栄に結びつくという理由だ。現代では、人口が横ばいを維持しない限り、社会保障を維持できないという切実な悩みに直面する。文大統領の「平和経済」は、出生率の急低下がそれを不可能にしている。

     

    ソウルの合計特殊出生率が、7~9月期に0.69とは驚きを超えて、文政権の「経済無策」に怒りを覚えるほど。しかも、突発的な現象でなく傾向的に下落していることを考えると、タイトルのように「絶滅の道に入った」のだ。

     

    (2)「統計庁は27日に発表した「9月人口動向」で、「今年79月期の全国の出生児数は73793人で、前年同期よりも6687人(-8.3%)減少した79月期の全国合計特殊出生率も0.88で過去最低を記録した」と明らかにした。特に地域別で見ると、今年79月期にソウル地域で記録した0.69という合計特殊出生率は、世界的にも類を見ないほどの超少子化だと指摘されている。この数値は、人口を維持するために必要な合計特殊出生率(2.1)の3分の1、超少子化基準(1.3)の半分に過ぎないものだ。世界を代表する少子化国・地域と言われるマカオ(0.92)、シンガポール(1.14)=以上、昨年の数値=の出生率を大幅に下回っている」

     

    韓国全体の合計特殊出生率は、7~9月期に0.88と過去最低を記録している。ソウルの0.69よりも高いが、ともに世界最低レベルである。ソウルの数値は、韓国全体がいずれこの超低水準に落込む先行シグナルと見るべきだろう。「韓国が地球から消える」と言えば大袈裟にしても、そのくらい驚き悲しむべきデータである。

     

    (3)「人口学者のチョ・ヨンテ・ソウル大学保健大学院教授は「もし『ソウル』と名付けられた人間の種がいるとしたら、絶滅の道に入ったと判断してもいいほどだ。人口のコントロール・タワーだとされていた大統領直属の少子高齢社会委員会の失敗であり、これまでの少子化政策の完全な失敗を示す象徴的な出来事だ」と語った」

     

    韓国は、絶滅の道に入った。韓国の人口学者が危機感をあらわにしている。日本人の私がのけ反るほど驚くのだから、韓国人であれば衝撃的であろう。すべての原因は、文政権にある。就職はできない。住宅は高騰している。この不整合な経済現象を生み出したのは、文大統領の経済政策と住宅政策の失敗による。

     

    (4)「今年は年間出生児数30万人維持も危うい状況だ。9月までの出生児数は232317人だ。1012月期の新生児数が67000人台に下がれば、初めて年間出生児数が20万人台となる。昨年の年間死亡者数(298820人)を考えると、出生児数30万人は人口減少の影響を防ぐためのマジノ線(最終防衛ライン)とされる。韓国の年間出生児数は2002年から16年までは40万人台を維持していたが、2017年に30万人台に下がり、減少速度がますます増している」

     

    今年の出生数が20万人台に下がれば、昨年の死亡者数を下回る。つまり、今年から「人口減」社会に突入である。韓国統計局の最新推計の人口減社会よりも8年も前倒しである。社会保障計画が間に合わないという事態である。

     

    高齢者で年金未受給率が54%の韓国である。反日などと言っていられる経済的な状況ではない。日本に頭を垂れて「和解」を申入れ、経済の安定をはかるのが政府の務めであろう。現実には、謝罪しろとか賠償しろとか、逆の行動である。韓国の頭の高さが、韓族を滅亡に追いやるのだろう。

    ポールオブビューティー

       

    文政権の大統領府に集まった参謀は、ひたすら自己の利益で動いている集団のようである。次期政権も進歩派が続き、失業しないことが最優先の傾向がきわめて強い。「チョ・グク前法相」任命の際も毎日、世論調査を行なって支持率の動向を見ていたという。この驚くべき大衆迎合性が、チョ・グク氏の在任30日間という早期辞職を招くことになった。大局を見失っているのだ。

     

    今回のGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)騒動も同じである。破棄決定も破棄一時中断もすべて党利党略優先である。国家の利益を考えず、ひたすら大統領府勤務が長く続くことを願っている身勝手集団の行動である。

     

    『中央日報』(11月27日付)は、「GSOMIA終了を主張した青瓦台参謀、イラク派兵の時を思い出させる」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチェ・ビョンゴン国際外交安保チーム長である。

     

    (1)「韓国ギャラップが19~21日に実施した世論調査によると、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定に対して回答者の51%が支持を表明した。不支持は29%に過ぎなかった。過半数がGSOMIAを終了させることに賛成した。ところが支持政党と理念指向でみると、賛否が鮮明に分かれる。共に民主党支持者の78%が支持していた反面、自由韓国党支持者の70%は不支持だった。保守だと指向を明らかにした回答者では不支持は57%なのに、進歩回答者では指示が79%だった。青瓦台(チョンワデ、大統領府)が紆余曲折の末にGSOMIA終了を猶予したが、この世論調査からみると支持層の結集にはあまり役に立つものではなかった」

     

    GSOMIA終了決定に関する世論調査で、政権支持で賛成した比率は79%であり、反対が21%もいた。支持層の結集に役立っていないことが判明した。チョ・グク氏を法相に指名する際、支持層の結集が目的であったとされる。こういう党利党略の決定は、国家の針路を見誤らせる。

     

    (2)「16年前にはこれよりももっとひどかった。2003年米国が要求したイラク派兵をめぐり与党で反対が続出した。故金槿泰(キム・グンテ〕議員が「不道徳な戦争」とし、任鍾皙(イム・ジョンソク)議員はハンストを行った。振り返ってみればイラク戦は名分も実益もない戦争だった。バラク・オバマ前大統領はイラク戦に公開的に反対し、現ドナルド・トランプ大統領も無駄に介入した戦争だと批判した。だが、当時盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権はネオコンが掌握したブッシュ政権の要求を無視できなかった。派兵の有無で同盟の有無が決まった瞬間だった。韓国軍を派兵しなければ在韓米軍、特に北朝鮮軍のソウル進撃を防ぐ前方第2師団が大規模にイラクに向かう可能性があった」

     

    2003年、米国が韓国にイラク派兵を要請。韓国が、これを受入れるのは苦渋の決断であった。進歩派の盧武鉉政権が、あえてこの要請を受入れたのは党利党略を離れた国益があった。下線のような軍事情勢が控えていたのだ。

     

    (3)「盧武鉉政権が派兵決定を下したからといって、保守陣営が票を与えるようなことはなかった。今回もGSOMIA終了決定を猶予したからといって、保守層が現政権に対する態度を変えそうにはない。そうはいっても、政治的な得失ではなく国家的得失として国政を決めることが、国民から国政運営を委任された執権勢力の当然の姿勢だ」

     

    盧武鉉氏のイラク派兵決定により、保守陣営の票が増えることはなかった。下線のように政治的得失でなく国家的な損失として国政を考えるべきという指摘はもっともである。文政権には、この視点が欠如している。

    (4)「2003年4月2日国会本会議場に立った盧武鉉大統領は、経済改革、労使文化改革、言論改革に先立ち、派兵案処理に真っ先に言及した。就任後初の国会施政方針演説だった。「私は名分を重視してきた政治家です。政治経歴の重要な峠を迎えるたびに不利益を甘受しながらも名分を選んできました。(中略)そのようにしてきた私が今回は派兵を決めて皆さんの同意を要請しています。私の決定に国と国民の運命がかかっているためです」。国会はこの日、工兵・医療部隊派兵案を可決処理した」

    下線の部分の演説は、真意がこもっている。この演説を聴けば、誰でも深く感動して賛成票を投じたであろう。文大統領の「小理屈をこね回した話法」には、反対論者を説得する誠意が感じられないのだ。

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    中国にとっては、予想外の屈辱的な大敗になった。本土では、香港区議選結果を報道しないところに、その衝撃の大きさを表している。選挙結果は、次のようなものだ。

     

    定員数 452人(18区)

    民主派 388人 85.8%

    親中派  59人 13.1%

    独立系   5人  1.1%

     

    民主派が、9割弱で親中派は1割強という結果は、香港市民の政治意識を示した。学生デモで、一般市民はそれほど民主派を支持しないのでないかという予想すらあった。それが蓋を開けたら、民主派の圧勝である。専制政治手法は嫌われることを証明した。

     

    行政区長官・林鄭氏はこれまで、政治改革の要求をかたくなに拒否し、サイレントマジョリティー(声なき多数派)は自身の政権を支持し抗議デモに反対しているとの見解を繰り返し示唆してきた。選挙結果を受けて、林鄭氏の香港政府の発表した声明で、「政府は必ず市民の意見を謙虚に聞き入れ、真剣に検討する」と表明。一方で、今後取る可能性のある対応についての詳細は明らかにしなかった。以上は、AFP(11月26日付)が伝えた。

     

    香港行政府長官には、政策決定権がない。すべて、習近平中国国家主席が握っている。今回の選挙結果を受けて、どのような手を打つのか見ものである。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月25日付)は、「香港、民主派圧勝で混乱深まる可能性」と題する記事を掲載した。

     

    中国はこの数カ月、香港の抗議デモが多くの市民の意思ではなく、外国勢力に操られたテロリストの仕業だと位置づけてきた。6月にデモが発生してから初めての選挙となる24日の区議会(地方議会)議員選挙で、香港市民は審判を下した。その結果、中国政府のメンツはすっかり失われた。

     

    (1)「選挙前の2週間、抗議デモは一段と過激になっていた。警察は大学を包囲し、デモ隊は交通を妨害し学校を休校に追い込んだ。香港理工大学では包囲されて1週間がたった25日も包囲が続いた。アナリストらは暴力行為により抗議活動への市民の支持は弱まるだろうとみていた。区議選はそうした考えが甘かったことを示した。区議会に政治的な力はなく、その役割は地域に関わる身近な問題で政府に提言する程度に限定されている。しかし今回の勝利により、民主派は一定の影響力を行使する手段を新たに得たことになる。区議選で勝ったことで議会に当たる立法会に6人が立候補できるほか、行政長官選挙でも、親中派が多数を占める1200人の選挙委員のうち117人分を割り当ててもらえるためだ

     

    民主派は区議選で圧勝したが、香港政治に関われる力は限定的である。それでも、香港議会に当る立法会に6人が立候補できるなど「風穴」は開けられる。これを通して、民主化要求を実現する手立ては残っている。

     

    (2)「もっとも、区議選の重要性は香港で最も公正な直接選挙だという点にある。中国本土と関係が深い業界団体に多くの選出枠が与えられている立法会選とは対照的に、区議選は単純過半数で決まる。今回の選挙は事実上、抗議活動への賛否を問う住民投票だった。今や香港政府と中国政府が直面する危機は深刻だ。抗議活動に弾みがつき、参加者らは行政長官を普通選挙で選べるようにすることや、警察の暴力行為を調べる独立調査委員会の設置などの要求をさらに強硬に通そうとするだろう」

     

    民主派が区議選で圧倒的多数を握ったので、抗議活動に弾みがつくことは避けられない。その要求は一層、強硬になってゆくはず。香港政府と中国政府はどのように対応するのか。

     

    (3)「解決策の一つは、中国政府が政治改革を提案することかもしれない。最も可能性が高いのは中国共産党が香港政府に取り締まりの強化を求め続けるシナリオだ。ここ数カ月の展開を受け、習氏は香港に高度な自治を保障する「一国二制度」をこのまま続けるわけにはいかず、香港市民の要求に応じることなどもってのほかだと確信したはずだ」

     

    香港行政長官は、「政府は必ず市民の意見を謙虚に聞き入れ、真剣に検討する」と表明したが、これを信じる者がいるだろうか。単なるリップサービスであろう。習近平氏は、体質的に民主制度を嫌悪するタイプだ。「一国二制度」を踏み潰すと見られる。ここに、大きな落し穴が待っている。米国の「香港人権法」が発動されるに違いない。香港の運命はそこまで。経済環境が激変して、国際金融都市のイメージは剥落する。

     

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    警官隊と学生デモの壮絶な衝突後の24日、香港で区議選が行なわれた。今回の選挙は、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対する支持を示すバロメーターになるとみられていた。同時に、香港政府のバックにいる習近平中国国家主席への民意でもある。現地テレビRTHKが25日に報じたところによると、民主派は全452議席のうち90%に近い390議席を獲得したという。行政長官が、香港政府は区議会選の結果を尊重すると表明せざるをえなかった。強硬策を支持した習近平氏の敗北である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月25日付)は、「香港区議選、自由求めるメッセージ」と題する社説を掲載した。

     

    香港は経済的自由の恩恵を示す見本のような都市だが、現地の市民は24日、政治的自由をも求めていることを示した。区議会(地方議会)選挙の投票率は過去最高に達し、民主は候補が議席を得た。政治・法律面での自治を奪おうとする中国の試みを拒絶した形だ。

     

    (1)「区議会議員452人は地域の懸念に対応する以外の権限をほとんど持たない。それでも今回の選挙は香港全体として初めて、半年に及ぶ反政府デモに評決を下すチャンスとなった。有権者の71%超が投票所を訪れた。驚くべき結果だ。一部の香港当局者は、デモに反対する「サイレントマジョリティー(声なき多数派)」が政府支援のために投票所を訪れる可能性があると予想していた。しかし結果を見ると、一部デモ参加者の行き過ぎについて有権者がどのような懸念を抱こうと、中国政府の命令に従う香港政府を巡る懸念の方が大きいようだ」

     

    香港の区議会選挙である。東京で言えば、品川区や中央区の区議会議員選挙が、これだけ世界から注目された理由は、民意が中国か、反中国かを示すバロメーターになるからだ。その結果は、圧倒的に「NO CHINA」であった。皮肉である。2047年には「一国二制度」が終わるが、束の間の自由を香港の人々は守る意思を示した。

     

    この選挙結果から類推できるのは、来年1月の台湾総統選挙で、蔡総統の再選可能性が高まったことだ。国民党は、一国二制度を吹聴してきただけに、香港の混乱で最悪事態に追い込まれた。

     

    (2)「中国政府は2047年までの50年間は香港の自治を認めると約束したが、実質的に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と立法会(議会)をコントロールしており、香港から徐々に自由を奪おうとしている。今月には、香港政府の覆面禁止法について現地の裁判所が下した「違憲」判断を却下する権限があると主張した。24日に有権者が突き付けた拒絶に対する中国と林鄭氏の反応は、香港が平静を取り戻し、デモを終結させられるかどうかを左右するだろう。今回の投票は、市民がうっぷんを晴らす手段として選挙が有効であることを物語っている。香港市民は、自治を求める姿勢を見せつける民主的な機会が他にもあれば、経済を混乱させはしないはずだ」

     

    専制主義か民主主義か。国民に真の幸せをもたらすのは、民主主義である。それを、今回の香港選挙が典型的に示している。4年前の前回選挙では、民主派の議席数は約100議席にとどまっていた。今回の選挙には過去最高の1104人が立候補し、452議席を争った。民主派は390議席を得たので、前回の約4倍という急増ぶりである。

     

    民主派候補に投票したという22歳の学生は、「中国政府が要求を無視したことで全ての香港市民が立ち上がり投票した」と指摘し、「民主派の勝利は、中国政府に強力なシグナルを送る」と述べた。何君堯(ユニウス・ホウ)氏をはじめ多くの親中派の大物議員が議席を失った。ホウ氏はフェイスブックで支持者に「異常な年の異常な選挙で異例の結果になった」と敗戦の弁を述べた」(『ロイター』11月25日付)

     

    (3)「投票には、ドナルド・トランプ米大統領に香港の自由希求を支援するよう求めるメッセージ、というより嘆願の側面もある。香港に関してトランプ氏はロナルド・レーガン元大統領のような明確な倫理観に基づいて発言してきたわけではなく、米上下両院が今月ほぼ全員一致で可決した「香港人権・民主主義法案」に署名するかどうかも決めていない」

     

    トランプ大統領は、米国議会で議決された「香港人権法」にまだ署名していない。法律として発効していないのだ。米中通商協議への悪影響を恐れた結果だ。今回の香港選挙で表れた民意は、米国に助けて欲しいというシグナルと見られている。トランプ氏は、こういう切なる願いを、引き延ばしてはいけない。

     

     

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