勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

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    あじさいのたまご
       


    台湾東部から侵攻作戦へ

    米上院へ中国制裁案上程

    中国をドル決済から排除

    食糧不足で不満が高まる

     

    ウクライナ情勢が、緊迫化している。約10万人のロシア軍が、ウクライナ国境線で演習をしているためだ。ロシアの目的は、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)への加盟を阻止することだ。NATOとウクライナは、このロシアの要求を拒否している。主権に関わる問題であり、ロシアの要求は越権行為である。

     

    米国バイデン大統領は当初、できるだけ関わりたくない姿勢を見せていた。ただ、今秋の中間選挙を控えて弱腰では、共和党からの非難対象になることは避けられない。バイデン氏の支持率は昨年夏、アフガニスタンからの米軍撤退を機に、急落したまま回復できない状況である。こういう政治情勢を考えれば、バイデン氏はロシアへ強硬姿勢を取らざるを得ない事情にある。

     


    最近、バイデン氏は、米軍8500人の増派を決定したほか、ロシアへ「かつてない」経済制裁を行なうと言明した。米国が、ロシアルーブルを米ドルの国際決済機構から排除することや、半導体の対ソ輸出を禁止するなどが示唆している。

     

    習近平氏は、ウクライナをめぐる米ロの動きをじっと見詰めているはずだ。米国のロシアへの制裁が生温いものであれば、中国が台湾侵攻しても米国は同様な動きで、中国に大したダメージにならないと読み間違えるだろう。米国は、こういうリスクを回避するためにも、いかなる対ロシア対策を発動するのか注目される。

     

    台湾東部から侵攻作戦へ

    中国海軍は、少なくとも6カ月前から南西諸島最南端の東側および南側に駆逐艦と小型ミサイル艦を展開させている。具体的には、南西諸島と台湾の間の海域でプレゼンスを拡大してきたという。米国防総省高官によると、現在艦艇1隻が常駐し、多くの場合もう1隻が随行している。以上の指摘は、『フィナンシャル・タイムズ(FT)』(1月24日付)が報じたものだ。

     


    従来、中国軍は台湾の南側から侵攻するのでないかと予測されてきた。最近、台湾と日本の防衛専門家は、地下格納庫を備えた台湾東部の空軍基地を攻撃し、日本やグアムからの米軍部隊の援軍を遮断するための訓練も含まれるという。つまり、中国海軍は、南西諸島と台湾の間の海域を「主戦場」として日米海軍を迎え撃つ作戦を展開すると予測されるに至った。南西諸島とは、沖縄諸島、尖閣諸島、八重山列島、宮古列島を含む。中国が、台湾侵攻と同時に尖閣諸島への同時侵攻を行なう危険性を否定できなくなったのだ。

     

    中国軍が、従来の想定通り台湾の西側から攻撃してきた場合、台湾は島の東側に艦艇を移動させるという有事作戦を描いている。戦闘機も東部・花蓮県にある基地の山岳地帯のトンネル内に避難させるというものだ。台北の中華戦略及兵棋研究協会(CSWS)の研究員、スー・イェンチ氏は「我々は中国人民解放軍の台湾南西部や南東部への展開ばかり議論しているが、中国軍は東側の海域を戦場に想定した訓練をしている」と述べた。前記のFTが報じた。

     

    中国軍が、南西諸島と台湾の間の海域を「主戦場」に決めたとすれば、日米海軍は極めて防衛し易いことが分る。日本は、南西諸島に防衛基地を構えて未然に中国海軍の動きを封じられる可能性が高まるからだ。従来、中国軍が台湾の南側から侵攻してくるとなれば、自衛隊は「専守防衛ライン」から遠ざかるのだ。中国軍の「主戦場」変更は、日米海軍にとっては好都合かも知れない。日米潜水艦部隊は、中国艦船を「一網打尽」にできる、またとないチャンスが到来するとも言えるであろう。

     

    米上院へ中国制裁案上程

    米上院軍事委員会のダン・サリバン議員は1月21日、中国が台湾に軍事侵攻した場合、中国企業や共産党幹部に対する経済制裁および米市場での上場廃止などを含む広範な制裁を科す法案を上院に提出した。具体的内容は、共産党員や中国企業に経済・金融制裁を科すほか、米国の金融機関にも中国企業への投資や取引を禁じる。さらに、一部の中国生産品の輸入を禁止する、というもの。『大紀元』(1月24日付)が報じた。

     


    中国共産党幹部の子弟は、多くが米国へ移住している。資産も米国へ移しているケースが増えている。これは、習近平氏にとって大きな負担になろう。台湾侵攻作戦の推移によっては、習近平氏の「引退」を求める圧力に変わる危険性を秘めているからだ。中国共産党元老家族は、隠然たる権力を握っていることを忘れてはいけない。

     

    習氏が、元老家族に手を焼いているケースを上げてみよう。未だに、不動産税を実現できず、「様子見」をしていることだ。2014年に不動産税新設の方針を決定し、形ばかりの「試験的実施」に止まっている。全土への一斉実施には、共産党元幹部の子弟が猛烈な反対意向を習氏の元に伝えた。習氏は、国家主席就任に当り元幹部の子弟(紅二代)の支援を取り付けている。具体的には、市場経済から国有企業中心体制へと「先祖返り」を約束した。習氏は、これだけの配慮をして政権基盤を固めたという事情がある。(つづく)

     

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    日本の地方自治体では事業執行において、政府からの予算手当がしっかりと行なわれ、全国一律の行政サービスが行なわれている。中国では、多くが地方政府の責任(資金手当)で行なわれるという大きな差がある。日本が社会主義で、中国が非社会主義というイメージだ。

     

    こうなると、中国の中央政府は何をやっているのか。防衛費の拡充である。不動産バブルで吸い上げた土地売却利益を惜しげもなく投入したことはまちがいない。そのギャップが、地方政府の貧困財政を招いている。国民生活と無縁なことに狂奔していたのだ。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月26日付)は、「中国『共同富裕』の重圧、借金漬け地方政府に」と題する記事を掲載した。

     

    中国の地方政府は長年、債務に圧迫されてきた。中国の習近平国家主席が推進する「共同富裕」によって、地方政府は今や一段と大きな重圧にさらされる一方、頼りとする歳入源の一部を失いつつある。富の格差是正を目指す習氏の政策は、主に教育・医療・住宅の「三座大山(三つの大きな山)」にかかる費用高騰に対応するものだ。

     

    (1)「中国政府はここ1年、民間教育および不動産セクターの引き締めへ相次ぎ規制措置を導入してきた。同時に、公共教育・医療・住宅の提供拡大を公約に掲げる一方、迫り来る人口動態の問題に対処するため、育児と高齢者介護サービスの供給強化も約束している。高債務を抱える地方政府は、これらのサービスにかかる費用の大部分を負担することが予想される。このため、経済学者はそうした政策推進の実現性を疑問視している」

     


    習氏は、共同富裕で「公共教育・医療・住宅」の提供拡大を公約した。だが、その資金手当のメドは立っていないのだ。万事、地方政府が上手くやれという「言いっ放し」である。中央政府は気楽である。

     

    (2)「中国経済を研究するダニエル・ローゼン氏は「財政的な理念のつじつまが合わない」と言う。「政府の支払い能力に基づけば、政府が約束するもの全てを手に入れることはできない」。中国政府はまだ、提供サービスの多くについて具体的な内容を提示していない。エコノミストらは、その費用は膨大なものになると予想する。例えば、中国全土で教育機会を均等にするための幅広い取り組みの一環として、民間教育企業に対する新規制が設けられ、その穴を埋めるために学校の教師が所定時間以上に働くよう求められている」

     

    公共教育では、塾を廃止したので学校の教師がその穴埋めをさせられる。勤労時間の延長である。

     


    (3)「問題は、共同富裕の費用の多くを財政難にあえぐ地方政府が負担していることだ。最新の公式発表によると、省・市・県レベルの政府が、中国の教育・医療・住宅プロジェクトへの財政支出のそれぞれ80%、70%、60%超を賄い、残りが中央政府から出されている。中国南西部のベトナムとの国境にある紅河県では、医師や教師の給与が数百万ドルも未払いになっている。2021年4月に地元議員らが提出した報告書で明らかになった。中央政府と省政府は450万人の県民を支援するため、さらなるサービスを提供すると約束したが、地元政府は非公式な融資経路に頼り、重い債務負担に拍車が掛かったという。「お上が方針を決め、下層がツケを払う現象がまん延している」と報告書は指摘した」

     

    省・市・県レベルの政府が、教育・医療・住宅の財政支出では、省(80%)、市(70%)、県(60%超)を賄うという。だが、ベトナムとの国境にある紅河県など貧乏地方政府では、医師や教師の給与が未払いになっているという。日本では考えられない事態だ。しかも、中央政府は破綻した地方政府の再建を援助しないという。こういう地域に住む住人は気の毒である。

     

    (4)「共同富裕キャンペーンのはるか以前から、中国の地方政府の財政は不安視されていた。地方政府の当局者は従来、力強い経済成長を実現することで報酬を得てきた。そのため、国内総生産(GDP)目標を達成できるよう、多額の借り入れに依存してインフラプロジェクトに資金を充てるようになった。中国財政局のデータによると、地方政府は2020年末時点で合計4兆ドル(約45兆5590億円)以上の債務を抱えている。これは前年の同時期を20%上回る。エコノミストのみならず中国政府自身も、こうした債務は国家の金融安定性を脅かすとみている。その合計額はひどく過小評価されているとの見方が大勢だ。資金調達手段に多額が隠されたり、別の形でカムフラージュされたりしているとみられている」

     

    地方政府は、2020年末で46兆円以上の債務を抱えている。これは、前年の2割以上の増加になる。この債務は、「融資平台」(地方政府の金融部門)関連を含んでいない計算だ。

     


    (5)「財政部の徐洪才副部長は12月、中央政府は地方の債務を減らす努力を続けると言明。返済不能に陥った地方政府を救済することはないと改めて強調した。中国指導部はその一方で、過熱する不動産セクターの制御策を並行して実施。地方政府が好むもう一つの資金源である土地売却の道が断たれている。財政部のデータを元にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が試算したところでは、2020年には土地売却が地方政府の自己収入の4割以上を占める歳入源だった。入手可能な直近データである11月には、地方政府の土地売却収入は前年同月比で9.9%減少していた。ゴールドマン・サックスのエコノミストは、今年は土地売却収入が15%減少する可能性があり、この資金ギャップを埋めるには782億ドル(約8兆8400億円)以上の地方債発行が必要になると予想している

     

    今年は、土地売却収入が15%以上減少する懸念があるので、約8兆8400億円以上の地方債」発行が必要と見られている。かくして、地方政府の債務が雪だるま式に増えて行くのだ。

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    ロシア軍が、ウクライナ国境周辺で10万人余の軍隊に演習させていることから、米国もウクライナへの増援部隊を派遣すると発表した。にわかに、ウクライナをめぐって軍事的緊迫感が強まっている。米国は、今秋の中間選挙を控えて弱腰を見せられず、強気の姿勢を取らざるを得なくなっている。当初に見せたロシアへの融和的姿勢を一変させた。

     

    新たな問題が持ち上がっている。中国が、台湾侵攻作戦に踏み切るのでないかという危惧である。こうなると、米軍は二正面作戦を強いられることから、日本も相当の決意が求められることだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「ウクライナ情勢、日本は台湾波及を警戒 対中抑止と連動」と題する記事を掲載した。

     

    政府内でウクライナ情勢への日本や米欧諸国の向き合い方が台湾情勢を左右するとの見方が強まってきた。米欧がロシアの軍事侵攻を止められなければ、中国による台湾侵攻の抑止にも影響が出るとの見立てだ。日本にとってウクライナは「対岸の火事」と言い切れない。

     

    (1)「ウクライナ情勢を巡って米欧とロシアの緊張が高まる状況で、中国は東アジアで日米に強気の構えを示す。中国軍は23日、台湾の防空識別圏に39機もの軍用機を一度に進入させた。30機以上の規模は2021年10月以来だった。中国はウクライナ問題への米国や日本の出方を見極める。米国が軍事介入を含めた断固とした対応をとれるのか注視する。日本がロシアの現状変更の動きに強い姿勢を取り続けられるのかもみている。日米が弱腰なら中国は台湾についても日米が強い態度を取れないとみる可能性がある」

     


    中国軍機が、台湾の防空識別圏へ39機も侵入させた。これは、日米首脳オンライン会談への嫌がらせと見られるが、同時にウクライナ情勢の緊迫化に合せた準備行動とも受取られるようになった。ただ、中国が、ロシアと歩調合わせて台湾侵攻に踏み切るかといえば、いくつかの疑問符がつく。

     

    習近平氏が、今秋の党大会での国家主席3選を控えた重要な時期に軍事冒険へ出るか、である。失敗すれば、習氏の3選は消えるどころか、無謀な開戦をしたという「国家反逆罪」が待ち構えている。また、経済的に危機状況に向かう中で、開戦すれば住宅は投げ売りされて、国内経済は大混乱に陥る。西側諸国の経済制裁によって対中輸出が止まる。国内経済混乱へさらなる重圧を加えるに違いない。

     

    (2)「東アジア全域をみても安全保障環境は厳しさを増す。北朝鮮は22年に入ってミサイルを相次ぎ発射した。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席した19日の朝鮮労働党の会議で、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開に向けた準備を始めると示唆した。米国の関心がウクライナに向く間に着々とミサイル能力を向上させ、朝鮮半島の緊張を再び高めようと動く。ウクライナ情勢の副作用とみることもできる」

     

    最悪事態を想定すれば、北朝鮮も不穏な動きを始める事態になると、完全に「第三次世界大戦」になりかねない。悪い事態を想定すれば、限りない局面が想像できるきな臭さを感じる。こうなると、防衛体制を固めることが最善の道であるが、経済制裁も事前に明らかにする必要があろう。

     

    (3)「台湾は、沖縄県の与那国島から110キロほどしか離れていない。中台の軍事衝突が起きれば、日本への影響は甚大だ。日本は米欧各国と協調して中国を抑止する戦略をとる。同盟国の米国に加え英国など欧州各国のインド太平洋地域への関与を促してきた。ウクライナ情勢への対処は一方的な現状変更を試みる相手に日米欧が結束して行動できるかを試す機会だ。足並みが乱れれば台湾問題への対処への不安要素になる」

     

    中国が、ロシアのウクライナ侵攻に合せ台湾侵攻に踏み切れば、日本にとって「火の粉」を浴びる危険性が大いに出てくる。さらに、尖閣諸島への同時侵攻を企てられると、米軍はウクライナ防衛を含めて「三面作戦」という最悪事態に陥る。こういう危機を防ぐためにも、日本は、米軍との緊密な連携が不可欠である。

     

    この最悪事態が起こったとき、韓国軍はどういう対応するだろうか。多分、「洞が峠」を決め込んで動かないであろう。これは、外交的に見た韓国の地位を決定的に引下げるに違いない。

     


    (4)「日本はロシアが14年にクリミア併合を宣言した当時、米欧の制裁路線と一線を画した。米欧が資産凍結や渡航禁止を始めた時点では日本は制裁を発動せず、時間差で徐々に足並みをそろえた。エネルギー分野の技術供与の規制は見送った。当時の安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との関係を重視した。クリミア併合の年に開催されたソチ五輪に出席して首脳会談を開いた。18年に盛り上がりをみせた北方領土交渉は今のところ結実していない」

     

    ロシアと日本の関係が、無傷であるはずがない。一騒動が済んだ後、ロシア経済の悪化が起こっても、日本は米国の手前、支援の手を差し伸べる訳にはいかない。ロシア経済も大混乱は間違いない。

     

    (5)「(クリミア併合後)7年がたち中国が軍事力を蓄え、米国と覇権を争うようになった。日米欧の対ロの結束はそのまま対中の抑止力と連動する。岸信夫防衛相はウクライナ情勢に関し「欧米諸国としっかり連携を取りたい」と強調する。日米はウクライナ情勢が緊迫の度合いを増すなかで抑止の隙をみせないよう連携を強める。海上自衛隊は17~22日、沖縄南方海域で空母2隻や駆逐艦3隻を含む米軍の艦艇10隻と共同訓練した。米軍は21年秋にも2隻の空母を投入し、海自や英空母などを交えて大規模な訓練を実施した。山村浩海上幕僚長は「昨年から比較的大きな船と訓練する機会が多かった。日米同盟の抑止力、対処力の強化につながった」と強調する」

     

    日本は、戦後最大の正念場を迎える。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾侵攻が起これば、いかなる経済制裁を行うかを明確にしておくべきである。それが、抑止効果になるからだ。

     


    (6)「日米は抑止力の強化とともに中ロが結びつきを強めないか注意を払う。中ロ両軍の艦艇10隻は21年10月、日本列島を一周するように津軽海峡と大隅海峡をそろって通過した。翌11月には両軍の爆撃機が日本海から東シナ海、太平洋上空を共同飛行した。仮に中ロがウクライナと台湾で同時に攻勢をかける事態になれば、米軍は二正面の対処を余儀なくされる。防衛省幹部は「あらゆる事態を想定している」と警戒する

     

    下線のように、防衛省幹部は「あらゆる事態を想定している」とするが、日本の軍事力で中ロの動きをけん制するには、限界もあるだろう。経済制裁で、中ロの心臓部を止める強烈な行動計画を明らかにすることが、最善の防衛策になるに違いない。 

     

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    習近平氏は、「中華の夢」を煽っているうちに、中国の地価総額が国土面積で似通っている米国の2.6倍という試算が出てきた。GDPの約29%が不動産関連需要という「異常経済」である。この中国経済が、これからどうなるか。平成バブル崩壊を経験した日本である。大方の見当はつくはずだ。

     

    『日本経済新聞』(1月25日付)は、「坂の上の罠(2)不動産バブル 無理重ね限界 米全土2回買える『地価』」と題する記事を掲載した。

     

    花火大会の終幕のような破裂音が響き、砂煙が巻き上がる。2021年8月下旬、雲南省昆明市で未完工のマンション14棟が爆破解体された。資金難に陥った開発会社が工事を放棄。7年間の野ざらしの末、安全性の問題などから解体が決まった。がれきの山になるまで1分弱。あっけない最後だった。

     


    (1)「日本経済新聞が20年の中国の住宅時価総額を推計したところ、合計95兆6000億ドル(約1京900兆円)におよぶことがわかった。国土面積がほぼ同じ米国の実に2.6倍に達する水準だ。
    米ハーバード大のケネス・ロゴフ教授らの論文をもとに、中国国家統計局の1人あたり住宅面積や人口、価格などから算出した。同氏によると、中国の国内総生産(GDP)に占める不動産部門の割合は29%。10年代に金融危機に陥ったスペインやアイルランドのピーク時の水準を超えた。仮に不動産が2割落ち込めば、中国経済はマイナス成長に陥りかねない」

     

    日本が、平成バブルに酔っていた時、東京の地価で米国を買えるという話が飛び交っていた。誰もそれを不思議に思わないほど、バブルに酔っていたのである。現在の中国が、まさにその状況である。米国の地価の2.6倍とはあり得ない現象である。これぞ、まさにバブルである。下線のように、中国はGDPに占める不動産部門の割合が、2010年代に金融危機に陥ったスペインやアイルランドの水準を上回っている。危険である。

     

    (2)「いびつさは中国恒大1社で35兆円の債務を抱えていることからもうかがえる。都市部は複数住宅を持つ富裕層が多く、見かけ上の持ち家率が90%超とシンガポールなどを抜いて主要国で最高だ。空室率も20%を超え日本や米国を上回る。需給が完全に釣り合っていない。土地の使用権払い下げが始まった90年代以降、不動産は中国の成長産業になってきた。だがGDPで米国のなお7割にとどまる一方、地価は2倍強だ。無理に無理を重ねた膨張はすでに坂の上を越えた可能性が高い」

     

    中国のGDPは米国の7割程度であるが、地価は米国の2.6倍である。どう見ても異常である。この異常な状態が、永続できるはずがない。地価の暴落によって、必ず調整されよう。それが、経済の原則である。

     


    (3)「中国で、建設途中のマンションに住み着く人たちが現れ始めた。購入契約後に開発企業の資金繰りが悪化し、物件の引き渡しが滞る事態が発生。購入者はローンと居住地の家賃負担という二重苦に耐え切れず、未完成のマイホームでの生活を余儀なくされている。ローンと賃貸の二重負担に耐えかね、未完成のマンションに住む人が現れ始めた」

     

    不動産会社が、資金繰り悪化でマンションの建設を途中で放棄するケースも増えている。その被害者は、すでに頭金を払い込んだ人たちである。

     

    (4)「南部の広東省湛江市。工場従業員の女性、林さん(37、仮名)は2017年、夫や両親とためた26万元(約470万円)を頭金に70万元のマンション購入契約を結んだ。毎月2600元のローン返済を続けたが、引き渡し日の19年11月を過ぎても完成しなかった。結局、賃貸とローンの二重負担に耐えかね、20年10月に未完成マンションに住むことを決定。他の約10世帯とともに、コンクリートの骨格だけの「新居」へ越した。ところが20年12月、外出先から戻ると、建物の入り口が封鎖されていた。結局、現在は郊外の賃貸住宅に住み、ローン返済を続ける。林さんは「ゆとりある暮らしを求めて家を買ったのに。今は中華人民共和国成立前のような暗黒の生活を強いられている」と嘆く」

     

    マンション購入で頭金を払い込んだ人たちは、現在住んでいる賃貸と住宅ローンの二重負担を背負うことになる。そこで、未完成マンションへ住むことを強制されたが、その道を塞がれている。踏んだり蹴ったりという事態である。

     

    (5)「中国ではこうした未完成マンションが急増しており、各地方政府がその対応に追われている。共産党系メディアの『人民網』による市民と行政の交流ウェブサイト「リーダー伝言板」には、物件購入後も引き渡しがされない人の書き込みが並ぶ。日本経済新聞が集計したところ、未完成ビルを意味する単語「爛尾楼」を含む書き込みは20年1月から21年12月の間に約5000件もあった。投稿からビル名や地名を抽出すると、爆破解体があった雲南省昆明市のほか、陝西省西安市、河南省南陽市など各地に広がる。未完成のまま放置された物件は概算で河南省に400件超、雲南省で約80件にのぼるとみられる。未完成のまま放置された年数では1~3年と比較的新しい物件が最も多く、中には20年程度におよぶ物件もあった」

     

    『人民網』には、未完成ビルを意味する単語「爛尾楼」を含む書き込みが、20年1月から21年12月の間に約5000件もあるという。放置された年数は、1~3年と比較的新しい物件が最も多く、すでに不動産バブルは崩壊している証拠である。中国経済は、それでも住宅建設がGDP嵩上げの主役であり続ける。狂った経済である。

    サンシュコ
       


    習近平氏にとって逆風が吹き付けている。欧州では、中国政府による新疆ウイグル族への弾圧を「大虐殺」と定義づけているからだ。2月4日の北京冬季五輪は、厳重な新型コロナウイルス感染予防戦術下で開催されるが、各国の首脳出席の情報は消えたまま。スポーツ祭典のムードは全く聞えてこない。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月24日付)は、「欧州『ウイグル』大量虐殺、決議相次ぐ 台湾接近も」と題する記事を掲載した。

     

    欧州各国の議会で、中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だと認定する決議が相次いでいる。フランス国民議会(下院)も20日の決議で中国に厳しい対応をとるよう政府に求めた。

     


    (1)「仏下院は1月20日、賛成多数でウイグル自治区の人権弾圧を非難する決議を採択した。「ウイグル族社会を破壊する意思が多くの文書で明らかになっている。中国政府が計画した組織だった暴力であり、ジェノサイドに該当する」と指摘する。野党中道左派の社会党が提出した決議案だが、マクロン大統領が率いる与党共和国前進の議員も賛成した。元内相で与党下院代表のカスタネール議員も賛成票を投じており、2月の北京冬季五輪まで間もなくというタイミングながらマクロン氏も採択を容認したもようだ」

     

    「ジェノサイド」とは、ナチスのユダヤ民族虐殺をもたらした人類への犯罪である。習近平氏は、この大事件を自ら指揮した証拠が暴露されている。平和の祭典「北京冬季五輪」の趣旨と全く相反する行為だ。米英豪カナダなどが、「外交的ボイコット」するのは当然であろう。日本は、表現を変えたがこの動きに同調した。だが、EU(欧州連合)では、首脳の出席の可否が明らかにされていない。

     


    (2)「マクロン氏は19日、仏東部ストラスブールの欧州議会でウイグル問題について問われ「欧州は強制労働によってできた物品の輸入を禁止しなければならない」と演説した。イスラム教徒が多いウイグル族の人権問題は多くの同教徒が住むフランスで関心が高い。4月の大統領選挙まで3ヵ月を切ったが、与党は決議が世論から支持されると読んでいる。似た決議は2021年以降欧州で相次いでいる。英下院は同年4月、超党派の賛成多数で「少数民族が人道に対する犯罪とジェノサイドに苦しんでいる」などとの決議を認定した。ベルギーとオランダの議会も同年に似た決議を採択した。いずれも政府に解決に向けた行動を促すなどの中身だ」

     

    英仏の議会が、中国政府を「ジェノサイド」として非難したが、ドイツは音無しである。ナチスの犯罪を引き起した国だけに、率先して意思表示すべきだが、中国への輸出依存度の高さで躊躇しているのであろう。

     


    (3)「ウイグルの人権弾圧を裏付ける証拠が相次いで明らかになったことに加え、新型コロナウイルスへの対応、香港の民主化運動弾圧などで中国への不信感が欧州で高まっているのが理由だ。経済的な利益が大きいとみて欧州は中国との関係を深めてきたが、風向きは変わっている。批判は議会レベルが中心だ。決議は拘束力がなく、象徴的な意味合いが強い。英独仏など主要国政府はジェノサイドの認定に慎重で、中国との決定的な関係悪化を避けている。フランスは気候変動問題で世界をけん引したいと考えており、世界2位の経済大国である中国の協力は欠かせない。ドイツは自動車産業などの対中輸出への経済依存度が大きい」

     

    ドイツについては、芳しくない情報が出て来た。次のパラグラフで取り上げる中国とリトアニアの台湾をめぐる紛争で、ドイツは中国側について、リトアニアへ圧力を加えているというのだ。

     


    「(ドイツ首相)ショルツ氏は、年間1500億ドル(約17兆円)に上るドイツの対中輸出を何としても維持する意向を固めているようにみえる。このことは先ごろ、台湾の代表機関を開設したことで中国との貿易戦争に苦しめられているリトアニアに対する姿勢で明らかになった。ドイツ産業界は、民主的な隣国を支援するのではなく、リトアニアに対して中国の要求を受け入れなければリトアニアへのドイツの投資が停止されると警告した」(『ウォールストリートジャーナル』1月24日付寄稿「ドイツは信頼できる米同盟国ではない」筆者のトム・ローガン氏は、米ニュースサイト・週刊誌『ワシントン・エグザミナー』の国家安全保障担当ライターである。

     

    この寄稿によれば、ドイツ新政府はリトアニアへ圧力をかけるという恥ずべき行動に手を貸していることになる。ドイツの誠意を信じている者には失望させられる。

     


    (4)「東欧では、中国の圧力を受ける台湾と接近する動きがある。リトアニアでは21年11月、国内に台湾の事実上の大使館となる代表機関ができた。同国政府は欧州に置く代表機関としては初めて「台北」ではなく「台湾」の表記の採用を認め、中国政府の猛反発を招いた。台湾はリトアニアへの支持を示すため、同国への投資を目的に2億ドル(約230億円)の基金をつくると発表した。スロベニアのヤンシャ首相は17日、同じく台湾代表機関の国内設置を認める検討をしているとメディア取材に明らかにした。中国の反発を「恐ろしく、ばかげている」と批判し、台湾との貿易関係強化に意欲を示した」

     

    フランス外相は、リトアニア問題で中国へ対抗措置をとると明言している。EU加盟国への理不尽な扱いは、EU全体への挑戦であるとしている。ドイツよりも正論に立っているのだ。

     

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