中国の住宅販売に回復への動きは見られない。1~2月は例年、春節(旧正月)の大型連休で住宅展示場は賑わうが、今年は静かなものだったという。中国国家統計局が、18日発表した1〜2月の新築住宅販売面積は、前年同期を24.8%も下回った。2023年まで2年連続で減少した流れが続き、マイナス幅も拡大している。
経営再建中の中国不動産大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)の法的整理を申し立てた債権者が18日、開発物件の譲渡などによって債務返済も可能だと提案し、碧桂園側に対話の継続を求めている。有り余る在庫住宅を債権として引き取るという提案だ。少しでも傷を浅くするという債権者側の戦術であろう。
『日本経済新聞 電子版』(3月18日付)は、「中国新築住宅販売、1~2月24.8%減 地方予算にはや狂い」と題する記事を掲載した。
かつて春節(旧正月)休暇の期間中は住宅展示場を訪れ、物件購入を考える人が多かった。不動産企業によってかき入れ時とされたが、過去の話となった。シンクタンクの中国指数研究院によると、2月中旬の春節休暇の新築取引面積は23年の休暇より3割近く少なかった。
(1)「先行きへの懸念から購入をためらう人が多い。政府は20〜21年に不動産金融への規制を強め、不動産企業の資金繰りが悪化した。「青田売り」物件の工事停止や引き渡しの遅延が相次ぎ、消費者に不安を与えた。これが、今回の不動産バブルの引き金になった。不動産市場の低迷が長引き、地方都市を中心に値下がりが目立つ。「住宅は値上がりする」との神話が崩れ、資産運用として住宅を購入する需要もしぼんだ」
住宅バブル崩壊が、中国経済の財政構造も脆弱化させている。住宅建設の不振が、地方政府の土地売却益の減少となり歳入減に拍車を掛けているからだ。
(2)「中国人民銀行(中央銀行)は2月20日、事実上の政策金利と位置づける最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)のうち住宅ローンの指標金利を下げた。不動産調査の貝殻研究院によると、主要100都市の1軒目のローン金利は平均3.59%と最低を更新したが、需要を刺激する効果は読みにくい。オフィスビルの需要も冷え込む。企業収益の伸び悩みで賃貸などのニーズが減った。新たな供給も増え、空室率が上昇した。不動産コンサルタントの戴徳梁行の調べでは、23年末時点で上海の一級オフィスビルの空室率は21.8%と1年で5.1ポイント高まった。北京や深圳の空室率も上がった。
住宅不況は、商業ビルの空室率を高めている。理由は、不動産バブル崩壊による過剰債務が、ビジネス活動全般を抑制しているからだ。
(3)「マンションなどを建てても売りさばけない不動産企業は、新たな開発を抑制する。1〜2月の不動産開発投資は前年同期より9.0%少なかった。住宅販売と同じように23年まで2年連続で減少した流れが続く。国家統計局の劉愛華報道官は18日の記者会見で「不動産市場は現時点でなお調整・モデルチェンジの段階にある」と語った」
1〜2月の不動産開発投資は前年同期より9.0%少なかった。これは、今後の住宅販売減となって現れる。
(4)「不動産開発の停滞は地方財政を直撃する。中国は土地が国有制で、地方政府が国有地の使用権を不動産会社に売って貴重な財源としてきた。不動産企業が新たな開発を減らせば土地使用権の売買も低迷し、地方政府の歳入が減る。不動産開発投資が減少した22〜23年、使用権の売却収入も落ち込んだ。2年間で売却収入は33%の大幅減となった。売却収入を管理する特別会計の歳入は計2兆8000億元(約58兆円)の予算割れを記録した。不動産不況に対する財政当局の見通しが楽観的だったことは否めない」
22〜23年の2年間で、土地売却収入は33%の大幅減となった。約58兆円の歳入減である。まさに「土地本位制」(学術用語でない)の象徴的事例だ。
(5)「全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が承認した24年の政府予算は、特別会計の歳入を前年比0.1%増と見込んだ。不動産開発投資の底打ちに時間がかかるなか、同歳入の8割を占める売却収入も減少し、予算で見込んだほどの歳入を確保できない恐れがある。歳入が下振れすれば、追加の歳出削減が必要になる。公共工事の進捗に響くと、地方経済の停滞感が強まる」
24年の政府予算は、土地売却益を示す特別会計の歳入を前年比0.1%増と見込んでいるが、完全な計算違いとなろう。1〜2月の不動産開発投資が、前年同期より9.0%少なかったことからもわかるように、マイナスは確実だ。