勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国を感染地とする「新型コロナウイルス」は、世界経済を麻痺させている。中国が、サプライチェーンの核になっているからだ。先進国は、コロナ猛火の中にいる現在、静かに終息後を見据えた動きが始まっている。欧米では、グローバル経済の持つ潜在的な大きなリスクに気付かされたのだ。21世紀当初から始まったグローバル経済体制は、大きな角を回ったことは確実である。

     

    米中デカップリングは、昨年まで米中貿易戦争の底流にあった。だが、新型コロナウイルスの蔓延によって、この流れは確実に大きなものになる様相を呈し始めた。本欄では、これまで一貫してこの流れを不可避と見てきた。中国の専制政治体制がもたらす不透明性は、新型コロナウイルス発症で、そのリスクの大きさを証明しているからだ。今後も「中国発」のコロナ発症はあり得る。一度、起きてしまえば収拾の付かなくなるコストを考えれば、2度目の「パンデミック」回避には、脱中国しか道はない。

     

    日本もその例外でない。製造業の中国依存体制の見直しに着手した。中国から部品など中間製品の輸入杜絶がもたらす損失回避には、生産機能の移転以外に道がない。日本政府は、その政策対応を始めている。

     

    『日本経済新聞』(4月5日付)は、「アビガン備蓄 最大3倍に 緊急経済対策案 生産国内回帰に補助」と題する記事を掲載した。

     

    政府が7日に決定する緊急経済対策の原案が4日わかった。新型コロナウイルスに対する治療効果が期待されている抗インフルエンザ薬「アビガン」の増産を支援し、2020年度中に現在の最大3倍にあたる200万人分(インフルでは600万人分)の備蓄を確保する。中国に集中した部品の生産拠点などを国内に戻す企業に費用の最大3分の2を補助する。

     

    安倍晋三首相は4日、麻生太郎財務相らと緊急経済対策について首相官邸で協議した。事業規模はリーマン・ショック後の568千億円を上回る過去最大とする方針だ。

     


    (1)「副作用も指摘されるアビガンについては、海外と協力しながら臨床研究を拡大するとともに薬の増産を開始する。開発した富士フイルム富山化学は、6月までに治験を終える計画。政府はその結果も踏まえ、生産能力を高めるのを後押しする。インフルなら40錠とされる1人あたりの投与量が、新型コロナでは120錠程度と3倍必要になる。現在の備蓄はインフル患者200万人分だ。20年度内に現状の最大3倍に積み増し、200万人の新型コロナ患者に対応できるようにする」

     

    アビガンについては、副作用として妊婦が服用した場合に胎児への悪影響が懸念されている。これは、アビガンが当初から持つ問題点で最近、新たに発生したことではない。米国防総省が、開発時点から注目し開発費の一部を支出した背景には、米国兵が主として男性であることを考慮したのであろう。ともかく、国際的に注目されていたが、副作用の一点で広く普及する機会を奪われてきた。韓国が、この点を最大限に強調し「臨床にも値しない」と感情的に切り捨てている。

     

    ドイツでは、アビガンの治療効果に注目して数百万セットの輸入を決めたと報じられている。中国では、著効が確認されたので日本の技術で増産体制に入る。また、世界30ヶ国から臨床試験の申入れを受けており、日本政府は無償で提供する意向である。

     

    (2)「日本企業が数多く進出する中国では、感染拡大で工場を稼働できなかったり、日本に部品を送れなかったりしている。政府は特定の国に生産や調達先が集中することによるリスクを減らすため、国内回帰を後押しする。移転費用は大企業にも2分の1を補助する。東南アジアに移すなど日本以外への分散も支援する」

     

    日本政府は、かねてから中国一国集中の危険性を表明してきたが、日中関係を考えればそれを表面切って打ち出せないジレンマもあったはずだ。だが、今回の新型コロナウイルスの感染で、日本企業も大きな影響を受けている。それだけにこの機会を生かして、移転費用の半分を補助するという破格の扱いで「脱中国」を大々的に進める方針を固めた。日本もグローバル戦略見直しに着手した。


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    中国消費不況を象徴するような事件が起こった。中国コーヒーチェーン大手「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」は42日、プレスリリースを発表し、2019年の売上高を改ざんしたなどの不正行為があったと認めたもの。同日、米株式市場では、同社の米国預託証券(ADR)は一時、前日比81%安となった。終値は、前日比75.6%安の6ドル40セントを付けた。今後、上場廃止の可能性があると指摘されている。

     

    米国は、粉飾決算には厳しい態度で臨んでいる。ラッキンコーヒーは、上場廃止の可能性が強い。もう一つ、米国内の「反中国」ムードを強めるであろう。中国企業の成長発展のために、米国の貯蓄が利用されることへ不満を強めているからだ。中国企業は、すでに米国市場から閉出されることを想定し、アリババのように香港市場へ復帰(昨年11月)する企業も出ている。当時、他社も追随すると予測されていた。米中関係の悪化が今後、米市場撤退に拍車をかけるであろう。

     

    今回の粉飾決算は、中国企業のイメージを決定的に引下げることになった。「中国企業は信頼できない」というイメージの定着である。他の中国株へ波及することは不可避であろう。

     

    ラッキンは2018年に北京に1号店を出して以来、2年余りで中国全域に4500店を持つまでに拡大した。中国で圧倒的な存在の米スターバックスコーヒーは19年末時点で約4300店。店舗数では上回った。低価格のほか、オフィスに宅配したり、スマートフォンで注文・決済して店頭では受け取るだけのサービスをいち早く展開しスタバとの違いを強調。米中貿易戦争を背景にした「愛国消費」も追い風に急成長した。以上は、『日本経済新聞』(4月4日付)が報じた。

     


    『大紀元』(4月4日付)は、「『中国のスタバ』ラッキンコーヒーが粉飾決算、損害賠償が1兆円以上か」と題する記事を掲載した。

     

    2日の発表によると、同社の劉剣・最高執行責任者(COO)と複数の社員が、2019年4~12月までの売上高を約22億元(約336億円)過大報告した。一部の経費と費用も水増しされたという。同社の発表を受けて、米株式市場では、瑞幸珈琲の株価が急落し、ストップ安が8回もあった。終値は6ドル40セントを付けた。

     

    (1)「粉飾発覚の発端となったのは米マディ・ウォーターズ・キャピタルの市場調査部門に送られた89ページに上る匿名の報告書だ。131日に公開された同報告書は、ラッキンコーヒーは201979月期、1012月期に売上高をそれぞれ69%と88%粉飾したと指摘した。報告書は、981店舗の来店客数を監視カメラで1万時間記録したほか、25千枚のレシート、SNS微信(WeChat)の会話記録を集め、分析した結果、ラッキンコーヒーは商品販売数、販売価格などを改ざんしたと指摘した。ラッキンコーヒーは23日の声明で、粉飾決算を否定した。現在、米ポメランツ法律事務所など複数の法律事務所は、ラッキンコーヒーの株主を代理して集団訴訟を起こすと公表した」

     

    2019年7~9月期、10〜12月期に売上高をそれぞれ69%と88%粉飾したのはなぜか。中国の個人消費が急速に悪化したのであろう。それにしても、粉飾の幅が大きいことに驚く。ここまで、粉飾決算をやるとは、かつて経済記者をした経験のある私も、初めて聞く話だ。さすがは、「中国的」ということか。

     


    (2)「中国メディア「騰訊財経」によると、国内の専門家は、ラッキンコーヒーは今後、米国内で法的な損害賠償措置に直面するほか、米株市場から上場廃止にされる可能性が高いとの認識を示した。損害賠償規模が約112億ドル(約12144億円)にのぼるとみられる。一部では、巨額な賠償を支払えないため、ラッキンコーヒーは経営破たんになる可能性もあるとの見方が出ている。中国北京に本部を置くラッキンコーヒーは20176月に設立され、20195月に米ナスダック市場に新規株式公開を果たした」

     

    当然、上場廃止となろう。そのまま、上場継続はあり得ない。日本市場であれば、上場廃止の運命だ。損害賠償規模が、約1兆2144億円というのも凄い。こちらは、「米国流」である。粉飾決算せざるを得ないほど追い詰められていたはずだから、手持ち資産はあるはずがない。となれば、賠償に応じる資産はなく、経営破綻になるほかあるまい。


    ムシトリナデシコ
       


    欧州では、中国指導部の高姿勢が反発を呼んでいる。習近平氏は、新型コロナウイルスの責任を認めるような姿勢が、中国共産党の立場を弱めるという思惑である。こういう強硬姿勢が、中国国内の批判封じ込めに有効としても、欧州では「破廉恥」という受取り方が強い。

     

    「大紀元」(4月3日付)は、「中国ウイルスではなく中共ウイルス、イタリア人専門家が呼び掛け」と題する記事を掲載した。

     

    「中国ウイルスではなく中共ウイルスと呼んでほしい」と、イタリアのジャーナリストで中国問題専門紙「寒冬」編集者のマルコ・レスピンティ担当理事は、現地の読者に呼び掛けた。同氏は、中国と中国共産党を区別して非難すべきだと主張している。

     

    (1)「(前記の)レスピンティ氏は、イタリア紙「レテ・リベラーレ」3月26日付けの寄稿文で、全体主義の中国共産党政権により、多くの人々が不法な拘束、拷問、殺害により苦しめられているとした。「政権は、組織的に人権を侵害し、自由を抑圧し、良心を侵害し、宗教を迫害し、少数民族に嫌がらせをしている」と書いた。中国ではカトリック、仏教、道教、法輪功学習者など、あらゆる信仰が迫害されている。レスピンティ氏は、共産党はハイテク技術を使った抑圧システムのなかで、顔認識、AI監視カメラ、DNA分析、移動の禁止や制限、礼拝の禁止を行っているとした」

     

    (2)「科学者たちは今もウイルスの起源について議論を続けているが、レスピンティ氏は、重要なポイントを見落としてはいけないと主張している。それは、中国共産党政権が嘘をつき続け、ウイルスの危険性と蔓延の警告を遅らせ、警報を鳴らす人々を弾圧し、このウイルスの感染性を言い訳に、武漢の2つの研究室で秘密裏に行われていた様々なウイルス研究を隠蔽しようとしていたと述べた」

     

    中国武漢市が、発症地となった「新型コロナウイルス」は、中国共産党の圧政で発表を遅らされ、かつ詳細な情報を発表せず「嘘」を交えている。そういう点で、明らかに事態を悪化させて「パンデミック」という事態を招いた最大責任を負っている。その責任は重く、それを明確にするために、「中共ウイルス」という呼称が提案されている。

     


    (3)「イタリアは、中共ウイルスに最も苦しめられている欧州の国のひとつだ。レスピンティ氏はまた、イタリアは中国共産党政権のプロパガンダが多く展開された国だとしている。中国はイタリアにマスクを寄付したと宣伝しているが、これは医療用人工呼吸器の購入を約束したことへの見返りだったと同氏は述べた」

     

    イタリアは欧州で唯一、中国と関係を深めた国である。その悪影響が、「中国共産党ウイルス」の被害を大きくする背景になっている。中国の「にじり寄り外交」は、秦の始皇帝以来の「合従連衡」によって気付かれないように行なわれている。相手国に土産を与え、「善人」を偽装して接近する。その挙げ句に、相手国を虜にするという「お決まりの戦術」である。この手口は周知だ。なぜか、豪勢な土産に目が眩み、その術中にはまる国が絶えない。不思議である。

     

    (4)「イタリアの薬理学研究所ジュゼッペ・レムッツィ所長は、現地紙「ll Foglio」の取材のなかで、「ウイルスは中国が発生源ではないかもしれない」と発言している。 この言葉について、レスピンティ氏は、中国共産党による宣伝で外国科学機関が操作されていることを示す、典型的な事例だとした。これらの理由から、レスピンティ氏は、新型コロナウイルス(COVID19)は「中国ウイルス」というよりも「中国共産党ウイルス」と呼ぶのがふさわしいと考えている。 「普通の中国人はウイルスの発生とは関係がない。私たちと同じように、ウイルスおよび中国共産党の両方に苦しんでいる」とした」

     

    中国国民は、「中国共産党ウイルス」と「中国共産党」の2つに苦しんでいると指摘している。その善良な中国国民には、温かい理解の手を差し伸べよとしている。

     



    (5)「米紙『ワシントン・ポスト』のコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏は3月19日、中国人民と中国共産党を区別する必要性を強調し、今の感染症をめぐって中国人を責めるのではなく、中国共産党を責めたほうがいいと主張した。 ロギン氏は「西側は中国共産党の偽情報の拡散を手助けしてはならない」とした」

     

    『ワシントン・ポスト』のコラムニストであるロギン氏は、中国国民と中国共産党を分けて考えるべきだという。中国の一般市民は、率直で愛嬌のある人たちである。訪日旅行で、従来の反日意識を大きく変えて「親日派」になってくれている。こういう人たちを敵に回さず、むしろ彼らに同情すべきだという論理が引き出される。

     

    (6)「ロギン氏は記事の中で、流行病に立ち向かう中国の医師、研究者、ジャーナリストを支持し、彼らが警告を発信するために死の危険に晒されていると説明した。また彼らは、中国人は中国共産党の抑圧的な措置の被害者であり、不必要な苦痛を受けているとした。「このウイルスを『共産主義ウイルス』と呼ぼう。隠蔽と殺人を繰り返す『中国共産党ウイルス』だ」とレスピンティ氏は最後に呼びかけた」。

     

    今回の新型コロナウイルスで、中国の医師、研究者、ジャーナリストなどが、良心の呵責に苦しんだ人たちである。こういう善意の人たちは、中国共産党の被害者である。中国共産党と善良な市民を一括りにして批判するのは間違っていると指摘する。こういう考え方は今後、しだいに力を増すであろう。


    ムシトリナデシコ
       


    中国は古来、困っている相手にどっさりと贈り物をする習慣がある。その場合、相手の立場を考えて密かに行なうのでなく、これ見よがしに行なうのだ。こういう習慣は、世界でも中国人とエスキモー人だけだと言われている。それ以外の民族は、目立たない形で行なう。

     

    今回の新型コロナウイルスで欧州は、医療崩壊を起こすほどの被害が出ている。これを見た中国が、派手な「マスク外交」で中国の存在を印象づけようとしている。こういう批判があちこちから出てきた。もともと火元は、中国である。本来なら、「類焼見舞い」という意味で静かに行なうべきだというのである。

     

    『大紀元』(4月2日付)は、「欧州で顰蹙買う中国のマスク外交、専門家『宣伝活動の一環』」と題する記事を掲載した。

     

    危機的な状況の中でイメージを高めようとする中国共産党政権は、欧州イタリアから南米ペルーまで、各国に医療専門家を派遣し、マスクや人工呼吸器などの必要な物資を送っている。しかし、医療品の品質不良が相次ぎ報告され、ひんしゅくを買っている。

     

    (1)「中国からの医療品の支援や販売を多くの国は当初、歓迎していた。しかし、オランダ、スペイン、トルコ、スロバキアなどが、中国から輸入した検査機器やマスクなどには欠陥があったと報告した。「最初は肯定的に見られていたが、その後、世論は批判的になった」。米国の外交政策の専門家でワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所の上級研究員であるピーター・ラフ氏は、大紀元英字版の電子メールで語った」

     

    冒頭に指摘したように、中国の民族性から相手の立場を考えて、スマートに振る舞えないのだ。他人を招待するとき、食べきれないほどの料理を出して食べ残すと満足する民族である。合理性を考える欧州人とは肌合いが異なっている。中国人が「支援した」と自慢して歩く。欧州人は、それを我慢できないのだ。

     


    (2)「オランダは328日、中国から輸入した130万枚のマスクのうち、60万枚を欠陥があるとして回収したと発表した。スペインとトルコ保健当局は、中国の会社から購入した検査キットの精度が30%以下だとして使用しないことにした。スロバキアのメディアもまた、同国が1600万ユーロで中国企業から購入した抗体検査機器は基準を満たしていないとして、「無駄」になったと伝えている」

     

    粗製濫造の中国が、品質管理でしっかりしている欧州へ輸出したマスクや、検査キットなどが品質不良で返品されている。あり得ないことではない。品質管理という概念が希薄であるからだ。日本が当初、中国で技術指導したとき「5S」(整理・整頓・清潔・清掃・躾)を教え込むことで難儀したという。従来、そういう習慣のない民族であるからだ。この「5S」を守ることによって、歩留まりの高い製品ができるのである。中国は、未だに「5S」が不完全であるのだろう。

     

    (3)「共産党政権による「マスク外交」は、パンデミックの筋書きを変えるためのキャンペーンの一環だ。最終的な目的は、パンデミックの発生をめぐって情報を隠ぺいしてきた中国政府への非難をそらすことにある。「中国の人道的な支援は、ウイルス拡散に対する中国の対応の不手際を隠ぺいし、経済も医療もギリギリにまで追い込まれ必死になっている欧州諸国を味方につけることだ」とラフ氏は述べた。人道的支援と並行して、中共ウイルスは中国が発生源ではなく「米軍関係者が持ち込んだ説」という大規模な偽情報キャンペーンを展開している」

     

    下線のように、いかにも中国人らしいやり方である。どさんと、プレゼントを贈って味方につけようという狙いであろう。欧州人は、見識が高いから中国のそういう魂胆を見抜いているのだ。発展途上国ならば、本質的に品物が不足しがちであるから喜ぶとしても、欧州では通じない手である。

     


    (4)「米ワシントンに拠点を置くシンクタンク、ヘリテージ財団の公共外交担当上級研究員、ヘル・デール氏は、大紀元の取材に対して「彼ら(中国共産党政権)は批判をそらす傾向がある」と述べた。また、チェコに拠点を置く中国に焦点を当てたシンクタンク、シノプシス所属の分析官、プロチャズコバ氏は大紀元に対して、「中国を救世主にする大規模な宣伝活動」の存在を指摘した。「中国が私たちを『救っている』と自慢しているが、各国の医療材料の不足は当初、中国を支援したことによるものだ」。

     

    欧州は最初、中国を支援したので自国へ残すべき物まで贈ってしまった。だから、現在の医療品不足を招いた、と説明している。中国は、そういうことにお構いなく、自慢して歩いているのだ。

     

    (5)「欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策代表は323日発表の声明で、中国共産党の対外宣伝戦略について警告を発している。同氏は現在、(パンデミックの)筋書きをめぐる戦いの最中にあり、中国からの情報発信で、EU自体の信用を落とそうとする試みや、ヨーロッパ人全てがウイルス保持者であるかのように汚名を着せる事例が複数あるとした。「中傷者からヨーロッパを守る」と述べた」

     

    下線のようにEUが、中国の言動に警告している。誇り高い欧州人が、中国から侮辱的扱いを受けることに反発している。これは、精神的な問題だけに尾を引くだろう。パンデミックが、歴史を変えるという私の視点から言えば、中国は先進国の「尾」を踏んだようだ。愚かな行為であると思う。そのリアクションが始まると見る。


    あじさいのたまご
       

    社会主義経済に失業者はいない。こう言ったのは毛沢東である。その中国で、未曾有の就職難が起こっている。米中貿易戦争に加え、新型コロナウイルス発症で、中国経済は今年ゼロ成長になる事態を迎える。世界銀行による厳しい景気予測の結果だ。

     

    中国は、未成熟経済である。高度の産業構造へ成長していない段階で、世界経済の大転換が起ころうとしている。それは、「パンデミック」という言葉に代表される、文明の転換である。中国は、自ら蒔いた種で、自らの経済に大きな傷を受けるという皮肉な役回りになった。「正・反・合」という弁証法の結論を自ら立証する事態である。

     

    中国は、市場経済原則に大きな網をかけている結果、あらゆるところに「過剰」の二文字がつきまとっている。その過剰を整理しないままに、これから本格的な大不況に突入する。不動産バルルの崩壊は、もはや止めようもなくなっている。これによる不良債権が山積みとなって、中国の信用機構を直撃する。この危機を乗り越えられるのか。疑問なのだ。この影響は、失業率上昇となって現れる

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月1日付)は、「中国で今年の大卒870万人、 コロナ禍で就職難に拍車」と題する記事を掲載した。

     

    中国で職探しをする大卒者が増える中、困難な状況に一層拍車をかけているのが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)だ。安定した雇用が経済や社会の秩序維持に欠かせないと考える共産党当局者にとって圧力がなお強まっている。

     

    (1)「今年卒業証書を受け取るとみられる900万人近い学生が――卒業生の数としては約10年ぶりの多さだ――、近年まれに見る厳しい雇用市場に参入する見通しとなっている。パンデミックの前でさえ、景気鈍化のためにホワイトカラー労働者の就職口はすでに減少していた。新型ウイルスの影響や、それを抑えるために広範囲の都市封鎖や生産停止が実施された結果、中国都市部の失業率は2月に6.2%と過去最高を記録。これまで景気の波はあってもおおむね維持されてきた公式発表で5%前後の失業率を上回った。ING銀行 の香港在勤チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は、年内に失業率が10%まで上昇する可能性もあるが、地方政府が恐らくこれ以上悪化しないように景気刺激策を講じて介入するだろうと述べた」

     

    中国の失業率調査は、「国家秘密」扱いである。公表されている失業率は、ウソの統計である。政府は、実際の失業率統計を別途、隠している。失業率上昇が、社会不安を起こす危険性が高いからだ。李首相が、かつて実際の失業率を口にして話題になったほどである。「年内に失業率が10%まで上昇する」というのは、実際の失業率である。

     

    (2)「数十万人の新大卒生が失業者集団に加わろうとする一方で、中国当局者は受け皿を見つけるのに躍起だ。軍の入隊枠を拡大し、卒業間近の学生には修士課程への進学を促すなどして雇用市場への参入を遅らせようと画策する。その懸念は政府の最高幹部にも広がっている。習近平国家主席に続くナンバー2李克強首相は今月、景気回復担当者は従来重視してきたGDP成長目標よりも雇用を優先すべきだと語った。「今年の雇用が安定すれば、経済成長率が若干高かろうと低かろうと大きな問題ではない」。李首相はこう述べた」

     

    李首相が、「GDP成長目標よりも雇用を優先すべきだ」と語ったのは、失業率が社会不安を醸成するからだ。GDP成長率目標よりも失業率重視する。これは切実な問題になっている。

     

    (3)「中国指導部は、学生主導で起きた1989年の天安門事件の背景に高いインフレ率と雇用見通しの悪化があったとみており、それ以来、若者の失業率は政治不安の潜在的な引き金になるとして監視を続けている。中国の政策を研究するカリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シー准教授(政治経済学)はこう話す。北京大学教育経済研究所が2年ごとに行う調査によると、昨年は大卒者の20%近くが就職活動でうまくいかなかった。今夏卒業予定の870万人は2019年より5%多く、今年米国で見込まれる卒業生の2倍以上だ」

     

    昨年の大卒者の20%は、就職できなかったようである。今年はさらに870万人の新卒が加わる。空前の就職難時代が来る。日本のさる著名な経済評論家で元大学教授が将来、日本人が中国へ出稼ぎに行くと書いていたが、そのようなことは起こり得ない。資本主義が、社会主義の中国より劣っているという証拠はどこにもない。実態は逆である。その証拠は、これからの中国自身が見せてくれるはずだ。

     

    (4)「北京大学・光華管理学院と中国最大の求人サイトを運営する智聯招聘が325日に公表した報告書によると、中国の新規求人件数は昨年1月と2月に比べ30%以上減少したという。就職できず不満を募らせる大卒の一群が形成されるのを避けるため、教育省は中国の大学に対し、修士課程の枠を計18万9000人分増やすよう命じた。さらに同省は今月、学生らに軍への入隊を勧めた。入隊すれば授業料の減免を受ける資格が与えられるほか、国連のような国際機関で働ける可能性があるという」

     

    今年の大卒就職難を緩和させるため、大学院の修士課程の定員を18万9000人増やすという。中国は、大学の定員を就職難のバッファーに使っている。学部の定員を増やしたり、今度は大学院の修士課程の増員である。人民解放軍への入隊も薦めている。この方法は数年前も使われた。将来、公務員へ優先的に採用するという特典を与えていた。今度は、授業料の免除という。よほど、人民解放軍への人気が低いのであろう。

     

    (5)「新型コロナウイルスで最も激しい打撃を受けた湖北省は先週末、公務員の募集を20%増やし、最近大学を卒業した5万人を他の公職に追加採用する考えを示した。ただ、修士課程の枠を増やし、他の短期的な対策を講じても、製造業の職が低賃金諸国に移転するなど、中国経済を弱体化させる構造的な問題への対処にはなっていない。 交通銀行の上海在勤エコノミストはこう指摘する。「これらの大卒生は23年以内に労働市場に再び参入する。だからわれわれは問題を根本的に解決する必要がある」と同氏は言う」

     

    雇用の主体は、どこの国でも製造業である。この製造業が左前になると、雇用不安が起こる。現在の韓国が、この状態である。肝心の製造業が、「米中デカップリング」という大きな壁に突き当たろうとしている。今回の新型コロナウイルスで、中国がサプライチェーンの核であることのリスクを再認識させた。製造業の職が、低賃金諸国に移転するなど、中国経済を弱体化させる構造的問題は未解決である。

     

    こういう流れは、パンデミックのもたらす歴史的な大転換を予知させる動きである。今は、小さな流れでも、時間が経てば大きなうねりに変わる。歴史の転換点とは、こういうものなのだろう。


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