勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国社会の投機好きは、世界でも例を見ないレベルだ。すべてを賭の対象にする。昔は、コオロギも賭の対象になっていた。最近では、キャベツがそうだった。賭け麻雀は中国が発祥。余談だが、中国麻雀と日本麻雀は、似て非なるものという。

     

    今年の1月になってようやく、住宅販売が落込んできたのは遅すぎた。中国経済の先行きが暗い展望の中で、せっせと住宅投機にうつつを抜かしていた人が多かったのだ。これは、勉強不足というほかない。中国の経済情勢を的確に把握しようとしない。そういう人が、余りにも多いという意味である。それだけに、住宅バブル崩壊による傷は、想像を絶するものがある。

     

    『日本経済新聞 電子版』(2月15日付)は、「中国、住宅市場に変調、大手4社の1月販売額3割減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国のマンションを中心とした住宅販売が変調をきたしている。万科企業など住宅大手4社の2019年1月の販売額は前年同月に比べ3割超も減少した。上海や深圳をはじめ主要都市の価格高騰が収まり、投資資金の流入にブレーキがかかっている。需要の頭打ちが長引けば、財政を土地売却に依存する地方政府の資金難や建設・不動産などの雇用悪化を通じて景気への悪影響は避けられない」

     

    私の持論であるが、地方政府に土地売却益(土地利用権売却益)を財源として認めている国家がほかにあるだろうか。GDP2位の中国で、地方財政制度にこのような不確定な財源を与えたことが、不動産バブルを引き起こさせる潜在的な要因になっていた。

     

    この矛盾は、解決されるどころか、むしろ煽り立てられてきた。国家が唯一の土地所有者であるから、地価はいかようにも操作できるのだ。これまでの内需成長は、「土地がらみ」であった。この「土地依存経済」が、静かに幕を引くであろう。資本市場の開放が進めば、不動産投機で利益を上げる危険性を認識するであろう。

     


    (2)「販売の変調を受け、大手の一角である碧桂園は18年秋以降、上海や江蘇省、江西省などの一部物件で23割の値引きに踏み切った。「碧桂園は(購入者を)欺いた。解約を求める」。上海のマンション「浦東南郡」の販売センターには、最も目立つ入り口のアーチ部分にこんな抗議文が貼られていた。分譲価格が引き下げられると、転売狙いの購入者は損失を被る可能性が高まるため、購入者が販売担当者に詰め寄る場面もあった」

     

    昨年12月頃は、当局が住宅価格の引き下げを監視していた。値引き競争が、住宅価格の本格的な値下がりに拍車を掛けることを警戒していたもの。当局の価格介入が、不動産開発会社の利益に影響を与えるという苦情が持ち込まれたのだろう。在庫処分の値下げは、企業の資金繰りを助ける意味で不可欠である。ビジネスの本質を知らない官僚が、干渉してよいことは一つもない。「餅は餅屋」である。

     

    2~3割の値引きが始って、最初の抗議者は転売狙いでマンションを買った投機筋である。この投機屋が、住宅価格を不必要にまで高く押上げた「元凶」である。これが、庶民に過剰なローン負担押しつけ、個人消費に圧力を掛けた張本人である。中国経済を破綻に追い込んだ集団とも言える。しかも、中国は不動産保有税がない国である。幾度か、不動産保有税が法案化される噂が出ながら、すべて消されてしまった。共産党員が、住宅投機の当事者であったので、党内の「身内同士」の取引で法案化を阻止してきたのだ。国民不在の政治である。

     

    (3)「マンションの最終的な買い手である個人が見送り姿勢を強め、開発業者も土地の仕入れに慎重になりつつある。このしわ寄せは地方政府に及ぶ。地方政府は18年、土地売却で6兆5000億元を超す収入を得た。地方政府は税収が伸び悩み、政府本体も傘下企業も多額の負債を抱える。土地売却は景気下支えに必要なインフラ整備などの財源になってきたのは間違いない」

     

    土地売却益が、インフラ投資の財源になる。こういう不健全な財政制度が、改革開放の40年間も続いてきた。この不規則な財源調達が、必然的に不動産バブルを生んできた。だが、不動産バブルが崩壊すれば、今後はどうやってインフラ投資を行なうのか。中国では、インフラ投資がはたと止まる宿命を負っている。考えれば考えるほど、不可思議な手品を使ってきたものだ。もはや、この手を仕えなくなった。その影響は甚大であろう。

     


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    中国は、二枚看板の国である。他国を威嚇するときは「経済大国」を前面に出す。国際機関から利益を得るときは、「発展途上国」を使って同情を求める国である。これほど、カメレオンのような国はない。実利に徹しているのだ。「韓信の股くぐり」という歴史的な故事が示すように、将来の利益のためにはメンツを捨てる国である。

     

    世界銀行は、経済発展の遅れた国に低利の資金を供与する金融機関である。中国は、今なおこの世銀から低利資金の融資を受けている。この中国が、なんとAIIB(アジアインフラ投資銀行)の創立リーダーになり、筆頭出資国になっている。この落差の大きさに誰でも驚かされるのだ。まさに、世銀から融資を受ける時は「発展途上国」になりすましている。AIIB設立の時は、GDP2位の経済大国の顔になっている。カメレオン中国である。

     

    中国は、世銀から資金を借入れてはいけない国である。中国が借り出さなければ、もっと切実な経済事情を抱えている国が融資を受けられたはずだ。中国は、その機会を奪った意味で強い批判を浴びなければならない。

     

    中国は、世界銀行から借りた資金をどこへ持っていったか。それは、「一帯一路」に再融資資金として回っているはずだ。かつて、日本が中国へODA(政府開発援助)で融資していた。その一方で中国は、アフリカで日本の融資した資金を「転貸」していた。このように、平然と他国の善意を踏みにじり、利用するという厚かましさがある。「発展途上国」と「経済大国」を使い分けているのだ。

     

    『ロイター』(2月15日付)は、「米国がWTO改革提案、特別待遇国削減要求、中印反発の公算」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国は15日、世界貿易機関(WTO)を改革し、「特別かつ異なる待遇」を受けられる国の数を減らすよう提案した。中国やインドなどの反発を招く公算が大きい。WTOのウェブサイトに掲載された。特別かつ異なる待遇は途上国に対し、合意方針や貿易機会拡大策の実施期間を長くしたり、先進国と比べ2倍の農業補助金を認めたりするもの」

     

    途上国の範囲を絞って、現状よりも手厚く待遇を与える配慮をする。そうすれば、中国の悪用を防ぐ意味で、他国の賛成が得られるであろう。中国は、「一帯一路」で他国を債務漬にして暴利を貪るなど「悪行」を働き信頼を失っている。こういう機会を利用して、純然たる発展途上国と、「エセ」発展途上国を分離する工夫が求められる。

     

    (2)「米国の改革案は、世界銀行が「高所得」と分類する国や経済協力開発機構(OECD)加盟国、20カ国・地域(G20)のほか、世界貿易の0.5%以上を占める国などに対し、特別待遇を認めないとした。米国は、WTO加盟国が自らを「途上国」とし、さまざまな恩恵が受けられる状態にあると批判してきた」

     

    以下の分類国は、発展途上国の分類から外すべき、としている。

    .経済協力開発機構(OECD)加盟国、

    .20カ国・地域(G20)、

    .世界貿易の0.5%以上を占める国

     

    記事では、中国と印度が反発するだろう、根拠もなく指摘している。そういう配慮はすべきでない。中国やインドのGDP規模になっても、1人当たり名目GDPが1万ドル以下という物差しで、発展途上国といって保護を与える必要はない。あとは、自国の経済政策をうまくやり経済発展すべきである。一律の尺度で、保護するのは正しい選択でないのだ。ましてや、中国にはそれが当てはまる。


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    中国経済は、二進も三進もいかない事態を迎えている。国内景気の「体温計」である生産者物価指数は、1月に前年比0.1%の伸びにまで低下してきた。昨年1月が同4.3%と高い伸びであった反動現象もあるが、昨年12月の同0.9%の伸びという低下傾向から判断して、2月以降のマイナスは不可避である。中国経済は「急速冷凍」状況に入っている。

     

    中国の民族派は、習近平氏を含めて米中貿易戦争の緒戦で強気の姿勢を見せていた。「米国が殴ってくれば、中国も殴り返す」と意気軒昂だった。あれから、1年も経たないうちに、内需はガタガタである。2012~16年に見られたデフレ状況へ再び陥るとの観測が浮上している。これまで、不動産バブルの熱気で中国経済の脆弱さを覆い隠していたに過ぎなかった。

     

    生産者物価の低迷は、企業の減収に直接影響する。売上が減れば、企業利益は落込む。膨大な債務をどうやって返済するのか。もはや繰り言になるが、計画経済という無謀な成長率目標達成の弊害が、中国経済を蝕んだ。民主主義国であれば、政権交代で経済立て直しに着手するが、独裁政権ではそれも不可能である。もがき苦しんで、時間が解決するのを待つしかないのだ。

     

    『ロイター』(2月12日付)は、「中国企業の相互債務保証にほころびデフォルト連鎖も」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国で民間企業が債務保証し合うことで資金調達してきた仕組みがほころび始めている。これによって金融システムに存在するさまざまなリスクが浮かび上がっており、減速基調が強まる経済に新たな悪影響を及ぼしかねない事態と言える。既に警報が鳴り響いているのは、石油精製業と重工業の一大拠点である山東省東営市だ。ロイターが裁判所の記録を確認したところでは、少なくとも民間28社が債務再編を通じて経営破綻を回避しようとしており、そうなった主な原因は保証していた他の企業の債務が焦げ付いたことだった。28社の中には、2018年に中国の優良経営企業ベスト500に選ばれた、山東大海集団や山東金茂紡織化工集団などが含まれている」

     

    山東省東営市は、石油精製業と重工業のセンターで繁栄してきた。この市に本拠を置く28社が経営破綻に直面している。この企業の中には、2018年に中国の優良経営企業ベスト500に選ばれたものも含まれている。その優良企業が突然、経営破綻の危機の直面したのは、債務保証し合うことで資金調達してきた仕組みがほころび始めた結果である。

     

    子どもの運動会に出てくるムカデ競走は、互いに足を縛って歩調を合わせて走る競技である。一人でも足が乱れると全員が転ぶゲームである。債務保証し合うことで資金調達するのは、このムカデ競走と同じシステムだ。一社が、デフォルトになれば、相互債務保証の企業はすべてデフォルトに陥る。金融制度の未成熟国家で起る現象である。中国の経済体質はこの程度なのだ。習近平氏にこういう認識がなく、米国へ覇権競争を挑むのは「お笑い種」を提供しているに等しいことである。

     

    (2)「中国の民間企業が銀行から融資を受けようとする場合、特にそれが従来型の資本集約的な産業であれば、相当な担保を差し入れるか、別の企業に保証してもらう必要が出てくる。保証を請け負う企業自体も、また違う企業から債務保証をしてもらっている公算がかなり大きい。東営市における民間セクターの混乱は、まさにこの相互債務保証が本来持つ危険性をはっきり示している。いざ1件が不良債権化すると、瞬く間にデフォルト(債務不履行)が連鎖し、地域の金融システムが損なわれて新規融資の動きに支障が生じる恐れがある。

    心配なのは、民間企業の相互債務保証は中国全土で普及している以上、東営市のケースが氷山の一角にすぎないのではないかという点だ」

     

    このパラグラフは、中国の未熟な金融制度の弱点が余すところなく現れている。一度、この相互債務保証の破綻が起れば、中国全土を舐め尽くす危険性が高い。中国が、貿易戦争を続けられるゆとりは全くない。「即時停戦」して和平交渉すべき段階だ。

     

     


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    米中閣僚会議による通商協議は、北京で14~15日にわたり開催された。合意には達しなかったので、引き続き来週、舞台をワシントンに移して開かれる。完全な決裂であれば、継続協議にはならないので、合意への期待はまだ残っている。

     

    中国の方が、米国よりも合意への期待度は高い。ここで合意できなければ、中国経済は「マジノ線」を突破され、収拾のつかない混乱が想定されるからだ。企業同士が、債務の保証をし合うという最も危険な状態に落込んでいる。1月までなんとか持ちこたえてきた企業が、債務の相互保証による相手企業のつまずきで、倒産の淵に立たされるケースが増加しているのだ。こうした連鎖倒産を防ぐ上でも、中国は貿易戦争に歯止めを掛けなければならない切羽詰まった事情に追い込まれている。

     

    『ロイター』(2月16日付)は、「米中通商協議、来週も継続、トランプ氏は合意期限延長を示唆」と題する記事を掲載した。

     

    米中政府は15日、北京で行っていた閣僚級貿易協議を終え、来週ワシントンで通商協議を再開する方針を明らかにした。米中双方とも今週の協議で進展があったと主張しているが、関係筋の間からは争点を巡りなお溝は埋まっていないとの声が聞かれた。

     

    (1)「トランプ米大統領はホワイトハウスで開いた記者会見で、3月1日の合意期限を延長する可能性に言及。期限を60日延長する考えがあるかとの質問に、合意に近いか、合意が正しい方に向かいつつあると判断すれば、現在の関税を維持しつつ、「期限を延長する可能性がある」と述べた。また、米国が中国との「偽りのない通商協定」締結にこれまでになく近づいているとし、「ディール(取引)が成立するなら、敬意を持って関税措置を引き揚げたい」と述べた。ただ、協議は「非常に複雑」とも語った。このほか、通商協議の最終段階で民主党のペロシ下院議長やシューマー上院院内総務の意見も聞く考えも示した」

     

    トランプ氏が、「通商協議の最終段階で、民主党のペロシ下院議長やシューマー上院院内総務の意見も聞く」と発言している点に注目していただきたい。トランプ氏の頭では、「協議が合意の範囲内」に来ているという感じに見える。このメドが最終的に立てば、米中首脳の会談になって、最終合意となるのだろう。

     

     

    (2)「ホワイトハウスのサンダース報道官は声明で、「米中両国は3月1日の期限に向け、すべての問題について引き続き取り組んでいく」とした上で、「今週行われた詳細かつ踏み込んだ討議では進展が見られたが、なお多くの課題が残されている」と語った。中国国営の新華社も、両国が今週の協議で複数の主要分野で原則的合意に達したと報じた。さらに、通商と経済を巡る問題に関する覚書(MOU)について踏み込んだ協議を行ったとしたが、詳細は明らかにしていない。サンダース報道官によると、両国は今週の協議で技術移転、知的財産権、農業やサービス部門、非関税障壁、通貨などについて討議したほか、巨額の米貿易赤字解消に向けて中国が米国から製品・サービスを購入する可能性についても協議した」

     

    米国報道官は、慎重な姿勢を見せている。中国国営の新華社は、両国が今週の協議で複数の主要分野で原則的合意に達したと報じた。貿易不均衡問題は解決しやすい。新華社は、これを指しているのだろう。残っている問題は、中国の構造問題である。中国の技術移転、知的財産権、農業やサービス部門、非関税障壁、通貨など、すべて中国マターである。米国の要求にどこまで応じるか。それが、通商協議解決のカギを握っている。

     

    (3)「両国とも関税合戦解消に向けた具体策は示しておらず、複数の関係筋は、交渉の進展を妨げている問題で、米中首脳会談の実施に道を開くような大幅な進展があった形跡はみられないと指摘する。ある関係筋は、「重要な問題を巡って停滞している」とし「構造問題や施行の問題を巡って大きな隔たりが残っている。壁にぶち当たっているとは言わないが、夢のような状態でもない」と述べた」

     

    米中双方が具体案を示さず、相手の腹の内を読みあっている段階である。これは、解決を意識した最後のつばぜり合いという雰囲気だ。この状況を表現するのは、いかようにも言い表せるもの。中国は明るく表現し、米国は100%満足の回答でないから、競(せ)りでよく聞く、「あと一声」の状況のように思える。とすれば、米中ともに合意を意識しつつ、それを先に言い出さないという、「最後の駆け引き場面」と見える。さて、どうか。


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    習近平氏は、国家主席就任に当たり、経済政策の根幹を勝手に変える暴挙を行なった。従来の「民進国退」という民営企業中心の経済システムを、「国進民退」という国有企業優遇策に変えたのだ。この裏には、共産党元老の直系である「紅二代」の利権を守る陰謀が働いていた。

     

    経済政策に、陰謀は不適きである。習氏は自らの権力を守るべく、こうした公私混同を行なった。その結果が、現在の経済的な混乱である。自業自得とはいえ、多くの中国国民が巻き添えを食っている。独裁政権は、国民の幸せよりも国家主席の利益が優先する、政治システムである。

     

    『ロイター』(2月15日付)は、「中国経済の大幅減速、犯人は国有企業の逆襲か」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「ブームは終わった。中国経済はハードランディングにこそ見舞われていないものの、大幅に減速しており、世界中の資本市場を揺るがしている。しかし、こうした状況の回避は可能だった。グローバル金融危機を受けた中国の景気減速は、政策の不手際が原因だった──。ピーターソン国際戦略研究所のニコラス・ラディー氏は新刊『ステート・ストライクス・バック(国有企業の逆襲):中国の経済改革は終わったのか』の中でそう分析している」

     

    「ハードランディングにこそ見舞われていないものの」としているが、バブル崩壊は始ったばかりである。ハードランディング(金融システム崩壊)という全面的な経済崩壊を避けられるかどうか。それは、これからの動きである。まだ、結論を出す段階ではない。

     

    (2)「ラディー氏によると、企業向け融資全体に占める国有企業の比率は2011年に28%だったが16年には80%余りに上昇。一方で民間企業向けの比率は半分強からわずか11%に低下した。要するに資源の配分ミスが起きたのだ。国有企業のROA(総資産利益率)は民間企業に劣っており、そのギャップは金融危機以降に広がった。ラディー氏の試算によると、国有企業の経営効率が民間企業並みであれば、中国の2007~15年の平均年間成長率は最大で2%ポイント押し上げられていたはずだという」

     

    企業向け融資全体に占める国有企業の比率は、2011年に28%だった。16年には80%余りに上昇。一方で民間企業向けの比率は半分強からわずか11%に低下した。この事実は、国有企業がゾンビ化して、「追貸し」状態に追い込まれている結果と思われる。資金が、利益を生まない「追貸し」につぎ込まれた以上、中国経済全体が活力を奪われたのは不可避であった。習氏が独断で、強引にこういう無駄を生む経済システムへ持ち込んだ。その罪はきわめて重い。

     

    国有企業の経営効率が民間企業並みであれば、中国の2007~15年の平均年間成長率は最大で2%ポイント押し上げられていた指摘している。これは、完全な市場経済であったという前提に基づくのであろう。計画経済の非効率性を証明する話だ。

     

    (3)「発展途上国では通常、先進国並みを目指す急成長がいずれ勢いを失うものだが、中国はまだその段階に近づいていない、というのだ。日本や韓国、台湾、シンガポールはいずれも、1人当たりGDPで見て今の中国と同じ発展段階を踏み、さらに成長を続けた。ラディー氏によると、仮に中国政府が改革を再開すればさらに20年間にわたり8%以上の成長を続けることが可能だという」

     

    このパラグラフの指摘には、首肯できない点が含まれている。生産年齢人口比率という要因が脱落しているからだ。中国は「一人っ子政策」を36年間も行い、2010年までは「人口ボーナス期」で経済成長率を押上げた。だが、2011年以降は、逆に「人口オーナス期」に移行しており、潜在成長率は急低下している。また、これまで投資主導型経済であったこと。これを消費主導型経済に切り替えるには、必ずその間に成長率の断層が発生する。この重要な点も見落としている。

     

    合計特殊出生率は、すでに1を割っているはずだ。中国政府が、関連データの発表を止めたこと事態に深刻さが窺える。中国のウィークポイントは、人口動態に現れている。この点を無視した議論は、一片の価値もない。改革を実行すれば、「20年間にわたり8%以上の成長を続ける」ことなど空想物語である。前記の合計特殊出生率が1を割った事態は、人類が初めて経験することだ。中国は、その悪いモデルになる。20年間に8%成長でなく、20年後にゼロ成長の可能性を議論した方がはるかに現実的である。


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