勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

    a0005_000022_m
       

    今年1~3月期のGDP成長率は、前年同期比では18.3%増と派手な数字になったが見せかけのものだ。厳密には、「前期比」の成長率を重視しなければダメである。これが、プロの見方である。

     

    前期比で見ると、今年1~3月期のGDP増加率は0.6%増。昨年10~12月期が同3.2%増であったから大幅減速である。過去10年で最低値であった。

     

    中国国家統計局では、その主因として年初になってから再び確認されたコロナ新規感染や、それに伴う春節(旧正月)連休中の移動制限のほかに、追加の財政出動が乏しかった点を挙げていた。この1~3月期の前期比伸び率が大幅鈍化したことを嫌気して、16日の中国株式市場ではCSI300指数が一時0.6%下落する場面もあったほど。市場には、悪材料だったのである。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月17日付)は、「中国の隠れた苦境、成長回復の裏で増える失業者」と題する記事を掲載した。

     

    中国の2021年1~3月期(第1四半期)のGDPは、前年同期比18.3%の伸びを示した。だが、それより示唆に富むのは、前期比0.6%増という数値かもしれない。これは過去の実績に照らしても低調なペースで、新型コロナウイルスからの回復が始まって1年経つ中、成長の勢いが減速していることがうかがえる。

     

    (1)「新型コロナ感染の発生源となった武漢で当局がロックダウン(都市封鎖)を解除した昨年48日から12カ月。中国経済は予想を覆す動きを見せてきた。2020年の大半を通じ、輸出部門がけん引力となった。製造業はロックダウン状態の世界へ向けて、大量の医療用保護具や在宅勤務用のコンピューター機器を生産。当局が徐々に国内のウイルスを撲滅するにつれ、消費も次第に戻ってきた。その結果、通年のGDP成長率は2.3%と、コロナ下の2020年に世界の主要国で唯一、プラス成長を達成した」

     

    パンデミック下でデジタル化が急速に進んでいる。中国は、コンピューターなどの電子製品需要が急増し輸出で潤っている。この状況が、これからいつまで続くのか。米中デカップリングが、前途を塞ぎ始めている。

     

    (2)「足元では、その勢いが鈍化する兆候が現れ始めている。キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジュリアン・エバンス・プリチャード氏は、コロナの直撃を受けた20年1~3月期を除けば、今回の前期比での成長率は過去10年で最低水準だとし、工業、建設、サービス部門の減速が原因だと指摘している。

     

    1~3月期GDPの前期比伸び率0.6%は、過去10年で最低水準である。

     

    (3)「国家統計局の劉愛華報道官は16日、「国内経済の回復はまだ盤石ではない」とし、投資を抑制している製造業の不確実性や、出稼ぎ労働者や卒業したばかりの若者たちの間で失業率が上昇していると述べた。劉氏によると、1~3月期は都市部の出稼ぎ労働者の数がコロナ前に比べ約250万人少なかった。これはサービス部門や中小企業など主な雇用主の苦境ぶりを反映している。一方、16~24歳の若者の失業率は3月末時点で13.6%と、前年同期から0.3ポイント上昇。都市部の全体の失業率をはるかに上回る。

     

    1~3月期の都市部出稼ぎ労働者は、コロナ前に比約250万人も減っている。16~24歳の若者の失業率は、3月末時点で13.6%にも達した。二桁の失業率だ。コロナ禍の強い影響を受けている結果である。

     


    (4)「3月の鉱工業生産指数は前年比14.1%上昇。12月の35.1%上昇から鈍化し、市場予想も下回った。13月の固定資産投資は前年比25.6%増で、やはり伸びが減速している。コメルツ銀行のシニアエコノミスト、ハオ・ズー氏は16日の顧客向けリポートで、「成長トレンドは鈍化する可能性が高い」と述べた。華僑銀行(OCBC)のエコノミスト、トミー・シー氏は2020年および21年の1~3月期の平均成長率が5%となったことを挙げ、中国経済はコロナ前の潜在成長率だった約6%までまだ回復していないと指摘した」

     

    1~3月期の前期比GDP成長率が鈍化していることは、中国経済の成長トレンドが傾向的に下方修正されていることを暗示している。ここへ、米中対立の激化が起こっているのだ。もう一つの大きな重石が乗っかったのである。

     

    (5)「明るい一面もある。長らく低迷していた小売売上高は3月に前年同月比34.2%増と予想を上回り、前月比でも加速した。政府報道官の劉氏によると、3月には料理宅配セクターの消費が初めてコロナ前の水準に回復した。労働市場の一角に弱さが見られるものの、「景気回復の継続に加え、労働所得や雇用市場の改善が中国の消費をさらに押し上るだろう」との見方を示している」

     

    3月の小売売上高は、前年同月比34.2%増と予想を上回った。これはパンデミック下での「節約疲れ」を吹き飛ばす「瞬間増」である。不動産バブルによる住宅ローンの家計圧迫で、個人消費が増える条件はない。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-03-08

    メルマガ238号 「絶体絶命」追詰められる習近平、国有企業を盾の延命作戦は成功するか

    2021-04-05

    メルマガ246号 中国は大丈夫か、妥協なき米欧の人権弾圧抗議を甘く見ると「自滅危機」

     

     

    ムシトリナデシコ
       


    菅義偉首相とバイデン米大統領の首脳会談で台湾問題や人権問題に触れたことに、中国が反発を強めている。同国の在米国大使館の報道官は4月17日、日米の共同声明に「強く不満を表明し、断固として反対する」とのコメントを発表した。

     

    報道官は、台湾や香港などについて「中国の内政問題だ」と反発した。東シナ海や南シナ海問題は、中国の主権に関わるとも主張した。そのうえで「中国側は必ず国家主権、安全、発展の利益を断固として守る」と強調した。

     

    以上のコメントを聞くと、中国は国際法を無視した行動を今後も続ける意思であることを表明したのも同然である。こういう無法国家の中国に、国際法の存在を認識させる方法はあるのか。深刻な問題である。

     


    中国の十八番は、相手国への経済制裁である。日本へはその可能性はあるのか。中国の2020年の上位貿易相手国は次のようになっている。

     

        輸出国           輸入国

    米国   4297億ドル   韓国   1775億ドル

    香港   2793億ドル   日本   1656億ドル

    日本   1373億ドル   台湾   1553億ドル

    韓国   1027億ドル   米国   1539億ドル

    ドイツ   711億ドル   ドイツ   969億ドル

                   豪州    948億ドル

    (出所:JETRO)

     

    上記データを見ると、中国にとって日本は輸出先で3位、香港を除けば実質2位である。輸入では日本が2位である。日本が、中国にとって重要貿易相手国である。日本から素材や中間製品を輸入して加工し、輸出する加工型貿易であることが分かる。この日本へ経済制裁すれば、中国が損失を被る構造になっている。

     

    中国が、デカップリングになればどれだけの痛手を受けるか。改めて指摘するまでもない。こうした貿易構造ができあがっている中国が、国際法を無視した行動を取れば、確実に制裁を受けるはずだ。いくら習近平氏が、民族主義に酔っているとは言え、霞で生きている訳でない。正常な感覚の持ち主であれば、「冷戦」から「熱戦」へと舞台を回す度量はないと見られるが、どうなるかである。

     

    『大紀元』(4月17日付)は、「中国、日本を『特別扱い』する理由とは」と題する記事を掲載した。

     

    日中間の強い経済的な繋がりは日本の対中政策の足枷になっている。しかし、両国の経済が依存関係にあっても、それは双方向なものである。強いて言えば、中国の日本に対する依存度は、日本の中国に対する依存度よりも大きい。日本はこの問題を戦略的な観点から理解することができれば、対中政策を大胆に転換させることが可能になる。

     

    (1)「「日本の衰退」、「失われた30年」、「『日本は技術的には成功したが市場では失敗した』という呪縛から抜け出すには、日本は中国と協力するしかない」といった説が中国のメディアやネット上に氾濫しており、多くの人がそれを信じている。しかし、これらは中国が意図的に仕組んだ精巧な嘘に過ぎない。中国当局の対日政策は、これとは違うものだ」

     

    中国の貿易構造を見れば、日本の存在の大きさが分かるはずだ。その日本へ悪口雑言を言い放つことは理解に苦しむことだ。ましてや、輸出先トップの米国覇権へ軍事的に挑戦するとは、米国が反発して当然である。

     


    (2)「例えば、2016年に米国は最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」を韓国に配備することを決めた。その際、反発する中国は米国には何もしなかったが、韓国に経済的制裁を科した。中国は、限韓令(韓流コンテンツ禁止令)、ロッテ グループボイコット、旅行禁令などの制裁と通じて、文在寅(ムン・ジェイン)政権にサードの追加配備をしないなど約束させ、妥協を引き出すことに成功した」

     

    韓国は、中国のご機嫌うかがいするから舐められる。韓国が、中国へ抵抗したことがないから、それを良いことに圧迫を加えている。甘く見られているのだ。

     

    (3)「このケースと対照的な、別の物語もある。2017年12月、日本政府はミサイル攻撃への防衛のため陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の導入を決定した。(2020年6月25日に配備計画の停止が正式に発表された)ただ、韓国のサード配備と違って、日本は自主的に導入を決めた。中国は日本の動きを東アジアの戦略的バランスへの破壊だと批判しているが、経済的制裁を日本に課していない。なぜだろうか?」

     

    日本へ経済制裁すれば、中国の輸出産業がストップする。中国は、これを熟知しているから、日本への嫌がらせを控えているに過ぎない。

     


    (4)「なぜ中国は日本だけを「特別扱い」するのだろうか。実際、中国は何も日本だけを特別視しているわけではない。中国はただ単に弱者には苦しみを与え、強者には媚びへつらっているだけである。つまり、日本に対する特別扱いは、熟考の末にそう選択せざるを得なかっただけである」 

     

    日本への経済制裁を控えているのは、日本企業が中国へ進出しており、100万人単位の雇用を確保している面もあろう。

     

    (5)「実際、1995年以降、日中関係は常に摩擦が絶えなかった。中国の対日政策の基本措置の一つは「政治と経済の分離」であり、政治的理由で両国間の経済協力を干渉しないことを常に強調してきた。その主な原因の一つは、中国が経済的に日本に依存しているからだ。これはある意味、日本経済の強さを証明している。つまり、中国経済は共産党が宣伝しているほど強くないこと、そして日本経済は決して衰退しているわけではない、ということだ」

     

    中国のやり口は、あくどいという一言である。日本を衰退と蔑み、米国は没落して中国が世界覇権を握ると宣伝している。世の中は、そんなに上手く回るものでない。中国は、習近平の身辺に変化が起これば、それで全て終わる脆弱な構造なのだ。専制主義国家は、一夜にして崩れる運命である。それが、歴史の教訓である。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-04-05

    メルマガ246号 中国は大丈夫か、妥協なき米欧の人権弾圧抗議を甘く見ると「自滅危機」

    2021-04-12

    メルマガ248号 碌な半導体も造れない中国、開戦恐れない狂気を米国は抑えられるか

     

    a0960_008417_m
       

    米国経済は、コロナワクチン接種が順調に進んでいることから、予想外の回復力を見せている。米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月6日付)は、「残念ながら米国の経済危機は終了」と、少しおどけたタイトルの社説を掲げるほど余裕を見せている。好循環過程に入っているのだ。

     

    3月の米雇用者数(非農業)は、過去2カ月の改定分を含め、107万人の純増となった。職場に復帰した労働者の多くは、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行で打撃を受けた、サービス業に従事する比較的低賃金の人々だった。雇用増加は、景気循環では遅行指標であり、景気上昇を最終確認させる確定指標である。

     

    前記WSJは、4月8日付で「バイデノミクス、経済の『常識破り』の危うさ」と題する記事を掲載するほどだ。バイデン政権の景気刺激策は、不要という立場である。約200兆円の追加対策をしなくても、パンデミック後の急回復という「自動バネ」が働いて、2020年2月時点の好景気「軌道」に復帰できると指摘している。

     


    『ロイター』(4月15日付)は、「米国のTPP復帰、コロナからの回復で現実味増す可能性」と題する記事を掲載した。この記事は、米中首脳会談まえに執筆されたもの。

     

    日米両国はじきに、中国の影響力に対抗するため、関係をさらに進めた共同計画を手にするかもしれない。バイデン米大統領は就任以降で初めて顔を合わせる外国首脳に菅義偉首相を選び、2人は米国時間の16日に会談する。今はまだ、衣替えした環太平洋連携協定(TPP)に米国が復帰するのは政治的ハードルが高い。だが新型コロナウイルスのパンデミックが収束していけば、復帰のタイミングはより整うかもしれない。

     

    (1)「米国は2017年、当時のトランプ大統領がTPPを離脱したことで、中国と互角に渡り合える「経済同盟」を結成する機会を逃した。その後日本が引き取る形で、残る11カ国が18年に署名した。現在の正式協定名は「環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定」。現状のTPPは日本に続く経済規模を持つ国がカナダ、オーストラリアだけで、グループ全体で中国と張り合うには存在感が小さ過ぎる。パースUSアジアセンターによると、当初のTPPは参加国の合計国内総生産(GDP)が世界全体のほぼ40%を占めたが、現状では13%だ」

     

    TPPは、本来の盟主である米国が復帰すれば大きな力を発揮する。中国は、締め出されるだけにその余波が甚大だ。中国が、TPP結成を最も恐れていた理由である。仮に、米国が当初からTPPに加盟していれば、中国がここまで軍事的に増長することもなかったであろう。惜しい4年間を空費したとも言えよう。

     


    (2)「地域的な包括的経済連携(RCEP)は、中国が加わりTPP加盟11カ国のうち7カ国もメンバーとなっていて、こちらは世界のGDPの約3割に達する。TPPが米国に申し出ている内容も、米国が復帰しやすいような設定にされている。貿易障壁は引き下げられており、国営企業や労働問題、環境、デジタル取引といった分野でもルールを設定。日本はずっと米国の復帰を待ち望んでいる」

     

    日本は、米国の復帰を前提にしてTPP11を結成させた。米国は、いつでも「原隊復帰」可能な状況になっている。ということは、中国の加盟は不可能という意味である。

     

    (3)「とはいえ、今はまだ、米国が大きな通商協定で合意する時機ではない。TPPは政治的にたたかれる対象になってしまった。米国ではパンデミックは峠を越えたように見えるものの、米国の3月の失業率はなお6%と、昨年2月の3.5%を大きく上回っている。そうした状況では貿易障壁を下げる動きは困難な闘いと化す。一部の国内雇用には現実の、実感も伴う脅威と受け止められることになるからだ」

     

    米国経済は、過熱化して消費者物価が上がり出せば、TPPによる同盟国やパートナー国からの輸入増加で沈静化できる。これは、「脱中国経済圏」の総合効果であり、米国の基本的な戦略論にも叶った動きである。

     


    (4)「それでも、米経済が改善すればTPPを巡る米国内の環境も良くなるはずだ。米連邦準備理事会(FRB)は今年の米成長率が6.5%に加速し、失業率は来年中に3.9%まで低下すると予想する。米同盟国のTPP参加の動きも、米国復帰に追い風となっておかしくない。英国は既に加入を申請しており、韓国も関心を示している。米政府はTPPへの復帰作業を通じて、労働問題と環境問題を米国ペースで主導していくこともできるだろう。もちろん変更には他のTPP加盟国の承認が必要だ。一方で中国の政府当局者はTPP参加に意欲を表明した。米国には、彼らの機先を制するぐらいの時間の余裕はあるだろう」

     

    米国は、今回の日米首脳会談で対中国への共同歩調をより一層鮮明にした。こうした基本スタンスから見ても、TPP復帰をいつまでも遅らせられないだろう。中国は、逆立ちしても国有企業が障害でTPPへ加盟できるはずがない。それでも、外野席でTPP参加意思の旗を振っていくのであろう。お気の毒に。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-04-05

    メルマガ246号 中国は大丈夫か、妥協なき米欧の人権弾圧抗議を甘く見ると「自滅危機」

    2021-04-12

    メルマガ248号 碌な半導体も造れない中国、開戦恐れない狂気を米国は抑えられるか

     

    a0960_008570_m
       

    米国は、中国への徹底した壁を構築する動きを強めている。米企業が中国企業のIT機器やサービスを利用する場合、5月から事前届け制にする方針である。これによって、米企業の情報が中国へ漏洩することを防ぐ。

     

    この技術デカップリングは、最近の貿易戦争より大きく世界のGDPを押し下げると、IMF(国際通貨基金)の高官が指摘している。米国企業による、中国製IT機器やサービスの使用抑制が、安全保障上の視点から行なわれるとなれば、中国のGDPを押し下げることになってもやむを得ないだろう。

     

    IMFの中国責任者ヘルゲ・バーガー氏は4月16日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「世界は統合が進んだ場所だ。国や国境を越えて知識を交換するのをやめれば、最終的にかなり高くなり得る代償を払うことになる」と述べた。IMFは調査で、テクノロジーのデカップリングが多くの国でGDPの約5%減少につながると予想。これは米中が課す関税の推定コストの約10倍に上る。米中の関税が世界に及ぼす影響はGDPの約0.4%に相当すると見込んでいる。『ブルームバーグ』(4月16日付)が伝えた。

     


    『日本経済新聞 電子版』(4月16日付)は、「米、中国IT利用を許可制に 企業に規制450万社に影響」と題する記事を掲載した。

     

    バイデン米政権は米国内の民間企業が中国製のIT(情報技術)機器やサービスを利用するのを規制する。5月中旬にも、政府の許可を事前に取るよう求める制度を導入し、政府の判断で利用を禁じる。企業を通じて中国政府に機密情報が漏洩するのを防ぐ。日本企業の米国法人も対象で、企業は難しい対応を迫られる。

     

    (1)「規制の対象となるのは、米商務省が「外国の敵対者」として挙げた中国やロシア、北朝鮮など6カ国の企業で、主な標的は中国だ。こうした国に本拠を置いたり、政府の影響下にあると判断されれば、その企業が提供するIT機器やサービスを使うのを規制する。米国はこれまでも中国を対象としたハイテク規制を打ち出している。トランプ前政権と議会は2020年8月から、連邦政府と取引のある米国企業に中国5社の製品を使うのを禁じた。新たな規制は政府取引の有無に関わらず、中国製品を使うのを禁じる」

     

    中国製IT機器には、「バックドア」が仕掛けられているというのは、もはや常識になっている。TVにすらバックドアがはめ込まれていると警告されているほどだ。ここまで、中国製IT機器が信頼を失っている。

     

    (2)「米国内で事業を行う企業は、使用している機器やサービスの提供元や内容などを当局に申請し、許可を得る必要がある。詳細な基準は公表されておらず、「過度もしくは許容できないリスク」があると判断されれば利用が禁止される。企業には反論したりリスクの軽減策を示したりする権利がある。しかし、政府が決めた利用禁止の最終決定やリスク軽減策に従わない企業は民事・刑事罰の対象となる。商務省は3月中旬と4月13日、規制の執行に向けた事前調査のため、複数の中国企業に米国での事業情報を提供するよう命じた」

     

    米国内で営業する企業は、海外企業も含められる。これはIT機器やサービスの特性上、広くネットを組むため、広範囲な企業が中国製IT機器やサービスを排除しなければ実効を挙げられないからだろう。

     


    (3)「新規則では、規制対象となる具体的な企業名は挙げていない。すでに通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などは政府調達の禁止対象になっている。今回、通信網や重要なインフラに使う機器、ソフトウエアなどにも対象を広げた。個人情報を扱うサービスのほか、米国内で過去1年に100万台以上売られた監視カメラやセンサー、ドローン(無人機)といった監視システムも含めた。人工知能(AI)や量子コンピューターなどの新興技術も対象だ」

     

    中国は、謀略国家である。これは、長い国内闘争の歴史による「サバイバル戦術」が生み出したものであろう。相手を出し抜いて征服する。これが、日々の営みの中に組み込まれている。民主主義国家とは、生い立ちが違うのだ。

     


    (4)「例えば、社内ネットワークに中国製の通信機器を設けたり、工場内に中国製の監視カメラを取り付けたりすれば、「待った」がかかる事態があり得る。顧客情報を扱う目的で中国企業のクラウドサービスを使うのを止めるよう求められる可能性もある。詳しい手続きは明らかではないが、企業には自発的な申請が求められるほか、規制に抵触しないか当局が調査を実施する方針だ」

     

    監視カメラでも、その情報が北京に繋がっている危険性が強い。かつて、米国で中国製車両を輸入する案が持ち上がった。だが、車内映像が北京へ流れる危険性を指摘され、輸入を取り止めた一件もある。ともかく、どこで狙っているか分からない国である。

     

    (5)「産業界には懸念が広がる。外国製のIT機器・サービスを使う米国企業は規制の対象となり得るからだ。日本企業の米国法人も規制対象だ。商務省によると、米企業の総数約600万社のうち、外国製のIT機器・サービスを一定の規模で導入している企業は最大450万社に上る。商務省は企業が規則や自社の導入機器などを把握したり、対応計画をつくったりするのに、米国全体で年100億ドル(約1兆900億円)規模のコストがかかると試算している」

     

    米国内で取り締まるコストが100億ドル規模に達すると見られる。だが、米国内の情報漏洩による潜在的損失を考えれば、決して高くはない。国防費の一環と捉えるべきなのだ。中国製に代わって、米国内の生産で代替できれば、雇用増加に繋がる。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-04-05

    メルマガ246号 中国は大丈夫か、妥協なき米欧の人権弾圧抗議を甘く見ると「自滅危機」

    2021-04-12

    メルマガ248号 碌な半導体も造れない中国、開戦恐れない狂気を米国は抑えられるか

     

     

     

     

     

    ポールオブビューティー
       

    中国経済は、一皮剥けば惨憺たる事態に追込まれている。国有企業の不良債権が山ほどあるからだ。この不良債権を買い取ってきた「バッドバンク」トップの中国華融資産管理会社が大揺れである。同社の元会長の頼小民は、中国でも極めて悪質な汚職事件で死刑執行となった。その後、11週間過ぎても金融市場に大きな影を落としている。

     

    華融資産は、2020年通期決算を3月末の期限までに公表できなかったほど混乱している。これを危惧されて、社債が大きく売られている。一部の銘柄は、額面1ドル当たり0.52ドルまで下げているという。デフォルト(債務不履行)懸念が、意識されていることを覗わせている。

     

    中国財政部が過半数株を保有する華融資産は、政府が1990年代後半に設立した資産管理会社4社の中で最大の規模を誇っている。国内の銀行は当時、多額の不良債権を抱えていた。華融資産をはじめとする資産管理会社は、大手国有銀行から不良債権を買い取り、入札や国外銀行への売却などを通じて処理した。華融資産は積極的に事業を拡大し、証券トレーディングや貸し出しなどの金融サービスに参入したものの、やがて経営が苦境に見舞われた。中国経済を象徴する事態を迎えたのである。

     


    米経済通信社『ブルームバーグ』(4月16日付)は、「中国、『バッドバンク』失敗容認なら市場に衝撃-最悪の解決策か」と題する記事を掲載した。

     

    習近平国家主席が推し進める反腐敗運動で摘発された頼元会長は、収賄罪で死刑判決が言い渡されたのは今年1月である。香港やロンドン、ニューヨークなどに広がる疑問は、華融資産が本土外で借り入れた232億ドル(約2兆5300億円)について中国政府が後ろ盾になるのか、あるいは債券市場で海外投資家が損失を被るのかだ。

     

    (1)「中国最大級の不良債権受け皿機関「バッドバンク」である華融資産のような国有企業は大き過ぎてつぶせないとグローバル投資家はずっと想定してきた。だが、これはなお現在も同社に当てはまるのか。または他の企業のようにデフォルト(債務不履行)が許されるのだろうか。その回答がもたらす影響は大きい。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のクレジット戦略責任者オーウェン・ガリモア氏は、「中央政府が所有する華融資産のような企業のデフォルトは前例がない」と指摘。もしそうなれば中国とアジアのクレジット市場にとって「重大な分岐点」になると話す」

     

    国有企業で、不良債権買い取り機関で最大規模の華融資産が、不祥事も重なって経営危機に立たされている。元会長の収賄事件が発端とされるが、中国金融構造をめぐる脆弱性が招いた問題と見るべきだろう。

     


    (2)「華融資産のドル建て債は最近、額面1ドルに対し約52セントという安値を付けた。中国国有企業ではこれまであり得なかった急落だ。同社が、国内外の社債保有者に負う債務は420億ドル相当。ブルームバーグの集計データによると、そのうちの約171億ドルは2022年末までに返済期限を迎える。15年の香港上場前、華融資産は
    ウォーバーグ・ピンカスやゴールドマン・サックス・グループなど投資家グループに24億ドル相当の株式を売却。ブルームバーグのデータは、ブラックロックとバンガード・グループも多くを取得したことを示している。だが上場以来、華融資産の株価は67%下げた」

     

    国有金融機関が、社債も株価も急落状態である。これは、中国政府が社債のデフォルトを防ぐべく保証しないことが大きく響いている。政府は、これが悪例になることを恐れているに違いない。ということは、他にもこういう例の存在を示唆している。

     

    (3)「会長時代の頼元死刑囚は、華融資産をシャドーバンキング(影の銀行)の強力な貸し手に変えた。銀行規制当局の幹部だったこともあり、取締役会やリスク管理委員会からほとんど監視を受けずに融資を実行したという。習主席肝いりの広域経済圏構想「一帯一路」に関係すると見せかけた事業にも資金が向かったとある国有銀行の幹部は話す」

     

    中国の信用逼迫状況で起こった問題でもあろう。元会長への賄賂は、融資を受けたい企業が持込んだものだ。本来は、貸出金利引上げで調整すべきものが、賄賂に化けたと見られる。

     

    (4)「一つ確かなことは、華融資産は氷山の一角にすぎないことだ。国有企業は4兆1000億ドル相当の債務を抱える。格付け会社フィッチ・レーティングスによると、国有企業は20年に人民元建て債795億元(約1兆3300億円)でデフォルト。これは過去最大規模で、本土の不履行に占める国有企業の割合は前年のわずか8.5%から57%に急上昇した。今年1ー3月(第1四半期)には72%に達した」

     

    国有企業は現在、4兆1000億ドル相当の債務を抱えるという。中国の外貨準備高は、2021年2月末で3兆2050億ドルである。これを上回る債務を抱えている。今回の外債のデフォルトが現実化すれは、今後の外債発行に大きな支障を来たす。中国経済には重大な事態をもたらすはずだ。

     


    (5)「北京福盛徳信息咨詢(FOST)の馮建林チーフアナリストは、「金融システムを巡る問題を解決するという任務を引き受けた国有金融会社の失敗を容認するのは、リスク対応で最悪のやり方だ。当局はリスク波及の甚大な影響を考慮する必要がある」と述べた」

     

    中国が、金融システムをめぐる重大な問題を抱えていることは、今や明らかになった。習氏が、「終身皇帝」を狙いたいという夢のような話をしている状況にないはずだ。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-04-05

    メルマガ246号 中国は大丈夫か、妥協なき米欧の人権弾圧抗議を甘く見ると「自滅危機」

    2021-04-12

    メルマガ248号 碌な半導体も造れない中国、開戦恐れない狂気を米国は抑えられるか

     

    このページのトップヘ