勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    土地問題で苦しむ4千年

    恒大問題処理に2つの道

    これから胸突き八丁突入

    パンデミック後遺症襲う

     

    中国は、これまで不動産バブルの「不倒記録」を続けてきた。それもついに、恒大集団の債務返済が不可能になって、幕を閉じようとしている。厳密に言えば、すでに終焉を迎えた。7~8月の住宅販売額が、前年比で2桁の減少になっていたからだ。

     

    中国共産党は土地を公有制にし、地価決定権を握っている。地方政府は、民間への土地利用権の売却代金を有力財源にしているのだ。不動産バブルが、「長期不倒記録」を続けられた裏には、こうした地方政府の財政事情に大きな影響を受けてきた。中国財政には、有力財源が存在しない宿命を負っている。この点については、後で取り上げたい。

     


    不動産バブルという公営賭博の「勧進元」は、地方政府であった。まさに「公営賭博」ゆえに、10年以上も続いた理由である。これが、中国のGDPを無理矢理に押し上げ、米国経済と覇権を争うという錯覚まで抱かせたのである。その意味では、日本経済の方が期間は短かったが、同じ道を歩んできた。最後は、同様に「バブル破裂」で終焉をみることになった。

     

    土地問題で苦しむ4千年

    中国4000年の歴史において、土地問題が繰り返し害毒を流してきた。私有化による土地集積の失敗を是正すべく公有化する。これが、農地の荒廃を招いて経済を疲弊させる。こういう循環を重ねてきたのである。そこで、辛亥革命(1911年)を成功させた孫文は、土地問題について重要な提案をした。土地私有制を基本とし、値上り分は全て税金で吸い上げるというもの。これは、土地の私有制と公有制を合体したアイデアである。孫文は、土地問題について、ここまで神経を使っていたのである。

     


    毛沢東は、この孫文構想を取り入れずに土地公有制にした。鄧小平時代になって、個人に土地利用権を売買するという便法で事実上、私有制を認める形としたが、これも今回のような問題を引き起すことになった。土地公有制によって、土地を「打ち出の小槌」に使って住宅価格を引き上げさせたからだ。

     

    現在の中国では、土地公有制が基本にある以上、不動産税も相続税も創設できないという「理屈」によって、富裕層をますます富ます結果になった。富の偏在が起った裏には、「土地公有制」が潜んでいることに気付くことだ。歴史的な土地保有問題点が、今回も浮き彫りになっている。結局は、孫文構想が正しかったのである。

     

    習近平氏は、富の偏在が「中国式社会主義」に不似合いと判断している以上、不動産バブルは消滅の運命にある。中国恒大集団が、店仕舞いを迫られていることは疑いない。もはや、現状のままで生き残れないのだ。となると、どのような形で終息させるのか、が問われる。

     


    恒大問題処理に2つの道

    今後の辿るべき道として、次のようなものが話題に上がっている。

     

    1)リーマン・ショック当時(2008年)に指摘されたミンスキー・モーメントか。

    2)ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)的な局面か。

     

    この二案を提示しているのは、ジョン・オーサーズ氏(ブルームバーグ・コラムニスト。元フィナンシャル・タイムズ記者を29年間勤めたベテラン)である。『ブルームバーグ』(9月21日付)から引用した。

     

    それぞれの理由を見ると、次のようなものだ。

     

    1)経済学者ハイマン・ミンスキーの名が付けられた、「ミンスキー・モーメント」は長期間続いた投機の結果として信用が失われる現象である。2008年のリーマン・ショックの破綻が最も有名な例とされている。この「ミンスキー・モーメント」になると、信用機構は根本から揺らぐことになる。バブルを引き起した企業を罰するには良いとしても、無関係なところまで巻き込む点で「劇薬」になる。

     

    中国政府は、恒大集団に対して最終的な方針を示さず、銀行には金融取引期限の延長を求めているだけである。中国の名目GDPの約2%にも相当する債務総額(約3000億ドル以上=約33兆円以上)を抱える恒大集団には、自力解決は不可能になっている。「大きすぎて潰せない」という声も聞えてくるほど、こうなると「ミンスキー・モーメント」的な対応は不可能である。

     


    2)LTCMは、1998年に米国で破綻したヘッジファンドである。長期にわたる過剰投機の結果、突然信用が収縮して破綻した。LTCM破綻後の米連邦準備制度理事会(FRB)は、債権者を集めて救済措置をまとめ上げ、政策金利の引き下げに踏み切るという「温情」溢れる救済策となった。これが、モラル・ハザードを生んだという批判から、2008年のリーマン・ショックでは一切の救済策を講じない荒療治へ走った。これもまた後刻、大きな批判を受けることになった。

    左前になっている中国経済が、1)のミンスキー・モーメント型の突き放し策は、波紋が大きすぎて採用できないだろう。となれば、自ずと2)のLTCM型の救済策を採用するであろうという結論になるはずだ。ジョン・オーサーズ氏は、中国恒大が本拠を置く広東省の規制当局が、会計や法律の専門家を派遣した中に、事業再編を専門とする法律事務所キング&ウッド・マレソンズが含まれると指摘する。恒大集団は、事業再編という大手術が行われる見通しである。(つづく)

     

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    中国は先に、TPP(環太平洋経済連携協定)へ正式加盟申請した。国内の国有企業中心の産業体制のままで、「TPP加盟」とは正気の沙汰ではない。私は、一昨日発行した「メルマガ294号」で、中国の舞台裏を想像して、中国国内の経済派をなだめる「ジェスチャー」に過ぎないとの結論を出した。

     

    こういう拙論と同様の報道が現れたので紹介する。中国経済が、厳しい局面に立たされていることで、舞台効果を狙った「目眩まし」を放り込んだと見られるのである。悪質な行為である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月22日付)は、「侮れない中国TPP『300日計画』、習主席と李首相も連携」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の中沢克二編集委員である。

     


    中国が環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を正式に申請した。一見、唐突にみえる習近平政権の行動だが、その裏には300日にわたる周到な計画と準備があった。日本政府には米国不在となったTPPを苦労してまとめあげた成功体験がある。しかし、中国の戦略的な動きを十分、把握したうえで、先回りできなければ、かつての大きな功績も雲散霧消しかねない。

     

    (1)「国家主席の習近平が20年11月20日、オンライン開催だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で「TPP11参加を積極的に考える」と公式に表明する直前、正式申請に向けた「300日計画」が始動していたことになる。ここにはTPP加盟に意欲をみせる台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)民主進歩党政権をけん制する思惑もあった。李は、習発言に先立つ20年5月の段階でTPP参加に「中国は前向きで、開放的な態度だ」と話していた。習と李をつなぐキーマンは、習が信頼する副首相の劉鶴(リュウ・ハァ)と、商務省の次官で国際貿易交渉代表の兪建華である。司令塔は国務院(政府)に置かれ、重要事項を判断する際は必ず会議が開かれた」

     


    中国は、TPP加盟申請を単なる「儀式」として行ったことが分かる。それに伴う、制度改革もなしに、TPP申請するとは加盟国を冒涜した行為である。受理せず、突き返すべき代物である。その策略計画が、「300日計画」と呼ばれたもので始まっていたという。

     

    (2)「300日計画」の最初の標的はニュージーランド(NZ)だった。同国はTPPに発展した原協定の4当事国(ほかはシンガポール、ブルネイ、チリ)の一つで、現在も大きな役割を担っている。域外国が加盟意思を通知する際の寄託国で、中国が正式な加盟を申請した先もNZだ。21年のTPP委員会の議長国である日本ではないのもポイントだった。中国は何かと関係がギクシャクしていたNZとの意思疎通を重視する方向にカジを切っていた。習によるTPP参加検討の表明から間もない21年1月には、NZ側のメリットが大きい2国間の自由貿易協定の改定に署名した。中国との関係が悪化してゆくオーストラリアとは対照的な対応なのが興味深い」

     

    中国は、TPPの環の弱そうなニュージーランドを窓口に選んだという。ニュージーランドは、そういう事情を知らず今年1月、中国と自由貿易協定の改定を行い、手なずけられたのである。

     


    (3)「中国は、マレーシアが中国加盟に向けた交渉を支持したように、東南アジアの多くの国は交渉入りに反対しないとみている。驚くのは中国側が「最終的には日本も中国の交渉入りに真っ向から反対できない」と読んでいることだ。中国にとってTPP加盟申請は国際政治・経済戦略上、主導権を確保するための重要な手段である。英国に加盟申請で先を越されたとはいえ、時期の設定は中国の命運に関わる。

     

    下線部分で、日本が中国のTPP加入を認めるという前提をしている。これは、驚くべき錯覚である。TPP条項を100%確実に突付ければ、中国の加盟は不可能である。中国は、日本を舐めきっている。ピシャリと叩かねばならないだろう。

     

    (4)「ここで問われるのは、習政権として、高いハードルを課すTPPに入るために徹底的な国内改革に踏み切る用意があるかどうか、である。「皆、誤解している。(中国の)国内政治情勢を考えればいま、直ちに真心を持ってTPPに入る気などさらさらない。ギリギリの交渉をする用意もない。そもそも交渉入りさえ全加盟国の同意が必要なのだ。仮に交渉入りしても、肝心な部分はズルズルと引き延ばしになる」。

     

    下線部分は、中国の傲慢な姿勢を見せつけている。この状態で、TPPへ加盟することなどできるはずがない。中国の恐ろしさは、中国という国家の存在によって好き勝手なことが可能という錯覚に陥っている点だ。この感覚で、戦争を始められたら大変な事態になる。中国へは、絶対に甘い姿勢を見せず警戒心を解いてはならぬという悲しい現実を忘れてはならない。善意は通じない国である。

     


    (5)「中国の「本気度」に疑問を呈する識者の声は、一面の真実を言い当てている。ここ数年、中国ではTPPの方向性とは逆の施策が次々と打ち出された。大きな国有企業同士の合併は典型例だ。民間の大企業には独占禁止などを理由に罰金を科したり、分割を迫ったりしているのに、国有企業への補助金問題には手がついていない」

     

    中国の産業政策は、ことごとくTPPとは異なる方向である。この姿勢を堅持したまま、TPPへ加盟するとは言語道断の振る舞いである。

     


    (6)「習近平が進める「左旋回」の路線、統制強化を支える有力なグループは左派だ。過去、彼らは一貫してTPPに反対してきた。国有企業への補助規制といったTPPの規則は「主権の侵害につながる」という理屈だった。対外強硬策が特徴の「戦狼外交」を支持してきた中国内の学者らもTPPを「新型資本帝国統治」につながると批判してきた経緯がある。政治情勢を考えれば、いま中国がTPPに名乗りを上げるのはある種の自己矛盾だ。一方、別の関係者は「(TPP加盟申請は)中国はあくまで『市場経済国家』としてとどまる、という(国の)内外へのアピールでもある」と指摘する。急激に社会主義へ傾斜する中国に疑問の目が向けられているのを強く意識した防御的な行動でもあるというのだ」

     

    私はこれまで、習近平氏が中国国内の経済派へ配慮して、TPP加盟を言い出したに過ぎないと見てきた。このパラグラフの下線では、同様の見方をしている。こういうインチキなTPP申入れごとに、ニュージーランドは利用されたのだ。気の毒な、「メッセンジャー」である。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-09-20

    メルマガ294号 「ダメ元」で申込んだ中国のTPP、狙いは経済混乱の目眩まし 傾く「屋台骨」

     

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    中国の「戦狼外交」は、相手国を威嚇するが、相当な反感も買っている。これによって、西側諸国は対中投資を減らしているという調査結果が出てきた。米国の対中投資は、むろん激減している。

     

    『大紀元』(9月21日付)は、「米中間、技術投資96%激減 各国でデカップリングにらむ動き加速―米企業調査」と題する記事を掲載した。

     

    米コンサルティング大手の最新調査によると、米中対立の激化で両国間の技術分野の投資は急減した。

     

    (1)「ベイン・アンド・カンパニーは9月20日、最新年度調査報告書を発表した。それによれば、2016~20年まで、米中両国間の全体的な直接投資は620億ドル(約6兆7927億円)から160億ドル(約1兆7530億円)に減少した。この期間中、技術セクターでの投資は96%急減したという。同社の米中投資センターの統計データでは、技術、不動産、医療関連セクターにおける二国間投資の落ち込みは最も激しい。米中両国はそれぞれ国内で大規模な投資を行っている」

     

    2016~20年までの5年間で、米中間での投資のうち技術セクターでは96%減になった。これは、中国にとって新技術習得の機会を失っていることを示している。米中対立は、デカップリングで中国側の実質的損失になったのだ。

     

    (2)「米上院は6月、2500億ドル(約27兆3906億円)規模の「米国イノベーション競争法案」を承認した。この法案では、国内の半導体研究・生産に520億ドル(約5兆6973億円)、全米科学財団に810億ドル(約8兆8746億円)の資金を拠出するなどと定められた。いっぽう、報告書によると、中国当局のテクノロジー分野への年間研究開発費は2020年に3500億ドル(約38兆3469億円)を上回った。今後数年間、人工知能(AI)、半導体、次世代移動通信(5G)ネットワークなどに1兆4000億ドル(約153兆円)を投じる計画だという。「両国の新たな動きから、デカップリング(切り離し)は将来数年間、テクノロジー分野における決定的な特徴となる」という」

     

    米中が、それぞれ国内で半導体やAI投資を行う。デカップリンが前提であるのだ。従来であれば、米国企業は中国において投資したであろう。中国は、この面で明らかに損害を被っている。

     


    (3)「同時に、米中のデカップリングや世界的な半導体不足に伴い、他の主要経済国は経済安全保障と国家安全保障の観点から、技術とサプライチェーンの独立性を強めるために、投資を拡大しているという。韓国は5月、2030年までに世界最大の半導体チップ生産拠点となるために、4500億ドル(約49兆3031億円)の投資計画を発表した。欧州連合(EU)は3月、「デジタル主権のために1500億ドル(約16兆4344億円)の投資を表明した。EUは同計画を通じて、30年までに世界の半導体生産に占める割合を20%に拡大することを目標としている」

     

    韓国は、米国とEUがそれぞれ半導体投資を行っているので、シェア対抗という自衛的な意味から投資を増やしている。これは中国にとって、世界的なシェア低下を意味するもの。不利な事態が進んでいるのだ。

     


    (4)「ベイン・アンド・カンパニーは大紀元宛に送った声明の中で、この状況は「世界各国のハイテク企業に不確実性をもたらした」との見解を示した。同社は、「世界中でデカップリングに備えた投資はかつてない規模とペースで行われている」として、テクノロジー分野の企業は「短期的および長期的な戦略」を常に見直し更新しなければならないと指摘した。報告書は、「中国では多額の投資にも関わらず、主要な製造技術と重要な設備が不足しているため、国内の半導体製造を強化できない」との見方を示した。米国に関して、「最先端の半導体ファウンドリー、設計企業、部品メーカーへのアクセスはほとんどアジアに依存している」との課題を指摘した

     

    下線のような問題が、米中にそれぞれ起こっている。相対的に言えば、米国に有利な展開である。中国は孤軍奮闘するだけで効果は上げられないのだ。米中でカップリングが長期にわたって進めば、中国は孤立して技術的な面で「干乾し」にされる運命であろう。

     


    (5)「同社はまた、米国は中国に対抗するため同盟国との連携強化を図っているとした。「成功すれば、中国への重要技術輸出を制限または阻止することが容易になる」が、EUが米主導の中国対抗同盟に参加するかは不明瞭だという。日本経済新聞は19日、今月24日に開催予定の日本、米国、オーストラリア、インド4カ国首脳会議の経済安全保障に関する共同文書の原案を引用し、4カ国は今後半導体など戦略物資のサプライチェーン構築で協力する計画だと報じた」

     

    下線部は、浅慮極まりない見方である。EUと中国の間は冷却化している。EUが、どう転んでも中国へ協力することなど100%ないからだ。EUは、NATO(北大西洋条約機構)で米軍事力の笠に入っている。この現実を忘れた議論は無益である。

     

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    中国恒大が、世界の株式市場で「悪玉」扱いされている。デフォルトが目前に来ていると、市場関係者は身構えるからだ。これから、起る問題点を整理しておく。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「よくわかる中国恒大 4つのポイント」と題する記事を掲載した。

     

    中国の不動産大手、中国恒大集団の債務問題を世界が注視している。中国発のリスク連鎖を警戒する金融市場の動きは欧米、日本へと波及した。恒大の成り立ちと債務問題、今後の見通しをおさらいする。

     


    恒大とは?創業者・許家印氏の政治的背景は?

    (1)「中国を代表する不動産開発業者である恒大は1996年、中国南部の広東省広州市で創業した。当初は従業員10人弱の小さな会社だったが、低価格の小型マンションで足場を築き、中国の不動産ブームの波に乗り2000年代に急成長した。2020年12月期の売上高は5072億元(約8兆5000億円)にのぼり、物件販売面積は中国で2位だった。創業者で経営トップである許家印・董事局主席は、1990年代に勤めていた商社で不動産事業の立ち上げに関わり、中所得層向けの住宅物件で大きな成功を収めた。その知見を生かし恒大を設立した後は、物件デザインや資材調達の社内ルールを整備、原価を抑制する戦略で会社を急成長させた」

     

    商社的なセンスが、経営規模を急激に拡大させた。

     

    (2)「中国調査会社の胡潤研究院がまとめる中国富豪番付では、2017年に許氏の資産額が2900億元(約5兆円)で首位になったこともある。18年には改革開放政策40周年に絡んで中国共産党などから経済成長への貢献が大きい「傑出した」民営企業家100人の1人にも選ばれた。経済界での存在感を増した許氏は中国の政策助言機関、全国政治協商会議の常務委員に名を連ねるようになり、政治にも接近した。習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げる「脱貧困」などに積極的に呼応、地方の産業振興や教育支援へ資金を投じて有力政治家とのコネクションを築いてきた」

     

    かつては、模範的な企業家として注目された。

     


    (3)「不動産業で大きな成功を収めた許氏は様々な領域へと進出する。その代表格がスポーツで、保有するサッカークラブ「広州FC(旧・広州恒大)」はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を2度制覇、名門となった。またバレーボールなどの振興にも力を入れた。ビジネスではテーマパーク事業、電気自動車(EV)開発などにも手を広げた。一方で借り入れや社債発行は膨らみ、グループの財務は安定性を失った」

     

    急激な経営多角化が、体力を消耗させた。経営の焦りが、そうさせたのであろう。

     

    経営難に陥った理由は?

    (4)潮目の変化は20年夏に訪れた。中国人民銀行(中央銀行)は大手不動産会社に対して負債比率など守るべき財務指針「3つのレッドライン」を設けた。「総資産に対する負債(前受け金を除く)の比率が70%以下」「自己資本に対する負債比率が100%以下」「短期負債を上回る現金を保有していること」の項目だ。不動産会社は守れなかった指針の数に応じて銀行からの借り入れ規模などが制限される。重い債務を抱える恒大は人民銀の示す指針を守るべく財務改善に動き始めた。方策のひとつが値引きによるマンションの販売加速だ。今年7月、同社の物件販売単価は1平方メートルあたり8055元と前年同月比14%下落した。現金の捻出により一部の負債などは圧縮できたが、それでも改善の足取りは鈍い。不動産市場調査を手がける貝殻研究院によると216月末時点で、恒大は「3つのレッドライン」のうち2つを守れないままだ」

     

    政府の不動産バブル抑制の動きを察知できなかった。リスク意識が欠如していたのだろう。

     


    (5)「恒大と取引する工事会社や資材会社からは、恒大の代金支払いが滞っているとの声が上がるようになった。本来デベロッパーは絶対的存在で、代金支払いなどで問題が生じても下請け側からは文句が言いにくい。恒大の財務不安が力関係を変化させているようにみえる。ある地方銀行は恒大の預金凍結に走った。融資を巡るトラブルがあったとみられる」

     

    資金管理が上手くいかなかった。昔でいえば、「バジェタリー・コントロール」ができなかったのだろう。「行け行けドンドン」という計画のなさが招いた経営蹉跌だ。

     

    なぜ世界の株式市場は大きく反応したのか?

    (6)「限界まで膨張した債務の巨額さと、200億ドル(約2兆2000億円)に上る外債を通じた海外投資家へのインパクト、そして習指導部の政治姿勢を改めて占う試金石になるとみられるためだ」

     

    巨額の外債を発行している点が、政府の間接的な責任に帰着する。政府が、外債発行を薦めたからだ。

     


    (7)「取引先への未払い分などを含めた恒大の負債総額は、1兆9665億元(約33兆4000億円)と中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当し、処理に失敗すれば中国の金融システムを揺るがしかねない。恒大は9月下旬以降、過去に発行した社債の利払い日が集中しており、債務不履行が起きるか市場が注意を寄せている。資金繰りが一段と悪化すれば、建設中のマンションプロジェクトが頓挫し、既に購入した消費者に引き渡されない恐れもある。中国では財産の大半を住宅につぎ込む人が多く、恒大問題へは市場関係者以外も大きな関心を持っている」

     

    連鎖倒産を起させず、恒大を整理することである。既に代金を支払った消費者には、政府が物件を引き渡す保証をすることだ。恒大が、過去に支払った法人税を「基金」にして行えばよい。超法規的なことでも行い、不安心理を鎮める工夫が必要。そうでなければ、取り返しのつかない騒ぎになろう。

     


    恒大は倒産してしまうのか?

    (8)「資金繰りに窮する恒大、今後自力での経営立て直しが不可能となれば「破産重整」と呼ぶ再建型の倒産手続きがひとつの選択肢になる。債権者の同意の下で債務をカットし、営業を継続しながら再建を目指す法的整理の枠組みだ。直近のケースでは航空事業を中心とする複合企業、海航集団(HNAグループ)が地方政府の管理を受けながら今年2月以降に破産重整のプロセスに入った。債権者や裁判所と協議しながら更生計画を練っている。現在は、会社更生のカギとなる再建スポンサーを探している最中だ」

     

    不動産バブルの破綻である。再建スポンサーが、見つかるだろうか。この後に起こる住宅価格の暴落を考えれば、安易な期待をすべきでない。

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    中国がTPP加盟を申請したが、前途は多難である。加盟11ヶ国中で、一ヶ国でも反対論が出れば加盟は不可能であるからだ。

     

    日本、豪州・メキシコは、いずれも慎重論である。一方、マレーシアとシンガポールは歓迎の立場を明らかにしている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(9月21日付)は、「メキシコ、中国のTPP加盟に慎重」と題する記事を掲載した。

     

    メキシコ経済省は20日、中国による環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請について慎重な姿勢を示した。TPPが「高い基準を順守するすべての国に門戸は開かれている」と指摘した。国有企業への補助などの中国の経済ルールが加盟に課題となることを暗に示唆した形だ。

     


    (1)「声明では、「協定の創設国として他の10カ国と共に、中国の加盟申請について迅速にフォローし、関連の活動に加わる」とも言及した。メキシコは2020年7月に発効したUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を通じて、北米で一体となった経済圏を構築している。メキシコの最大の貿易相手は米国で、圧倒的な地位を占めている。米中の摩擦が深まる中では中国のTPP加盟支持を打ち出すことは容易ではない。

     

    USMCAは、米国のトランプ政権が、TPPをモデルにしてそれまでのNAFTA(北米自由貿易協定)を改定させたものである。USMCAでは、独裁国との貿易協定を結ぶ場合、脱退しなければならないという「縛り」が入っている。USMCAには、TPP加盟国のカナダも加盟しているので当然、この制約条項に抵触する。よって、メキシコ・カナダは、中国のTPPには反対の意志を示さざるを得ない。

     

    (2)「加えてUSMCAでは、非市場経済国との自由貿易協定には、交渉開始の意図を他国に知らせることが定められている。一方で、メキシコにとって中国は、輸入で米国に次ぐ2番目の相手国でもある。新型コロナウイルスへのワクチンの供与を巡って関係が深まってきた事情もある。TPPの交渉官を務めた経験を持つロベルト・サパタ氏は地元紙レフォルマの取材に「メキシコにとって、非常に複雑で敏感な多面的交渉が始まる」と指摘した」

     

    米国のトランプ前政権では、中国を通商から排除するという強い意志を示していた。NAFTAをUSMCAへ切り変えさせた目的は、米国がTPPのメリットをカナダとメキシコから得るというものであった。前記二ヶ国は、中国と貿易協定を結ばせないという、かなり米国に有利な条件を付けさせてある。

     

    中国は、こういうUSMCAの存在を知っているはず。それにも関わらず、TPP加盟を申請してきたのは、米国との関係を揺さぶるという目的であろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(9月17日付)は、「豪貿易相、中国のTPP加盟に難色『2国間に問題』」と題する記事を掲載した。

     

    オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は17日声明を出し、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)加盟申請に関して「最初に加盟交渉を開始するかどうかを決定するが、決定には全加盟国の支持が必要だ」と述べた。

     

    (3)「そのうえで、「すでに中国に伝えたが、(豪中の間では)閣僚間で取り組むべき重要な問題がある」と述べ、中国が豪産品に課した高関税などの問題が解決しない限りは、中国の交渉入りを支持しないとの姿勢を示唆した。また、「加盟国は申請国がTPPの高い(自由化の)水準を満たすだけでなく、世界貿易機関(WTO)やすでに参加する既存の貿易協定の規定を順守した実績があると確信したいはずだ」とも述べた」

     

    中国は、豪州から痛いところを突かれている。中国は、新型コロナウイルスの発生源に関して独立調査を求めた豪州に反発し、2020年5月以降、豪産大麦やワインに高関税を課したほか、一部の食肉や石炭の輸入も制限している。豪州は大麦とワインの関税を不当として中国をWTOへ提訴しているのだ。中国の身勝手な豪州への経済制裁を棚上げして、「TPP加盟、宜しくネ」とはいかないのだ。ここら当たりが、中国の「戦狼外交」の独り善がりさを示している。

     


    下線部は、中国のWTO加盟に当って約束した部分が、未だに不履行である点を責められているのだ。こういう中国が、TPPの規定を守れるかという「皮肉」を浴びせられている。

     

    英国は現在、TPPへの加盟申請を終えて審査中である。来年の加盟が認められる方向だ。この英国が、中国加盟に「絶対反対」の意思を示している。その理由は、豪州と同じでWTOの規定すら守らない中国が、TPPの規定を守るはずがないというのである。中国は多分、TPP加盟でもこの手段を使ってくるであろう。「TPP条項を守る」と約束して、守らないというこれまでの常套手段を使う積もりだ。

     

    マレーシア政府は、中国のTPPへの加盟申請について「メンバーに迎えることを楽しみにしている」との声明を出し、支持する姿勢を示した。東南アジアの参加国ではシンガポールも歓迎の意向を表明している。東南アジアの参加国ではシンガポールも歓迎の意向を表明している。

     

    日本経済新聞の取材にマレーシア貿易産業省が19日、前記のように回答した。同省は16日の中国の加盟正式申請の発表に「非常に元気づけられた」とした上で、加盟に向けた参加国との交渉が早ければ2022年にも始まるとの認識を示した。中国が実際に加盟すれば「両国間の貿易と投資はさらなる高みに到達する」とし、貿易拡大への期待が加盟支持の主な理由だと明らかにした。以上は、『日本経済新聞』(9月21日付)が伝えた。

     

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