勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    米中の対立が深まるとともに、米国の対中圧力は一段と厳しくなってきた。すでに、貿易・技術の締め付けを行なっているが、外に資本市場で中国企業締出しを強化する構えである。だが、中国から伝えられる米国への対抗策は、稚拙なものばかり。中国は、保有する米国国債1兆ドル余の売却をちらつかせている。米国側は、全く無意味で素人が考える策だと、笑われているほど。

     

    国際金融市場を掌中にしている米国に対して、小技を掛けたところで怪我するのは中国なのだ。その現実を知らないから、米国に向かって「対等」を演じ粋がっているのが習近平氏とその一派の盲動である。下記の記事は、中国の一方的義務の放棄で、米国投資家を損させるという「奇襲策」である。

     

    国際金融市場では、「信頼」が絶対的な担保である。その担保が一方的に外されれば、中国企業は世界中から信頼を失うことになる。世界での起債もビジネスの契約も不可能だ。信頼できないからだ。また、米国政府が、黙って引き下がると想定しているところがナイーブである。米国は、関税率を引上げ、それで投資家の穴埋めをするであろう。要するに、中国には有効で合法的な対抗策がないのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月23日付)は、「米中対立、資本市場にも火種、中国対抗の構え」と題する記事を掲載した。

     

    米中対立が資本市場にも及ぶとの警戒感が市場で広がり出した。米国側は上院が中国企業を念頭に会計検査を拒んだ外国企業を上場廃止する法案を可決するなど、対中姿勢の硬化が鮮明だ。対抗して中国当局も米国投資家をリスクにさらす手段を打ち出すとの観測がくすぶる。中国企業が発行したドル建て債などについて、米投資家の利益を損なう制度見直しを通じ、米側を揺さぶるとの見方も浮上してきた。

     

    (1)「中国側が米国への対抗策として利用するのではないかと投資家が懸念を募らせているのが「キープウェル」と呼ばれる条項だ。一般に、親会社が子会社の財務を良好な状態に保つことを約束する内容で、海外で社債を発行して資金調達する子会社を支援するために付けることが多い」

     

    「キープウェル」条項を外して、中国企業の子会社に債務不履行させ、米国投資家に損させるというのだ。これほど、幼稚な話を聞いたことがない。この程度の知識しかないとすれば、呆れるほかない。これで信頼を失うことが、ブーメランとなってどれだけの損害に膨らむか。そういう想定ができないとすれば、ビジネスの継続は不可能である。

     

    (2)「5月上旬。経営再建中の国有企業、北大方正集団が、「キープウェルを付した債券は(支援の対象として)検討しない」との表明が伝わると債券市場に動揺が走った。北大方正は子会社が発行したドル建て社債17億ドル(1830億円)にキープウェルを付与しているが、償還が危ぶまれている。同社は過去の野放図な投資や買収がたたり、日本の会社更生手続きにあたる「重整」を進めている。裁判所の判断次第では「キープウェルが無効になる可能性がある」(上海天尚弁護士事務所の郝燦弁護士)」

     

    上記の国有企業、北大方正集団のケースは、意図的でないだろう。親会社の経営内容がよくて、意図的に米国投資家に損をさせる目的で「キープウェル」を外す場合、その反響は全く異なる。

     

    (3)「もともとキープウェル条項は親会社と債権者の契約ではなく、債権者は債券の元利払いを親会社に求めることはできない。「重整」手続き中とはいえ北京大学にルーツを持つ名門企業である同社の社債でキープウェルが機能しなければ、なし崩しに同条項を軽視する動きが広がりかねない。キープウェルが機能しなくなると、子会社の資金繰りへの懸念から社債の価格が下落するなど、特に米投資家が影響を被るリスクがある。格付け会社大手のフィッチ・レーティングスは、同条項がつく中国企業の社債は960億ドル(10兆円強)にのぼると指摘する

     

    キープウェル条項がつく中国企業の社債は、10兆円強にのぼるという。これが、意図的に外されるものならば、訴訟になるだろう。米国政府も放置しまい。関税率引き上げで対抗すると見られる。中国にとっては、トータルの計算で損を被るはずだ。

     


    (4)「さらに米国で上場する中国企業の株式では、中国の法規制を回避するため使われる「VIE(変動持ち分事業体)」と呼ばれる仕組みに不確実性があるとされる。おおざっぱにいえば企業を2つの部分に分けて、1つが中国事業を手掛け、もう1つが海外上場などを果たす枠組みだ。VIEはアリババ集団や百度など、米国に上場する中国企業に幅広く採用されている。海外投資家は企業の株式を直接保有するのではなく、様々な契約を通じて同等の権利を確保する。だが、現時点では中国の法律にはあいまいな部分が残り、今後の動向によっては海外投資家が権利の制約を受けかねない。14年に米上場を果たしたアリババも、目論見書に、VIEが外資規制に抵触すると中国政府が判断した場合に、投資家が損失を被る可能性を記載している」

     

    海外投資家は企業の株式を直接保有するのではなく、様々な契約を通じて同等の権利を確保する。これが、「VIE(変動持ち分事業体)」と呼ばれる仕組みだ。現時点では中国の法律にはあいまいな部分が残り、今後の動向によっては海外投資家が権利の制約を受けかねないという。14年に米上場を果たしたアリババの目論見書に、VIEが外資規制に抵触すると中国政府が判断した場合に、投資家が損失を被る可能性を記載している。中国政府が、この曖昧な部分を悪用すれば、国際紛争に発展する。中国政府はそれを承知で行なうほど、常識知らずであろうか。

     

    (5)「実際に中国当局が海外投資家の権利を損ねる動きを本格化させれば、中国側も企業の資金調達が難しくなるという返り血を浴びる。対米けん制手段として取り沙汰されることが多い、中国政府が保有する米国債の売却と同様に「抜かずの宝刀」に近い。それでも、トランプ米政権が中国企業への圧力を強めるなか、米側にくぎを刺す一連の動きのなかにキープウェルやVIEが浮上する可能性は否定できない。中国当局が可能性に言及するなどの動きが出てくれば、市場の波乱要因になる懸念がある。米中摩擦が激しさを増す中で不確実性は高まっている」

     

    中国の経常黒字が、間もなくゼロになる。こういう事態では、海外での資金調達が必須条件になる。その中国が、唯一の生き綱を米国への復讐で断ち切るほど愚かであれば、「世界覇権論」は白昼夢となる。もはや、「何おか言わんや」である。


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    中国は、22日の全人代で何を発表するか、世界が注目していた。コロナ禍で経済実態は、大きく落込んでおり、恒例になっていたGDP成長率目標の発表を取り下げる代わりに、香港へ本土と同様の国家安全法を適用すると発表したのだ。台湾に対しては、従来の「平和的統一」から「平和」の二字を削って、強硬姿勢を見せた。中国本土に渦巻く不満を、香港と台湾への強硬策で交わそうという算段だ。

     

    香港へ適用する国家安全法で、中国政府は何を狙っているのか。

     

    中国では、政府がこの法律を使って活動家を取り締まり、政治的目標を推進してきた。例えば今年、本土で禁止されているゴシップ本を販売した香港の書店関係者がスパイ罪で禁錮10年を言い渡された。中国は昨年、カナダ人の研究者と元外交官を拘束した際にやはりスパイ罪を理由に挙げたが、これはカナダが華為技術(ファーウェイ)幹部を拘束したことに対する報復措置だとみられている。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月22日付)が報じたもの。要する、香港の民主化運動を一網打尽にする「最悪法」である。

     


    『フィナンシャル・タイムズ』(5月22日付)は、「中国、香港治安法制強化へ、米の反発必至」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は香港に国家安全法を導入する準備を進めている。法的な強制力を示す狙いだが、香港の抗議デモを再燃させ、米中間の緊張悪化につながる恐れが強い。計画について説明を受けた関係者2人によると、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が法案をまとめ、香港の立法会(議会)を通さずに直接、香港基本法(憲法に相当)に組み入れる方針だ。

     

    (1)「香港バプテスト大学のジャン・ピエール・カベスタン教授(政治学)は、国家安全法を香港に導入しようとする中国政府の動きは「火に油を注いで抗議運動を再燃させる」だろうと話す。立法会の民主派議員、陳淑荘(タンヤ・チャン)氏は「香港の歴史上、最も悲しい日だ。明らかに(一国二制度ではなく)一国一制度であるということを示すもので、極めて大きな後退だ」と語った。立法会は親中派議員が多数を占めるが、それでも香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は昨年6月、市民の猛反発を受けて「逃亡犯条例」改正案を成立させることができなかった。同改正案は、特定の犯罪を対象に香港市民を中国本土で裁判にかけることを可能にする内容だった」

     

    香港は現在、新型コロナウイルスでデモは休止となっているが、政府に対する怒りは強い。この夏のデモは、天安門事件のあった6月4日。昨年、最初の大規模デモが起きた6月9日。香港が英国から中国に返還された7月1日に再開するとみられている。この機先を制するような国家安全法の強制導入である。今からデモ隊と警察との激しい攻防が危惧される。

     

    (2)「中国の当局者らは、香港の親中派が9月の立法会選挙で多数を失う事態も恐れている。昨年11月の区議会(地方議会)選挙は、林鄭氏の危機対応と強圧的な姿勢を強める中国政府の対香港政策に対する信任投票と見なされ、民主派が圧勝した。新型コロナ禍でほぼ3カ月延期されていた全人代は22日に開幕。中国経済は今年13月期にほぼ7%の歴史的なマイナス成長に落ち込み、その立て直しが最大の焦点になるものとみられていた。だが、焦点は香港に移りそうだ。香港問題は米中摩擦でも重みを増している」

     

    香港へ国家安全法が適用されれば、香港の親中派が9月の立法会選挙で多数を失うことは確実だ。区議会も反中派が占めており、香港は立法会・区議会がともに反中派が支配する事態を迎える。香港は、これで米中の激しい対立の舞台になることは不可避となった、

     


    (3)「米上院ではクリス・バン・ホレン(民主党、メリーランド州選出)、パット・トゥーミー(共和党、ペンシルベニア州)の両議員が21日、香港への国家安全法導入に関与した中国共産党の当局者に制裁を科し、同法の執行に関わる組織と取引した銀行も処罰する法案を提出した「昨年、香港では何百万人もの市民が民主的な自由を求めて街頭に繰り出した」と、法案を直ちに取り上げるよう求めるバン・ホレン議員は述べた。「中国の残忍な弾圧、そして香港の政治的自由を侵そうとする度重なる試みにもかかわらず、彼らの抗議は続いている」テッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州)は「香港に残された自治を断とうとする」中国の動きを非難した」

     

    (4)「トランプ大統領は、中国政府が法案を成立させれば、米国は「極めて強力に対処する」ことになると述べた。中国の当局者らは、米国主導の「外国勢力」が昨年、香港の混乱を扇動したと非難している。これに対して、米政府は香港人権・民主主義法を成立させた。外交・防衛を除く分野で香港に約束された自治が中国政府によって侵害されていないか、国務長官に検証を義務付ける内容だ。香港の「一国二制度」に綻びが生じているとポンペオ国務長官が判断すれば、トランプ氏は米国が中国本土とは別扱いで香港に認めている経済・貿易上の優遇措置を停止することができる」

     

    米議会は、いち早く反応している。当面は、「香港への国家安全法導入に関与した中国共産党の当局者に制裁を科し、同法の執行に関わる組織と取引した銀行も処罰する法案を提出」という素早い動きだ。米国の「制裁」はこれだけでない。今年、発効させた「香港人権・民主主義法」で対抗し、香港へ与えてきた米国の特恵(関税など)を廃止するという圧力を掛ける。これは、中国に経済的な損失をもたらし、香港の金融的地位は大きく毀損する。米国にも痛手だが、米国はそれに怯まず、中国を叩くであろう。米中デカップリングの実現へ向けて、さらに一歩前進するであろう。

     

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    米国は、中国への怒りが本格化している。中国政府の支配権の強い中国株は、米国で上場させないという法案が上院で通過した。これに呼応して、下院も同様の趣旨の法案を可決させる公算が強まった。米国は、貿易・技術・資本市場の3面で、中国を追出す戦略を明確にしたのである。

     

    武漢の新型コロナウイルスは、米国から持込まれた。こういう中国外交部のフェークニュースが、中国への本格的な怒りに火を付けてしまった。米国は、日本の真珠湾奇襲攻撃で怒ったように、コロナ・フェイクニュースによって中国へ立ち向かわせている。中国は、愚かな小細工をやったものである。身を滅ぼす種を蒔いたのだ。

     

    『ブルーンバーグ』(5月21日付)は、「米上院、中国企業の米国上場廃止につながり得る法案を可決」と題する記事を掲載した。

     

    米上院は20日、アリババ・グループ・ホールディングスや百度(バイドゥ)などの中国企業による米証券取引所への株式上場を禁止することにつながり得る法案を全会一致で可決した。

     

    (1)「同法案は、ジョン・ケネディ議員(共和)とクリス・バンホーレン議員(民主)が提出したもので、外国政府の管理下にないことを企業に証明を求める内容。企業がそれを証明できないか、米公開会社会計監督委員会(PCAOB)が3年連続で会社を監査して外国政府の管理下にないと断定できない場合、当該企業の証券の上場は禁止される」

     

    下線部が、外国企業が米国で上場できる条件とした。これは、中国企業を指しており、中国政府が強い支配権を持っていないことを企業に証明させるというもの。中国企業は、すべて中国共産党委員会が入り込んでいる。これは、中国政府の支配下にあると見なされよう。米国上場は、アウトになる。総引上げを迫られるのだ。

     

    すでに、ナスダック市場も中国企業上場に関門を設けている。その上、中国企業はNY市場からも締め出される。中国企業の受ける打撃は大きい。

     


    (2)「ケネディ議員は、上院の議場で「私は新しい冷戦に参加したくはない」と述べ、「中国が規則に従って行動する」ことを求めると付け加えた。ケネディ議員は19日、同法案がナスダックとニューヨーク証券取引所などの米株式市場に適用されるとFOXビジネスに話した。バンホーレン議員は発表文で、「上場企業は全て同じ基準を順守すべきだ。この法案は条件を公平にするとともに、投資家が詳細情報を得て決断を下す上で必要な透明性をもたらすために良識的な変更を行うものだ」と説明し、下院に速やかな行動を呼び掛けた」

     

    下線部分は、中国企業は自主的にNY市場から撤退すべきだと勧告している。米国が、強制的に排除するのを待っているな、という強い姿勢を見せている。中国企業は、米国から締め出されれば、米国の資金を取り込めないという痛手を被る。これを計算しないで、習近平氏は「米国覇権に挑戦する」と場違いな宣言をしてしまったのだ。

     

    (3)「米国の監督が強化されれば、馬雲(ジャック・マー)氏の螞蟻金融服務集団(アント・ファイナンシャル)やソフトバンクグループが出資するバイトダンス(字節跳動)など中国主要企業の将来の上場計画にも影響する可能性がある。しかし、開示義務強化の議論が昨年始まって以来、他の中国企業の多くはすでに香港市場に上場したか、そうする計画だと、ハルクスでアナリスト兼ポートフォリオマネジャーを務めるジェームズ・ハル氏は指摘した」

     

    昨年12月、アリババは香港に上場しており、リスク回避に動いている。他社も追随する動きが予想されている。米国政府は、連邦公務員退職年金の運用対象から中国株を外すよう、指示している。米国の資金は一切、中国企業に投資させないという強硬策である。その理由は、次のようなものだ。米国の貴重な貯蓄は、米国に危害を加えようとする国家の企業に投資させないというもの。米中デカップリング論の実践である。

     

    (4)「下院金融委員会のブラッド・シャーマン議員(民主)は、上院の法案への幅広い支持を反映する形で同様の法案を下院に提出した。シャーマン氏は発表文で、会計不祥事の発覚でナスダックが中国の瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)の上場廃止に向けて動きだした点に言及。「私はこの重大な問題に取り組むために動いた上院議員を称賛する。この法案が既に成立していればラッキンコーヒーの米国株主は恐らく多額の損失を回避できていただろう」とコメントした」

     

    (5)「下院指導部は同法案と、別に上院で可決されたイスラム教徒の少数民族に対する人権侵害を巡り中国当局者に制裁を科す法案について、議員や関係する委員会と協議していると民主党スタッフは明らかにした」

     

    米下院も、上院の動きに呼応して同趣旨の法案を上程した。米国の中国に向けた敵意から、短時間で議決され大統領署名を経て発効するはずだ。中国は、この事態に対して、どう反応するか。しまった、と感じるに違いない。中国株は、米国という最大の市場から排除されるのである。

     

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    中国で年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日から開催される。新型コロナウイルスの影響で、予定から2ヶ月半遅れての開催である。注目される2020年のGDPの実質成長率数値目標は、設定を見送る可能性が指摘されている。

     

    コロナ感染拡大以降では初の政治イベントである。習近平国家主席は、共産党の結束を打ち出すとともに、反対派を封じ込め、大きな打撃を受けた国内景気の再生に全力を挙げる姿勢をどこまで示すのか。それも注目点である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月21日付)は、「全人代開幕へ、経済再生目指す習体制にコロナの影」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「習氏の側近らは指導部を称賛するなど、党の結束を示唆している。だが、共産党の動向に詳しい筋は、習氏の最近の言動からは、コロナによる政治的な悪影響を危惧していることがうかがえると指摘する。コロナ感染拡大で中国では景気が大きく冷え込んだほか、党の危機管理での亀裂も露呈した。党関係者らなどからは、習氏が意志決定の全体的な権限を握り、仕事ぶりが優れない幹部への処罰をちらつかせていることが、コロナ危機への初動のまずさを増幅したとの指摘が上がっている。当局者の間で、上層部にネガティブな報告はしたくないとの雰囲気が広がるためだ

     

    下線部は、習独裁体制のもたらす官僚の萎縮が、組織の活性化を阻んでいる点を指摘している。新型コロナウイルスの初動で出遅れたのは、独裁制のもたらした必然的結果である。独裁を強化すればするほど、中国は不活発になって泥沼に落込むリスクを高める。これこそ、毛沢東の指摘した「矛盾論」そのものであり、必ず最後は「止揚」(アウフヘーベン)される。習体制の敗北である。

     

    (2)「清華大学の元政治学講師、呉強氏は、コロナ流行による政治・経済・外交面の影響を巡り疑問が生じているとしたうえでこう指摘する。「(コロナが)習氏の指導体制に影を落としている。習政権は統治体制に対する信認を必要としている」 。習氏はここ2カ月、各地を相次いで訪問し、自身が掲げる貧困撲滅や国家の産業力強化を強調。地元当局者に対して、企業や雇用の支援、コロナ感染再発防止を指示している。一方で、当局は習氏の批判派の尋問・拘束にも動いている。習政権は先月、党内に新たな連携組織を創設。コロナによる経済不振で高まる社会不安の追跡・抑制などを担わせ、「平和な中国」の構築を監督する」

     

    下線部は、重要な点を指摘している。習氏は、自らの失点を反省することなく、強権をもって沈黙させる最悪手段を取っている。自殺行為である。いくら監視カメラを増やし、インターネットの検閲を強化しても、習体制の矛楯は解決しないのだ。習氏は、権力の持つ魔力に取り込まれてしまった。

     

    (4)「中国のコロナ対応への批判をかわすため、習氏は世界の新型ウイルス対策向けに20億ドル(約2200億円)規模の支援を表明。ウイルスの起源に関する研究支援も約束し、外国首脳らに国際貿易や投資の復活を訴えた。その一方で、中国外交官や国営メディアは、パンデミック(世界的大流行)にまで発展したコロナ禍の責任の所在を巡り、米当局者と非難の応酬を繰り広げ、国民の愛国心をあおる。全人代は、共産党幹部が結束をうたい優先課題を打ち出す場で、政治的なショーの様相が強い」

     

    習氏は、東条英機と同じ過ちに陥っている。共通点は、民族主義者に踊らされていること。東条は、若手将校の突き上げによって日米開戦に突入した。習氏は、自らの権力拡大の先兵になった民族派に、今や引きずられている。「米国、なにものとせず」という向う見ず派の口車に乗せられているのだ。

     

    (5)「中国政治の専門家は今年の全人代について、中国がコロナを克服した象徴的な瞬間として習氏が位置づけると予想している。コロナに打ち勝ったとの自信を示すとともに、独裁的な同氏の指導スタイルに対する国内外の批判に反撃する機会にするという。「今年の全人代では間違いなく、習指揮下の政治システムになお揺らぎがないことを前面に打ち出そうとする」。こう指摘するのは、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国政治専門家、ジュード・ブランシェット氏だ。「国内の最大関心事は景気回復と雇用の安定だ」。

     

    習氏は、今年の全人代で超強気の発言をして、「習体制健在」を内外にアピールすると見られている。何を言うか。大風呂敷は確実と見られる。

     

    (6)「大規模な都市封鎖などのコロナ対策は、中国国内のウイルスの封じ込めには成功した。だが一方で、消費は冷え込み、サプライチェーン(供給網)に大きな混乱をもたらすなど、経済に大きな爪あとを残した。共産党は経済規模を10年前の水準から2020年末までに倍増させるとの目標を掲げているが、政府はここ数年あまり表だって主張していない。目標達成には今年5.5%の成長率を確保する必要があるとみられている。だが、1~3月期の中国経済は数十年ぶりのマイナス成長に沈んでおり、今年の成長目標については、引き下げるかより柔軟な目標にする、もしくは目標自体を撤回するのではないかとの見方も出ている

     

    中国経済は、コロナ禍で相当に痛んでいる。一気に「老化」したのだ。今年のGDPは、5.5%以上でなければ、2020年のGDP倍増(2010年比)計画は未達になる。過去の計画に固執するか、新事態に即応するかだ。もともと、今回のパンダミックは、習体制の強権が生んだ矛楯である。最大の責任は、習近平その人にある。パンダミックは、習近平の個人的栄誉欲が招いた悲劇なのだ。

     

     

     

     

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    中国は、国内市場を外資に開放すると言いながら、政府調達では外資系製品を入札から外す動きに出ている。2018年後半からだという。米中貿易戦争が始まると同時に開始した、国内市場保護策である。これは、WTO(世界貿易機関)のルール違反である。中国にとって、ルールは破るためにあるようなもの。この無法国は、恐れを知らない振る舞いを行なっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月21日付)は、「中国、IT国産化推進へ『秘密組織』」と題する記事を掲載した。

     

    中国がパソコンや印刷機、複写機などIT(情報技術)機器の政府調達で、外資企業の製品を少しずつ締め出している。取材を進めると、IT国産化に向けて産官学が集まった「秘密組織」の存在が浮かんできた。「おかしい。絶対に何か起きている」。多くの日本企業が異変を感じたのは昨年夏のことだった。上海市などの印刷機の政府調達で落札できない例が増えた。複写機やパソコンも日本や米国の企業の落札が難しくなっていた。

     

    (1)「ある日本企業は長年取引があった大手国有企業から「御社の複写機を買うことはできない」と告げられ、理由として「(情報を抜き取る)『バックドア(裏口)』がついているのではないか」と指摘された。「安全面は絶対に大丈夫だ」と説明しても取りあってくれなかった。複数のメーカー関係者は「外資排除のカギは『安可』だ」と明かす。正式名称は「安全可靠(かこう)工作委員会」。政府系組織「中国電子工業技術標準化協会」の傘下にひっそりと存在する、産官学でつくる会議体だ

     

    下線のような外資系製品排除の政府系組織が作られている。略称は「安可」である。

     

    (2)「2016年の設立当初の団体規約によると、安可は「安全で信頼できるハード、ソフトのコア技術の研究、応用をする非営利の社会組織」。運営費は「会費、利息収入、政府支援など」と記し、税金が投入されていることが分かる。理事会員はアリババ集団系や華為技術(ファーウェイ)系を含む企業、工業情報化省の研究所など政府機関、さらに北京航空航天大学と北京理工大学という産官学が名を連ねる」

     

    安可は、民間企業の組織だが、税金がつぎ込まれている。実態は、産官学の合同組織である。

     


    (3)「『安可』という名前を外国人が知っていてはいけない」。安可の職員は接触した外国人にこう告げる。外資の警戒を招きやすい「安可」に替え、最近は「信創」という前向きな響きの名前を使うことが多いようだ。複数の関係者によると、安可は会員企業の商品を集めた「安可(信創)目録」の案をつくり、工業情報化省が審査する。地方政府などは目録から調達商品を選ぶ。メーカー関係者が記者に見せた目録には、印刷機、複写機、ウイルス対策ソフトなど商品ごとに企業名や型番、価格まで書いてあった。基本はすべて安可の会員企業の商品だ」

     

    安可は、会員企業の商品を集めた「安可(信創)目録」の案をつくり、工業情報化省が審査する。地方政府などは、目録から調達商品を選ぶシステムである。WTOは、こういう非公開の入札システムを禁止しているが、中国政府は型破りにお構いなしである。こういう国を、国際組織に加盟させてはいけないのだ。

     

    (4)「購入目録に載るには5つの条件を満たす必要があるとされる。「非外資」「中国で生産」「中国で設計・デザイン」「自社で製品機能を試験できる」「アフターサービスができる」。5条件はさらに細かな点検項目がある。「非外資」ならば外資比率20%以下、社長もその配偶者も中国籍、中国での3年以上の販売実績など。点検項目は全部で100を超し、外資企業の商品はまず採用されない」

     

    購入リストに載る条件は5つ。

    非外資

    中国で生産

    中国で設計・デザイン

    自社で製品機能を試験できる

    アフターサービスができる

     

    前記の5項目は、純然たる中国国産を要求していることが分かる。中国が、ここまでWTO違反をやっているのだから、いっそのことWTOから排除すればよい。そうすれば、目を覚ますであろう。

     

    (5)「これらの条件は工業情報化省の担当者が口頭で伝え、紙は渡さない。目録の登録審査では工業情報化省の担当者34人が企業を訪れ、工場などに2週間ほど滞在して調べるとされる。口頭で質問し、口頭で答えるやり取りを100項目にわたって続けるという。検査機器の領収書まで調べる念の入れようだ。外資排除は18年後半から始まったようだ。ちょうど米中の貿易戦争が起きた頃で、習近平(シー・ジンピン)国家主席は18年9月に「自力更生」を国民に呼びかけた。建国の父、毛沢東が唱えた言葉で、外国に頼らず自力で困難な状況を切り開くとの意味だ。政府の情報機器を国産化する動きと符合する」

     

    中国は、秘密裏にやっている積もりだが裏が割れている。こういう違法行為が、制裁も受けずに長期に続くはずがない。必ず、懲罰を受けるであろう。

     

    (6)「中国の業界試算では政府や共産党のすべての情報機器やソフトの更新需要は総額2兆元(約30兆円)。一部の日本企業は安可会員の中国企業にOEM(相手先ブランドによる生産)供給し、規制を乗り切る方針のようだ。当面は問題がなくても、規制の過渡期が終われば、最終的にはOEMも含めて外資が排除されかねない」

     

    中国の業界試算では政府や共産党のすべての情報機器やソフトの更新需要は、総額約30兆円に及ぶという。これを、外資に渡さないという意図である。

     

    (7)「在中国の米企業でつくる中国米国商会は、4月末の年次白書で「中国は暗示的、未公開もしくは内部指針を使い、米国など外国製品の代わりに国産製品を利用するよう要求するのをやめるべきだ」と批判した。中国は外資企業の投資を保護する「外商投資法」を20年1月に施行したばかり。同法16条は「外資企業が公平な競争を通じて政府調達に参加することを保障」と明記し、安可の動きは同法違反が疑われる。北京の日本大使館は法律を所管する中国商務省に水面下で懸念を伝えたが、回答は「安全保障の問題なのでどうしようもない」だった」

     

    下線部は、外商投資法違反である。20年1月に施行したばかりの法律違反を堂々と行なっている。中国政府を信じろと言われても信じられないのだ。こういう「噓八百」を繰返している理由は何か。いつの日か、自由主義諸国を屈服させるという政治的意図に外ならない。ここまで、その意図が見通せる以上、「先制攻撃」で経済的な包囲網を徹底化させて、中国が根をあげるまで縛り上げること。容赦はしないことだ。相手が悪意を持っている以上、妥協は禁物である。

     

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