左派は現実無視の空想追い
文氏の書店経営が典型例に
尹大統領の経済自由化宣言
経済学者も現実を認識せず
韓国左派の人々は、民族主義グループである。常識的には右派と称すべきだが、軍事政権に対抗して民主化運動を担ったことから、左派という区分けになる。民主化運動の意図は南北統一であり、北朝鮮の共産主義容認という点で紛れもなく左派である。
冒頭からややこしい話を始めたのは、韓国左派が欧米左派と異なり、自由や実質平等を尊重する度合いがはなはだ少ないことだ。既得権益に身を纏っているのである。韓国は共産主義政党を禁じている。共産主義同調者は、それを隠して左派と称し、政治活動をしている面々も多いのだ。
韓国左派が、共産主義容認であることは間違いない。中国への親近感は格別であるからだ。その筆頭は、前大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏であろう。大統領在任5年間の政策は、中朝接近と日本批判に費やしていた。民族主義の立場から言えば当然であろう。南北融和から南北統一へ進むには、日本批判をテコに中朝へ接近する構図を描いていたことは事実だ。
韓国左派にとっては、中国経済の動向が最も気懸りのはずである。中国が、米国を凌ぐような発展を遂げれば、その力を借りて南北統一への夢が実現できると見ていたからだ。つまり、事大主義である。その中国経済は、大きな陰りがより明確になってきた。
中国の2022年GDP成長率は3.0%に止まった。当初予想の5.5%前後という目標から見れば、達成率5割という不甲斐ない結果である。さらに、22年の人口が61年ぶりに減少して、人口減社会へ移った。これは、「中国全盛期」の終焉を意味するものである。韓国左派にとっては、政治的支え棒を失ったような衝撃であろう。
左派は現実無視の空想追い
韓国左派の政策は、文前政権5年間で明らかにされたように、現実からかけ離れた「空想」を追いかけていた。生産性を上回る最低賃金引上げを強行したように、現実に足を降ろした政策ではなかった。脱原発も強行した。発電コストの高騰を放置した結果、韓国電力に厖大な赤字を溜め込んで、巨額な債券発行を余儀なくされる。こういう、笑うに笑えない現象の連続であった。
現実を無視して、ただ理想を追うことがいかに危険であるか。それは、文政権5年間で嫌と言うほど見せつけられた。
文前大統領は、退任後も「個人の夢」を追っている。隠棲している平山村(約100戸:住民約500人)で、この2~3月頃に書店を開店するという。一見すると、読書好きの文氏らしい企画で微笑ましくもあり、拍手を送りたいところだが、「待てよ」という気持ちになるのだ。日本もそうだが、韓国でも小型書店は営業難で廃業に追込まれている。ましてや、読書人口は、平山村の500人のうち大目に見ても200人程度であろう。そういう、小さな商圏で書店営業が成り立つとは思えない。
ここに、文氏独特の現実を無視した「理想論」先行の危険性が現れている。確かに、書店は人々の教養を高める上で不可欠としても、営業が成り立たなければ継続は不可能である。最低賃金の大幅引き上げや、脱原発の強行と同じ過ちに陥るのは必定であろう。ただ、文氏の熱烈支持者が、平山村まで出向いて本を購入することはあるかも知れない。だが、アマゾンで簡単に本を入手できる現在、この熱烈支持者の応援も次第に少なくなろう。
もう一つ付け加えなければならない。文氏自身が、書店に立って働くと言う。これは、大統領経験者に付きそう警護官の仕事を増やすことになる。「税金無駄使い」という批判が出て来そうである。文氏に払われる年金で賄えば別だが、気になる問題だ。
文氏の書店経営が典型例に
文氏の書店経営問題を例にして、韓国左派が現実無視で空想を追っている現実を取り上げたが、中国接近論もこの範疇に入る。米韓は、安全保障条約で結ばれた関係国である。安全保障は、一国の安全を維持する上で絶対的な枠組である。韓国左派は、この現実を無視して中国との「二股外交」に力を入れてきた。
文氏は、大統領時代に米朝関係のバランスを取る調整役を任じる程であった。いささか、自己過信に陥っていたが、中国との外交的パイプを生かせるという自負心もあったのであろう。だが、米国は世界戦略の一環として中朝問題を捉えていたのである。残念ながら、文氏にはそういう視点はなかったのだ。
文氏は結局、大統領在任中に何らの外交成果も上げられずに退任した。頼みの綱とした中国が動かなかったからだ。中国の本心は、南北接近に反対である。北朝鮮は現状のままであれば、中国にとって韓国=米国との緩衝地帯になって中国の安全保障上、有利であるからだ。文氏は、こういう深読みができず、同盟国である米国よりも中国の顔色を伺う偏った外交政策になった。(つづく)
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