勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    習近平氏は、政敵を倒す嗅覚は優れているが、経済面では不動産バブルを放置・拡大させて失敗した。彼は、国有企業を中国経済の核に据える点で間違いもしている。国有企業が政府の支援を受けるので、経営が本質的に甘くなる根本的な弱点を抱えているからだ。

     

    胡錦濤政権までは、「民進国退」という基本原則を守ってきた。民営企業を優先して国有企業は徐々に後退させるという構想である。ところが、習近平政権では逆のことが起こった。「国進民退」である。国有企業を核にして民営企業を補佐役にするというもの。習氏の一存で方向転換した。この大転換には、「紅二代」とされる共産党古参幹部の二代目との約束があったとされる。

     

    習氏は、国家主席就任の正式決定から一ヶ月ほど、公の席に姿を現さなかったことがある。実は、その間に「紅二代」のメンバー一人一人に会い、協力を取り付けていたという。習氏も「紅二代」である。その時、国有企業に利権を持つ「紅二代」が、国有企業の「主流復帰」を要請したのでないかと見られる。この「密約」によって、「民進国退」路線はあっさりを捨てられた。

     

    中国政治は、全て密室で決まっている。経済政策は「刺身のツマ」程度の扱いであろう。先進国の経済政策とは本質的に異なるのだ。「民進国退」があっさり捨てられ、国有企業が、中国経済の主流を担う誤った政策を採用したのは、習氏とその取り巻きの「紅二代」である。「国民の人権と尊厳を守る」と仰々しく言っているが、それはただの宣伝文句に過ぎない。

     

    『日本経済新聞』(8月22日付)は、「中国、国有企業の優遇転換を」と題する記事を掲載した。筆者は、アバディーン・スタンダード・インベストメンツのシニアエコノミスト、アレキサンダー・ウルフ氏である。

     

    (1)「中国では、国有企業が政府などから様々な支援を受けることができる。一方、(支援を受けにくい)民営企業は概して、国有企業より効率性が高いといえる。政府はIT(情報技術)のようなニューエコノミーの分野の企業に成長をけん引させたいと考えており、革新的な民営企業が先頭に立つべきだろう」

     

    中国政府が、国有企業を隠れ蓑にして補助金を与えていることは周知のこと。現在、米中貿易戦争で米国から厳しい批判を浴びている点だ。こういう「甘やかし」が、経営効率を劣ったままにしている理由である。

     

    (2)「ところが、利益率や資産負債比率などの指標をみると、民営企業は弱体化しているようにみえる。当局は、銀行を介さずに資金をやり取りするシャドーバンキング(影の銀行)を締め付けた。融資が減り企業全体で債務不履行が増えたのは、驚くことではない。しかし、民営企業が債務不履行となったのが目を引く」

     

    中国経済の最大の弱点は、金融機構が整備されていないことだ。国有銀行は、国有企業の取引銀行である。民営企業には、影の銀行ぐらいしかない融資しないという跛行的な状態に置かれている。最近、劉鶴副首相が「中小企業の融資拡充が必要」と強調した裏で、金融機構の未整備という欠陥を露呈している。日本の金融機構の整備と比べて、月とスッポンの違いだ。

     

    (3)「こうした現象は、民営企業にとって不利に働く要因によると考えられる。まず、事業環境の悪化が利益の伸びを低下させ、損失を膨らませた。次に、影の銀行への締め付けは、民営企業が成長するための融資の重要な供給源を奪い去った。国有銀行の多くは国有企業への融資を好む。民営企業は、国有企業には与えられる傾向のある、地方政府や銀行による低利融資などの支援も得にくい。民営企業の様々な不利益は、中国の金融システムの構造的な欠陥を明らかにするとともに、成長へのリスクも浮き彫りにする」

     

    習氏は、影の銀行が不動産融資の供給先と見て、ここを締め付ければ不動産バブルが鎮火する。そう早合点していた。影の銀行は、不動産融資のほかに民営企業一般の融資窓口であった。それに気付かなかったという考えられない政策ミスを犯した。影の銀行の融資を絞ったことが、民営企業のデフォルト多発の理由である。

     

    (4)「民営企業が不利益を被る傾向は、多国籍企業の中国での投資や事業にも影響を与えている。外国企業は、事業の効率化や生産性向上などの面でも中国の急成長に貢献してきた。だが、国有企業を優遇する政策は、外国企業を中国以外へ投資したいと思わせるかもしれない。国有企業の健全化が民営企業の犠牲のうえに進むなら、称賛には値しない。政策決定者は生産の割り当てよりも市場の機能を働かせ、民営企業の信用を高める必要がある。民営企業が国有企業と競争できないなら、中国の長期的な成長力は損なわれるだろう」

     

    習氏は、市場機構を毛嫌いしている。彼のような国粋主義者には、市場機構が「西洋の化け物」に見えるのだ。市場機構の下では、権力者の命令を受け入れず、合理性のあるものしか生存できない仕組みである。習氏にとっては、このメカニズムが理解不可能なのだ。

     


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    習氏が、不動産バブルを使って経済成長率を高めに維持してきたことは、このブログで繰り返し取り上げている。その意味で、習氏はバブルという波乗りを上手くやってきたという自負があるかも知れない。まだ、そういう結論が出たわけではない。現に、習氏はバブルの後遺症を恐れて、影の銀行融資を急激に引締めさせたのだ。自らの政策が「正道」であったとするならば、今年4~6月にあの「狂った」ような引締めはあり得ない。大慌てで「店じまいする」という風情であるからだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月15日付)は、「中国債務問題、習氏の政治的な傷になるか?」と題する記事を掲載した。

     

    この記事では、盤石の政治基盤を擁する習近平氏が、4月以降の急激な金融引締めによって政治的に傷を負っているのでないかと指摘している。確かに、習氏は米中貿易戦争の影響を軽く見ていた。米国の大豆に関税をかければ、トランプ支持派の農村が貿易摩擦を止める。そう思っていたのだろう。だから、「徹底抗戦」などという勇ましい発言を駐米中国大使に繰り返し言わせていた。いまや、沈黙を余儀なくされている。

     

    習氏が見せた国内の強硬策は、急激な金融引締めである。それが、中国経済に傷跡を残すのでないか、という点である。この2点について見ておきたい。

     

    (5)「中国が借り入れを減らし、より効率的に投資すべきであるのは誰もが認めるところだ。だとしても、銀行からの融資が難しい小規模な民間企業への影響を考えると、債券市場とシャドーバンキング(影の銀行)を同時に締め付けるのは常に危険と隣り合わせだ。今年、損失が表面化するのを注視していた地方官僚は、恐らくおじけづくあまり、率直に声を上げられなかったのだろう。その結果、民間企業への貸し渋りが急増。前例のない数の社債デフォルト(債務不履行)が発生している」

     

    非金融部門(社債、シャドーバンキングを含む)貸出は、4月の増加額を絞った上に、5月以降に急減させた。これが、中国経済に混乱をもたらした。次のパラグラフのように、4月以降で1.5兆元も減っている。

     

    習氏が、米中貿易戦争の影響を軽微と判断した根拠は、非金融部門の貸出残高(対前月比)の増減高に表れている。資料は、WSJ(8月15日付)による。

     

    2018年4月 +2989億元

         5月 -4625億元

         6月 -6281億元

         7月 -4177億元

     

    上記の貸出残高の増減を見ると、米中貿易戦争の影響など全く考えていなかったことを窺わせている。習氏の「鶴の一声」で強気を貫いていたにちがいない。

     

    (6)「非金融部門貸出残高は4月以降だけで1.5兆元(約24兆円)余り減少し、過去10年間で最も急激な落ち込みとなった。政策担当者は今や、金融・財政政策を緩和することで、この2年間の債務圧縮の動きを巻き戻すよりほかに道がないだろう」

     

    今後、非金融部門貸出残高の急激な絞り込み後遺症が、どういう形で出てくるか。それはまだ不明である。7月のマネーサプライ(M2)が、前年比8.5%増と6月よりも0.5%ポイント増になったが、銀行も新規貸付けに慎重であることを示している。

     

    今後の中国景気は、どう動くか。

     

    『ブルームバーグ』(8月22日付)は、「中国経済、来年はさらに減速かートランプ政権2000億ドル関税発動なら」と題する記事を掲載した。

     

    (7)「米国と中国が相互に追加関税の賦課を続けた場合、来年の中国経済はさらに減速する見通しだ。ブルームバーグが今月実施したアナリスト16人に対する調査の予想中央値によると、米国が2000億ドル(約22兆円)相当の中国からの輸入品に追加関税を賦課し、中国側が報復として600億ドル相当の米国製品にさらなる関税を課した場合、中国経済の成長率は今年0.2ポイント、来年は0.3ポイントそれぞれ押し下げられる見込みだ」

     

    中国経済の成長率は、今年0.2ポイント、来年は0.3ポイントそれぞれ押し下げられる見込みである。

     

    (8)「ブルームバーグの別の調査では、来年の中国経済が6.3%成長と、今年見込まれている6.6%から減速すると予想されるが、全ての見通しが追加関税計画を織り込んでいるわけではない。他の主要国経済に比べればなお高い成長率だが、ペースが鈍ると2020年に10年比でGDPを2倍にするとの目標達成も不透明になる」

     

    中国が経済減速を迫られることは不可避であろう。2020年に10年比でGDPを2倍にする目標は、不動産バブルを織りこんだもの。習氏は、これを実現して「中所得国の罠」を回避し、永久政権を目論んでいただろう。それが、米中貿易戦争という伏兵の出現で、狂ったことは否めない。問題は、経済がこの程度の落ち込みで済むか否かだ。前記のWSJは、中国経済が深い傷を負えば、習氏の責任に発展すると示唆している。

     

     


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    何ごとも秘密主義の中国である。年一回、中国共産党の現役指導者と長老らが、河北省の保養地で重要事項を巡って議論する「北戴河会議」が終わったようだ。「ようだ」というのは、報道があったわけでない。メディアが、そう判断しているに過ぎない。国民の目を隠れてこそこそ避暑地に集まるのは、「国民に贅沢と思われないか」という遠慮でもあるまい。定番の「秘密事項」なのだ。

     

    詳細は、後の引用記事で説明するとして、会議で最大のテーマは、米中貿易戦争のようである。今年は例年と違い、会議に李首相が登場した。頻りと、「自由貿易主義」を喧伝していたことが目立った。しかし、米国トランプ大統領は。「交渉に時間的制限はない」と発言しており、長期戦の構えである。

     

    中国は、これにどのように対応するのか、妙手はない。米国の要求を飲むか、飲まないかの二つに一つの回答である。トランプ氏は、中国が増長しているというイメージである。「ガツン」と一発お見舞いしたいところだろう。

     

    『日本経済新聞』(8月21日付電子版)は、「北戴河で習独走にひとまず歯止め、闘いは秋の陣へ」と題する記事を掲載した。筆者は、編集委員の中沢克二氏である。

     

    (1)「関係者を驚かせたのは最近、存在感を示せなかった李克強が、そのしきたりを破った点だ。一方、習近平の方は最後まで北戴河での動静は伝えられなかった。しかも、李克強が発したメッセージは、世界貿易機関(WTO)が主導する自由貿易体制の重要さ、そして多国間主義だった。中国の首脳級人物が公の席でここまで繰り返し『自由貿易体制』を訴えた例はない。かつての主張は、あくまで自国ではなく他国の保護主義への反対に重点があった。輸出超大国になった中国の利益を損なうからである」

     

    李首相が、WTOが主導する自由貿易体制の重要さと、多国間主義へ理解があるメッセージを発した。これが、過去にない珍しいことだという。改めて、中国が自分は一銭も損をせず、一銭でも多く利益を得たい。そういう我利我利亡者であることを証明したような話だ。このえげつない中国が、お行儀良くなるとは思えない。そういう発言をして、米国の気を引いているにちがいない。弱小国を手当たり次第食い物にする中国が、そこまで改心するとは信じがたいのだ。

     

    (2)「中国共産党の現体制は、輸出で稼ぎ出した巨額の外貨と、公有制をうたう土地と、不動産の開発・販売収入などを元手に運営されている。それは中国内での莫大なインフラ投資、海外で中国主導の経済圏を形づくる新シルクロード経済圏構想『一帯一路』も同じだ。社会主義を標榜する共産党を外国からの(貿易)資金と土地関連の収入が支える構造は興味深い。半面、中国では欧米が主導する『自由貿易体制』という概念は、西側の自由主義思想とリンクしていると考えられてきた。油断していると『自由貿易体制の推進』という名目で共産党の一党独裁体制を崩す『和平演変』の陰謀にしてやられる。そんな警戒の対象だったのである」

     

    中国共産党は、本質的に植民地獲得型行動を取っている。それには、資金が必要だから、重商主義で金銀財宝を蓄積することは当然。この重商主義が、余りにも自国利益優先が露骨過ぎ、先進国から反発を受けているもの。要は、中国がまだ国際人になりきらず、成り上がり者根性丸出しである。中国が、これまで「自由貿易体制」について背を向けていたのは、重商主義であるからだ。アダム・スミスは、『国富論』(1776年)で重商主義を排斥し、自由貿易主義を唱えた。李氏は、この経緯をご存じだろうか。中国は、スミスの頭より240年以上も遅れている。

     

    (3)「異例だった李克強の北戴河公式登場は、抜き差しならない米中貿易戦争で苦しむ中国指導部が、米大統領トランプへの対処について額を寄せ合って考えていた様子をうかがわせる」

     

    北戴河会議で、アダム・スミスの読書会でも開けば、歴史的に見て有意義な会合になっただろうに。


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    昨年12月、中国の経済改革をたたえる博物館が深圳にオープンした。その博物館は半年後の今年6月、リニューアルして8月再オープンした。内容はがらりと変わっていたという。深圳といえば、鄧小平の改革開放と深い縁がある土地だ。ここにつくられた博物館だから、誰でも展示の主役は鄧小平の偉業を讃える博物館と思って来館するであろう。

     

    ところが、8月のリニューアル後の主役が、習近平に変わっていた。習氏の側近が、こういう根回しをしたのだろうが、行き過ぎも甚だしい。国家主席の経験はまだ5年余。中国経済をバブルまみれにした張本人が、歴史的評価に耐えられるか分らないはずである。それが、あたかも鄧小平を超えたような扱いになった。中国の退廃的な政治情勢が伝わってくるような話だ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月22日付)は、「習氏を礼賛、歴史を書換える中国の博物館」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「昨年12月、中国の経済改革をたたえる博物館が当地にオープンした時、来館者は壮大なレリーフに迎えられた。中国を繁栄に導いた『改革開放』に着手したとして共産党史に名を残す、鄧小平の地方視察を描いた彫刻作品だった。6月初め、この博物館は「更新作業」中だとして閉鎖されていた。8月の再開時にはレリーフは消えており、地方の発展を映す動画のスクリーンと、習近平国家主席の言葉が書かれたベージュのパネルに代わっていた」

     

    (2)「中国共産党は改革開放40周年を祝っている。中国を貧困国から世界第2位の経済大国に変貌させたこの政策の立役者は鄧小平だ。しかし、国の組織は習氏を祭り上げてその経済運営を大げさに宣伝する一方、共産党史で描かれる鄧の功績を小さく見せようとしている」

     

    (3)「中国の経済改革を専門とするハーバード大学のジュリアン・ジェワーツ氏は「神話作りが進んでいる」と述べた。中国の将来を描く物語を形作るなかで、習氏は『中国の過去に対する貢献度を誇張している』という。2012年遅くに権力を握って以来、習氏は自身の物語を実行するために法律やメディアを駆使し、公式の記録を書き換えるなど、国の歴史を自身の政策に当てはめようとしてきた。当局者は教科書を改訂し、博物館を改修して習氏の政策を刻み付けた。党が認めた『英雄と殉死者』を中傷した場合の罰則を定めた新しい法律もある」

     

    (4)「歴史家によれば、狙いは習氏の権力強化だ。その手段として、『国威の回復に向け、強く鋭敏な指導者に率いられた共産党が中国国民の先頭に立つ』という習氏の筋書きを固めようとしているという」

     

    習氏が、「中国の夢」を語り国威発揚を最大限に行なっている裏には、習近平を永遠の功績者として記録させたい。そういう野望を持つにいたったのだろう。それには、鄧小平の存在は邪魔なのだ。博物館では鄧小平の扱いを小さくして、自らの展示を広げさせたにちがいない。

     

    人間誰でも、そういう願望はあるとしても、習近平はその度合いが強すぎる。彼は、不動産バブル経済を意図的につくり出し、自らの権力基盤強化に利用した。これは、公私混同であって、一種の「汚職」に近い行為であろう。このように、自らの栄達に国家経済を利用したことは、共産党流に言えば「国家反逆罪」に当ると思われる。歴史の評価の定まらない時点で、早くも「英雄」扱い。中国社会の価値基準が極めて疑わしい。こんな社会が、世界覇権を狙うこと自体おこがましいのだ。

     

     


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    中国へ進出している外資系企業は、中国共産党の強引なやり方に嫌気がさしている。外資系企業にも共産党委員会をつくらされたからだ。こういう発想法はどこから出てくるのか。「世界は全て中国共産党が支配する」という錯覚に陥っているとしか言いようがない振る舞いだ。昨年11月の時点で次のような報道があった。

     

    『大紀元』(2017年11月25日付)は、「中国共産党の外資経営介入に撤退もあり得る、ドイツ商工会議所がけん制」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府は90年代から、外資系企業での党支部の設立を推し進めてきた。最近では、党支部長の取締役会への参加を義務づけるなどコントロールが強まる一方で、双方の溝が深まっている。同ドイツ商工会議所は17日の記者会見で、在中ドイツ企業を対象にしたアンケート調査の結果を明らかにした。それによると、中国政府のやり方は企業の経営に支障をきたすとの回答が多く、4分の1の企業が、追加投資をしないのはこうした法律の変更・当局の監視が一因だと答えた」

     

    外資系企業は、強制的に共産党支部をつくらされる。この感覚はどういうものなのか。企業秘密を探らせせる目的であろう。共産党という組織は、本質的にスパイ活動の要素を備えているのだ。

     

    (2)「ドイツのクラウス駐中国大使は同記者会見で、一部の外資系企業は党支部により大きな経営権を与えるよう求められ、そのための投資契約の改定を迫られていると述べ、『中国市場からの撤退を検討せざるをえない』と中国政府に警鐘をならした。ドイツは欧州連合の対中投資総額の半分強を占めている。クラウス大使は、党支部の経営参加は、対中の直接投資に影響をもたらすと示唆し、今年の欧州連合の対中投資はすでに減少したと話した」

     

    一部の外資系企業は、党支部から大きな経営権を与えるように求められている。これに合わせて、投資契約の改定を要求している。越権行為に驚く。株主でも従業員でもない共産党支部が、何を根拠にしているのか。こういう不法要求が出ていることは、中国の傲慢さを表わしている。今回の米中貿易戦争は、起こるべくして起こったとも言えよう。外資系企業は、米中紛争をいい機会として捉え、中国を撤退するのも一つの選択だ。

     

    (3)「中国指導部高官の談話によると、16年末までおよそ70%の外資系企業に党支部が進出した。米企業研究所の国際貿易専門家のバフェルド氏は、大紀元本部の取材でこう述べた。『政府当局者が民間企業の経営に加わるのは法律違反で、国際貿易のルールにも沿わない。中国政府の要求は荒唐無稽そのものだ』と批判し、世界貿易機関(WTO)が立ち入って阻止すべきと述べた」

     

    70%の外資系企業は、16年末までに党支部が進出したという。これが、表沙汰にならなかったのは、外資系企業が我慢していたに違いない。この事態は、WTO違反である。米中貿易戦争をきっかけにして廃止させなければならない。

     

    『ロイター』(8月20日付)は、「貿易戦争が米企業に迫る『メイド・イン・チャイナ』再考」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「約30年前、低コストの世界製造拠点として発展しつつあった中国南部にやってきたラリー・スローブン氏は、これまでに電動工具からLED照明器具に至る数百万ドル規模の製品を、米国の大手小売業者向けに輸出してきた。そうした時代は終わりを迎えつつあるのかもしれない。広範な経済近代化策の一環として、中国政府がローエンドの製造業からハイテク産業へと優遇対象を転換する中で、製造業界はその圧力を感じてきた。だが関税が発動される中で、『皆ついに目が覚めて、現実に向き合おうということになった』とスローブン氏は語る。製造業界は、『次の関税措置がとどめを刺すかもしれない』と懸念を深めているという。スローブン氏は、中国でのエクスポージャー(注:経済的なリスク)を減らして、タイなど成長する製造拠点に足場を広げようとしている」

     

    中国政府は、ハイテク産業を優遇する一方、ローエンドの製造業を圧迫しているという。そこへ、今回の貿易戦争による高関税が加わる。これが、最後の一撃になって脱中国の決断を迫っている。

     

    (6)「医療機器から農業用具に至る米国のメーカー10数社をロイターが取材したところ、自国向け輸出を手掛ける企業が、どのように中国における製造戦略を見直そうとしているかが浮き彫りになった。『関税の話が出る前は、生産全体の3割を中国から米国に移すことを検討していた』と、医療製品の米製造会社で欧州ディレクターを務めるチャールズ・ハブス氏は言う。賃金上昇や労働力の縮小、コスト急騰が、その理由だった。『最近の関税を巡る動きを受け、実際に関税が発効するならば、生産の6割を中国から米国に移すことになるだろう』という」

     

    医療機器から農業用具に至る米国のメーカーは、関税問題が出る前に生産の3割を米国へ戻す計画であった。賃金上昇や労働力の減少、コスト急騰が理由だった。そこえ、関税騒ぎが起こったので、6割を米国へ戻して経営のバランスをとるという。

     

    3年ほど前から、米企業の本国帰還は取り沙汰されてきた。米国は、人件費の絶対水準で高いが、生産性の向上でカバーするので単位労働コストとしてみれば米中で差がなくなっていた。米中の貿易戦争が長期化すれば、早く米国へ生産機能の一部を戻した方が合理的決定と言えそうだ。中国は、外資の脱出を考慮に入れなければならなくなった。

     

     

     


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