勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国経済は、これまで輸出で息をついできたが、それもついに限界にぶつかった。11月の輸出は、前年比8.7%減に落込んだ。2020年2月(41%減)以来の大きなマイナスである。対米輸出は、3割近い落込みである。

     

    10月の海上運賃は、2月のピークに比べて8分の1にまで下落する局面もあった。輸出不振の前兆であったのだ。欧米景気が振るわないことが、中国の輸出減になって現れているもの。早期の回復などあり得ない状況である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「中国ふるわぬ輸出、米国向け11月3割減 20年以来の下落」と題する記事を掲載した。

     

    中国の輸出が失速している。税関総署が7日発表した11月のドル建て輸出は前年同月比8.%減少した。新型コロナウイルスの流行初期である2020年2月(41%減)以来の大きなマイナスとなった。米欧の景気減速が直撃した。外需の落ち込みは、新型コロナ対策の移動制限で低迷が長引く中国経済の回復を遅らせかねない。

     

    (1)「主要国・地域で米国向けの落ち込みが目立つ。4カ月連続のマイナスで11月は前年同月を3割近く下回った。減少率は輸出全体と同じように、20年2月以来の大きさとなった。当時はコロナ禍で中国のサプライチェーン(供給網)が混乱した影響が大きかった。中国経済が正常化に動き出すと、米国向け輸出も回復し、20年夏からは2ケタ増が続いた。最近の輸出減少は、急速な利上げで米国経済が減速しているためだ。欧州も同様で、欧州連合(EU)向けは1割超減り、2カ月連続で減少した。このほか日本向けが6%落ち込んだほか、10月まで2ケタ増が続いた東南アジア諸国連合(ASEAN)向けも5%の伸びにとどまった」

     

    対欧米輸出が、揃って落込んでいる。厳しい金利引上げの影響が強く出ている。ASEAN向けも伸びが鈍化している。ASEANは、対米輸出が大幅に増えていたので、その部材が中国から輸出されているもの。ASEANの対米輸出にもブレーキがかかってきた証拠であろう。

     

    (2)「新型コロナがまん延して以降、外需は経済成長の重要なエンジンとなってきた。22年19月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比3.%増えたが、このうち1.%分が外需の寄与だ。コロナ前は外需が成長の足を引っ張ることもあった。20年以降は経済成長の2~3割が外需による押し上げで説明できた。こうした外需拡大の追い風が急速に弱まっている。国際通貨基金(IMF)が10月に示した予測によると、世界経済の成長率は22年の3.%から、23年には2.%に減速する。中国のシンクタンクでも「23年の輸出は前年比マイナスに陥る」との分析が多く、外需に依存しにくい状況が続きそうだ」

     

    中国経済は20年以降、輸出が経済成長に2~3割も寄与してきた。その成長エンジンに、ヒビが入ったと言える。中国としては事態を深刻に受け止めなければならなくなっている。IMFは、来年の世界経済の伸び率が2%を割るリスクを警告している。そうなれば、中国の輸出はさらに落込む。

     

    (3)「輸出の失速は、国内経済に影を落とす。11月の輸出を品目別にみると、金額が大きいパソコンが前年同月より28%少なかった。労働集約的な衣類や玩具も12割減っており、雇用情勢の回復にも重荷となる。輸入も大きく落ち込んでいる。11月は10.%減と、2カ月連続のマイナスとなった。価格の上昇で調達が増えた原油を除くと、減少率は15%と20年1月以来の大きさに拡大する。新型コロナを徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策による移動制限で、国内の民需が冷え込んでいるためだ。海外製品の人気が高い化粧品は2割減った。地方経済が依存する不動産業も住宅不況の出口が見えていない。中国の内需不振は海外の対中輸出を押し下げ、世界経済にも重くのしかかる

     

    中国が、12月7日にゼロコロナ緩和策を発表した。輸出の前途が怪しくなっていることから、せめて内需活性化をしなければどうにもならなくなるという危機感の表われであろう。

     

    中国共産党は6日、中央政治局会議を開き「防疫措置を合理化する」ことを確認した。党の会議を経て、政府が7日緩和策を公表した。同会議からは景気停滞への危機感がにじむ。「重大な経済金融リスクを未然に防ぎ取り除かなければいけない」と強調した。これまで重大リスクは金融のみを指してきた。これに経済も加えたのは、高止まりする若年失業率への警戒感などがうかがえる。

     

    先のゼロコロナ反対デモが、今回の緩和方針を引き出した一つの要因である。この裏には、中国経済がこのまま推移すれば、のっぴきなる事態へ落込むことを察知した結果であろう。瀬戸際に来ていたのだ。

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    大きい中国依存の反動

    潜在能力を使い果たす

    掠め取る「労働貴族」

     

    IMF(国際通貨基金)は、23年の世界経済成長率を2%以下と予測している。3%を割れば「世界不況」とされるのだ。輸出依存度の高い韓国は、来年の自国の経済成長率に大きな影響が出ると覚悟を決めなければならない。

     

    韓国の輸出依存度は36.14%(2021年)とドイツに次ぐ高さである。ドイツは、EU(欧州連合)という強力な地盤を持つ。韓国の場合は、多くが新興国向け。この差が大きいのだ。韓国が、世界経済の波に大きく揺さぶられる理由である。

     

    困ったことに、韓国の政策金利が3.25%へと引上げられている。米国の利上げに伴う「追随利上げ」だ。米韓の金利差が拡大することで、外貨流出が起こればウォン安を招き、消費者物価にはね返る。こういう悪循環を回避するには、韓国の政策金利引上げが不可避だ。政策金利は、昨年7月の0.5%の低金利から、その引上げ幅は2.75%ポイントにもなった。資金の借入れ側は、金利負担増がきついのだ。

     

    来年の韓国経済は、以上のように世界経済成長率の低下と高金利に挟撃されて停滞が予想されている。韓国銀行(中央銀行)は、1.7%を予測しているが、これは楽観的な予測となっている。11月末基準で世界の主要投資銀行が予想した来年の韓国経済の成長見通し平均は1.1%である。銀行別では、バークレイズが1.3%、シティーが1.0%など。ノムラはマイナス1.3%と厳しい予測だ。

     

    韓国経済が過去、1%を下回る成長率を記録したのはこれまでに4回ある。

    1)2020年 マイナス0.7%(新型コロナウイルスが拡散)

    2)2009年 0.8%(金融危機当時)

    3)1998年 マイナス5.1%(通貨危機当時)

    4)1980年 マイナス1.6%(第2次オイルショック当時)

    大きい中国依存の反動

    23年の経済成長率は、前記のいずれかと近似したものになるのではと危惧されている。仮に、韓国銀行が予測するように1%台の成長率を実現したとしても、その後は過去のような高目の成長率に戻れる可能性が低くなっている。その要因には、次の2つが上げられる。

     

    1)韓国の輸出依存度でトップの中国経済が、これから停滞局面に入る恐れが強まっていることである。習氏が、国家主席3期目に入るとともに、改革開放政策を放棄して、「共同富裕論」という分配政策に重点を置く政策に舵を切ることだ。米中対立の激化もマイナス要因である。

     

    2)韓国の高齢化が急ピッチで進んでいる。2025年には「超高齢社会」(65歳以上人口が21%以上を占める)入りである。だが、高齢者対策はゼロ同然である。「反日」には異常な熱を入れたが、肝心の国内対策ではスッポリ抜けていたのだ。歴代政権は、年金問題の解決を避けて先送りした。その咎めが今、噴出しているのである。

     

    これら2点は、韓国の抱える構造的な問題として横たわっている。私のコメントを付したい。

     

    1)韓国の対中輸出比率は、香港を含めた3割を上回る。輸出市場の3分の1が中国関連であるだけに、習氏の改革開放政策の放棄が、韓国にとっては切実な問題になるのだ。習氏はなぜ、改革開放政策を放棄するのか。これは、習氏個人の事情にある。

     

    習氏は、永久国家主席を目指している。ロシアのプーチン大統領と同じ発想法だ。個人の権威を確立するには、政敵の存在が目障りである。習氏は、反対派を抹殺するために民営企業の成長にタガをはめた。すなわち、「資本の無制限な発展を規制する」という大義名分である。資本である民間企業側には、故人となった江沢民元国家主席の一派(上海閥)が結集している。上海閥を叩くには、民営企業の発展を抑制すれば可能になる。これが、改革開放政策を放棄した理由である。

     

    習氏は、共産党革命で戦った元老の子弟である。「紅二代」とされているグループだ。中国共産党では、「本家筋」に当る。この本家が、「分家」の上海閥を排除するのは共産党の権力確立から見て「当然」と考えているにちがいない。習氏は、この本家意識によって中国の政策を毛沢東路線に戻そうとしている。習氏の権力掌握は、これによって終身にできるのである。

     

    改革開放政策は、毛沢東論理から言えば邪道と見られている。資本の跋扈は許しがたいという感情論でもある。習氏や毛沢東派は、賄賂・汚職が改革開放政策を行なった過程で増殖したと見ている。毛沢東の指揮した革命戦争中は、農民を苦しめないという規律が徹底していた。そういう「清廉」な時代を取り戻すには、改革開放政策を放棄するしかない。この心情が、「共同富裕論」にはあるのだ。

     

    習氏は、折りに触れて「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」と漏らしている。経済成長を第一義としていないというポーズである。これが、「本意」と思えない節があるのだ。習氏の在任10年間、不動産バブルを放置したのである。土地売却収入を軍事費拡大に投入してきたと見られる。バブルという「あぶく銭」をたっぷり吸収した後で、「共同富裕論」という大義を持出し、自らの失政を隠そうとしている。私には、こう映るのである。習氏は、政治家に多い便宜主義者(オポチュニスト)なのだ。(つづく)

     

     

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    習近平政権は、ゼロコロナに反対する若者の「白紙デモ」をきっかけに、PCR検査に頼る防疫政策から転換の兆しを見せている。この流れが定着すれば、ゼロコロナからの脱却が始まるかも知れない。だが、肝心の医療体制がこれに対応できない現実がある。このギャップをどう埋めるのか。新たな課題が突きつけられている。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月7日付)は、「ゼロコロナ後の中国、医療産業は大転換に直面」と題する記事を掲載した。

     

    中国は、過去3年間にわたり続けてきた一連のゼロコロナ政策からようやく脱却しつつある。このことが中国経済全体にどのような影響を及ぼすかはまだ分からない。だが、一つだけ確かなことがある。医療産業はそうした変化に急ぎ対応する必要があるということだ。コロナ政策の緩和姿勢は、業界に大きな勝者と敗者を生み出すだろう。

     

    (1)「運が良ければ、そして高齢者へのワクチン接種と抗ウイルス薬の備蓄を積極的に行えば、中国は、2020年と2021年にほとんどの欧米諸国が経験したような大勢の死者を出さずに済むかもしれない。だが最も楽観的な想定でも、コロナ共生への移行は健康関連支出の大転換を伴う。これまでは検査や隔離に支出されていたが、今後はワクチン接種や治療に支出されるようになる

     

    ゼロコロナから脱出できても、国民へは治療費が重い負担になる。中国では、医療費の自己負担が35%と桁外れに大きいことだ。コロナに感染したら破産しかねない状況である。

     

    (2)「市場はすでにそのことを織り込み始めている。香港市場で取引されている平安健康医療科技の株価は11月末から50%近く上昇している。同社は遠隔医療サービスを手掛けている。中期的には、コロナ関連の罹患率が上昇することで、家計の健康保険支出が増加するほか、消費者向け医療サービスへの支出も増える可能性が高いとみられる」

     

    感染すれば、家計の健康保険支出が増えるので、個人消費を切り詰める。ただ、ゼロコロナがなくなれば、経済活動全般は上向くので、トータルとしてみれば、経済にはプラスに働くはずだ。感染者は、医療費負担が大きいだけに不運と言うべきであろう。

     

    (3)「中国では80歳以上の人口が非常に多いため(そのうち約半数しか追加接種を受けていない)一刻を争う。この冬から来年にかけての感染拡大による被害を軽減するための「特効薬」は、中国の手の届く範囲にいくつか存在する。一つは、ファイザー製の経口抗ウイルス薬パクスロビドで、重症化を防ぐ高い効果が確認されており、中国は今年の春から輸入を開始した。医学誌「ネイチャー・メディシン」に5月に掲載された研究によると、仮に中国でオミクロン株の感染が拡大した場合、症状を示しているコロナ患者全員にパクスロビドを投与すれば、集中治療室への入院件数と死亡者数を89%削減できる可能性がある」

     

    ファイザー製の経口抗ウイルス薬で、集中治療室への入院件数と死亡者数を89%削減できる可能性もあるという。問題は、その経口抗ウイルス薬の中国在庫が少ないことである。

     

    (4)「中国が、そのような鉄壁の対応を取れるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。国営メディアによれば、今年3月に中国に到着したパクスロビドの初回輸入量はわずか2万1200箱だった。とはいえ、ファイザーや中国でのパクスロビド製造が認可されている浙江華海薬業(上海上場)などの企業には、今後数週間から数カ月にわたり注文が殺到しそうだ」

     

    ファイザー製の経口抗ウイルス薬は、初回輸入量がわずか2万1200箱に過ぎない。雀の涙である。こういう面の手配が、全く遅れているから驚く。

     

    (5)「注目すべきもう一つの企業に康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)がある。同社は世界初の吸入型コロナワクチンを製造したメーカーの一つで、今年になって中国で緊急使用許可を取得。現在は上海などの都市で追加接種に使用されている。科学者によれば、吸入型ワクチンはコロナウイルスの侵入経路である気道粘膜に作用することで、より高度な防御を提供することが可能だという。特に、重症化のリスクが高い高齢者にとって、これは重要となるだろう。カンシノの研究(査読なし)では、追加接種に使用された場合、通常のワクチンよりも強い抗体反応が得られることが分かっている」

     

    吸入型コロナワクチンの使用が始まっている。注射針嫌いの農村部の高齢者には喜ばれるだろう。漢方薬感覚で使用できるからだ。

     

    (6)「長期的には、コロナと共生する中国は民間の医療保険にもっと関心を持つようになりそうだ。国の保険は幅広くカバーされるが厚みがない一方、民間の健康保険は比較的ニッチな存在にとどまっている。世界銀行によると、中国国民は2019年に総医療費の35%を自費で支払っており、高中所得国平均の32%を上回っているほか、経済協力開発機構(OECD)の富裕国の平均14%をはるかに超えている。中国は、検査と隔離を主な措置とするコロナ政策からようやく脱却しつつある。その他の医療インフラも早急に整備しなければならない」

     

    中国国民は、2019年に総医療費の35%を自費で支払っている。ともかく高いのだ。中国人の訪日客が、爆買いした商品に漢方薬があった。高い医療費を考えれば、漢方薬で自己治療するほかないのだ。気の毒な国である。

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    中国は、これからどのようにして経済運営する積もりか。6月末の総債務残高(金融機関を除く)は、295%にも達した。その後の経緯から見て、すでに300%になったと見られる。ゼロコロナでコストが増える反面、ロックダウンによる経済不振で対GDP比で3倍にもなったと見られる。

     

    中国人口は、今年から減少過程に入る。来年は、インドに抜かれて「世界1」の座を下りるのだ。こういう人口動態の変化から、全人口に占める60歳以上の高齢者の比率が2025年までに20%を超え、中程度の高齢社会(超高齢社会)の水準に達する。さらに、2035年にはこの比率が30%を超え、超高齢社会へ突入する見通しだ。これは、中国国務院(内閣)がまとめた「高齢化対策の強化と推進に関する報告書」のなかで示されたものだ。

     

    このように人口動態的に見た中国は、「老年期」へ差し掛かっている。この段階で、これだけの債務残高を背負って行くのは大変な負担だ。まさに、「中国終焉」というに相応しい状況である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月6日付)は、「中国の借金再び最高 GDPの3倍に迫る 政府債務膨張」と題する記事を掲載した。

     

    中国の債務が膨らんでいる。国際決済銀行(BIS)によると、経済規模と比べた債務残高の比率は6月末に過去最高を更新した。新型コロナウイルス対策の移動制限で景気が悪化し、地方政府がインフラ建設のため債券の発行を増やしている。一方、民間企業や家計は投資や住宅購入に及び腰だ。人口減少が始まり、成長余地が狭まっている。

     

    (1)「BISが5日公表した金融機関を除く債務残高は6月末時点で、51兆8744億ドル(約7100兆円)だった。国内総生産(GDP)比で295%となり、遡れる1995年末以降で最高となった。今の中国の債務比率は98年3月末の日本(296%)に近い。98年の日本の1人あたり名目GDPは3万2000ドル台だった。対照的に2021年の中国は1万2000ドル台にとどまる。今後は急速な少子高齢化で、財政に占める社会保障の負担は高まる。財政支出の硬直化が進めば、景気対策のために債務を拡大する余地も乏しくなる。豊かになる前に老いてしまう「未富先老」も現実味を帯びてくる」

     

    中国の債務比率295%は、98年3月末の日本(296%)に近い。当時の日本は、1人あたり名目GDPが3万2000ドル台。2021年の中国は、1万2000ドル台にとどまる。ざっと、日本の3分の1強だ。この高い債務残高比率が、中国経済にとって極めて高い負担になるのは間違いない。

     

    (2)「中央政府である国務院はインフラ建設を景気対策の柱に位置づけ、地方政府にインフラ債の発行を加速させた。22年の新規発行額は過去最大の4兆元(約78兆円)を突破したもようだ。部門別でみて、政府部門の債務膨張が際立っている。6月末時点の比率は、これまでピークだった20年末より6ポイント上がった。対照的に企業や家計の債務比率は同期間に低下した」

     

    中国は、景気対策としてインフラ投資に頼っている。民間経済の活性化には全く関心を持たないという、極端な「国進民退」スタイルを貫いている。民間経済の活性化は、習氏の政敵である上海閥に力を持たせて復活させるという「勢力争い」が理由で低俗だ。

     

    (3)「中国人民銀行(中央銀行)によると、銀行から見た企業の資金調達需要を示す指数は46月に、59カ月ぶりの水準に悪化した。79月も戻りは鈍い。なかでも民間企業は投資に及び腰だ。110月の固定資産投資は前年同期比2%増にとどまった。国有企業が11%増と大幅に伸びているのとは対照的だ。政府が景気のテコ入れへ国有銀行を動員して、国有企業向け融資を積み増しているとみられる」

     

    習氏は、「共同富裕論」に基づいてIT関連や住宅開発に規制の網を張った。これでは、民間企業が投資をする筈もなく、模様眺めに終わっている。国有企業が、国有銀行からの融資で投資をしている程度である。

     

    (4)「家計も住宅ローンなどの借金を膨らませようとはしない。政府の不動産向け金融規制の強化や景気の悪化で住宅市場の低迷が長期化しているためだ。人民銀行の預金者向けアンケート調査をみると、79月の住宅に対する値上がり期待は確認できる09年以降で最小を記録した。新型コロナを徹底して封じ込めようとする「ゼロコロナ」政策などで景気の先行きが読めないことが、民間企業や家計の慎重姿勢の背景にある。さらには人口減少など中長期的な不安も慎重さを増幅させている可能性がある」

     

    住宅は、これまでの過剰供給が災いしており、今後は少なくも数年間にわたり「鳴かず飛ばず」の時代が来るはずだ。これが、不動産バブル崩壊の後遺症である。

     

    (5)「国連は7月に公表した最新の人口予測で、中国の71日時点の総人口は前年比で減少したと推計した。過去の産児制限の影響で今後は減少が加速する。25年後の47年までの減少幅は、総人口の6%に当たる約9000万人に上る。高齢化も急ピッチで進み、今は38.5歳の平均年齢も47年には50歳を超える」

     

    全人口に占める60歳以上の高齢者の比率は、2025年までに20%を超える。「高齢社会」になるのだ。国際標準では、65歳以上の人口が基準になるが、中国では「60歳定年制」ゆえに、60歳を高齢社会の基準にしている。中国は、5年間のギャップを背負っている。

     

     

     

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    文政権時代は、中国の「魔術」に掛かったように万事、北京の顔色を伺っていた。だが、ユン政権は中国との距離を置きながら日米の推進するインド太平洋重視の外交路線へ切り変えつつある。

     

    韓国左派はロシアのウクライナ侵攻以来、少しずつ世界情勢の急変に気づき始めたようである。しだいに、中国重視という主張が弱まりつつあるのだ。こうした状況変化を受けて、韓国外交は本来あるべき外交路線へ戻りつつある。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月5日付)は、「韓国の外交、『インド太平洋』重視に転換 中国と距離」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を強めている。自由や人権が基調の「インド太平洋戦略」で日本や米国と歩調を合わせ、経済協力の相手をインド太平洋の全域に広げる。中国とは距離を置く。日米への接近に慎重で中国や北朝鮮に配慮した文在寅(ムン・ジェイン)前政権との違いを鮮明にする。

     

    (1)「尹大統領は5日、初めて国賓として迎えたベトナムのフック国家主席とソウルの大統領府で会談した。韓国側によると、防衛産業やレアアース開発で連携を広げる方針を確認。包括的戦略パートナーシップをうたう共同宣言には、中国がほぼ全域の「管轄権」を主張する南シナ海の軍事化や現状変更に反対する考えを盛り込んだ。尹氏は会談後の記者会見で「ベトナムは韓国の『インド太平洋戦略』と『韓・ASEAN連帯構想』の核心的な協力国だ」と語った」

     

    各国は、米中デカップリングの影響を受けて、幅広く工場立地の再検討を進めている。台湾有事の際は、否応なく大きな余波を受けるからだ。韓国も、こういう視点から中国の顔色を伺っている余裕はなくなっている。韓国自身の国益に関わる問題であるからだ。

     

    (2)「ベトナムはASEANのなかで、韓国との経済的なつながりが最も深い。2009年にサムスン電子が携帯電話の組み立て工場をベトナムに建てた。スマートフォンに搭載する半導体などの輸出が増え、進出する韓国企業の裾野が広がった。尹政権は11月の国際会議で、半年かけて練り上げた対ASEAN戦略を打ち出した。外交の軸に据える「インド太平洋戦略」は、日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」の考え方と同じだ。尹氏はカンボジアの首都プノンペンで開いた東アジア首脳会議で「韓国は普遍的価値を守るインド太平洋(の構築)を目指す。自由や人権が尊重されなければならず、力による現状変更は認められない」と述べた。海洋進出を強める中国を念頭に置いており、その後の日韓首脳会談でも岸田文雄首相と連携を確認した」

     

    ベトナムは、中越戦争で中国の短期間の侵略を受けた苦い経験で、根強い「反中意識」を持っている。これが、西側諸国へと接近させている理由だ。国を挙げて「改革開放」路線を歩んでおり、インドとともにベトナムが、脱中国の受け皿になっている。韓国が、遅いとは言えインド太平洋へ外交基軸を広げることは当然なことである。

     

    (3)「日米韓で足並みをそろえるASEANでの立ち位置を明確にする一方、中国とは一定の距離を保つ構えだ。尹氏はバリ島で会談した中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席に「韓中関係を相互尊重と共同利益に基づいて発展させる」との考えを伝えた。尹政権のアプローチは、文前政権と異なる。文前政権は「新南方政策」と名づけたASEAN諸国との経済連携を掲げたが、外交的な立ち位置は曖昧だった。経済面で依存する中国を刺激するような言動は控えた」

     

    文政権の外交姿勢は、「ヌエ」的なものであった。「曖昧路線」が、国益に適うという考え方である。文政権の民族主義思想とも重なり合い、中国へは親愛の情を込めて接していた。これが、皮肉にも中国から軽んじられる理由になった。外交とは、難しいものだ。

     

    (4)「尹政権はASEANとの経済協力を巡り、「韓・ASEAN連帯構想」を掲げる。ベトナムやシンガポールに集中する韓国の投資をASEAN全域に広げ、電気自動車(EV)向けのリチウムやニッケルなど鉱物資源のサプライチェーン(供給網)を整備する考えだ。ASEANで韓国の存在感は高まっている。韓国の投資額は10年前の2倍に増え、K-POPなど「韓国カルチャー」の人気が韓国製品の市場を広げる追い風となっている」

     

    ユン政権は、はっきりと「インド太平洋」へ外交の舵を切っている。中国経済の後退を計算に入れれば、今が転換する最後のチャンスであろう。

     

    (5)「尹氏は11月、ASEANの首脳と個別に会談した。カンボジアのフン・セン首相とは、インフラ整備などにあてる経済協力基金の支援限度を15億ドル(約2000億円)に倍増する方針でまとまった。フィリピンのマルコス大統領とは同国への原子力発電施設の輸出を巡って協議した」

     

    韓国は、カンボジアにも外交の焦点を合わせている。フィリピンへも手を伸ばし始めた。文政権時代には見られなかった展開である。

     

     

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