中国経済は、これまで輸出で息をついできたが、それもついに限界にぶつかった。11月の輸出は、前年比8.7%減に落込んだ。2020年2月(41%減)以来の大きなマイナスである。対米輸出は、3割近い落込みである。
10月の海上運賃は、2月のピークに比べて8分の1にまで下落する局面もあった。輸出不振の前兆であったのだ。欧米景気が振るわないことが、中国の輸出減になって現れているもの。早期の回復などあり得ない状況である。
『日本経済新聞 電子版』(12月7日付)は、「中国ふるわぬ輸出、米国向け11月3割減 20年以来の下落」と題する記事を掲載した。
中国の輸出が失速している。税関総署が7日発表した11月のドル建て輸出は前年同月比8.7%減少した。新型コロナウイルスの流行初期である2020年2月(41%減)以来の大きなマイナスとなった。米欧の景気減速が直撃した。外需の落ち込みは、新型コロナ対策の移動制限で低迷が長引く中国経済の回復を遅らせかねない。
(1)「主要国・地域で米国向けの落ち込みが目立つ。4カ月連続のマイナスで11月は前年同月を3割近く下回った。減少率は輸出全体と同じように、20年2月以来の大きさとなった。当時はコロナ禍で中国のサプライチェーン(供給網)が混乱した影響が大きかった。中国経済が正常化に動き出すと、米国向け輸出も回復し、20年夏からは2ケタ増が続いた。最近の輸出減少は、急速な利上げで米国経済が減速しているためだ。欧州も同様で、欧州連合(EU)向けは1割超減り、2カ月連続で減少した。このほか日本向けが6%落ち込んだほか、10月まで2ケタ増が続いた東南アジア諸国連合(ASEAN)向けも5%の伸びにとどまった」
対欧米輸出が、揃って落込んでいる。厳しい金利引上げの影響が強く出ている。ASEAN向けも伸びが鈍化している。ASEANは、対米輸出が大幅に増えていたので、その部材が中国から輸出されているもの。ASEANの対米輸出にもブレーキがかかってきた証拠であろう。
(2)「新型コロナがまん延して以降、外需は経済成長の重要なエンジンとなってきた。22年1~9月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比3.0%増えたが、このうち1.0%分が外需の寄与だ。コロナ前は外需が成長の足を引っ張ることもあった。20年以降は経済成長の2~3割が外需による押し上げで説明できた。こうした外需拡大の追い風が急速に弱まっている。国際通貨基金(IMF)が10月に示した予測によると、世界経済の成長率は22年の3.2%から、23年には2.7%に減速する。中国のシンクタンクでも「23年の輸出は前年比マイナスに陥る」との分析が多く、外需に依存しにくい状況が続きそうだ」
中国経済は20年以降、輸出が経済成長に2~3割も寄与してきた。その成長エンジンに、ヒビが入ったと言える。中国としては事態を深刻に受け止めなければならなくなっている。IMFは、来年の世界経済の伸び率が2%を割るリスクを警告している。そうなれば、中国の輸出はさらに落込む。
(3)「輸出の失速は、国内経済に影を落とす。11月の輸出を品目別にみると、金額が大きいパソコンが前年同月より28%少なかった。労働集約的な衣類や玩具も1~2割減っており、雇用情勢の回復にも重荷となる。輸入も大きく落ち込んでいる。11月は10.6%減と、2カ月連続のマイナスとなった。価格の上昇で調達が増えた原油を除くと、減少率は15%と20年1月以来の大きさに拡大する。新型コロナを徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策による移動制限で、国内の民需が冷え込んでいるためだ。海外製品の人気が高い化粧品は2割減った。地方経済が依存する不動産業も住宅不況の出口が見えていない。中国の内需不振は海外の対中輸出を押し下げ、世界経済にも重くのしかかる」
中国が、12月7日にゼロコロナ緩和策を発表した。輸出の前途が怪しくなっていることから、せめて内需活性化をしなければどうにもならなくなるという危機感の表われであろう。
中国共産党は6日、中央政治局会議を開き「防疫措置を合理化する」ことを確認した。党の会議を経て、政府が7日緩和策を公表した。同会議からは景気停滞への危機感がにじむ。「重大な経済金融リスクを未然に防ぎ取り除かなければいけない」と強調した。これまで重大リスクは金融のみを指してきた。これに経済も加えたのは、高止まりする若年失業率への警戒感などがうかがえる。
先のゼロコロナ反対デモが、今回の緩和方針を引き出した一つの要因である。この裏には、中国経済がこのまま推移すれば、のっぴきなる事態へ落込むことを察知した結果であろう。瀬戸際に来ていたのだ。