勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    中国のGDPが発表された。18年は前年比6.6%、10~12月期は同6.5%であった。一見、高目の経済成長率を維持しているように見えるがそうではない。先ず、17年のGDPを0.1%ポイント下方修正していることだ。これによって、18年GDP成長率を押上げる下工作をしていた。

     

    昨年10~12月期の前期比伸び率は1.5%である。先進国並にこれを年率換算すると6.14%となる。また、昨年7~9月期の前期比伸び率は1.6%である。これを年率換算すると6.55%になる。中国は、前年同期比の増加率を金科玉条としているが、これは間違いである。先進国並に四半期増加率を年率換算した成長率で現状診断すべきである。

     

    昨年10~12月期の年率換算GDP成長率 6.14%

    昨年7~9月期の年率換算GDP成長率 6.55%

     

    昨年10~12月期のGDPは、年率0.41%ポイントで低下している計算だ。これを見落としていると、中国経済の実勢悪を見逃すことになろう。

     

    『ブルームバーグ』(1月21日付)は、「中国経済、1012月は09年以来の低成長ー安定化の兆しも」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国経済の昨年1012月(第4四半期)の成長率は、債務削減の取り組みや米国との貿易対立が響いて2009年以来の低水準にとどまった。ただ、昨年12月に景気の安定化を示唆する兆しが出ており、政府による景気対策の効果も表れつつあるようだ21日発表された1012月の国内総生産(GDP)は前年同期比6.4%増。7-9月(第3四半期)は6.5%増だった。昨年12月の小売売上高は前年同月比8.2%増加。市場予想は同8.1%増。工業生産は前年同月比5.7%増。市場予想は同5.3%増加だった。2018年通年の固定資産投資は前年比5.9%増えた。予想は6%増だった」

     

    この記事では、前年同期比の増加率で議論している。中国の国家統計局は、前年同月比と前期比の二つの数字を出している。メディアは、前年同月比に目を奪われて、前期比を見落としている。ここが、落し穴だ。経済成長の「瞬間風速」を見るには、前期比の増加率を4乗することで年率換算できる。その数字は、私が計算してすでに示しておいた。

     

    要するに、昨年10~12月期GDPの伸び率は6.14%である。今年に入れば、米中貿易戦争の影響が本格化するはず。6%割れは確実と見られる。昨日のブログで、中国広州・東莞市の実態を次のように伝えておいた。

     

    「中国の製造業セクターは以前から、労働コストの上昇、規制強化、高技術生産や内需型経済への移行といった重圧に苦しんでいた。そこに米国が中国製品への関税を引き上げるリスクが出てきたことで、サプライチェーンの国外移転に拍車がかかった。今後数週間、恒久的に閉鎖する工場は増える見通しだ。専門家によると、倒産コストを背負いきれず、単純に姿を消す工場オーナーも出てきそうだ」(『ロイター』(1月18日付)は、「春節前の中国で相次ぐ工場閉鎖、貿易摩擦が雇用に影」)

     

    この記事を裏付ける他の報道が現れた。要約すれば、こうなる。

     

    (中国における)労働コストの上昇や技術移転の強制、知的財産の侵害など、中国を巡り長年くすぶってきた不満が、今回の米中貿易戦争をきっかけにして噴出し、工場を中国から移転させる動きが一挙に出ている、と『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月21日付「『メード・イン・チャイナ』が廃れる日」)が報じた。この指摘は、極めて重要である。昨年10~12月の前年同月比GDP6.5%増へ安易な期待を寄せると、大火傷を負うであろう。

     

     

     

     


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    中国は、米国の知的財産窃取事件の頻発によって、対米国投資から閉出されている。これは、宝の山から追放されたのも等しく、今後の中国経済の発展に大きなブレーキになろう。その理由は、二つある。①正規の技術移転の困難、②投資収益の機会を失う。要するに、世界最先端市場にアクセスできなないデメリットは計り知れない。

     

    一帯一路で、経済弱小国を相手に「債務漬け」にしている程度の利益と米国市場での投資活動から得られる利益とは、質が全く異なるのだ。

     

    『人民網』(1月21日付)は、「18年の中国の対米投資が83%も減少 欧州は好調」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「法律事務所のベーカー&マッケンジーと先進的な調査会社ロジウムグループが共同で発表した最新の分析報告によると、2018年には中国が欧州と北米地域で行った直接投資が大幅に減少して300億ドルになった。16年は940億ドル、17年は1110億ドルだった。経済日報が伝えた。同報告によると、中国の対米直接投資は16年に過去最高の4563000万ドルに達した後、17年は290億ドルに減り、18年はさらに大幅に減少して48億ドルになり、減少幅は83%に達した。同報告は、これほどの減少の原因として、米国が外国からの投資への審査を強化したこと、米中貿易摩擦が二国間関係の緊張をもたらしたことを挙げ、『これに対しては米国が主要な責任を負う』と指摘した」

     

    過去3年の米欧投資の推移

    16年  940億ドル

    17年 1110億ドル

    18年  300億ドル

     

    この状況ぶりを見ると、中国の受けるダメージは極めて大きいことが分かるはず。中国は、「中国製造2025」のハイテク計画を推進中だが、米欧からの技術移転がなければ不可能であろう。米国が、その責任を負うべきと記事は指摘している。だが、そういう事態を引き起こした中国の技術窃取の責任の方がはるかに大きいはずだ。



     


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    「背に腹はかえられない」のだろう。今年の景気浮揚策では、鉄道へ13兆円投入することが明らかになった。鉄道事業の経営状況は厳しい。18年19月の運輸収入は9%増の5700億元で、最終赤字だった。中国鉄路総公司の負債総額は5兆元を超えており、19年の投資拡大で財務改善が遅れる可能性もある。『日本経済新聞』が伝えた。

     

    つい、数日前まではインフラ投資依存の経済運営は、債務を増やして信用機構に圧力をかけるので減税に主力を置くとしていた。だが、減税の財源が足りないのだろう。そこでまた、インフラ投資に舞い戻ってきたのだ。鉄道建設であれば、国有企業に資金調達させられ、政府は当座の資金繰り負担から免れる。こういう手抜きの経済政策に違いない。

     

    国有企業の債務は、最終的に政府負担になる。この事実を知ってか知らずか、国有企業に債務を背負わせた鉄道建設である。「第二の国鉄」は間違いない。2014年から19年まで連続8000億元台の鉄道建設を行なっている。当初の鉄道建設は、採算面も考慮したであろうが、その後は無差別投資でGDPを押上げるだけが目的の投資になっているに違いない。習氏が、自己の権力保持のために、こういう無駄な投資を続けているのであろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(1月20日付)は、「中国、鉄道投資が最高の13兆円 景気テコ入れ策膨張」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府は2019年の鉄道投資を過去最高の8500億元(約13兆7000億円)規模まで引き上げる方針を固めた。GDP1割を占めるとされる自動車のほか、家電の分野で販売補助金などの消費刺激策も導入する。投資拡大と消費刺激の両面で、米中貿易摩擦で先行きに不透明さが増す経済の成長を下支えする。中国の鉄道事業を担当する中国鉄路総公司の幹部が、『19年の投資額は8500億元に達する可能性が高い』との見方を示した。19年は鉄道投資額を年初計画の7320億元から約1割上積みし、8028億元とした。19年は18年実績比約6%増を見込む」

     

    19年の鉄道建設予算は、当初計画から上澄みすると言うが、18年19月の運輸収入は5700億元で、年間では7600億元程度である。ところが、年間収入を上回る投資を6年間も続けている計算だ。採算が合うはずがない。赤字垂れ流し経営は、いずれ破綻する運命だ。

     

    (2)「消費刺激策の検討にも入った。中国経済のかじ取り役を担う国家発展改革委員会の寧吉喆副主任は中国国営中央テレビのインタビューで、自動車と家電分野で購入補助金の支給を含む消費刺激策を導入する考えを示した。自動車では09~17年、小型車の自動車取得税の減税や農村での補助金支給を実施している。18年は補助金がなくなったため、28年ぶりの新車販売減につながった。寧副主任は農村部での販売促進を念頭に置いている。『補助金規模は300億元に達する』(証券アナリスト)との見方がある。家電分野では09~13年に実施したエネルギー効率が悪い旧型からの切り替え補助や、農村での販売補助と同種の政策を検討しているもよう。投入額は200億元とみられている」

     

    耐久消費財の家電と自動車は、すでに普及度の限界に達している。いくら補助金を出しても需要の先食いに過ぎない。自動車は3年前から「補助金漬け」してきたが、補助金支給の期限が切れれば、そこで需要はパタリと落ちている。この状態では、家電と自動車は、ずっと補助金がつくのであろう。

     

    中国は、あらゆるものが補助金対象になっている。特許申請も補助金欲しさで特許にも値しないレベルのものが特許申請されて、件数だけを増やして世界一だと言われている。中身はないのが、中国特許である。家電や自動車で補助金を出しているのは、補助金目当ての弱小企業の整理を遅らせ、問題先送りとなっている。長い目で見れば、補助金を出しても良いことはないのだ。


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    中国社会で相手の価値を計る尺度は、その資産規模である。その人間の中身ではない。中国人はよく、相手の給料を聞きたがる。これは、相手の価値を値踏みしている証拠だ。中国人が一銭でも給料の良い会社で転職するのは、抜きがたいその金銭価値観にある。

     

    2010年、中国がGDPで日本を抜いたときのはしゃぎ方はすごかった。今の中国外相はなんと言ったか。「日本人は、なかなか中国を尊敬しないが、GDPの規模が年々拡大しているので、いずれ諦めて中国を尊敬するようになる」と言い切った。私は、この言葉を聞いて以来、彼への評価はがらりと変った。彼は、日本へ留学し日本語が堪能だ。だが、日本人の心と文化を学ばなかった。ただの語学スペシャリストに過ぎない。

     

    『サーチナ』(1月11日付)は、「日本を軽視した国は大きな代償を払った、日本軽視はあまりにも危険」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『一点資訊』はこのほど、『歴史上、日本を軽視した国はいずれも大きな代償を払うことになった』と論じる記事を掲載し、中国人は日本を軽視してはならないと主張している。記事は、まず江戸時代から明治時代にかけての日本を例に、鎖国を解いた日本は明治維新を通じて西洋の文化を吸収しつつも、天皇制など伝統文化を捨てることはなかったと指摘」

     

    日本が明治維新で近代化に成功したのは、政治制度を始めあらゆる制度の欧米化を進めたことだ。今風に言えば「制度イノベーション」を行なった結果である。だから、日露戦争では、米英の全面的な精神的支援を受けられた。英国は、世界中に持つ英国植民地の軍港へロシア艦隊の寄港を認めず、戦力を消耗させた。日本が、日本海の日露海戦で勝利を収められた主因である。

     


    (2)「当時の清国でも、『洋務運動』という改革が行われたとしつつも、その後の日清戦争では『清国が力を結集して建造したアジア最大の艦隊であった北洋艦隊は日本に完敗を喫し、消滅した』とした。北洋艦隊が敗北した原因は今でこそ様々な指摘があるが『敗北したという事実は変わらない』と指摘した。さらに、日本はロシアとの戦争にも勝利を収めているほか、太平洋戦争では世界最強の米国とも戦ったと指摘。つまり、日本はわずか数十年間で太平洋両岸にある世界最大かつ最強の3カ国と戦った国であることを意味すると強調した」

    清国の「洋務運動」はなぜ失敗したか。西欧の先進技術を取り入れたが、政治制度は中国が優っているとうぬぼれていた結果だ。そこで、「中体西用論」という思想が生まれた。中国の「体」(制度)は優れているので、西欧の「用」(火砲・軍艦)だけを取り入れるというもの。「制度イノベーション」は中国には起らなかった。

     

    現在の共産党政権も同じことをやっている。中国式社会主義は優れているので変革しない。だが、先進国の技術は取り入れると宣言している。現代版の「中体西用論」である。専制政治に先進技術を取り入れられるか。間もなく、その結果が出てくる。

     

    (3)「中国では近年、過去の教訓を忘れ、『何を根拠にしているのかわからないが、日本を軽視する風潮がある』と主張し、日本が憲法改正などに向けて歩みを進めるなか、日本を軽視するのは『あまりにも危険である』と論じている」。

     

    日本は、明治から昭和にかけて国運を賭ける大戦争に突入した。当時の世界は、「帝国主義戦争」により、食うか食われるかの渦中にあった。戦争によって領土を広げる。これが経済発展の基本パターであった。大は英国から、小は日本までが領土分割戦争に加わり、日本は最後に大きなしっぺ返しを受けて「ゼロ」に帰した。現代は、科学の時代である。他国領土を必要としない時代だ。日本が戦争放棄を宣言した裏には、帝国主義戦争時代が終わったことの象徴でもある。

     

    中国は、まだ19世紀的な「帝国主義戦争」の意識である。領土拡張が、国家発展の証と誤解している。遅れてやってきた最後の「帝国主義国家」が中国である。だから、先進国は中国の存在に警戒感を強めている。いつ、侵略の牙を剥くか。それを事前に抑えるべく、「包囲網」を構築しつつある。


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    中国が、「世界の工場」ともてはやされたのは昔のことだ。最低賃金の大幅引上げが続いて、中国での生産コストはベトナムの2倍以上に拡大している。例えば、昨年5月時点での調査で、月額賃金は広州537米ドル、ホーチミン238米ドルである。かねてから、中国脱出を狙っていた企業は、米中貿易戦争をきっかけで、ついに脱出を決断しているようだ。

     

    不況対策で中には、計画的な解雇を行なう企業まで現れている。2ヶ月の有休休暇を与え、従業員を帰省させた後、メールで工場閉鎖を伝えるというもの。これでは、帰省した従業員が戻ってきて抗議活動するリスクも減るというのだ。

     

    前回不況時の2015年には、従業員全員を一泊で遊園地へ遊びに行かせ、その間に経営者が機械設備を持出して、工場はもぬけの殻という「珍事」もあった。今回も、そろそろ経営者の「夜逃げ」が始るのでないかと、噂が広がっているという。

     

    『ロイター』(1月18日付)は、「春節前の中国で相次ぐ工場閉鎖、貿易摩擦が雇用に影」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中貿易摩擦の影響で受注が減った中国の製造業企業は、2月の春節(旧正月)休暇のずっと前から工場を閉鎖する例が目立っている。休暇明けも再開されず、廃業となる工場もありそうだ。東莞市の景気は目に見えて減速。多くの小売店や飲食店がシャッターを閉じ、一部の工場は閉鎖され、多くは賃貸に出されている。最近の週末の夕方、あるタクシー運転手は人のいないオープンエアの食堂を指し、『以前ならこの建物は労働者でいっぱいで、仕事帰りに食べてしゃべっていたのに、今はこの有様だ』と語った」

     

    東莞市は広州と深圳、香港の中間に位置する。香港企業、台湾企業の委託加工先や工場建設の好適地として、衣料品、日用雑貨、玩具、電子製品、パソコンまで、重工業以外の各種工場が林立する工業地帯になった。特に、パソコン部品は世界の供給拠点として重要な地位を占めている。また、輸出に必要な包装用段ボールを製造するための製紙工業もさかんで、中国最大の工場群もある。この東莞市に閑古鳥が鳴いているという。

     

    (2)「人口1億人以上の広東省は、GDPが1兆3000億ドルと中国最大で、オーストラリアやスペインに匹敵する規模。広東省の景気減速は、中国沿岸部に位置する輸出依存型の省すべてにとって悪い前触れだ。貿易紛争が長引けば、国全体の成長率を引下げることにもなりそうだ。UBS(中国)が最近、輸出事業に大きく関わる、あるいは輸出企業に納入している製造業企業200社を対象に実施した調査では、63%が米中貿易摩擦の悪影響を受けていると答えた。このうち4分の1は過去1年間に人員を削減し、37%は生産拠点を国外に移した。向こう半年から1年以内に拠点を移すと答えた企業も33%に上る」

     

    広東は中国の輸出基地となっている。広東の製造業PMI(購買担当者景気指数)は、中国製造業のシグナル役を果たしてきたが、余りの悪化に調査を中止させられるほどだ。「臭いものに蓋」である。中国政府らしい隠蔽である。

     

    (3)「中国の製造業セクターは以前から、労働コストの上昇、規制強化、高技術生産や内需型経済への移行といった重圧に苦しんでいた。そこに米国が中国製品への関税を引き上げるリスクが出てきたことで、サプライチェーンの国外移転に拍車がかかった。今後数週間、恒久的に閉鎖する工場は増える見通しだ。専門家によると、倒産コストを背負いきれず、単純に姿を消す工場オーナーも出てきそうだ」

     

    米中貿易戦争が、仮に一部の関税が解除になっても、もう東莞市に活気は戻らないだろうという悲観的な見方である。先のパラグラフで、輸出企業に納入している製造業企業200社を対象に実施した調査では、気になる結果が出ていた。

     

    63%(126社)が摩擦の悪影響を受けていると答えた。

    25%は、1年間に人員を削減した

    37%は、生産拠点を国外に移した

    33%は、向こう半年から1年以内に拠点を移す

    つまり、126社中70%は国外脱出である。米中貿易戦争は、国外脱出への最後の背中を押したことになる。


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