勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    ゼロコロナ対策続行は、習氏の経済軽視の典型的な表れである。計画経済論者の習氏にとって見れば、経済はインフラ投資を増やせば、いかようにも動かせると見ているはずだ。現実は、そのような「上意下達」ではない。個々人の積極性が経済を動かす原点である。その原点が、ゼロコロナですっかり萎縮してしまった。再び、「エンジン」がスムーズにかかる保証はないのだ。

     

    『ロイター』(11月22日付)は、「中国経済の全面再開、企業に『手遅れ』になる可能性」と題する記事を掲載した。

     

    主要国で唯一、まだ新型コロナウイルスを通常の風土病として扱っていない中国は今月、厳しい感染対策を緩める20項目の措置を発表。これを受けて中国の株式、債券は買い一色となり、人民元は上昇、つられてアジアから欧州、中南米まで幅広い資産が値上がりした。もし本当に来年、中国と世界がつながりを取り戻せば、中国経済は数十年ぶりの急激な減速から立ち直り、それに伴って世界経済も景気後退(リセッション)に陥る事態を免れるかもしれない。

     

    (1)「市場の熱狂と裏腹に、中国経済の実態は非常に暗たんとしている。対面サービスを中心とする多くの企業は、そもそも来年まで生き残れないのではないかと戦々恐々の状態にある。政府は依然としてこれまでで最大規模の感染拡大と悪戦苦闘中だし、厳格な規制で生活をかき乱され、すっかり萎縮した消費者は財布のひもを固く結んだままだ。上海でカフェやバー、イベント会社などを所有する米国人起業家カムデン・ハウゲさんは、今年に入って2カ月も家に閉じ込められ、生活必需品を手に入れることさえできかったというつらい経験をした2500万人の市民は、今後規制がどうなろうとも、混雑した繁華街を出歩くのをずっと避け続ける、と予想。人々が以前の生活に戻ることはないと断言した」

     

    人混みの中へ出ることが、危険であるという「トラウマ」は、中国社会へ大きな影響を与えるという指摘が出てきた。開放的な中国人が、内に籠る生活を選ぶように習慣づけられると、中国経済は回らなくなる。こういうリスクの存在を認識すべきとしている。

     

    (2)「中国の今年の成長率は3%前後と、政府が目標とする約5.5%に届かない見通し。これまでに発表された10月の経済指標は、既に低調だった予想をさらに下回っている。輸出は落ち込み、物価は下振れた上に、銀行の新規融資は急減。不動産市場は一段と冷え込み、小売売上高は上海でロックダウンが実施された4-5月以降で初めて減少した。また新規感染は拡大が続いており、中国経済が近く上向きに転じる公算は乏しい。JPモルガンが今月推計したところでは、新規感染者が10人以上の都市が抱える人口総数は7億8000万人で国内総生産(GDP)の62.2%に達し、9月末から約3倍に跳ね上がった」

     

    わずかな人数の感染者で大騒ぎしている構図は、端から見ていて滑稽ですらある。もはや、風土病という認識にならなければ、中国経済は立ちゆかぬ事態に陥ろう。こういう認識がゼロというのも困った政府である。

     

    (3)「中国全土でのワクチンの1回目接種や追加接種の比率は引き続き低めで、特に重症化しやすい高齢者層でその傾向があるため、当局は国民の準備が整う前に規制を緩めることには慎重になっている。その結果、新たな感染対策ルールは国内で一律に実行されていない。幾つかの都市では当局が規制を緩めた一方、別の地域では逆に厳しくなった。地方政府によっては、わざわざ当局がルール修正は感染防止態勢を弱めるという意味ではないと説明し、住民を安心させなければならないケースもある」

     

    すべてを権力で押し切る中国政府が、ワクチン接種では腰が引けている。副作用が強い結果であろう。ならば、欧米のワクチンを導入すれば済むこと。それも、習氏のメンツを潰すという政治的配慮でできないのだ。この国は、誰のために存在しているのか。習近平氏一人の名誉維持のために、14億の国民が泣かされているのだ。

     

    (4)「不安に駆られた家庭の中には自衛策を講じる動きも出てきている。ソーシャルメディアに寄せられた親たちの投稿を見ると、子どもが感染するのを懸念して歯痛や中耳炎などを口実にして学校に行かせないようにしているもようだ。エコノミストは、これらの家庭は当然しばらく外食や買い物には出かけないだろう、と警鐘を鳴らす。ガベカル・ドラゴノミクスのアナリストチームは、新型コロナウイルスの封じ込めを「最適化」するための新たな措置は、各地方政府が独自の解釈を加えていることで、一般市民の間に混乱を生み出していると指摘。これは経済の不透明感につながり、短期的に消費と不動産取引をさらに抑制しそうだと付け加えた」

     

    親は、仮病を使って子どもに学校を休ませている。親も、外出しないことになるので、個人消費はスパイラル的な落込みになる。愚かな連鎖が起こっているのだ。

     

    (5)「根本的には、当局が消費者の利益を優先する政策を実施していない点に問題がある。例えば中国の交通データを挙げると、第3・四半期の貨物輸送量は陸運、鉄道、水運の合計でコロナ禍前の2019年第3・四半期とほぼ同じ水準になった。ところが陸海空の交通機関の旅客輸送量は19年の半分か3分の1にとどまっており、産業の物流に比べて人々の生活の面ではるかに混乱が大きい様子が読み取れる。これは対面サービス事業にとって望ましい兆候とは言えない

     

    物流に比べて、人流は大きく落込んでいる。対面サービス事業は、不振になって当然であろう。ゼロコロナは、歴史に残る愚策である。

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    中国共産党は、汚職追放で大キャンペーを張っている。習近平氏は、これによって政権の基礎を固めた。政敵潰しには、賄賂の嫌疑をかければ簡単に相手をワナに落とし込めるからだ。

     

    贈収賄は、中国の文化といって良いほど、生活に密着している。西欧では、市場ルールによって経済行為が営まれるが、中国では賄賂がその役目を果たしてきた。つまり、多額の賄賂を贈れるのは、それだけ重要であることを意味してきたのだ。

     

    賄賂は、日常経済の潤滑油であった。古来、過剰な賄賂は取り締られたが、日常的な賄賂は「挨拶代わり」として見逃されてきた社会である。習氏は、これを逆手に取って「粛清手段」に使ったのだ。習氏の「生け贄」にされた元政府高官は、獄窓でどのような生活を送っているのか。興味深いニュースを紹介したい。

     

    『大紀元』(11月22日付)は、「『党への最後のご奉公』失脚した中国共産党幹部の知られざる獄中生活」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党内の権力闘争で失脚し、収監された高官らの獄中生活の実態が明らかになった。国家転覆罪の容疑で拘束され、今年4月に釈放された台湾の人権活動家・李明哲氏はこのほど、米『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)の取材で自身の見聞を語った。

     

    (1)「李明哲氏は2017年3月、マカオから広東省に入った直後に拘束され、国家転覆罪の容疑で5年間収監された。中国の反体制派の家族と連絡をとっていたことが原因だとされる。同年11月、李氏は湖南省の赤山刑務所に収監され、翌18年に司法部(法務省に相当)直轄の北京・燕城監獄に移送された。同監獄には国務院(内閣に相当)局長クラスの幹部が多数収容されている」

     

    反体制派の家族と連絡をとったことで、5年間の刑務所暮らしを余儀なくされた。中国共産党は、いかに反体制派を恐れているかがよく分かる。

     

    (2)「燕城監獄で接触した数々の幹部受刑者のなかでも、李氏にとって最も印象深かったのは、中国鉄道部副総技師長の張曙光だった。高速鉄道の開発を主導し、在任中に建設した鉄道は1.8万キロに及ぶ。13年、収賄容疑で執行猶予付きの死刑判決を言い渡され、後に無期懲役に減刑された。獄中の張曙光に「高速鉄道の第一人者」としての面影はなかった。お腹を満たすため、張曙光がインスタントラーメンの空袋にご飯を詰め込み、袖の中に隠して持ち出す様子を何度か目にした。「現職時代に権勢をふるっていた高官でも、刑務所に入ればお腹を満たすことで精一杯なのだ」と李氏は感慨にふける」

     

    張曙光事件は当時、大きく取り上げられた。中国鉄道の「ドン」として絶対的な権力を持っていた。張被告は鉄道部運輸局長に在任中の2000~11年にかけて、高速鉄道網の整備事業などに絡んで便宜を図る見返りに、複数の民営企業から合計13回にわたり、総額4755万人民元(当時、約8億2164万円)の賄賂を受け取ったとされる。

     

    (3)「李氏によると、司法部直轄の燕城監獄は設備が整っており、最大3人一部屋で強制労働はない。いっぽう、湖南省の赤山刑務所は10平米の部屋に16人が押し込まれ、長時間の労働を課されている。囚人の一部は、中南海(党上層部、中央省庁)の高官のために外国のニュースを翻訳するほか、書籍の校正作業も行っていた。「燕城監獄は中国の他の刑務所より、はるかに待遇が良い。それでも受刑者の一番の関心事は食事だ。少しでも良い物を食べたいと皆が思っている」と李氏は語った」

     

    元高官の刑務所での仕事は、翻訳や校正であったという。元エリートとして矜恃は保っていた。

     

    (4)「李明哲氏が、初めて元幹部の受刑者らと接触したのは湖南省留置所だった。収監されていた元幹部らは自身の犯した罪を語るとき、みな「投獄されたことは党への最後のご奉公だ」と主張していた。ある幹部はこう語ったという。「共産党は政権を維持するため、市民に汚職撲滅の姿勢を示そうとする。我々はその見せしめになったのだ」。中国共産党幹部にとって、汚職は一種の「掟(おきて)」だと李氏は指摘した。拘束された多くの幹部は「汚職をしなければ無能力人物だとみなされ、職場で干されてしまう」と話していた。みな汚職しているが、自分が逮捕されたのは権力闘争に負けたためだと彼らは考えているという」

     

    下線部分は、かなり真実を語っていると見られる。誰でも「叩けば埃が出る」ほど、金品の受領をしてきた。それが、中国古来の文化であるからだ。名刺代わりに現金を渡す。これはつい最近までの慣わしでもあったのである。習氏が、政敵から恨まれているのは、こういう事情があるからだ。

     

    日本でも、田中角栄・元首相が来客に「のし袋」(現金入り)を渡していたことは有名な話だ。これによって、利益を得ようという目的でなく、相手に好意を示す意味があったとされている。中国では、利益誘導目的で現金が渡されていたのだ。田中とは意味合いが異なる。

     

     

     

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    習近平国家主席から承認を受けた中国の対米「親善チーム」が、米中首脳会談前に米国へ派遣されていたことが分かった。米中関係のさらなる悪化を防ぐ目的である。中国が、米民間グループへ出した条件は、ウクライナ侵攻解決に向けて努力するので、米国が台湾問題に干渉しないことや、半導体規制の解除を示唆したという。

     

    中国の要求は、余りにも「自国本位」である。米国側から見れば、台湾を犠牲にしてウクライナ侵攻を解決するという片手落ちの話だ。さらに、半導体規制の解除は米国の安全保障にとって重大なリスクをもたらすもので、とうてい飲める話であるまい。中国には、こういう「バカバカしい」話を平気で持ってくる非常識さがあるのだ。

     

    米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月22日付)は、「中国が頼る裏ルート外交、対米関係の改善図る」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は米国との競争激化に備えつつも両国関係の安定化を図ろうとしている。米国とのコミュニケーション強化を狙い、中国がいま頼っているのは米産業界の旧友たちだ。事情に詳しい関係者によると、先週開かれた習主席とジョー・バイデン米大統領の首脳会談の数日前、中国は上級政策顧問や企業幹部から成る代表団をニューヨークに派遣し、同等の地位や職に就いている米側のグループと会談した。このグループは、中国で最も成功した米国人ビジネスマンの1人で、保険会社幹部のモーリス・ハンク・グリーンバーグ氏(97)が設立したものだ。

     

    (1)「関係者によると、習主席は10月の共産党大会で3期目入りを果たした直後、中国外務省と連携するシンクタンクが計画した訪米を承認した。一方、米側は国家安全保障会議(NSC)やその他の機関に事前に通知したという。NSCはコメントを控えた。米中両国は少なくともこれ以上の関係悪化を防ぐよう努める意欲を示している。バイデン大統領と習主席は先週のインドネシアでの首脳会談で、気候変動問題での協力やその他の高官レベルでの接触再開を約束した」

     

    中国は、米国との対決を望まないという方針を民間グループに託して米国へ伝えた。

     

    (2)「オバマ政権時代に中国政策を担当し、現在はシンクタンクのアジア・ソサエティ政策研究所でバイスプレジデントを務めるダニエル・ラッセル氏は、「習氏は米国との競争激化への準備の一環として、ある程度の安定を求めている」と話す。「どのレベルにおいても両国間のエンゲージメントが不足しているだけに、直接的な対話は何であれ貴重だ」と指摘する」

     

    米中間では、いくつかの非公式ルートを持つことが必要である。外交ルートは、「お仕着せ」のものだけに、本音で語れるルートは不可欠だ。これが、偶発的な衝突を防ぐからだ。

     

    (3)「中国と米国のグループは11月10、11の両日、双方から13人ずつが出席し、ニューヨークのパーク街にあるC.V.スター本社で話し合いを行った。同会合に参加した元米海軍大将のマイク・マレン氏は、米側グループの他のメンバーと同様に同氏も、米中関係の「悪化の流れ」に懸念を抱いていたと語った。中国側も同じ懸念を共有していたという。マレン氏は、こうした両国共通の懸念について「われわれは危険な時期にある」と指摘。「現在の2つの超大国としてわれわれは、この状況の改善に努める必要がある」と語った」

     

    中国は、自分で蒔いた種が大きくなって手に負えなくなっている。米国に譲歩を求めているのだろうが、それはもはや手遅れである。中国が、覇権争いの座から降りることが先決条件である。

     

    (4)「会合参加者らによれば、1日半に及んだ会合で両国の代表らは、中国が自国の一部だと主張する民主主義統治の台湾をめぐる米中対立や、協力可能な分野などについて話し合ったという。参加者らによると、米側代表団が台湾海峡の平和維持の必要性を強調したのに対し、中国側代表団は、最終的に台湾を中国本土に統合することの重要性を強く主張したという

     

    中国は、香港で「一国二制度」を破棄してしまった。この貴重なルートが失われた今、台湾問題解決の道はない。武力統一は、最も忌避すべき手段であり、西側諸国が受入れるはずがない。

     

    (5)「参加者らによれば、中国側は、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮情勢などの地政学的問題について、中国政府が米政府と協力することが望ましいかもしれないとの考えを示唆した。しかし、中国側代表団は、米政府が中国の核心的利益を尊重することが、こうした協力の条件になると考えているようだったとい。中国の核心的利益には、台湾の中国への統一や、中国企業に対するハイテク機器輸出規制の緩和などが含まれる。元外務次官の王超氏(現在は中国人民外交学会会長)率いる中国側代表団は、対話の締めくくりとして、次回会合を中国で来年開くことを提案した」

     

    下線部は、中国のエゴ丸出しの要求である。中国が、ウクライナ侵攻を早期段階で止めていれば、世界の中国への視線は変わっていたはず。今頃になって、台湾と半導体の問題と引き替えにして、ウクライナ問題解決を臭わせても効果はないであろう。

     

     

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    中国は、建国100年の2049年をメドに軍事力でも米軍を凌駕する青写真を描いている。米軍が、これをせせら笑うように中国軍の「秘蔵っ子」のロケット部隊全貌を公にした。部隊の所在地から司令官の氏名やロケット数まで公表する念の入れ方である。

     

    米国の狙いは何か。中国軍の隠し事はすべて把握しているというジェスチャーであろう。台湾侵攻を企てても即刻、米軍が情報を把握して即応態勢を取るという通告に見えるのだ。情報戦で先を行く米国が、敢えて中国へ挑戦している感じである。

     

    『朝鮮日報』(11月21日付)は、「続投する習近平主席に米国からプレゼント」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の崔有植(チェ・ユシク)朝鮮日報東北アジア研究所長である。

     

    習近平国家主席が、3期目の中国共産党総書記に選ばれた翌日の24日、米空軍大学で異例の報告書が発表された。空軍大傘下の中国宇宙航空研究所が作成した「中国人民解放軍ロケット軍組織」という全255ページの報告書だ。中国のロケット軍組織の経緯と構成、各部隊の指揮官や主要幹部の氏名と写真、ロケット軍基地の位置、配備されたミサイルの種類や戦力評価など膨大な情報が網羅されているもの。ほぼ中国のロケット軍を解剖したと言える内容だ。

     

    (1)「報告書にはロケット軍司令部と傘下部隊、各ミサイル基地の緯度、経度などの座標も明示されています。中国が誇る戦略ミサイル部隊を隅々までのぞき込む内容であり、軽挙妄動するなという警告を送ったものと言えるでしょう。米司法省も同日、中国通信設備大手、華為技術(ファーウェイ)に関する捜査情報を探ろうとした疑いなどで中国のスパイ11人も起訴したと発表しました。習主席の再任を祝う豪華な「贈り物の包み」をあらかじめ準備しておいたのです」

     

    中国が、最新鋭部隊として誇っているロケット部隊の全貌は、すべて米軍に把握されているのだ。1910~11年に、米国が日米開戦を前提にした「オレンジ計画」を立てたが、それに匹敵する早業である。

     

    (2)「中国は核兵器開発に成功した直後の1966年、中央軍事委員会直属で核ミサイル発射を担当する第2砲兵部隊を新設しました。当時は射程500キロ前後の短距離核ミサイルを少量保有していたということです。その後、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、中距離弾道ミサイル(IRBM)などの開発に成功し、部隊はますます規模が大きくなりました。習近平主席は1期目後半の2015年、この部隊をロケット軍に拡大改編しました。ロケット軍が陸・海・空軍に次ぐ4番目の正式軍種となったのです。部隊規模も大幅に拡充され、17年から19年までの3年間に10個旅団が新設されました。29個旅団が39個旅団に拡大したわけです」

     

    中国のロケット部隊の歴史である。過去5年間、習氏が米軍への対抗姿勢を強化した経緯がよく分かる。

     

    (3)「米軍空母を狙った対艦弾道ミサイル(ASBM)のDF(東風)-21D、全米を攻撃できるICBMのDF-41、グアムを射程距離に置いたIRBMのDF-26、迎撃網を避けるDF-17極超音速ミサイルなどが新たに開発され、ミサイルを発射する部隊を相次いで新設したのです。報告書によれば、中国のロケット軍は司令部が北京にあり、全国各地に軍団級のミサイル発射基地6カ所(第61―66基地)を置いているということです。各基地には6-8個のミサイル発射旅団を中心に、通信、作戦保障、訓練、装備検査の各連隊などの支援部隊が配置されています。各旅団に配備されたミサイルの数は112-116発だということです。さらに、核兵器の備蓄と技術支援、ミサイル試験と訓練を担当する基地3カ所(第67-69基地)もあります

     

    下線のようにミサイルの数まで判明している。米軍にここまで握られていれば、中国軍は孫悟空の「掌」という位置だ。

     

    (4)「安徽省黄山に司令部がある第61基地は東南部地域を担当する部隊で、台湾への武力侵攻に使われる短距離弾道ミサイル(SRBM)や準中距離弾道ミサイル(MRBM)が集中的に配備されています。台湾侵攻の際、台湾や南シナ海に接近する米空母などを攻撃するミサイルを発射する部隊です。趙秋領少将が司令官です。西部の甘粛省蘭州にある第64基地、中部の河南省洛陽に司令部を置く第66基地などには核兵器を搭載したICBMなど中長距離ミサイルが配備されています」

     

    台湾侵攻作戦のミサイル司令部は、安徽省黄山にある。司令部の所在地が分っている以上、ここを攻撃されれば一巻の終りとなる。

     

    (5)「米国が、中国のロケット軍部隊の座標を含む報告書を発表したことは、中国側の姿勢に対する答えです。戦略ミサイル部隊であるロケット軍の組織と基地の位置、指揮官や幹部の身元など、あらゆる情報を丸裸にし、「我々の手中にあるのだから軽挙妄動は慎め」と公に警告したのです」

     

    親が、子どもの動きを全部知っており、さりげなく「注意」している感じである。中国は、ロケット部隊を揃えて意気揚々としているが、上には上があることを悟らせようという意図である。


    テイカカズラ
       


    中国は、世界で唯一のゼロコロナ対策を行なっている国だ。海外からの入国者は、これまでホテルでの隔離が7日間、自宅の待機が3日間必要だった。ところが、ホテルの隔離を5日間に短縮し、全体の隔離期間を10日間から8日間に減らした。これだけでも、中国では大変な「進歩」である。この裏には、財政負担の軽減も理由である。PCR検査会社は、仕事をしても地方政府から料金の支払を受けられず、売掛金は90%増という異常な事態に直面している。

     

    『日経ヴェリダス』(11月20日付)は、「中国、ゼロコロナ政策を一部緩和 経済へなお打撃」と題する記事を掲載した。

     

    中国政府は新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策を一部緩和した。海外からの入国者らに対する隔離を10日間から8日間に短縮した。感染を抑え込みつつ、経済への影響を和らげる狙いだ。ただし諸外国に比べると規制はなお厳しく、経済への打撃は続きそうだ。

     

    (1)「海外から中国に渡航する場合、従来は飛行機に搭乗する前の48時間以内に2回のPCR検査が必要だったが、1回に減らした。国際線の乗客に一定数の感染者が出た場合にその便の運航を一時運休する措置も撤廃した。国内で発生した濃厚接触者などに対しても、従来はホテルの隔離が7日間、自宅の待機が3日間必要だった。今回、ホテルの隔離を5日間、自宅の隔離を3日間とし、全体の隔離期間を8日間に減らした。濃厚接触者などに接した2次接触者は「判定しない」ルールに変更した。隔離や封鎖の対象者が減る可能性がある」

     

    下線部のように、ホテルでの隔離期間を7日間から5日間に減らした。ホテル隔離は政府負担というから、2日の短縮でも財政負担は軽くなる。

     

    (2)「(変異型ウイルスの)オミクロン型の潜伏期間は最長でも8日間。隔離期間を2日間短縮すると、隔離に伴う(ホテルなどの)資源を30%節約できる」。衛生当局の常継楽氏は12日の記者会見でこう説明した。ゼロコロナ政策に伴う大規模なPCR検査や隔離費用の多くは、中国政府が支払っている。対策の緩和で、財政への圧迫を和らげる思惑がある。衛生健康委の米鋒報道官は「防疫の科学性と精度を高めて人民の生命と健康を守り、経済発展への影響を減らす」と説明した」

     

    中国の医療体制が、西側諸国のように整っていれば、ゼロコロナ対策も必要なかった。この間にかかった厖大な費用を医療施設の充実に回していれば、これほどの無駄な費用をかけずにすんだのだ。「後進国」中国のチグハグさが浮き彫りになっている。

     

    (3)「中国ではオミクロン型の流行で今年3月以降、感染が急増。衛生健康委によると、中国本土で1日の新規感染者(入国者除く、無症状含む)は4月に2万人台に達した。6月には数十人まで減ったが、夏以降に再び増え、現在は2万人台に達した。野村ホールディングスグループの野村国際(香港)の推計では、都市封鎖や移動制限の対象者は37都市で約3億4000万人(14日時点)にのぼり、直近1週間で10%増えた。経済への影響は甚大だ。米ゴールドマン・サックスのエコノミスト、フイ・シャン氏は14日のリポートで「主要都市での感染増加やゼロコロナ政策の継続は、短期的な成長見通しを下げるリスクだ」と指摘した」

     

    14日現在で、3億4000万人がロックダウンなどの「被害」を受けている。総人口の24%が行動制限を受けている計算だ。経済活動は不可能である。

     

    (4)「経済への影響は甚大だ。米ゴールドマン・サックスのエコノミスト、フイ・シャン氏は14日のリポートで「主要都市での感染増加やゼロコロナ政策の継続は、短期的な成長見通しを下げるリスクだ」と指摘した。中国の国内総生産(GDP)は22年7~9月期が実質で前年同期比3.%増だった。野村国際の陸挺・中国首席エコノミストらは15日のリポートで「22年10~12月期は2.%増に減速するだろう」と予想した。景気のさらなる悪化を防ぐため、ゼロコロナ政策のさらなる緩和はありうるのか。野村国際の陸氏らは「今後数カ月間で微調整があるだろうが、23年3月の前に実際に開放されることはなさそうだ」とみている」

     

    人口の4分の1が足止めを食っている状況では、10~12月期のGDPは前年比2.8%と3%割れが予想される。こうしたゼロコロナ対策は、早くても来年4月以降の解除と見られる。

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