勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > 中国経済ニュース時評

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    韓国銀行(中銀)が、7月20日に公表した推計値によると、2017年の北朝鮮のGDPは前年比3.5%減少した。国際的な制裁の影響により1997年以来の大幅なマイナス成長である。1997年に深刻な飢饉に見舞われ、GDPは6.5%減少した以来の大幅落ち込みとなった。ロイターが20日伝えた。

     

    金正恩国務委員長は、国内経済立て直しをすべく、現場で陣頭指揮している様子が相次いで報じられている。金氏は、現場責任者を厳しく非難しており、激情家ゆえに責任者を「公開処刑」でもしないか。そんな心配がされるほどの怒り方である。昨年のGDPが、21年ぶりのマイナス成長である以上、核を抱えた経済運営が不可能であることを覚らせたに違いない。

     

    北朝鮮は、国際的な制裁の網を逃れるべく、奇想天外なことを始めている。ソマリアの海賊へ北朝鮮製の潜水艇を輸出しようというものだ。計画は頓挫しているようだが、仮に「潜水艇保有の海賊」が現れる事態になると、被害が広がり先進国は手を焼くことになるところだった。

     

    『中央日報』(7月20日付)は、「北朝鮮、ソマリアの海賊に潜水艇輸出図る、対北制裁逃れに必死」と題する記事を掲載した。

     

    この記事で明かされた北朝鮮の違法行為は、想像もつかない方法を取っている。「蛇の道は蛇の道」というが、中国の闇の世界を仲介役に使っているといる。中朝には、そういう地下の密輸ルート-があるのだろう。

     

    (1)「北朝鮮が対北朝鮮制裁により武器輸出の道がふさがれたことで海賊にアプローチしていたことがわかった。情報関係者は18日、『北朝鮮が外貨稼ぎ目的でソマリアの海賊に潜水艇の輸出を推進していた事実が確認された』と話した。同関係者によると、韓国の情報機関は2015年に関連機密情報を入手し、現在もこれと関連した北朝鮮の動きを監視している」

     

    (2)「北朝鮮が輸出を試みた潜水艇は、北朝鮮で生産した製品だ。これにはドイツ製エンジンのMTU-1800が搭載されている。これを受けドイツの情報機関も慌ただしく動いたという。ドイツで生産した禁輸品目が、対北朝鮮制裁をすり抜けて北朝鮮に入ったという状況のためだ。さらにドイツ製エンジンを装着した北朝鮮の潜水艇が海賊に販売されかねないという可能性が出ているため、すぐに対策に乗り出した」

     

    (3)「関係機関が、高位級脱北者を通じて入手した情報を分析した。北朝鮮の戦略は極めて緻密だったという。北朝鮮は中国人を使い香港やシンガポールを通じてドイツ製エンジンを輸入した。これら東南アジア諸国には有名観光地が多く、観光用の潜水艇製作に使うという名分でエンジンを確保したもの。北朝鮮は、潜水艇を観光用での使用を終えエンジンも廃棄したという偽の書類を作った後に、エンジンを密輸したという。北朝鮮はこうした方法で確保したドイツ製エンジンで潜水艇を作り1隻当たり2700万ユーロ(354億円)で海外に販売する計画まで立てた。販路開拓にも中国人を使い、北朝鮮が介入した事実を隠そうとした。北朝鮮軍部に精通した消息筋は、『中国人が介入して取引を中継しているため海賊と取引関係を作るのは難しい。潜水艇の輸出は容易ではなさそうだ』と話した」
     
    北朝鮮が潜水艇輸出に成功すれば、1隻当たり354億円になったという。韓国当局は、販売価格まで掴んでいるのだ。こうなると、北は「袋の中のネズミ」同様に、動きはとれまい。ここまでして核を持ち、自らの独裁政権を維持したい。こういう執念に恐れ入る。この悪知恵が、国民生活の改善に使われれば良いのだが、さて、どうなるかだ。


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    人口14億人の中国が、わずか人口2万人のパラオを虐めている。パラオが台湾と断行するように圧力をかけ、中国人旅行を禁止しているもの。THAAD(超高高度ミサイル網)設置をめぐって中国にいじめぬかれた韓国は、中国を「小さな大国」と称して軽蔑する。中国は、同じことをパラオに向けてやっているのだ。恥ずかしいことと思わないところが、中国の限界だろう。

     

    「現在、台湾と国交を結ぶ国は19カ国。蔡英文政権になってから3国が断交し、中国と国交を樹立した。巨大な観光市場と経済的な利益を約束し、台湾の国際的地位を削り取ろうとしている中国共産党政権は今、欧州バチカン市国と太平洋の島国パラオに揺さぶりをかけている」。「大紀元」(7月19日付)は、こう言って中国の狙いを説明する。パラオは、大の親日国である。2015年には天皇・皇后両陛下が慰霊の旅をされている。この親日国が、中国に虐められては気の毒。この夏休みは、多くの日本人がパラオ旅行して苦境を救っていただきたい。

     

    中国のパラオ虐めは、前述の通り、中国人観光客の渡航禁止である。パラオ政府の統計によると、中国からの訪問客は2015年に日本を抜き1位になって以降、全体の約半数を占めてきた。だが、中国当局は昨年11月、台湾への圧力の一環で、パラオへの団体旅行を厳禁した。パラオの航空会社によると、年間3万人の搭乗客が今年は7月までに1万4000人に減少。搭乗料金も半額以下に落ち込んだという。この結果、7月18日、パラオ・パシフィック航空の運航会社が、中国との間で唯一運航していた香港路線を停止することが分かった。

     

    「大紀元」(7月19日付)は、「台湾と国交維持の島国パラオ、中国空路を停止」と題して次のように伝えた。

     

    「パラオは、日本の国連の委託統治を受けていた時代もあり、今日まで日本と積極的な外交関係がある。1997年、日系のクニオ・ナカムラ前政権時代に、李登輝政権時代の台湾と外交関係が結ばれた。3年毎に開かれる日本主導の太平洋・島サミット(PALM)にも参加し、今年5月、8回目となるPALMは福島いわきで開かれた。パラオにある外国公館は日本、台湾、米国の3カ国のみ。主たる産業は観光で、2010年前半までこの3カ国が顧客トップだった。しかし、2015年以降は中国本土からの旅行客が一位となり、過半数を占める。中国人観光客の急激な増加とともにマナー違反が目立つようになり、国内の不満が高まった。レメンゲサウ政権は昨年、香港経由の中国本土からのチャーター便を半減させた」

     

    パラオのレメンゲサウ大統領は、台湾と中国を二重承認する意向を示し、「誰が友人で誰が友人でないかを選ぶつもりはない」と述べている(「産経新聞」7月19日付)。中国がパラオに圧力をかけても、レメンゲサウ大統領は立派な発言だ。習近平国家主席の「大言壮語」よりも人情味溢れる。中国は「小さな大国」だが、パラオは「大きい小国」と言える。習氏もタジタジであろう。

     

     

     


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    習近平氏は、「中国製造2025」を足がかりにして、2050年には世界覇権に挑戦すると威勢の良い発言をしてきた。だが、地方政府の財政は困窮しており、公務員の給与支払い遅延問題が起こるほど切迫している。

     

    中国経済はインフラ投資が牽引してきた。地方政府は、その先頭に立っており、土地売却益を捻出してインフラ投資を続けてGDPを押上げてきた。地方の役人は、経済成長率が出世の尺度になってきたから、遮二無二にインフラ投資に力を入れてきた。インフラ投資ほど、経済成長率を押上げる上で、即効的な項目はない。無駄なインフラ投資でも実施すれば、GDPの押し上げ効果は大である。猫も杓子もインフラ投資に飛びついたのだ。

     

    土地売却益だけで資金調達できるはずもない。だが、資金回収の難しいインフラ投資には銀行もいい顔をして貸出すはずがない。そこで、最終的に頼った先が蔭の銀行(シャドーバンキング)である。金利は高いが審査はないから簡単に借り出せる。地方政府は、このシャドーバンキングの闇に吸い込まれ、無駄なインフラ投資をしてGDPを押上げてきた。それもついに今年に入って限界にぶつかった。政府が、シャドーバンキングの監視を強め、貸出抑制に踏み切ったのだ。地方政府とシャドーバンキングは二人三脚の形できただけに、地方政府は途端に資金不足に陥るところが増えてきた。こういう事情で、給与遅配が起こったのである。

     

    「金の切れ目は縁の切れ目」というごとく、シャドーバンキングの締め付けは、デレバレッジ(債務削減)の実現に不可欠である。これは、インフラ投資抑制に直結する。今年4~6月期の固定資産投資が、下記のデータのように前記と比べて1.5%ポイントも急減した。

          4~6月期    1~3月期

    実質成長率  6.7%      6.8%

    固定資産投資 6.0%      7.5%

    小売売上高  9.4%      9.8%

     

    中国経済は、「投資主導経済」と言われてきたように、「土木国家経済」である。固定資産投資の伸び率が落ちれば、小売売上高も鈍化する形になっている。両者の関係は薄いはずだが、住宅価格が高騰しすぎて家計のローンウエイトが高まり、個人消費を減らしている結果だ。中国経済は、インフラ投資も含めた不動産バブルにすっかり毒されている。

     

    この不動産中毒患者の中国経済をどのようにして更生させるのか。いかなる名医といえども妙案があるはずもない。時間をかけた体力回復策だけであろう。日本の場合、「失われた20年」という「時間薬」が必要であった。中国の場合、日本の平成バブルをはるかに上回る不動産バブルである。「2050年に世界覇権挑戦」など、戯言に聞えるはずだ。それほどの深手を負っている現実を自覚すべきであろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月17日付)は、「中国GDPを読み解く、投資減速で今後の難局示唆」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の46月期のGDP成長率が発表された。それが何と予想通りの6.7%で、13月期の6.8%をわずかに下回った。注目すべきは投資の急減速だ。今年16月期は、全体の投資の伸びが前年同期比6%にとどまり、1990年代以降で最低だった」

     

    投資主導経済の中国が、投資の減少によってどうなるのか。それは、支え棒を失うのだからきりもみ状態になるのが道理であろう。それを輸出や消費でどこまでカバーできるか。それが焦点だ。

     

    (2)「企業業績の動向をけん引する不動産セクターが、中国のシャドーバンキング(影の銀行)規制の巻き添えを食っているという兆しが増えている。中国人民銀行(中央銀行)の統計によると、シャドーバンキングの信用残は前年同期に比べ微減だった。これは不動産投資とシャドーバンキングの関連性の強さを踏まえると懸念材料だ。中国経済は7~12月期(下半期)にさらに厳しい局面を迎えそうだ」

     

    インフラ投資も不動産投資も、金融機関からリスク産業として警戒されている。だから、シャドーバンキングのような高利貸付先に向かわざるを得ない。本来であれば、安定した融資先になるはずの業種である。中国の経済政策が、こうした異常な状況を作り出した。今年下半期の中国経済は落込むだろう。

     

     


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    昨日のブログで、習近平氏の個人崇拝をめぐる共産党内の反対派の動きを取り上げた。その後、複数のメディアがこの問題を取り上げているので再度、分析したい。

     

    先週末、習近平氏が「権力闘争に敗れ、すでに失権した」との噂がインターネットで飛び交ったという。中国問題専門家の間では、習氏の失権説について疑問視する一方、最高指導部で熾烈な権力闘争が広がっているとの見方が大半を占めている。以下の記事は、『大紀元』(7月18日付「習近平失権の噂が飛び交う 専門家『政治闘争が依然、激しい』」からの引用である。

     

    (1)「異変は、政府系メディアの報道にみられた。79日、12日と15日の三日間、中国共産党機関紙『人民日報』の1面の見出しに『習近平』が含まれる記事が一つもなかった。1週間のうちに3日間も、トップページに習近平氏の名前がなかったのは極めて異例だ。また、中国国営中央テレビ(CCTV)の12日夜の番組は、習氏について『国家主席』『党総書記』などの敬称を付けず、『習近平』と呼び捨てした」

     

    (2)「11日付の国営新華社通信電子版『新華網』が発表した評論記事では、『個人崇拝』について批判を展開した。記事によると、文化大革命後、国家主席に就任した華国鋒氏が『個人崇拝を行った』ことで、党内で不満が噴出したという。華氏は党最高指導部である中央政治局で、自己批判を行った。『この事件は、華国鋒氏が失脚する前兆だった』と同記事が指摘した」

     

    これだけの例証を並べられると、中国で何かあったな、ということは感じる。それにしても、掌を返すようなマスコミ報道にも驚かされる。誰かが裏で糸を引いている人物がいるはずだ。「反習派」が暗躍していることは確かだろう。習氏はこれまで何万、何十万人という高官を汚職容疑で追放してきた。その恨みは大変なものに違いない。これが、江沢民一派と結びつけば、前記のような嫌がらせは連発可能だ。

     

    (3)「香港紙『蘋果日報』(12日付)は、中国当局の関係者の話として、北京警察当局は市内の公共場所にある習近平氏の写真やポスターなどを撤去すると通達した。4日、上海に住む女性が市中心部のビルの前で、習氏の顔写真が入っているポスターにインクをかけた。中国政治評論家の夏業良氏は、政府系メディアなど一連の動きから、『習近平氏が党内の敵対勢力から攻撃されている可能性が高い』と話した。党内からの不満が主に、米中貿易戦の対応や国内経済の失速に集中していると夏氏が分析する」

     

    「習批判」の理由は、個人崇拝を始めた点に対する反対が大きなうねりとなっている、としている。このパラグラフでは、米中貿易戦争や国内景気失速への不安を原因に上げている。この問題では、習氏が深く関わっている。無期限国家主席のポストを手に入れるべく、不動産バブルによって好景気を偽装していたことは疑いない。私は、習氏が景気判断を間違えた罪は極めて大きいと見る。ただ今になって、中国経済破綻の犯人捜しをしても間に合うものではない。中国国内が、こういう形でがたつくことの裏に、経済の混乱があることを明確にしたい。経済不振が、政治不安をもたらす原因である。


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    鉄の団結を誇る中国共産党の内部がざわついている。習近平国家主席への個人崇拝に反対する動きが表面化しているからだ。毛沢東に対する個人崇拝が、10年にわたる文化大革命という騒乱をもたらした。この反省に立って、個人崇拝を止めたはずである。だが、習氏の無期限「国家主席」への道が開かれた途端に、再び習氏への個人崇拝の動きが出始めたもの。

     

    党内で、個人崇拝を阻止しようという動きがあることは、習氏の統治が万全でないことを物語っている。この背景には、米中対立問題が蔭を落としていることは言うまでもない。「中国製造2025」は習氏が音頭を取って始めた事業だ。米国がここへ狙いを付けて、貿易戦争を仕掛けてきた。中国は有効な対応ができず、右往左往している。

     

    習氏は当初、「米国に殴られたら殴り返す」と威勢いのいい啖呵を切っていたが、7月に入って方向転換した。「米国と争うな」と言う始末である。米国への報復関税を科す前に、党内では闘わずに妥協の道を選べという意見が公然と出ていたほど。それを一蹴しておきなら、トランプ氏が「5000億ドルの製品に10%の追加関税」と発言した途端、方向転換を言い出したことへの批判だろう。

     

    米中対立の始まりは、習氏の演説である。昨年秋の党大会で、2050年ごろに米国の覇権に対抗する経済力と軍事力を保持すると言い放った。これが、米国トランプ大統領の怒りに火を付けた可能性がある。「米国第一」は「世界第一」の宣言であったとも読める。習氏は、米国を甘く見て「放言」したのだ。

     

    以上の習氏を取り巻く事態の変化を頭に入れて、次の記事を見て頂きたい。

     

    『共同』(7月15日付)は、「習主席統治に不満噴出か、党内に異変相次ぐ」と題する記事を掲載した。

     

    中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方が出ている。国営メディアが習氏への個人崇拝批判を示唆、習氏の名前を冠した思想教育も突然中止されるなどの異変が相次いでいるためだ。米国の対中攻勢に手を焼く習氏の求心力に陰りが出ている可能性も指摘される。『習近平同志の写真やポスターを全て撤去せよ』。12日、習氏の宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知の写真が出回った。通知の真偽は不明だが、写真は会員制交流サイト(SNS)などで一気に拡散された。同時期に国営通信の新華社(電子版)は、毛沢東の後継者として党主席に就任した故華国鋒氏が個人崇拝を進めたとして党内で批判を受けた経緯を詳述する記事を伝えた。党が80年に『今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない』と決定したことにも触れた。記事はすぐ削除されたが、習氏を暗に非難したと受け止められた」

     

    習近平氏は、どんなに力んでみても毛沢東にはなれない。そういう限界を教えているのかも知れない。毛沢東が率いた中国社会と、習近平が率いる中国社会では質的に異なっている。それに、毛沢東は共産党「創業者」である。習近平は雇われ社長に過ぎない。習氏は、この違いを自覚して行動しないと、永久政権は空手形に終わる可能性が強い。党員と国民を畏れる。そういう謙虚な姿勢が求められているように見える。

     

     

     


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